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日産、オンライン入社式開催 内田社長「失敗を恐れず勇気をもって積極的に行動して」

2022年4月1日 開催

オンラインで入社式を開催

 日産自動車は4月1日、オンラインで入社式を開催した。この入社式には大卒のエンジニア系250名、事務系43名、高卒・専門学校卒322名の計615名が参加するとともに、日産自動車 代表執行役社長兼CEOの内田誠氏が出席してあいさつを行なった。

 コロナ禍の影響により、同社がオンラインで入社式を実施するのは今回で3回目。入社3~6年目の若手社員が入社式プロジェクトを率いて実施するというユニークな試みで、内田社長からのメッセージ、新型BEV(バッテリ電気自動車)「アリア」に関わる4年目先輩社員とのパネルディスカッション、内田社長への質疑応答を中心に展開された。

新入社員に向け「失敗を恐れず、勇気をもって積極的に行動してほしい」と語った内田社長

 式の冒頭にあいさつを行なった内田社長は、「新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。多くの選択肢がある中で、日産を新たな挑戦の場として選んでいただいたこと、大変うれしく思います。新型コロナウィルスはこれまでの当たり前を一変させ、私たちの生活に大きな影響を与えています。しかし皆さんはその変化を受け入れ、常に前を向いて進んできた、その努力があったからこそ今日の日があります」。

「自動車業界は今、100年に1度の変革期にあります。待ったなしの気候変動や、さまざまな社会課題に直面する中、お客さまのクルマに対するニーズや考え方も大きく変化しています。そうした中、私たちはこれからも日産ならではの価値をお客さま、そして社会に提供していく必要があります。課題に対する答えが、今までの取り組みの延長線上にないケースもたくさん出てくると思います。だからこそ、私たちは何も書かかれていない白紙の上に新しいビジネスを描ける力を磨いていく必要があります」。

「そのために、これから皆さんに心がけてほしいことがあります。それは『失敗を恐れない』ということです。業務にあたる中で皆さんは多くの失敗を経験するかもしれません。しかし、失敗を通して学べることはたくさんあります。そしてそれは必ず次につながっていきます。ぜひ失敗を恐れず、勇気をもって積極的に行動してください。私はそれこそが、情熱をもち、革新に挑戦し続けるという日産のDNAそのものだと思います」。

「日産は昨年11月に、長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』を発表しました。このビジョンに込めた想いは『日産という会社があってよかった』『日産のおかげで毎日がワクワクする』、そんな風に多くの方に言ってもらえる会社にすることです。その実現に向け、これから私たちが進む道は決して平坦ではないかもしれません。さまざまな困難や壁にぶち当たることもあるでしょう。しかし、熱意をもってチャレンジを続ければ、未来は必ず素晴らしいものになると私は信じています。ぜひ一緒にワクワクする未来を創っていきましょう」とコメントした。

アリアに関わる4年目先輩社員とのパネルディスカッション

 次に行なわれたアリアに関わる先輩社員とのパネルディスカッションでは、R&Dパワートレーン実験部の山野賢志さん、生産部門生産技術研究開発センターの高橋美樹さんが登壇してどのような仕事をしているかを紹介。BEVの航続距離開発やクルマの実験、データの解析などを行なっているという山野さんは「アリアの開発は現場レベルで部署の垣根を越えて総力戦で挑むこともありました。それだけ開発が大変だったクルマなので、お客さまに自信をもって“これいいクルマだよ”と言えると思います」と開発の苦労話を語るとともに、アリアを生産するニッサン インテリジェント ファクトリーなどで使われる自動生産技術の開発を担っている高橋さんは「現在目視で行なっている検査を自動化できないかということで、カメラを使った画像を処理してAIなどを使って自動化するということに携わっています」と職務について紹介。

パネルディスカッションに出席したR&Dパワートレーン実験部の山野賢志さん(左)、生産部門生産技術研究開発センターの高橋美樹さん(右)

 こうした入社4年目までの社員でも大きなプロジェクトに関われることについて、内田社長は「そうですね、日産にはお互いを尊重する風土があって、自由にチャレンジすることができます。そしてそれを後押ししてくれる上司であったり、仲間が身近にいます。ぜひ大きなプロジェクトや仕事に失敗を恐れずにチャレンジしていただきたいと思います」とエールを送った。

