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3年ぶり開催の女神湖氷上ドライブ 最新スタッドレスタイヤ、横浜ゴム「アイスガード7」でチャレンジ!
2022年1月22日 10:15
3年ぶりに開催された「2022 iceGUARD 7&PROSPEC Winter Driving Park」
いつかは絶対に参加したい!と思っていた、長野県 女神湖の氷上ドライビング体験。なかでもプロスペックが主催するドライビングレッスン「Winter Driving Park」は、ラリードライバーとして活躍していたことでも知られる日下部保雄氏がプロデュースし、プロレーサーらがインストラクターを務めるイベントということもあって、毎年予約争奪戦になるほどの人気だ。
ところが、2020年は暖冬で湖面に十分な氷が張らず開催を断念。2021年はご存じのとおり新型コロナウイルスのまん延で中止。2019年の開催を最後に2年連続で実施されていなかった。しかし、2022年は「2022 iceGUARD 7&PROSPEC Winter Driving Park」として3年ぶりに復活し、感染防止対策を万全にしたうえで満を持して開催されることに。念願の氷上ドライビングをいよいよ体験できることになった。
今回イベントに参加するにあたって、筆者所有のホンダ シビックハッチバック(FK7、FF車)に装着したのは、横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ「iceGUARD 7(アイスガード セブン)」。適合サイズは「235/40 R18 95Q」で、トレッド中央にセンターリブが追加されているパターンとなる。「アイスガード史上最大の接地面積とブロック剛性」をうたい、氷上における制動力を14%、発進力を15%、旋回性を7%、それぞれ高めているという7世代目だ。
その性能が果たして女神湖の氷上や雪上でどれだけ発揮してくれるのか……。期待と不安で、当日は現地近くのホテルで朝4時に目が覚めてしまう始末。ワクワクを抑えきれないなか、道路に積もった雪を踏みしめつつ女神湖に向かった。
いよいよ氷上走行! ──の前に、頭に入れておきたい心構えと準備作業
氷上や雪上の前に乾いた舗装路面でのタイヤインプレッションをお伝えしておくと、アイスガード7に交換して何よりも印象的だったのは、サマータイヤとの変化の少なさ。一般道の速度域であればタイヤノイズのレベルは同程度。安定感も路面のギャップの感じ方も、それまでに履いていたサマータイヤと驚くほど変化が少ない。「アイスガード史上最大のブロック剛性」といううたい文句にもうなずける。
速度域が上がる高速道路では、粗い路面やギャップで少し角が取れたような感覚があって、低くこもったようなノイズが増えたかな、となんとなく思うくらい。あとは、ステアリングを軽く切ったときの反応がほんのちょっぴりマイルドになったように感じるけれど、東京から長野までの片道200km近くの高速走行では違和感も不安もなく、スタッドレスタイヤの進化具合に終始感動していた。
そして1月13日、開催当日の女神湖付近は積雪路面で当然のように氷点下。しかもほとんどの時間帯で雪が舞い、吹雪いて視界がほとんどなくなるようなタイミングもあった。標高1500m超に位置する真冬の高原だけに、頭のてっぺんからつま先まで、しっかりした防寒装備は必須だ。
受付開始は朝7時。30cm厚にまで氷が成長したという女神湖のガチガチに凍った湖面へクルマを進める前に、同イベントで必ず行なっているのがクルマのボディ下まわりのスチーム洗浄だ。付着している汚れなどが氷上に落ちると、雪解け後に湖の水質に悪影響を与えるおそれがあるので、あらかじめきれいに落としてからの入場となる。
洗浄が完了して、所定の位置にクルマを停めたあと、開会式が始まる前までにはドライバー側にいくつか心構えや準備作業も必要だ。1つは氷上に放置していると凍結するおそれがあるので、できるだけサイドブレーキをかけずに停車すること。AT車ならパーキングに入れるが、筆者のシビックハッチバックはMT車なので、サイドブレーキを解除するときはギヤを1速に入れ、勝手に動き出さないようにしておく。
また、万一コース外の雪に突っ込んでスタックしてしまったときのために、少なくとも車両後部に牽引用のフックを取り付けておく必要がある。恥ずかしながら、筆者はシビックハッチバックのどこに牽引フックの取り付け箇所があるのか把握していなかったため、その場でマニュアルを読んで初めてその存在を知った。
マニュアルによれば、車両後部左側のバンパーを取り外すとねじ穴があるので、そこに車載工具に含まれているフックをねじ込む、とのこと。バンパーの取り外しには、いわゆる「内張りはがし」のようなレバー状のツールがあると便利なので、常備しておくと良いだろう。今回は少し前にドライブレコーダーの配線をするときに購入したものが役に立ってくれた。
“2秒先”を考えた操作が鍵になる「ブレーキング&スラロームエリア」
