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2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー、10ベストカー試乗会場で各モデルの注目ポイントを直撃インタビュー【インポーター編】

「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」10ベストカーの試乗会が袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された

 12月8日に「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考会・表彰式が行なわれ、この場で“今年の顔”となるイヤーカーが発表される。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーはその年を代表するクルマを決定するイベント。選考対象となるクルマは2021年11月1日~2022年10月31日に発表または発売された乗用車で、今回は48台がノミネート。その中から最終選考会に進む上位10台の「10ベストカー」が選出され、11月24日に10ベストカーの試乗会が袖ヶ浦フォレストレースウェイで開かれた。

 今回の10ベストカーは第10位の指名数が同数だったため、日本カー・オブ・ザ・イヤー実施規約に則り11台が選出された。選出されたのはスズキ「アルト」、トヨタ「クラウン」、日産「エクストレイル」、日産/三菱自動車「サクラ/eK クロス EV」、日産「フェアレディZ」、本田技研工業「シビックe:HEV/シビックタイプR」、マツダ「CX-60 e-SKYACTIV D」、ビー・エム・ダブリュー「iX」、ヒョンデモビリティジャパン「IONIQ5」、ジャガー・ランドローバー・ジャパン「レンジローバー」、ルノー・ジャポン「アルカナ」。

 本稿ではこの10ベストカーに選ばれた各メーカーの製品担当者、広報担当に製品特徴のポイントを挙げてもらったので、そのインタビューの内容を紹介する。今回はインポーター編ということでiX、IONIQ5、レンジローバー、アルカナをピックアップ!

12月8日 16時30分よりライブ中継 2022 - 2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会

BMW iX

BMW iX

 2021年11月発売のBMW iXは、長距離走行が可能な次世代BEV(バッテリ電気自動車)。前輪と後輪を駆動する電気モーターをそれぞれ備える4輪駆動モデルで、満充電で450km走行可能な「iX xDrive40」(981万円)、650km走行可能な「iX xDrive50」(1116万円)の2モデルをラインアップする。

 エクステリアでは大胆かつモダン、最小限をコンセプトに、フロントではキドニーグリルを大型化し、キャラクターを強調しつつ、ラインアップの中で最もスリムなヘッドライトデザインを採用することで次世代のイメージを強調。また、インテリアではBMWのモデルとして初めてメーターパネルとコントロールディスプレイを一体化させ、デザインを際立たせるとともに形状を湾曲したカーブドディスプレイとすることで、操作性、視認性を向上。多くのボタン類を廃止し、送風口をスリム化することで運転席まわりをすっきりとさせつつ、BMW特有のiDriveコントローラーを他モデル同様に装備する。

 パワートレーンについて、iX xDrive50は前輪に最高出力190kW、最大トルク365Nmを発生する電気モーターと、後輪に最高出力230kW、最大トルク400Nmを発生する電気モーターを持ち、システムトータルでの最高出力は385kW、最大トルクは765Nm。リチウムイオンバッテリの容量は303Ahで、一充電走行距離は650km、交流電力量消費率は190Wh/km

 また、iX xDrive40は前輪に最高出力190kW、最大トルク290Nmを発生する電気モーターと、後輪に最高出力200kW、最大トルク340Nmを発生する電気モーターを持ち、システムトータルでの最高出力は240kW、最大トルクは630Nm。リチウムイオンバッテリの容量は232Ahで、一充電走行距離は450km、交流電力量消費率は183Wh/km。

 ユニークな取り組みとしては、基本的に無音のBEVにおいて音による効果で「駆けぬける歓び」を表現したという「アイコニック・サウンド・エレクトリック」。これはオーディオスピーカーから、特別に作曲された音が発せられるというもので、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞のノミネート多数の実績を誇り、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」を担当するなど、著名なドイツ出身の映画音楽作曲家の1人であるハンス・ジマー氏がサウンドの作曲を担当。MY MODESの設定でSportを選択するとサウンドを強調、Personalを選択すると音響の全体バランスを重視、Efficientを選択するとサウンド・オフにすることが可能となっている。

 このiXについてはビー・エム・ダブリュー プロダクトマネージャーであるMarc Andrew Appleton氏に聞いた。

ビー・エム・ダブリュー株式会社 プロダクトマネージャー Marc Andrew Appleton氏

――iX発売後、ユーザーからはどのような反響がありますか?

