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ホンダ、既製の自転車を電動アシスト化&コネクテッド化できる「SmaChari(スマチャリ)」発表会 搭載第1号の自転車は9月発売

2023年3月29日 開催

さまざまな自転車を電動アシスト化・コネクテッド化できるサービス「SmaChari(スマチャリ)」の発表会を開催

 本田技研工業は3月29日、自転車を電動アシスト化およびコネクテッド化できる「SmaChari(スマチャリ)」の発表会を開催した。

 SmaChariは取り付け車両のタイプに合わせて法規に準拠するアシスト出力を算出、適用させる出力制御技術によって電動化を可能とし、あわせてコネクテッドの機能も提供するソフトウェアサービス。搭載第1号の自転車はワイ・インターナショナルが2023年9月に発売する。

ホンダはライセンスとプラットフォームを提供、自転車は他社が販売

SmaChariを装備した「RAIL ACTIVE-e」

 ホンダによれば、SmaChariの個々の取り付け車両に合わせて法規に準拠するアシスト出力を算出、適用させる出力制御技術は日本初。電動アシスト機能を搭載していないさまざまなタイプの既製の自転車を電動アシスト化とコネクテッド化し、形式認定取得にも対応する。

SmaChari
SmaChariのビジネスモデル

 ホンダとしては自転車の製造や販売は行なわず、エンドユーザーに対してスマートフォンアプリを提供する。SmaChariを搭載する自転車を製造・販売する企業に対しては、電動化するための各種ライセンスやコネクテッド化のプラットフォームを有償で提供する。

搭載第1号「RAIL ACTIVE-e」

 SmaChariの搭載第1号となる自転車は、スポーツ自転車専門店「ワイズロード」を展開するワイ・インターナショナルが2023年9月に発売する「RAIL ACTIVE-e」で、電動化ユニットのモーターやバッテリは海外製の市販品として流通しているものを搭載し、通信ユニットは国内メーカーで製作する。

スマホを自転車のカギとし、乗り味のカスタマイズや走行データ管理が可能

 電動化については出力制御技術などによって国内の電動自転車としてもアシスト量などに関する法規対応を行なうが、スマートフォンを使うことでさらに進んだ電動化も実現する。好みに合わせてアシスト量のパワーやレスポンスを調整できるほか、AIモードや急発進抑制制御やなども搭載する。

つながることで進化する
家族、友達、世界とつながる
つながる安心や便利

 スマートフォンが電動自転車のカギとなり、通常はNFCによってスマートフォンを近づけると通信が開始され、自転車の電源が起動する。自転車の共有機能も持っており、自転車を貸す場合もアプリ上で設定が可能。誰のスマートフォンで起動したかによって設定を変えることもでき、乗る人それぞれが設定したパワーやレスポンスの組み合わせで自転車を運転できる。

乗り味をカスタマイズ
走行データ管理
毎日の安心サポート

 メーターや地図機能についても装備。走行データはアプリからインターネットにアップされるので走行時刻や消費カロリーなども記録できるほか、友達などとリアルタイムに位置情報を共有することも可能。

 さらにホンダの四輪車のカーナビやコネクテッドで得た情報をもとに、例えば急ブレーキをかけることの多い場所などを注意ポイントとして表示することも可能。そのほか、バッテリ残量などの自転車の状態を表示する機能や、コネクテッドならではの機能については今後もさらに拡充する予定。

自分の自転車通学経験を活かして開発

株式会社本田技術研究所 ソリューションシステム開発センター 戦略・商品企画室 商品企画BLの野村真成氏

 ホンダウエルカムプラザ青山で行なわれた発表会では、本田技術研究所 ソリューションシステム開発センター 戦略・商品企画室 商品企画BLの野村真成氏がSmaChariを説明した。野村氏はまず、自転車の現状を説明し、国内保有台数は約7000万台で、自転車は最も身近なモビリティとした。特に若者の移動手段として重要な役割を担い、若者の自転車活用としては最も一般的なものは自転車通学だとした。

 野村氏は、現在、自転車通学の高校生は約180万人で、通学経路に急な坂道の存在する高校は2316校(45%)。自転車通学中の事故確率は全年代平均の5倍、そして電動アシスト自転車が欲しい高校生は48%と説明。さらに自身の経験を紹介し、高校生が自転車で通学する理由の1つとして、鉄道でも通うことはできるが、本数が少なく遠まわりということもあって自転車通学を選択しているとし、自身も高校生時代、橋を2つ越えて向かい風を受けながら片道10kmを通学していたという。

国内保有台数は約7000万台
自転車は若者の移動手段として重要な役割を担う
自転車通学の例と実態
ニーズが高い10代や20代に電動アシスト自転車は普及していない
電動アシスト自転車における課題