女神湖の氷上には、例年大まかに3つのエリアが設けられる。1つは直線パイロンスラロームと急制動を試せる「ブレーキング&スラロームエリア」。次に1本のパイロンを中心に定常円を描いたり、2本のパイロンで8の字走行したりできる「アクセルワークエリア」。そして、複数のコーナーからなる走行コースの「ハンドリングエリア」だ。
参加者は3つのグループに分けられ、各グループがあらかじめ決められたスケジュールで走行と休憩を繰り返す。1回の走行時間は40~50分間で、そのなかで自由にエリアを行き来して走行できる。1グループあたりの1日の走行時間は計3時間。たっぷり走れるうえに、1日の最後には、それまでの走行で学んだことを活かす“レース”も行なわれる。
開会式で大まかなルールや走り方のコツなどの説明があり、それが終わるとすぐに走行開始。初参加の筆者は勝手が分からなかったので、まずは前方のクルマにならって「ブレーキング&スラロームエリア」へ向かった。スピードを徐々に乗せつつ、直線状に配置されたパイロンにぶつからないよう、かつ大きく外れることもないように蛇行し、最後は目標となるパイロンで停車する、という流れ。
こうした氷上での走行経験がない筆者は、のろのろと1つ目のパイロンの左側を通過したところで、次のパイロンの右側を狙ってステアリングを回す。対応が後手後手にまわってつじつまが合わなくなる、みたいなところがこのスラロームエリアの難しさ。どうにかして狙ったポイントを通過できるような姿勢を作るために、ステアリング操作とアクセルON/OFFを細かく調整する必要がありそうだな、と感じた。
このエリアのスタート地点で見守っていたインストラクターの森岡氏と小西氏からは、どうしても対応が遅れがちになってしまうことに対して、「2秒先を考えた操作を心がけるのがいい」というアドバイス。パイロンを通過してから、あるいはその直前からステアリング操作しても間に合わない。極端に言えば、パイロンを通過した次の瞬間にはもう次のパイロンの出口に向けてステアリングを切る、くらいの気持ちで操作した方がいいようだ。
速度にもよるとはいえ、“2秒前”の段階から次に向けた操作を始めるのは、その時点でまだ車体姿勢が十分に作れていない感覚もあって、かなり勇気がいる。でも、もし間違った操作でコントロールを失ったとしてもコース幅には余裕があるので、よほどのことがない限りコースアウトすることはない。パイロンにぶつかったとしても車体へのダメージはゼロだから、安心して“無茶”できる。氷路面の滑りやすさ、曲がれなさをとりあえず確かめてみる、という意味では、この「ブレーキング&スラロームエリア」はもってこいだ。
タイヤではなくエネルギーの向きを変えることを意識したい「アクセルワークエリア」
次にチャレンジしたのは「アクセルワークエリア」。ここでは4台が同時に走行できるよう4つに区分けされ、2箇所がパイロン1本の定常円走行用、もう2箇所がパイロン2本の8の字走行用となる。そのうえで8の字の1箇所については、走行中にインストラクターによるアドバイスを無線で聞けるようにしていた。感染防止の観点から、以前は行なっていたインストラクターの同乗走行を取りやめたことの代替策だ。けれど、実際に横に座って筆者の運転をチェックしているかのごとく、指示は的確だった。
筆者はこのエリアでの走り方が、最初、正直言って全然分からなかった。たとえばほかの四輪駆動車は、車体を中心のパイロンに向け、時計の針のようにその周りをきれいにドリフトしながら定常円走行していた。しかし自分のFF車だと、そんなカッコいい走りができるイメージがもてない。サイドブレーキを使うことでリアを滑らせ(頭をパイロンの方へ)向き変えする、というテクニックもあるが、電子式のサイドブレーキであるシビックハッチバックは前後輪ともロックしてしまうのでその手も使えない。
ただ、この氷上ドライビングは、いかにカッコよく走るかは目的の1つであったとしても、最も重要なことではない。あくまでもどんな操作をすればクルマがどう動くのか(もしくは動かないのか)、それを体感して楽しみながら学ぶことが第一。ドリフト走行はたしかに派手だし、そのなかで学べることももちろん多いだろうけれど、自分のクルマがFF車なら、FF車ならではの特性を理解して、どう対処しながら走るのがいいのか、というのを知ることが大切なのだ。
と、インストラクターの方々が話していたそういった基本的なことを忘れ、頭の中では美しいドリフトをイメージし、でも実際は滑って曲がらないのにただただ懸命にステアリングを切るだけの筆者。それを見ていたインストラクターの斉藤氏は、「外側から丸く、回し込むようなイメージで旋回を始めるとフロントのグリップが感じられると思う。直線的に入ってステアリングを素早く切っても、慣性で真っ直ぐ進む力が残ってしまう。穏やかに旋回してエネルギーの向きを変えることが大事。タイヤの向きというより、エネルギーの向きを変えることを意識しよう」と無線で教えてくれた。
さらに、「FF車は操舵と駆動の両方を担っているフロントタイヤの負担が大きい。グリップしているときは駆動を抜く(アクセルを緩める)ことで、よりスムーズに旋回しやすくなる」とも。ドリフトが難しい車両でも、そのクルマなりの効率的な走らせ方がある、ということにそこでようやく気付く。ほかの参加者のきれいな走りを参考にしたくなるところだが、車種が違えば走らせ方も変わってくる。自分のクルマの性格を、自分の感覚で把握して操れるようにすることが、何よりも重要なのだ。