Marc Andrew Appleton氏:iXに乗ると解放感がすごく感じられ、今までのBMWとiXでは感じられる部分が異なります。電気自動車の時代が始まるということでBMWとしても何か新しいスタートを切りたい。そこでいろいろと考え、iXのコンセプトが生まれました。

 iXは電気自動車のみならず高度な運転支援技術も搭載しています。将来的にドライバーは運転をするかしないかという点を選択することができるようになると思いますが、そこで運転をしないと選択したとき、どういう雰囲気でリラックスできるかという雰囲気を感じられると思います。

――iXの開発にあたって何か大変だったというエピソードなどありますか?

Marc Andrew Appleton氏:開発プロセスにおいてはデジタル面の作り込みが時間的に厳しかったと思います。車内でインターネットを使えるというのも今後大切になっていきます。

――iXの特徴点を挙げるとしたらどのような部分でしょう?

Marc Andrew Appleton氏:1つはオーディオシステムで、オプションですがBowers&Wilkinsダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システムをご用意しており、こちらは本当に高い性能を誇ります。映画館のような雰囲気を体験できます。

 もう1つは後席で、ドアとシートの間にもサポートが入っており、2人で座るとソファで向かい合うのに近い感じで会話をすることができます。

 最後はやはり、BMWは「駆けぬける歓び」ということでドライビング性能。スピードを出しても静かですし、EV専用タイヤも優れています。

ヒョンデ IONIQ5

ヒョンデ IONIQ5

 ヒョンデ(Hyundai Motor Company)の100%子会社であるHyundai Mobility Japanは、2月に日本の乗用車市場へ参入すると発表。日本市場には環境に配慮したZEV(Zero Emission Vehicle)のみを展開するとし、BEV(バッテリEV)「IONIQ 5(アイオニック ファイブ)」、FCEV(燃料電池車)「NEXO(ネッソ)」の2車種を投入する。IONIQ 5の価格は479万円~589万円。

 IONIQ 5は5ドアハッチバックのBEVで、72.6kWの大容量バッテリ搭載モデルでは1充電航続距離618kmを実現(WLTCモード/自社測定値)。急速充電システムCHAdeMOを採用し、90kW級の充電器を使用の場合、約32分で10%から80%まで充電が可能。ウインカーレバーの右側への配置など日本マーケットに適したローカライズを施した。

 Hyundaiは2009年12月に日本の乗用車市場から撤退しているが、日本市場に再び参入する背景としては世界規模で高まる環境配慮への意識や、一人ひとりが個人の価値観を重視した商品選択を行なう傾向の高まりを背景に、日本社会の変化に対応する商品としてZEVの2車種を投入することを決定したという。

 IONIQ5についてはマーケティングチームの佐藤健氏に聞いた。

Hyundai Mobility Japan株式会社 マーケティングチームの佐藤健氏

――販売後の反響はいかがでしょうか。

佐藤健氏:やはりこの価格帯でこのクラスのEVというのは今までなかったので、そこは非常にコストパフォーマンスがいいねと評価いただいています。あとデザインが非常にユニークで、誰にも似てないデザインという点が好評をいただいています。

――実際乗ってみたEVの感想などはいかがですか?

佐藤健氏:やはりEVならではの加速のよさですとか、バッテリを床下に積んでいで重心が低いのでコーナリングは非常に気持ちよく走れるというお話をいただいています。あと、もう1つこのクルマの特徴としては、バッテリの電気を外に出せること。これが非常に使いやすくなっておりまして、元々V2L用のコネクターが標準で付いております。キャンプなどで普通に電気製品をお使いいただくことが可能になっています。

――開発のタイミングで苦労された点などあったでしょうか。

佐藤健氏:そうですね、IONIQ5は800V級の電源装置を持っていまして、一般的に普及しているのは400Vですので、クルマの中で400Vで充電しても800Vに昇圧させる仕組みというのを独自で持っています。通常はコンバーターの電圧を上げたり下げたりするのですが、IONIQ5は元々のモーターのコイルと、それから元々あるインバーターを使って電圧変換しています。ですので、新たにコンバーターを積む必要がなくコストも抑えられますし重量も増えない。そうした新しい仕組みを持っています。ヨーロッパやアメリカでは800Vの充電器が増えておりまして、そういうところに行っても普通に充電できますし、普及している400Vの充電器でも問題なく充電できる。残念ながらまだ日本には800V級はないのですが、ただ元々の電源システムが800V級になっているので、充電の最初から比較的高めの電圧を受け入れられるようになっています。そういう意味で充電時間っていうのは比較的ちょっと短めにできるメリットはあります。

――今回10ベストカーに選ばれたということで、自己評価的に3点の注目ポイントを挙げるとしたらどこになりますか?

