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2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー、10ベストカー試乗会場で各モデルの注目ポイントを直撃インタビュー【国内メーカー編】

「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」10ベストカーの試乗会が袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された

 12月8日に「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考会・表彰式が行なわれ、この場で“今年の顔”となるイヤーカーが発表される。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーはその年を代表するクルマを決定するイベント。選考対象となるクルマは2021年11月1日~2022年10月31日に発表または発売された乗用車で、今回は48台がノミネート。その中から最終選考会に進む上位10台の「10ベストカー」が選出され、11月24日に10ベストカーの試乗会が袖ケ浦フォレストレースウェイで開かれた。

 今回の10ベストカーは第10位の指名数が同数だったため、日本カー・オブ・ザ・イヤー実施規約に則り11台が選出された。選出されたのはスズキ「アルト」、トヨタ「クラウン」、日産「エクストレイル」、日産/三菱自動車「サクラ/eK クロス EV」、日産「フェアレディZ」、本田技研工業「シビックe:HEV/シビックタイプR」、マツダ「CX-60 e-SKYACTIV D」、ビー・エム・ダブリュー「iX」、ヒョンデモビリティジャパン「IONIQ5」、ジャガー・ランドローバー・ジャパン「レンジローバー」、ルノー・ジャポン「アルカナ」。

 本稿ではこの10ベストカーに選ばれた各メーカーの開発担当者に製品特徴の3つのポイントを挙げてもらったので、そのインタビューの内容を紹介する。今回は国内メーカー編ということでアルト、クラウン、サクラ/eK クロス EV、シビック、CX-60をピックアップ!(エクストレイルとフェアレディZについては担当者と出会えませんでした、ごめんなさい)

12月8日 16時30分よりライブ中継 2022 - 2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会

アルト

アルト

 スズキ「アルト」は2021年12月に発売された軽乗用車。1979年5月に運転のしやすさ、使い勝手のよさ、経済性の高さなどを兼ね備えた実用的な軽自動車としてデビューし、発売以来、時代にあわせて機能や性能を進化させ、42年、8代に渡っての国内累計販売台数は約526万台と、スズキを代表する軽自動車となっている。

 9代目となる新型アルトは、誰もが気軽に安心して乗れる、世代を超えて親しみやすく愛着のわくデザインを採用して内外装を一新。従来のR06A型エンジンとエネチャージの組み合わせに加え、R06D型エンジンとマイルドハイブリッドの搭載でさらなる低燃費を実現し、WLTCモード燃費では軽自動車トップの27.7km/Lを達成している。

 そのアルトについて、チーフエンジニアの鈴木猛介氏に聞いた。

スズキ株式会社 チーフエンジニアの鈴木猛介氏

――発売されてからちょっと時間が経ちましたが、ユーザーからはどのような反響がありますか?

鈴木猛介氏:そうですね。アルトが出て狙った通りの反響をいただけたかなと思います。先代も人気があったのですが、デザイン的にすごく親しみやすいとフィードバックいただいています。また、燃費はガソリン車としてもハイプリット車としても優れており、そういった経済性も受け入れていただいていますし、安全性もすごく評価いただいてるかなと思います。あと視界がいいというところで、乗っていて運転がしやすいという点がすごく評価していただけているのかなという実感があります。

――開発の段階で一番苦労された点はいかがでしょう?

鈴木猛介氏:1番難しかったのは軽量化の部分。先代より今回ボディが大きくなっており、ルーフの高さが上がっているのですが、エアバックを入れたりとか安全装備を入れなきゃいけない中で大きくしなければいけない。大きくすると重くなりますし、空力性能もわるくなるので、それをどうやって挽回するんだっていう点がこのクルマはすごく難しかったです。

――それはどうクリアしたのですか?

鈴木猛介氏:本当はもっと重くなってもおかしくなかったのですが、そこからボディ全体を丸く張った感じにしました。こういった曲面を持たせることによって、鉄板を薄くしても剛性感を出すといったことをデザインの中に取り入れて作りました。そういったところは早い段階から考えないとなかなかデザインにフィードバックできないので、そのあたりが難しかったですね。

――ちなみに車高はどのくらい上がったのですか?