ドライ路面での“セオリー”から外れることも試したい「ハンドリングエリア」
ところでこの女神湖の凍結路面、コース設営にあたってある程度表面をならしているとはいえ、大部分は湖面が自然に凍っただけのものなので、スケートリンクのようなフラットな路面ではない。至るところに細かい凹凸があるし、上に雪が載って圧雪状態になっている部分もある。ステアリングが効きにくいツルツルの箇所もあれば、引っかかりを感じるところ、アイスガード7本来の性能を活かしてきっちりグリップさせられるところなど、路面のμはまちまちだ。
3つ目の「ハンドリングエリア」では、そうしたポイントポイントによって異なる路面μの如実な変化を体感しながら走れるコースになっている。それは言い換えると、グリップする場所を選んで走ることが求められる、ということでもある。
自分ではオーバースピードとは思えないような速度でも、場合によっては氷路面のコーナーを曲がりきれずコースアウトする。適切な操舵やアクセル・ブレーキ操作が不足していれば、ステアリングをただただ切るだけでは向きが変わらず、コース外にまっしぐら、ということになりかねない。
曲がらないと焦ってステアリングをどんどん切ってしまいがちだが、インストラクターの片岡氏からは「それが逆にマイナスになる。曲がらないときは反対にステアリングを戻すくらいの気持ちでやると、意外とグリップしてくれることもある」とアドバイスをいただいた。
また、コースを速く走り抜けるためには、「セオリーではアウトインアウトだが、こういう路面ではそれが正解とは限らない。アウトアウトアウトがいいかもしれないし、インインインやインアウトアウトがいいかもしれない」とのこと。さらには日下部氏からも「特にFF車はフロントを流さないことが大切」とも指摘され、そのためにはコース上のグリップする箇所をいかに見極められるかが鍵になってくるようだ。
こうしたテクニックは氷上のコースに限ったものではなく、公道で活かせる部分も多い、と日下部氏。たとえば一般の雪道では、グリップさせやすい箇所や滑りやすい凍結箇所など、路面の状態が混在していることがある。それをしっかり目で見て、あるいはタイヤやステアリングから伝わってくる感触で、的確に判断できれば間違いなく安全運転につながる。氷上での走行体験は、その判断ができるようになる貴重な学びの場、ということを筆者自身、改めて実感した。
日下部氏は、「ハンドルを切れば曲がるわけじゃないし、ブレーキを踏めば止まるわけじゃない、ということに気付ける。一方で、雪が滑るものじゃないということも分かる。いろんな意味でクルマやタイヤの限界域を低速で体験できる」のが、一般的な(高速域での挙動を学べる)サーキット走行では得られないこのイベントのメリットでもある、と付け加えた。
公道で失敗する前に、「Winter Driving Park」で“失敗”を
トータル3時間の体験走行が終わり、最後に行なわれたのはグループごとの“レース”。といっても、サーキットのように全車一斉にスタートして争うようなものではない。1つは定常円のエリアに作成した小さなオーバルコースを使った勝ち抜き戦の「カーチェイス」で、2台が同時に走行して先に3周した方が勝者(相手に追いつくか、相手がスピンした場合も勝ち)となるもの。もう1つはハンドリングエリアを使った「タイムアタック」で、こちらは1台ずつタイム計測してグループごとの優勝者を決める。
もちろん筆者も勝利を狙って挑んだのだが、カーチェイスでは相手のミスでなんとか初戦を突破したものの、2回戦ではブレーキを使いすぎてエンストさせてしまい、追いつかれてあえなく敗退。タイムアタックは、体験走行を含めてもベストな走りができたと思ったが、先ほどのハンドリングエリアの動画を見るとだいたい2分5秒でゴールしており、グループトップの2分00秒(最速は1分55秒)には及ばず……。残念な結果だったけれど、やりきった感もあり、満足度の高い1日を過ごすことができた。
完全な氷路面だと高い速度であれば滑ってしまうような状況になるけれど、わずかでも雪が載った箇所を踏めれば驚くほどグリップして力強く旋回していけるんだな、ということがしっかり頭と身体にインプットできた。さらに、雪部分に比べれば滑りやすいといえる氷の部分でも、着実にタイヤが氷を踏みしめて仕事をしているのがステアリングやシート、ペダルなど全体から伝わってきて、そのインフォメーションを元に、ドライバーがすべき操作も徐々に理解できるようになった。
最初はやみくもにステアリングやアクセルを使いあたふたしていたように思うが、イベント終盤にはそんなことも少なくなり、曲がる・止まるという基本操作を氷の上でも実践できたように思う。これはアイスガード7の性能の高さのおかげでもあるし、その性能を前提に、安全に“無茶”や“失敗”をしながらクルマの操作と動きを学べる「Winter Driving Park」だからこそ、でもある。