佐藤健氏:1つ挙げるとしたら、皆さんおっしゃっていただけるのがユニークなデザインで、ほかに似てないユニークなデザインは非常に高い評価をいただいています。それからもう1つは非常にコストパフォーマンスがいいと言いますか、リーズナブルな価格帯で高性能な大きいバッテリを持った電気自動車が購入いただけるということ。

 あとIONIQ5はインテリアがすごく特徴的で、リビングルームのようなインテリアを持っています。最近はどちらかというとタイトな感覚のスポーティなモデルが増えてきていますが、IONIQ5は車内で楽しんでいただけるように広いリビングルームのようなスペースを持っており、このあたりがお客さまに評価をいただいています。

――今回、日本再参入という形になりましたが、販売についてはオンラインということで今後ディーラーなどの展開は予定されていますか?

佐藤健氏:オンライン販売がベースになります。お客さまがいつでもどこでもご購入いただけるというコンセプトですので、そこは変えずにいこうと思います。ただ、実際に購入されるときはクルマをご覧になりたいでしょうし、お乗りになりたいと思います。そういうところがございますので、そういう対応が可能なカスタマーエクスペリエンスセンターは主要都市に設置していく計画を立てています。詳しくは言えないのですが、大阪ですとか名古屋といった大都市圏を視野に入れています。

――カスタマーエクスペリエンスセンターはサービスやメンテナンスなども受け付けるのでしょうか?

佐藤健氏:基本的に横浜(試乗や購入相談、点検、整備をワンストップで提供する「Hyundaiカスタマーエクスペリエンスセンター」を今夏に神奈川県横浜市に開業)もそうですが、クルマをご覧いただき購入相談もしていただけます。あと納車の拠点にもなりますし、さらにはサービス拠点としていろいろな整備も受け付けます。

――オンライン販売の手応えというのはいかがでしょうか。

佐藤健氏:購入いただいた方におうかがいすると、ストレスなく購入できたという声があるなど非常に好意的なご意見をいただいています。購入金額も皆さん一律ということで、今まで値引き交渉するのが嫌だったけれどその必要がないなど、ご自身のペースで考えて決められたという声が多いですね。今の時代に合った方法なのかなと思います。

ランドローバー レンジローバー

ランドローバー レンジローバー

 1月に受注を開始した第5世代となる新型「レンジローバー」は、内燃エンジン(ICE)、PHEV、BEVといった、あらゆるパワートレーンに対応できるよう設計された最新アーキテクチャーである完全新設計の「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」を採用。ボディタイプはスタンダードホイールベース(SWB)とロングホイールベース(LWB)を用意し、シートレイアウトは4人乗り(SV LWBのみ)、5人乗りに加え、レンジローバー初となる3列7人乗り(LWBのみ)から選択可能となっている。

 エクステリアではフロントグリルやエアインテーク、新開発のウエストレールフィニッシャーが作り出す切れ目のないウエストライン、フラッシュグレージングやシームレスなレーザー溶接などの最新技術を駆使した凹凸のないサーフェイスなど多くの新デザインを取り入れ、1つの塊から削り出したようなすっきりとした外観なのが特徴。

 パワートレーンは直列6気筒 3.0リッターINGENIUMターボチャージド・ディーゼルエンジンのほか、直列6気筒 3.0リッターINGENIUMガソリンエンジンと105kWの電動モーターを組み合わせたプライグインハイブリッド(PHEV)、V型8気筒 4.4リッターツインスクロールターボチャージド・ガソリンエンジンの3種類をラインアップ。また、2024年にはランドローバー初となるBEVも投入予定だ。

 レンジローバーについてはマーケティング広報部 プロダクトマネージャーの生野逸臣氏に聞いた。

ジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社 マーケティング広報部 プロダクトマネージャーの生野逸臣氏

――新型レンジローバーを購入された方からのフィードバックは何かありましたか?