鈴木猛介氏:50mm高くなりました。50mm高くしたことによって乗降時に頭をぶつける心配がなくなりました。そういったところは“気軽に乗る”というのがすごく大事なクルマなので、そういうことがあると「アルトはダメだ」となってしまいます。

――なるほど。今回9代目という形になると思いますが、長く作り続けていることへのプレッシャーというのはあったのではないでしょうか。

鈴木猛介氏:やっぱあります。「お前がアルトをわるくした」と言われてたら、それは良くないことなので(笑)。ただ、ここまでアルトがずっと長く続いているのは、やはりお客さまに評価されてきたからだと思います。アルトで評価されるポイントを守りつつ、次はどうやって進化させていくのかという挑戦ができるというのもあったので、そういった意味ではプレッシャーがありながらもすごくやりがいがあるというか、お客さまに次はなにをお届けするかというのを考えられるクルマなのかなと思います。

――アルトの価値で大事にされた点というのは?

鈴木猛介氏:特に大事にしたのは長く乗っていただくことがアルトではすごく大事だと思っていて、それは多くの方に乗っていただくだけではなく、免許を持たれる高齢者の方がどんどん増えてきていて、そういう身体的に衰えがあったりとか不安があったりする中で、「クルマに乗らないで」と簡単に言うわけにはいかない。その中でアルトはやっぱり安心して乗れるねっていうクルマにするというのが今回大きなテーマだったと思います。燃費をよくするというのは今まで通りの流れの延長でよくはなってるのですが、安全性にもっと目を向ける必要があると感じています。衝突、予防、あとは運転のしやすさといった安全性にも気を配るっているのが今回のアルトというのが先代とちょっと違う点だと思います。

――このご時世でガソリンモデルのスタートプライスが94万3800円、マイルドハイブリッドでも109万7800円というのがすごいです。

鈴木猛介氏:そこがぶれてしまうと、軽自動車じゃなくてもいいじゃんとなってしまうかもしれないので、やはり軽自動車の原点が何かというとお求めやすくて、軽くて、扱いやすい。そうじゃなきゃダメだと思っています。

――改めて新型アルトの注目ポイント3点を教えてください。

鈴木猛介氏:1番には誰もが手の届く価格でエコなクルマを選べるというのが大事なポイントだろうと思ってます。もう1つ目は安全性能で、これから長くこのクルマに乗っていただくためには必要なものなので、予防安全も衝突安全も性能を上げてきているのがポイントです。もう1つは愛着のあるデザインを目指していて、長くお乗りいただく中でライフスタイルが色々変わっていく中でもずっと隣にいられるクルマに仕上がったのではないかと思っています。

クラウン

クラウン

 7月に世界初公開された新型「クラウン」。これまでセダン中心だったがクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートという4つのバリエーションを持つ新時代のフラグシップモデルとして刷新された、衝撃作だ。第1弾としてクロスオーバーモデルを今秋に発売しており、価格は435万円~640万円。

 クロスオーバーモデルはセダンとSUVを融合させたパッケージで、これまでの概念にとらわれない、新たな価値を提供するクルマと位置付けられた。大径タイヤによる力強いスタイルとシンプルで上質なデザインを採用しつつ、ヒップポイントを高め、優れた乗降性と視界の良さを実現した。

 パワートレーンは2種類採用され、2.4リッターのデュアルブーストハイブリッドシステムを採用する「CROSSOVER RS」と、2.5リッターのシリーズパラレルハイブリッドシステムを採用する「CROSSOVER G」「CROSSOVER X」を基本に展開。いずれも4輪駆動モデルとなる。

 そのクラウンについて、チーフエンジニアの皿田明弘氏に話をうかがった。

トヨタ自動車株式会社 Mid-size Vehicle Company MSZ ZS チーフエンジニアの皿田明弘氏

――新型になって劇的な変化を遂げましたが、ユーザーからはどのような反響がありますか?