 また、年齢層別の自転車販売台数と電動アシスト自転車の普及率を挙げ、自転車のニーズに対して10代や20代の電動アシスト自転車の普及率が低いことは、価格が高いなどのほかにも多数の課題があり、「お客さま好みの乗り味の実現、車両選択肢の拡大、そして安心便利に活用できる今までにない機能進化が必要」と結論づけた。

求められる進化
SmaChari技術で将来目指したいこと

 そこで、ホンダが調査する中で「ハードウェアの進化によって、自動車の技術を入れて自転車を進化させることはできないか」という声があったことから検討した結果、重量があって自転車の身軽さをなくしかねない安全装置の搭載よりも、新しい進化の形をソフトウェアで展開しようと考え、登場したものが既製の自転車を電動アシスト化・コネクテッド化するソフトウェアサービスのSmaChariになるという。

 SmaChariは今後、対応自転車を増やしていくことのほか、電動化の出力制御技術は自転車以外のマイクロモビリティ管理や他社へのシステム提供、コネクテッドについては技術の他社への販売やMaaS領域での活用、さらに走行データについてはデータ解析や販売などとともにユーザーへはアプリの魅力や機能アップにつなげていくとした。

 なお、今回発表したSmaChariは、ホンダの新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」によるもの。すでに行なっている2つの事業は新会社を立ち上げて社外で実施しているが、SmaChariについては社内での事業化を選択した初めてのケースとなる。

株式会社本田技術研究所 ソリューションシステム開発センター 戦略・商品企画室 商品企画BL 野村真成氏(左)と株式会社ワイ・インターナショナル マーケティング部 部長 青木亮輔氏(右)

第1号の自転車「RAIL ACTIVE-e」

 スポーツ自転車専門店「ワイズロード」を展開するワイ・インターナショナルが販売する「RAIL ACTIVE-e」はスポーツバイクブランド「KhodaaBloom」が企画開発したもので、超軽量アルミフレームを採用し、車体重量は15kg。5月に受注を開始し、9月に発売する。価格は22万円を予定。

SmaChariを装備した「RAIL ACTIVE-e」
バッテリはボトルケージの部分に装着。バッテリの円筒の下が通信ユニットとなり、スマートフォンとBluetooth接続する
バッテリの充電コネクターは右側にある
バッテリの左側にはUSBポートがあり、スマートフォンのバッテリがないときにここから充電が可能。スマートフォンが起動しないと自転車も動かない
モーターユニットはクランクの下

 そのうち電動化やコネクテッド化にかかわる部分はおよそ15万円分で、重量は約5kgとなる。搭載するバッテリはリチウムイオン充電池で容量は24V 10Ah。モーターの出力は250W。

 ワイ・インターナショナルでは、今回発表したものは第1号製品だが、段階的に車種を増やすとともに、既製車種への搭載も増やすとしている。

ハンドル部分にスマートフォンを装着する
スマートフォン上の地図画面。分かりにくいが、もう1台が青山通り上にあり、位置情報を共有している状態を示している
自転車の状態を表示
走行記録を表示
走った場所を地図表示することもできる
アシスト設定

 今回の「RAIL ACTIVE-e」についてはHonda ウエルカムプラザ青山において3月29日~31日、4月3日~9日まで展示する。次いで4月15日~16日に東京ビッグサイトで開催される「CYCLE MODE TOKYO 2023」のホンダブース・Y’s Roadブース(西4ホール小間番号W-704)では展示だけでなく試乗も行なわれ、SmaChariをいち早く体験できる機会になるという。

ホンダのエンジンアシスト自転車「ホンダ A型」も展示

会場に展示された補助エンジン「ホンダ A型」を装着した自転車

 発表会場では、ホンダ初の市販製品「ホンダ A型」を展示した。

空冷2ストローク単気筒エンジン
ベルトで後輪をアシストする
排気は左側から

 野村氏は「本田宗一郎氏が遠くまで買い物に行く妻の姿を見て、パワーでアシストしてやりたいということで、自転車に対して後付けエンジンを付けた」と説明。それに対し、SmaChariは「人のためにという精神を現代に置き換え、高校生の通学をはじめ、多くの方の自由な移動の喜びを広げたい。そこで今回、自転車という世界にホンダの技術と進化を提供していきたいと考えてサービスを開始した」と意義を語った。

会場には「ホンダ A型」とSmaChari搭載の「RAIL ACTIVE-e」が展示

【訂正】記事初出時の発表資料に誤りがあり訂正が入りました、記事の内容についても訂正させていただきます。