 また、仕事のやりがいについての質問に対し、山野さんは「開発で養った航続距離の数字はカタログにもかなり目立つ形で表記されるので、そこに非常にやりがいと責任を感じます。航続距離というのは商品、とくにEVでは魅力品質の1つであるので、そのカタログ値を計測する業務は非常に責任感が重くて緊張感がありますが、その中でもお客さまに胸を張って“このクルマよく走るよ”っていえるような航続距離の目標を達成したときにすごくやりがいを感じます。アリアはアライアンスで開発する初めてのEVだったので、日本とフランスで風土の違いなどで仕事するのが非常に大変でしたが、お互いの考え方が融合したクルマが出来上がったなと感じています」、高橋さんは「私は人が行なっている行程、作業というのをどんな技術で置き換えられるのかを検討したり、アイデアを考えていくというところがとても面白くてやりがいを感じています。具体的には人が五感を駆使して行なっている作業、組立であったり検査だったり色々ありますが、そういったものを例えば人の目の代わりと考えると、どういったカメラを使って機械に置き換えたらいいのか。それからカメラで撮った画像のどういった特徴を抽出してどう判断するか、そういったところを考えるのが非常に面白いです」とコメントした。

質疑応答では内田社長の新入社員時代について、日産自動車として目指したい姿といった質問があった

 一方、ユニークな試みだった内田社長への質疑応答は、あらかじめ用意されたA~Dの4つの質問の中から投票数が一番多かったものに内田社長が回答する形式で実施。以下の4項目から選ばれたのはD。

A:日産が他社と比較して優れていると感じているところはどういったところでしょうか?
B:今後のCASEの戦略で、電動化の次に大切なのは何だとお考えですか?
C:今後、自動車産業はどう変わっていくとお考えでしょうか?
D:日産自動車として目指したい姿を教えてください。

 Dの質問に対し、内田社長は「冒頭に話したとおり、昨年11月に長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』を発表しました。日産は人々の生活を豊かにしたい、これがわれわれの会社の存在意義になります。そのためにわれわれはイノベーションをドライブし続けるというのを会社の存在意義にしています。やはりわれわれは人々の生活を豊かにしたいというのを日産として社会に提供していきたいし、人々に提供していきたい。簡単に言ってしまうと、日産自動車が必要だとお客さまから言われたい、また社会から言われたい。そういった会社にしていきたいと思います。そのために日産自動車というのは非常に自由活発な色々なイノベーティブな意見、多様性もそうですし、そういったものをどんどんと社会に出していける、これがわれわれの他社と比べたときの差別化だと思っているので、ぜひ僕は皆さんと一緒に新たな日産の価値をどんどんとお客さまに提供しながら本当に日産自動車があってよかったと言ってもらいたい。これをやっていくことが企業としての存在意義にもつながるし、社会における日産がある意味につながるので、大きくいうとそういうことです。例えば電気自動車で言えば11年間も販売している会社なのです。こういう会社はないんです。そこから得たノウハウをこれから社会にどんどん提供していきたい、まさしくアリアがその代表であり、これからは軽自動車のEVも出てくる。従業員の皆さんにはそういったものを作っていける喜びとか、日産で働くプライドをどんどん会社の中で作っていければと思います」と回答した。

 また、内田社長から新入社員への逆質問もあり、1つは「日産自動車に入社する決め手はなんでしたか?」というもので、これには「電動化とスポーツカーの両立」「グローバルに働ける姿勢」「日本を代表するGT-R!」「面接をしてくれた方々が全員雰囲気がよかったです。こういう会社なんだろうなと思ったからです」「小さいころからR34型スカイライン(GF-ER34)が好きでそこからRBエンジンを好きになり、次に日産に興味を持ち始めてどうせなら自分の好きな車種を作っている会社に行って実際に自分の手で携わってみたいと思い入社を決めました」といった声があった。

 もう1つの質問は「日産でやりたいこと、または日産でお客さまに届けたい価値は何ですか?」というもので、これには「クルマに乗る楽しさを届けたい」「打倒テスラ!!!」「運転するワクワクを届けたいです!」「シルビアを復活させることです」「圧倒的な技術力を基に他社に負けないクルマを開発したい」などといった力強い言葉が寄せられている。

 なお、グローバル本社ギャラリーで入社式に参加した津村康史郎さん、山下大空さんに話を伺ったところ、両名とも11月に行なわれる第60回技能五輪全国大会に参加するとのことで、津村さんは「技能五輪の自動車板金部門で金メダルを獲って、技術の日産をPRする、そして自分のスキルも世界一を目指したい」、山下さんは「技術の日産に入社し、自分の好きなプログラミングを中心に技術力を磨いていき、技能五輪(電子機器組立)で日本一、世界一を目指して頑張っていきたい」とそれぞれ抱負を語ってくれた。

入社式に参加した津村康史郎さん(右)、山下大空さん(左)
入社式プロジェクトの企画メンバーの皆さん。大役お疲れ様でした