皿田明弘氏:見た目は変わりました。でも、変えることが目的だったわけではなくて、やっぱり「クラウンとは何か」というところから考え始めて、本当に原点に戻って歴史も色々見つめ直した中で今回は革新と挑戦というそのスピリットの部分をしっかりDNAとしてやっていく。今の時代でのいいクルマとは何かを素直に考えました。そんな中でクラウンらしさとはなんなんだろうか。最近で言いますと伝統っていうところがあったのですが、そのもっとコアな部分ってなんだろうっていうところを考えました。そういう意味で言うとコンセプトがガラッと変わり、先代から見た目は変わったのですが、その根っこにあるようなところはそう大きく変えたつもりはありません。

――歴代クラウンで培ってきた価値というのはどういうところなのでしょうか。

皿田明弘氏:例えばですがやはり快適性とか、乗り心地とか、静粛性とかですね。これは今までクラウンに乗り継いでいただいてるお客さまに言われた言葉なのですが、「大きく変えていくことも伝統だよね」というお言葉をいただくなど、そういうお声もあるのです。そういう新しいことに挑戦していくというのが、これまでクラウンに取り組んできた先達たちがやってきたことでもありますし、われわれはその部分はしっかり伝承しています。

――クラウンという歴史あるクルマを開発するにあたって苦労された点はいかがでしょう?

皿田明弘氏:クルマ1台を開発するというのは本当に多くの人のご協力、ご支援があって成り立つものでして、色々な壁があったというよりは新しい挑戦を多くの人に支えていただいたところが感謝という言葉では片付けられないです。本当に色々な人の思いが詰まってるという印象ですね。きっかけとしては、やっぱり先代のマイナーチェンジを従来の発想で提案したところから本気で考え直そうよって始まったので、そのときに原点を見つめ直し、形とか駆動とかにとらわれるのではなく、今いいものを作っていくというのを社内で提案していこうとなってからはすごく開発が早かったです。

――発表会では豊田章男社長の「セダンを考えてみないか?」という言葉が紹介されました。この言葉はセダンのみならず色々なバリエーションを考えてみないかという意味だったのでしょうか?

皿田明弘氏:今にして思えばこういうクルマを考えることができるようになった僕らがいて、だからこそ改めて本当の王道セダンを考えてみたらって言ってもらえたのかなとも受け止めてます。1番最初は先代のマイナーチェンジというかフェイスリフトですね。そこから大きく見つめ直すところから始めたので、こういうことが考えられるようになったからは、今まで勝手に内向きに制限してたものから脱却できた。だからこそあのワールドプレミアでもご紹介したようなさまざまな形を提案させていただいています。きっとこのステップがなかったらああいう提案にはならなかった。豊田章男社長をはじめ開発に携われてきた先輩方にも導かれたような気がしますね。

――新型クラウンでは2.4リッターと2.5リッターのハイブリッドが用意されました。その違いを端的にお教えください。

皿田明弘氏:2.5リッターはこれまで磨いてきた非常に効率の良いシステムで、走りの正しさということで加速感を出したりトルクを出したりで、今回はリアにもモーターを積んでいます。一方の2.4リッターの方はデュアルブーストと呼んでいるのですが、ダイレクトにエンジンとモーターとクラッチでタイヤを動かしていくシステムになり、これはもう純粋に乗って楽しくて気持ちのいい加速で、よりエモーショナルの部分を伸ばしているユニットになります。走りながら笑ってしまうような加速感が楽しめます。

 あと共通の話ですが、ハンドルを切ると今回後輪を操舵させていることによってスムーズに曲がれたり思うように動いてくれる。セダンから見るとリフトアップしているのですが、それでもしっかりフラットに走れるようになっています。

――なるほど。それでは新型クラウンの注目ポイント3点を教えてください。

皿田明弘氏:実はリフトアップしたことで乗り降りがしやすい。一緒に乗っていただく方にもその乗り降りのしやさをご提供します。またデザインについても若い世代のデザイナーとベテランのデザイナーがしっかりコミュニケーションしながら作り上げてきました。どこかに日本の美意識を入れたスタイリング、大きいタイヤを使いながら乗り心地のよさをいかに両立するかという点にはこだわりました。あと新しさを感じるデザインでありながらしっかりとフラットな走りを実現しているところですね。

サクラ/eK クロス EV

サクラ

 サクラとeK クロス EVは、日産と三菱自動車が共同開発した軽自動車タイプのBEV(バッテリ電気自動車)。日産と三菱自動車の合弁会社NMKVの企画・開発マネジメントのもと、日産の先進技術と三菱自動車の軽自動車づくりのノウハウを融合し、両社の得意とする電動化技術を結集した意欲作。BEVならではの滑らかで力強い走り、高い静粛性と良好な乗り心地を実現するとともに、先進の自動運転支援機能やコネクティッド技術などを採用しているのが特徴になっている。

