ニュース

ピレリのクルマと通信するタイヤ「Cyber Tyre システム」 マクラーレンの新型「アルトゥーラ」に初の標準装備

2021年2月17日(現地時間) 発表

ピレリのセンサーを備えたインテリジェントタイヤ「Cyber Tyre システム」が、マクラーレン「アルトゥーラ」に初めて標準装備

 ピレリは2月17日(現地時間)、センサーを備えたインテリジェントタイヤ「Cyber Tyre システム」が、マクラーレン「アルトゥーラ」に初めて標準装備されたと発表した。

 このCyber Tyre システムでは、安全に走行するために必要なさまざまなデータをタイヤが収集し、車両のコンピュータ・ソフトウェアへ伝達。ハイブリッド・スーパーカーのアルトゥーラにセンサー付きタイヤのテクノロジーが装備されることで安全性がさらに高まり、個々のドライバーの運転スタイルを学習する機能を兼ね備えることもできるという。

 Cyber Tyre システムは、いわゆるタイヤの「パスポート」として、クルマやドライバーにウィンターやサマーといったタイヤの種類、タイヤに表示された空気圧、ロードインデックス、スピードレーティング、さらには実際に走行中のタイヤの温度や空気圧といった多くの情報を提供するとのこと。

タイヤに直接センサーを搭載。リアルタイムでタイヤの状態を管理

 ピレリのCyber Tyre システムは、安全に走行するために重要なタイヤの温度や空気圧を常にモニターし、リアルタイムに情報を提供。センサーはホイールではなくタイヤに直接搭載しているため、従来のバルブに付いたセンサーと比べて、より高い精度の情報を提供することが可能となる。センサーからのデータは、車両の制御システムに統合されているピレリが開発したソフトウェアで処理され、それらの情報の一部は、クルマのダッシュボードにあるセンターディスプレイで見ることができる。

 またその他にも、常時タイヤの走行状態を正確に車両の制御システムへ伝えることができるため、安全に走行を続けるためにタイヤの空気圧をチェックする必要があることをドライバーに警告することも可能。サマータイヤをウィンタータイヤに交換した場合、規定の最高速度が変わるため、システムは装着されたタイヤが最高速度まで到達すると、ドライバーに警告するという。

カーメーカーごと、車両の性格に合わせた機能設定が可能

 Cyber Tyre システムの機能はカーメーカーによって車両モデルごとに選択され、マクラーレンの場合は、いくつかの機能がレーストラックでの走行用に特別に選択されているという。例えば、Cyber Tyre システムによって、ドライバーは各々のドライビングスタイルに基づき、トラックでのパフォーマンスを向上させるためにタイヤの空気圧を調整でき、その結果、受信するアラートもドライバーごとに変化。そして、タイヤが最適な温度に達した時点でドライバーに通知することが可能なことから、ドライバーは適正なウィンドウにアクセスし、車両とタイヤパッケージから最大限のパフォーマンスを引き出すことができるという。また、タイヤを冷やす必要がある時も知らせてくれるため、あたかも“的確な指示を与えてくれるレースエンジニアが同乗している”ようなものとしている。

 ピレリのエンジニアは、マクラーレンのエンジニアと協業でアルトゥーラ用にフロント235/35ZR19、リア295/35 R20の「P Zero」タイヤを開発。このタイヤは非対称パターンを採用して優れたブレーキ性能を提供し、どのような走行状態にあっても車両の挙動をコントロールして、特にウェット状態で優れた性能を発揮するという。P Zero Corsaは、一般道と特にレーストラックを走行するために開発されたタイヤで、モータースポーツで培われたコンパウンド技術が採用されており、ウィンタータイヤとしては、アルトゥーラ専用に開発されたコンパウンドとトレッドパターンを採用した「P Zero Winter」が、P Zero サマータイヤに近い性能を発揮するとした。

自動運転に向けた未来のタイヤを具現化

 ピレリ Cyber Tyre システムは、未来のタイヤを具現化しているといい、このシステムを採用することで、グリップの低下、ハイドロプレーニングの発生といった危険な状態を検知、あるいは予測することができるため、車両の制御システムが即座に対応することができるという。

 今後の取り組みとして、タイヤが他のクルマやまわりのインフラとコネクテッドされることを目指していくとのこと。ピレリは、2019年11月に他のタイヤメーカーに先駆けて、センサー付きインテリジェントタイヤによって5G ネットワークに路面状況の情報を提供することに成功している。

 また、インテリジェントタイヤシステムは常に進化を遂げていると同様に、自動運転技術も進化を加速。現状では、路面の状態や天候条件によって得られるグリップレベルをドライバー自身が確認しているが、今後は徐々にタイヤにその役割が移っていくとされ、滑りやすい状態になった時に、クルマが自動的に減速し、安全性を高めるためのドライバー・エイドが作動するようになるという。また、車両同士のコネクテッドが実現すれば、1台のクルマが他の自動運転のクルマに差し迫った危険を警告することもできるようにもなるとして、クルマの部品の中で唯一路面に接しているタイヤによってもたらされる情報が、自動運転技術の向上に貢献するとしている。