生野逸臣氏:実はまだクルマのお納めができていない状況で、生産が追いついてなくて、まだ10数台程度をお納めした状態です。

――それはいわゆる半導体不足ということでしょうか。

生野逸臣氏:それもありますが、BMW製のV8 4.4リッターエンジンについてBMWとの契約している台数が世界中からオーダーが入っているということで圧倒的に超えておりまして、3年分ぐらいの台数になっている状態なのです。

 現在メインで作っているのはディーゼルなのですが、ディーゼルの方もいくつかの装備で半導体が足りないから作れないといった問題もあり、思うように製造が進まない状況なのでお客さまをお待たせしてしまっています。今からオーダーした場合ですと、1年は見ていただく必要があります……。われわれも毎日のようにイギリス本国とずっと話していますが、なかなか進まない。ここまでの反響をいただいたことに驚いています。

――新型レンジローバーの開発で苦労されたお話とかありますか?

生野逸臣氏:苦労したかどうかまだ聞いていないのですが、注力したポイントとしてはいかにコンセプトをキープするかですね。やはりラグジュアリーSUVとして昔からずっとやってきたレンジローバーですので、キープしつつ最新技術を入れて、かつデザインも昔のつながりを感じながらどうやって最新のものにしていくかというのが大きな課題だったと聞いています。

――新型レンジローバーの注目ポイントはいかがでしょう。

生野逸臣氏:まずはやっぱりデザインです。クルマを見ていただくと分かるのですが、新型レンジローバーはいわゆるプレスラインがほとんどないんですね。特にサイドを見ると、普通クルマは凹凸を作ることでかっこよくするのですが、このクルマはない。なるべくそういうのを減らしています。先代のレンジローバーからそうだったのですが、シンプルな面を作り、でもちゃんとかっこいいとか、そういうことをいかに表現できるかというところがこだわったポイントです。

 新型レンジローバーをペンで描こうとすると、ルーフライン、中央のライン、ボディ下のラインのたった3本で表現できますが、無駄を省きつつ必要なものや機能を減らすつもりはない。デザインとしていかに減らしながら今までのものを維持できるかということにチャレンジしているのです。

 インテリアのコンセプトとして打ち出したのが、モダンラグジュアリーです。モダンなデザインでラグジュアリーをいかに表現するか。インパネは水平ラインで、最近はメーターやモニターをつないで大きくするモデルが多いですが、新型レンジローバーでは必要最低限のものをいかに配置していくかを考えています。

 デザイン以外にはパワートレーンの豊富さで、あらゆるチョイスを用意しました。また3つ目はオーディオです。今はオーダーできないのですが、メリディアン(MERIDIAN)で3段階ありまして、最上位グレードではヘッドレストにノイズキャンセリング機能が備わるスピーカーが前後席に組み込まれます。イヤホンなどと一緒で、外の音と反位相の音を出すことでノイズキャンセリングして音楽などを静かに聞くことができます。

 ちなみにレンジローバー独自の分割式テールゲートのテールゲートイベントスイートにもスピーカーが備わります。イギリスではピクニックが文化になっていまして、例えば子供がサッカーをやっているときにここに座って眺めるといったことが可能です。優雅な過ごし方をラグジュアリーで体現していますよね。

ルノー アルカナ

ルノー アルカナ

 ルノーは、クーペとSUVのクロスオーバーモデルである新型「アルカナ」(429万円)を5月に発売。

 新型アルカナは、ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスにより開発されたモジュラープラットフォーム「CMF-B」プラットフォームを採用。このプラットフォームは多様性が高くCセグメントまで対応し、軽量であることから高い燃費性能が求められるハイブリッドモデルに適しているという。高い剛性を持つため、しなやかなサスペンションの動きやハンドリングの正確さを引き出し、クーペらしいダイナミックなドライブフィールを実現する。