 中でも新開発のEVシステムについては、総電力量20kWhの駆動用バッテリを搭載し、一充電走行距離は180km(WLTCモード)を実現。駆動用モーターの最高出力は47kW/2302-10455rpm、最大トルクはガソリンターボモデルの約2倍となる195Nm/0-2302rpmを発生するなど、力強い加速力も魅力の1つになっている。

 サクラは3グレードが設定され、価格は233万3100円~294万300円。eK クロス EVは2グレードをラインアップし、価格は239万8000円~293万2600円。

 サクラについてはグローバルデザイン本部の田勢信崇氏と渡邉和彦氏にお話をうかがった。

日産自動車株式会社 グローバルデザイン本部 第二プロダクトデザイン部 プログラムデザインダイレクターの田勢信崇氏
日産自動車株式会社 グローバルデザイン本部 第二プロダクトデザイン部 デザインマネージャー(エクステリアデザイン)の渡邉和彦氏

――サクラの反響について教えてください。

田勢信崇氏:全体的に軽自動車とは思えないぐらい質感が高く、軽離れした非常に品質が高いという点がお客さまからの反響としていただいています。われわれが開発をスタートした時も、軽自動車を作るというよりは小型EV、軽の枠というのを1回とっぱらってからスタートしました。そういった意味ではちゃんとその辺がお客さまにもきちんと伝わっているのかなと思います。

――デザイン面について、兄弟車のeK クロス EVもありますが差別化など苦労された点はありますか?

田勢信崇氏:軽自動車なのでボディサイズがものすごく限られています。このパッケージ自体はデイズとかなり酷似したものになっているのですが、その中でいかにダイナミックな感じや存在感を表現するかというところが1番デザインとして難しかった点だと思います。

 具体的なソリューションとしては、ドアのところにキャラクター線が走っていると思いますが、これが前後につけ抜ける1本の力強いキャラクターラインになっています。このキャラクターラインを長く取ることで伸びやかな感じに見せています。ヘッドランプから後ろまで1本で繋がってるような形で、なるべくボディを伸びやかに見せているというのが1つの特徴です。

 ボディサイドも大きなうねりでリフレクションを表現しているのですが、そういったところで小切れで切るのではなく、大きな単位で見せることでコンパクトなサイズなんだけども十分に存在感があるというところは、そこが1つの大きな要因になっています。

 そういう意味でデイズとはテーマが異なり、アリアと近い和のテイストがテーマになっています。なんですが、アリアとはまた違ったキャラクターラインを持ってきておりまして、そのあたりは渡邉から。

渡邉和彦氏:実はガラス面はデイズやeKワゴンで同じです。デイズやekワゴンは断面で抑揚をつけて力強さやダイナミックさを出しているのですが、サクラは1本の線をバーンと長く描き、フラットな面を作っています。見てもらうとフラットですが弱い感じはしないそうですよね。そんな風に感じていただけるようにデザインするのが苦労しました。

――難しいですね、シンプルな面だけど力強さも与えるっていう。

田勢信崇氏:われわれはそれをクワイエットダイナミズムと言っているのですが、電気自動車の動力性能はすごく静かですがものすごくダイナミックじゃないですか。凛とした静かな感じですが、実際はものすごいダイナミックっていうところを、BEVの動力性能とボディ形状がリンクできないかなと考えて作った形が今回のデザインになります。

――インテリアはいかがですか?

田勢信崇氏:インテリアではファブリックを全面に使い、これによって全体的にカフェみたいな空間性と上質さを狙っています。また全体のテーマが水平基調になっていまして、かつわれわれはモノリスと呼んでいるのですがディスプレイがフラットで、通常のクルマは上部に日差しがあると思うんですけども、そういった日差しがなくつるんとした1枚面になっています。これにより全体的に横通しの広さ感を演出しています。あとはベンチシートでも横通しの広がり感を出しています。

 もっとこだわりポイントを言うと、(ナビやエアコンの)操作スイッチというのはゴチャゴチャしがちなのですが、この辺りを黒い部分に集約させることでノイズレスでクリーンなシンプルな感じに仕上げ、あとはファブリックを全面にバーンと見せる狙いがあります。

 また、ホイールやエアコンファンのグラフィックなど至るところに日本の伝統工芸である「水引」のテーマが使われています。われわれアリアからデザインテーマとして「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」と一貫して言わせていただいているのですが、軽自動車は結構フラットなので、グラフィックとして使うことで奥行き感が感じられると思います。日本の伝統的な表現とものすごく相性がいいなと。それで水引のモチーフを使ってモダンに昇華させて取り入れています。

――デザイン面で注目ポイント3点を挙げるとするとどこでしょう?

