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トヨタ 豊田章男社長、「e-Palette」とパラリンピック選手の接触について「トヨタイムズ放送部」で現状説明 可能な限り情報開示

2021年8月27日 発表

トヨタイムズ放送部に緊急出演し、eパレットと選手の接触について語るトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏

 トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏は8月27日、同社のオウンドメディアである「トヨタイムズ放送部」に緊急生出演。8月26日14時ごろ発生した同社の自動運転車「e-Palette(eパレット)」とパラリンピック選手の接触に関して、現状話ができることについて語ったほか、放送後にオンラインによる会見を行なった。

 豊田社長によると、今回の接触はT字路において発生。eパレットが右に曲がっていく際に横断歩道手前で、右に曲がる途中で一旦停止。再スタートした際に視覚障害の選手との接触が発生したという(ただし、接触が発生したかどうかは警察当局が調査中)。その接触により選手が転倒、その後選手は徒歩で帰り精密検査などを行なっている。

キャプショントヨタイムズ放送部 8/27「トライアスロンのトヨタ7」

 このeパレットは右に曲がる際に、オペレーターがマニュアルモードで発進を指示。eパレットは自動運転車ではあるものの、現段階の自動運転車であるため、当然ながらマニュアル運転モードを持つ。ただし、そのマニュアル運転モードは、ステアリングホイールやアクセル・ブレーキペダルで操作するクルマではなく、ジョイスティックで操作する方式となっている。

 オペレーターは、このジョイスティックでT字路の右折を指示。eパレットはT字路で右折をはじめ、横断歩道手前一旦停止。再度スタートしたときには自動運転モードに入っていたのだとトヨタ自動車はいう。

eパレット
eパレットの操作部。ジョイスティックで操作する

 この右折を行なったT字路には、外に誘導員がおり、横断歩道に近づいてくる選手を認識していたものの、止めるまでには至らなかった。この選手は視覚障害者であったため、eパレットを認識できなかったものと思われ、映像を見た豊田章男社長によると時速1km~2kmで右折していたeパレットと接触(接触については当局が調査中)した後倒れ、その後起き上がって歩いて立ち去ったとのことだ。

 eパレットは車外映像を撮影しており、それらの映像は当局に提出しており、なにがどのように起きたのかは今後精査されていく。現在、分かっているのは、eパレットが右折時に歩行者と接触(するほどの近さ)になってしまったことと、その右折時には右折指示を受けての自動運転モードであったことになる。

 eパレットは選手村の足として用いられており、現状の全面運行停止が続くと不便なのは事実。しかしながら、今回の案件ついての調査・解析は必要であり、運行再開には何らかの対策を必ず行なわなければならないだろう。

 豊田章男社長は、すぐできる対策として、電気自動車のため静かなeパレットが出している警告音の音量を2倍にするなどは可能と語り、私有地である選手村の管理者、委員会、そして警察当局と話していくという。

 また、今回の接触の原因としては、ジョイスティックのある位置がeパレット内の左側にあり、eパレットは箱形のため死角に入っていた部分があるのではないかと説明。この死角については、eパレットの運行ルートのどこでどのような死角が発生しているのか、確認していくことが必要という。ただ、誘導員、オペレーターが固定されていない運用がされているなか、その死角情報をすべての誘導員とオペレーターが共有するのは難しいかも知れないとも語る。

 いずれにしろ、パラリンピックの会期は9月9日まで。検証にはある程度の時間も必要となるため、eパレットの運行を再開するためには、トヨタ自動車も運営側も相当な努力が必要だろう。

 豊田章男社長は、開示可能な情報については「トヨタイムズ放送部」などで積極的に開示していくと約束。プライバシーなどの問題については開示が難しいかもしれないが、なぜこのようなことが起きたのかという技術的な側面については、開示されていくだろう。

 オリンピックとして運営されていたときは、このようなトラブルのなかったeパレットだが、パラリンピックでは詳細はまだ不明ながらも自動運転モードでの問題が発生してしまった。その際にすぐに豊田章男社長自身がオウンドメディアに出演し、オンラインで会見を行なうなど積極的にこの問題に取り組み、情報を出していきたいという姿勢を見せている。

 現時点での疑問は、eパレットにはLiDARなどを使って周囲の情報を取り込む機能があると思うのだが、それがどう判断し、クルマの動きが制御されていたかなど多数ある。今後、情報が開示されていくなかで、詳しいことが明らかになっていくだろう。