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川崎重工、車両事業とモーターサイクル&エンジン事業を分社方針決定 船舶海洋とエネルギー・環境プラントは事業統合

モーターサイクル&エンジン事業はグループにおける「Kawasaki」ブランドの牽引役

2020年11月2日 発表

 川崎重工は11月2日、同社の車両事業とモーターサイクル&エンジン事業を2021年10月に分社する方針を決定したと発表した。

 また、水素社会の実現に向けた取り組みを加速するため、2021年4月に船舶海洋とエネルギー・環境プラントを事業統合する方針についても決定した。

 同社では、これら分社・統合に伴い、「陸・空輸送システム」「モーションコントロール&モータービークル」「エネルギー&マリンエンジニアリング」の3つのグループで事業を運営して、各事業の連携をより効果的なものにしていくとしている。

車両事業の分社

 車両事業については、自主再建の目途が付きつつある中で、分社により資本の独立性を高めることで、さらに自律的事業経営を徹底していくとしている。

 足下では新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、国内では乗客数減少に対応した鉄道関連投資計画の見直し、海外では新線の建設工事の遅れが現実となりつつあるが、環境に優しく日常生活に密着した公共交通手段としての鉄道システムは、人口集中による大都市の混雑緩和や環境対策のための都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれるとして、このような認識の下、難度の高いプロジェクトや鉄道システム全体におよぶ需要に対応すべく、業界関係各社との連携・協業を含め、機動的かつ柔軟に取り組んでいくとしている。

 一方で、導入を進めている航空宇宙システム事業の生産技術・品質管理手法の展開をさらに進め、品質の安定化とコスト競争力を高めることで、堅調な鉄道関連需要を取り込んでいくとしている。

モーターサイクル&エンジン事業の分社

 2輪車やオフロード4輪車をはじめとするパワースポーツ事業は、同社唯一の量産型コンシューマービジネスであり、分社により意思決定のスピードを上げ、新たなライフスタイルの提案など顧客に密着した製品・サービスの提供により、さらに強固なブランドを構築し、引き続き同社グループにおける「Kawasaki」ブランドの牽引役を担うとしている。

 足下では経営状況の改善に引き続き努めていくとし、業界全体を俯瞰すると、顧客層の高齢化、環境規制への対応などの課題を抱えており、パワースポーツ事業の成長に向け、電動化や先進安全技術などの共同開発や機能部品の共有化などを通じて業界内での連携を強化し、市場の活性化に努めていく。

 一方で汎用エンジンを含む同事業は、精密機械・ロボット事業との連携により量産型事業における経営資源の融通、油圧機器・汎用エンジンでの農機・芝関連市場における連携に加えて、ロボット・リモート技術を取り入れるなど、近未来モビリティー開発なども進めることで、新たな事業機会の獲得に取り組んでいくとしている。

船舶海洋とエネルギー・環境プラントの事業統合

 船舶海洋の商船事業においては、坂出工場の事業規模を絞り込みながら、ガス関連船を主体として事業再建を推進してきたが、原油価格低迷の長期化の影響などもあり、事業環境は極めて厳しい状況。一方、近年、CO2を排出しないクリーンエネルギーとして水素への注目が世界的にますます高まっており、水素エネルギーの利活用に早くから取り組んできた同社の強みを活かせる機会が急速に広がりつつあるという。

 現在、船舶海洋部門で液化水素運搬船、エネルギー・環境プラント部門で水素ガスタービンや水素貯蔵タンク、水素液化システムなどの開発に取り組んでおり、両事業の統合により経営資源を集中し、水素エネルギー分野における リーディングカンパニーとして、水素社会実現に向けた取り組みを加速していくこととした。また、両事業が保有する燃料供給システムや自律運航船などの舶用推進技術を融合することで、マリンエンジニアリングの高度化を図っていく。

 坂出工場については、当面LPG運搬船などの建造を継続しながら、液化水素運搬船をはじめとする水素関連 製品の開発・製造・エンジニアリングの拠点として再編していくとともに、その広大な用地を利用して、新たな事業拠点 としての活用も検討していく。

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