田勢信崇氏:1番はやはり軽自動車離れした内装と外装の質感。そして電気自動車ならではの動力性能に合わせたデザインというのは、われわれの大きなチャレンジの1つだと思います。

eK クロス EV

 eK クロス EVについては三菱自動車工業 製品開発本部の貴志誠氏に聞いた。

――eK クロス EVの反響はいかがでしょうか。

貴志誠氏:そうですね、軽自動車EVなので、とても軽とは思えない登録車と同じような乗り味というか、軽を感じさせないというのがまずお客さまの声として上がっています。軽自動車ベースなので大きなバッテリは積んでないのですが、小さいバッテリでも実用的な航続距離を確保していますので、使い勝手としては日常のシティユースとしては十分だということです。

――開発段階で大変だった点をお聞かせください。

貴志誠氏:eK クロス EVですが、日産と三菱自動車の合弁会社であるNMKVという会社で開発しています。開発の主体は日産で、生産は三菱自動車という役割分担です。日産さんはリーフの技術を蓄積していまして、三菱自動車はi-MiEV(アイ・ミーブ)というEVをだいぶ前に出してて、電気自動車の技術は進んでいるというふうに自負しています。その中で共同で開発し、それぞれのノウハウを詰め込む作業があるわけですが、そこが苦労しつつもうまくいったのかなと思います。

 例えばモーターとかは三菱自動車由来のi-MiEVやアウトランダーをルーツとしたものを使い、バッテリについては例えばリーフをルーツとしたものを使うなど、それを軽自動車に合わせてうまく融合させるといったところがポイントになったと思います。

三菱自動車工業株式会社 製品開発本部 プロジェクト開発マネージメント部 シニアスタッフの貴志誠氏

――eK クロス EVの注目ポイント3点を挙げるとするとどこになりますか?

貴志誠氏:クルマのハードという意味でしたら、まずは軽自動車を全く感じさせない走りです。力強いけれどもスムーズ、かつガソリン車と一緒ですが室内が広いなど、そういう乗り味的なところはすごくいいと思います。

 実はi-MiEVの開発も行なっていたのですが、i-MiEVの時代はまだ電気自動車に対する認知度が低くなかなか普及しなかったのですが、やっぱり航続距離と価格、充電インフラなどがどんどん揃ってきたところで、今回のサクラとek クロス EVが“EV普及元年”という意味で今年を代表するクルマなのかなと思っております。

 あとは軽のEVということでシティユースにはジャストサイズ。性能的にもちょうどいいと思います。軽自動車のEVということで、バッテリ容量が20kWhと登録車の5分の1くらいの容量なので、ご自宅でも一晩でも満充電になりますし、急速充電器を使えば3~40分で80%以上入ります。

シビック

シビック

 7月に発売された「シビック e:HEV」(394万200円)は、新開発となる2.0リッター直噴エンジンと進化したハイブリッドユニットを組み合わせた高効率・低燃費な2モーターハイブリッドシステムのe:HEVを採用したモデル。開発のコンセプトは「爽快スポーツ e:HEV」で、シビックが持つ基本性能のよさはそのままに、進化したe:HEVによるスポーティで爽快な走りを新たな提供価値として目指した。

 パワートレーンは新開発の2.0リッター直噴エンジンを搭載。熱効率に優れたアトキンソンサイクルに加え、燃料をシリンダー内に直接噴射する直噴システムを新たに採用し、燃料を無駄なく燃焼させることで、従来のe:HEV用2.0リッターエンジンに対して高トルク化とエンジンモードでの走行可能領域を拡大した。これにより、低回転から高回転まで幅広い領域でエミッション(燃焼ガス中の有害物質)を抑制し、燃費や排出ガスクリーン性能、静粛性を向上させるとともに、ドライバーの操作にリニアに応える爽快な加速を実現した。