 パワートレーンにはルノーが独自に開発したハイブリッドシステム「E-TECH HYBRID」を搭載。E-TECH HYBRIDはメインモーターであるE-モーター(36kW/205Nm)とHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター。15kW/50Nm)という2基のモーターと、94PS/148Nmを発生する1.6リッター4気筒自然吸気エンジン、これらをつなぐトランスミッションのドッグクラッチマルチモードATで構成され、従来のパワートレーンにはないスムーズな変速とダイレクトな加速を両立させている。

 ちなみにトランスミッションの実現性を検証するために使われたのが工業用のLEGOブロックで、ルノーのエンジニアはLEGOブロックを使ってトランスミッションのモデルを組み上げ、このアイデアが実際に機能するかどうかの検証を進めたと言われている。

 アルカナについては広報グループの佐藤渉氏にうかがった。

ルノー・ジャポン 広報グループの佐藤渉氏

――アルカナの反響はいかがですか?

佐藤渉氏:1番はまずデザインです。いろいろ話を聞くと、そもそもアルカナという車名をご存知ないのです。インターネットを使った検索でも、なかなか車名を入れて検索するくらいの知名度がないのが現状です。ただ、そんな中でも記事で見たとか、SUVで探していたら出てきたとか、そういうきっかけでデザインを見て「なんかかっこいいんじゃない」と。すごくデザインから入られるパターンが今回多いです。

――ルノーさんのラインアップでは今までクーペSUVというカテゴリーはなかった。

佐藤渉氏:そうですね、いわゆるこういうSUVクーペはハイブランドはラインアップされるのですが、われわれのブランドでは持ってなかった。そういう意味では、われわれが持ってるマーケットではすごく新鮮味があって、形もかっこいいねということですごく注目いただいています。

――当然開発は本国となりますが、特殊なトランスミッションなど使っていることもあり何か開発時に大変だったという声はありますか?

佐藤渉氏:今回E-TECH HYBRIDというハイブリッドシステムを搭載しているのですが、アルカナはこのユニットを積んだ3番目のモデルで、その前にルーテシア、キャプチャーというわれわれのBセグメントのモデルに積んでいます。アルカナは車格でいくとCセグメントになるので、ルノーとしてはこういうミドルクラスに初めてハイブリッドを搭載したことになります。新型車で、新しいユニットで、クーペスタイルという新しいトレンドを取り入れてという新しいものずくめのモデルだったので、イメージ作りからやりました。その部分で手間がかかっていますね。

――ちょっと話がずれますがルノーさんの電動化戦略について教えてください。

佐藤渉氏:ルノーはフランスのメーカーなので拠点がヨーロッパなのですが、ヨーロッパの電動化、言ってみればCO2とエミッションに対する規制がものすごく厳しくなってきており、それにメーカーとしては合わせていかなければいけない。ヨーロッパでは2035年には内燃エンジンは作って売ってはダメよというのが方針として打ち出されているので、われわれとしても電動化はもう進むべき道として捉えています。その上でルノーはヨーロッパ以外の地域での販売も多い。北米はやっていませんが、例えば南米、アフリカ北部、インドまで含めたアジア地域、そういうエリアでの販売台数がものすごく多いので、そういう地域は残念ながらひと足飛びにEVというのは難しい。ヨーロッパ向けにきちんとEV化は進め、一方でEV化が進まない地域にはそれ用のユニットを残さないといけない。両方ともちゃんとやっていかないとっていうのが今のルノーのスタンスです。

――ありがとうございます。では改めてアルカナの魅力を3点挙げるとしたら?

佐藤渉氏:1つはクーペスタイルのデザイン。Cセグメントのクルマにわれわれのような量販ブランドがクーペSUVを投入して、でも実際ヨーロッパでもすごく販売が好調なのです。これは1つ大きな見どころだと思います。

 もう1つはハイブリッドですね。ルノーとしては、位置付けとしてはEVまでの橋渡しという位置付けではあるものの、さっきお話しした通り、EVにならないような地域に向けても将来的には使えるようにと考えてはいます。全世界で使えるハイブリッドということで開発されたユニットですね。

 3つ目を言うとすると、日本で持たれがちなハイブリッドのイメージとはちょっと違うと思っています。乗った感じがもっとヨーロッパ人の嗜好にあったダイレクト感があって、ドライバビリティがよくてっていうところをものすごく作り込んでいます。決してエコだけではない、乗って楽しいハイブリッドなのです。