 シビックとしては、9月に「シビック TYPE R」(499万7300円)もリリース。新型シビック TYPE Rは、スポーツモデルの本質的価値である「速さ」と官能に響く「ドライビングプレジャー」の両立した究極のピュアスポーツ性能を目指した1台。ホンダ独自のVTECターボエンジンをさらに磨き上げることで、出力とトルクの向上を実現するとともに、運転に夢中になることのできるような痛快なドライビングフィールを追求。さらにTYPE R専用のデータロガー「Honda LogR(ログアール)」を搭載することで、新たなドライビングプレジャーを提供することに挑戦している。

 シビックについてはチーフエンジニアの山上智行氏にインタビューした。

本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター LPL チーフエンジニアの山上智行氏

――新型シビックの反響はいかがでしょうか。

山上智行氏:1番嬉しかったのは生活が楽しくなった、出かけるのが楽しくなったということをおっしゃっていただけたことです。それはシビックシリーズ全体に言えることですが、また乗りたくなるとか、いつまでも乗っていたくなる、そういうシビックにしたよういうのは開発の当初にみんなで話をしていました。その狙いに対して、お客さまにクルマをご購入いただいて、実際に家族と色々なところに行かれたりとか運転を楽しんだりして、すごく暮らしが豊かになる。出かけるのも楽しいという声は嬉しいですよね。

――開発時に苦労された点はいかがですか?

山上智行氏:そうですね、悩んでないことがないぐらい悩んだかなと思います。やはりシビックっていうのはホンダそのものだと思っています。シビックは今年50年周年になるのですが、歴代シビックそれぞれが姿を変えていますが連綿と受け継がれている人を中心とする部分、走りの楽しさや環境性能、あと使いやすさ。そういう部分がお客さまに受け入れられているのではないかと思います。全てを磨き上げるということに対して苦労しかなかったですね(笑)。

――ガソリン、ハイブリッドとありますが、それぞれ魅力があります。

山上智行氏:ガソリンモデルはシビックとしての1番目の入口というんでしょうか。MTモデルも今回ご用意しているのですが、若い方でMTを選んでいただく方が多くて、そういう意味でガソリンエンジンのベーシックなところを受け入れていただいたのかなと。また、ハイブリッドは将来の電動化みたいなところも見据え、環境性能ですとかそういうところもさらに強化しています。また、燃費だけではなくて、今回ハイブリットとしてモーター、バッテリー、あとエンジンそのものが新開発なので、その進化によってこそ作れる走りの楽しさは、TYPE Rとはまた違うベクトルです。TYPE Rは本当に究極で、サーキット最速を目指しているところではあるのですが、TYPE Rも街中でもきちんと官能性能を楽しめる。ハイブリッドはハイブリッドで2ペダルとしてのスポーツ性能も備えたモデルですが、走ってみたら実は燃費がすごい良くて、レギュラーガソリン仕様なので経済性にも優れる。

――シビックの注目ポイントを教えてください。

山上智行氏:やはりハイブリッドは日常使いの中で、とにかく常に気持ちよく走っていただける。高速道路の合流ですとか、一般路から郊外に出るようなワインディングでも楽しく走っていただけますので、環境性能と走り、爽快スポーツとわれわれ呼んでいますけどそこを楽しんでいただけるのかなと思います。

 TYPE Rは本当に究極の姿を目指しでやってきてます。本当に言い訳なしで速さを追求し、前モデルを超えるんだっていう気概でわれわれは開発しています。それがサーキットのようなところでは実現できてますし、だからと言って街中を我慢することはなく、モードの切り替えも持っています。そういった日常使いでの官能性能ですとか、やっぱり走る楽しさっていうベクトルはハイブリッドもTYPE Rも違う方向には向いてるところはあるけども、シビックのDNAは歴代モデルから連綿と受け継いでいます。また居住性や環境性能にも注目いただきたいです。

CX-60

CX-60

 6月24日より予約受注を開始したCX-60。FRレイアウトのプラットフォームにPHEV、48Vマイルドハイブリッド、ディーゼルターボ、ガソリンと4つのパワートレーンが設定され、価格は299万2000円~626万4500円。販売については、48Vマイルドハイブリッドの「e-SKYACTIV D」搭載モデルは9月、そのほかのモデルは12月開始を予定している。

 縦置き高出力エンジン対応プラットフォーム、直列6気筒3.3リッターディーゼルターボエンジン、トルコン(トルクコンバータ)レス8速AT、後輪駆動ベースの4WDシステムといった多くの新開発ユニットに加え、ドライバー異常時対応システム(DEA)、ドライバー・パーソナライゼーション・システム、前進時左右接近物検知機能、ヒルディセントコントロールなど、マツダ車として初となる機能も多数採用されている。

 このCX-60については、主査の和田宣之氏にうかがった。

マツダ株式会社 商品本部 副本部長 主査の和田宣之氏

――発売から間もないですが、ユーザーからのフィードバックとしてどのような声がありますか?

和田宣之氏:納車が始まったばかりなのですが、買われた方からマツダとしての新しい技術、燃費の良さ、やっぱり走りが楽しいそうだと感じていただいています。われわれがお伝えしたかったことはしっかり伝わってるかなと思います。

――FRや直6エンジンなどハイライトがたくさんありますが、開発のタイミングで苦労された点はありますでしょうか。

和田宣之氏:CX-60は全くのオールニューですので、これを1つのクルマとしてバランスさせていくというのはものすごく苦心しました。絶対的な加速性能だけではなく、音を含めて人がどう感じるかという、最後人とクルマがシンクロする、そこの作り込みというのは非常にこだわって時間もかけました。

――具体的にはどのようなことをやられたのですか?

和田宣之氏:そうですね、6気筒は6気筒らしい滑らかだけど力強い音みたいな音作りを、単純に雑音を廃止するだけじゃなくて音と音をぶつけ合うとか、あとこの後に出るPHEVはPHEVとしてのモーターとエンジンがコラボレーションする疾走感とか、エンジンごとに走る喜び、楽しさの音作りというところも、加速フィールだけじゃなく一緒に作り込んできました。

――それは今までにない取り組みなのですね。

和田宣之氏:はい、CX-60はすごいパワーあるので、上まで速度域が高くなったとしてもしっかりと音がそれを支えるという、そのレンジの広さですね。そこはラージ商品群ならではだと思います。乗用域は今までもこだわっていたのですが、今回ちょっと高速域とか高回転域までしっかりとお客さまの期待に応えました。

――これまでのFFベースからFRベースに変わったのも大変だったのでは?

和田宣之氏:そこは大変というか、縦置きにしたから後輪駆動の方が効率的だろうということでそこは良かったのですが、後輪駆動になると4つのタイヤをフルに使えるので、いいことばかりだったんですね、やっぱりアーキテクチャを変える、横置きを縦置きにするっていうのは全面刷新になるので、あらゆるものが共用化できない。そこは大変でしたね(笑)。バッテリーの置き方から本当に細かい話ですけどスペースがなかったのでヒューズボックスを2分割にしたりとか、ボンネットラッチが2か所になったりとか、横置きで当たり前だったことが当たり前にできないという。レイアウトには苦労しました。アルミダイキャストのマウントとか縦置きエンジンとかカッコいいところは場所を取ってくるのですが、ヒューズボックスどうすんのという(笑)。

――なるほどありがとうございます。ではCX-60の注目ポイントを教えてください。

和田宣之氏:やっぱりこの時代に、やるなら最後かもしれないという思いでこの内燃機を究極まで磨き上げて、しかも6発。走りのみならず燃費もよくして、今回モーターも組み合わせており、究極の内燃機と電動化技術というそこのマツダとしてのこだわりに応援していただきたいと思っています。

 もう1つはこの縦置きアーキテクチャをベースに、クルマの挙動も人の能力が発揮しやすい究極を目指した新しい動きにしましたので、上下動にこだわる。ここもマツダ独自のクルマの挙動として挑戦しましたし、今後もどんどん進化させていきますのでそこも応援いただけたらと思います。

 最後はやっぱりデザインですね。この余裕のある走りと質感をベースに、外観だけじゃなく内装もすごく豊かな気持ちになっていただくと。生活が豊かになったように感じていただけるような内装の広さと質感、あとはこの外観のおおらかさ、力強さはマツダとして新しいレンジにいったかなと思っています。この3つを応援いただき、今年の1台に選んでいただけると嬉しいなあと(笑)。