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豊田佐吉翁顕彰祭、豊田章男氏が湖西少年少女発明クラブに「だから、もっと勉強し、働いて、もっとよいものを作ろうと思う」との言葉を贈る

豊田佐吉氏のひ孫である豊田章男氏。豊田家を代表して出席した

豊田佐吉翁顕彰祭

 静岡県湖西市鷲津中学校で10月30日、第60回豊田佐吉翁顕彰祭が開催された。これは、この地に生まれた豊田佐吉氏の「報恩・創造」の精神を顕彰すべく1964年から始まったもので、豊田佐吉氏の命日である10月30日に鷲津中学校豊田佐吉翁胸像前で行なわれている。

 当日は、湖西市市長 影山剛士氏、トヨタ自動車 代表取締役会長であり豊田佐吉氏のひ孫にあたる豊田章男氏らが出席。豊田佐吉翁を顕彰するとともに、豊田佐吉翁記念奨学基金 奨学生代表 色山輝氏のあいさつ、湖西少年少女発明クラブの表彰などが行なわれた。

鷲津中学校にある豊田佐吉翁胸像

影山市長あいさつ

あいさつをする影山市長

 影山市長は、湖西市の発展に尽力した名誉市民であり、2月14日に亡くなった豊田章一郎名誉会長にお悔やみの言葉を述べた後、代表あいさつを行なった。

 景山市長は、佐吉翁生誕100年を記念して市民や豊田家の人々によって作られた豊田佐吉翁記念奨学基金によって353名が奨学生となり、現在344名が巣立つとともに各分野で活躍していることを報告。9月13日には「KOSAI Battery Park(コサイバッテリーパーク)」において「バッテリーEV工場」の工事が着工し、9月30日には国道1号バイパスからつながる「バッテリーロ-ドも完成した」こと、バッテリ製造会社であるプライムアースEVエナジーの工場見学も実施したという。

 これも「障子を開けてみよ 外は広いぞ」という佐吉翁の言葉から始まった、世界に誇れるもの作りの町を世界に発信していくと語り、湖西少年少女発明クラブでは中学生コースを新設するなど、創造の精神が湖西市民にも広く根付いていると語る。

 あいさつの結びにあたり市長は、「想像の姿勢が会員のみならず、湖西市民にも広く根付いており、製造業、農業、漁業、教育文化などあらゆる分野において脈々と受け継がれております。結びに当たり、時代を担う子供たちを育成し、希望に満ちた豊かな未来につながるよう、報恩・想像の精神、豊田章一郎名誉会長の現地現物に基づくチャレンジ精神を、湖西市における街作りの原点として、今後10年、また50年と、職住近接による持続可能な発展につくしていくことを誓った。

佐吉翁への献花
スズキ 鈴木敏宏社長も献花に訪れた

奨学生代表 色山輝氏のあいさつ

奨学生代表 色山輝氏のあいさつ

 佐吉翁への献花の後、奨学生を代表して色山輝氏があいさつ。色山氏は奨学金のこともあり、大学生活の最後を有意義に過ごせているという。現在は将来の就業に向け努力をしていることを報告した。

 その上で。日本は現在、先進国としてゆるぎない地位を確立しており、これは佐吉翁をはじめとした先人たちのゆるぎない努力によってその礎が築かれたと感謝。しかしながら、過去にG7でトップだったGDPは現在最下位となっているとういう。今後、「障子を開けてみよ 外は広いぞ」という言葉を残された佐吉翁のように、新しい可能性にチャレンジしていける強い人間になれるよう精進していくことを、佐吉翁像の前で語った。

 色山氏のあいさつの後、豊田家を代表して豊田章男氏がお礼のあいさつを述べ、その後、湖西少年少女発明クラブへの表彰式が実施された。

豊田家代表 豊田章男氏あいさつ

発明クラブを表象する豊田章男氏

 本日は私の曾祖父、豊田佐吉の顕彰祭にお招きいただき誠にありがとうございます。本年もこの顕彰祭を執り行なっていただき、影山市長さまをはじめ、湖西市役所、市民のみなさまに大変感謝しております。

 鷲津中学校のみなさまにおいては、この佐吉の胸像を日々大切にお手入れしていただきまして、厚く御礼申し上げます。また、影山市長さまより、父章一郎に対し心のこもったお言葉をいただき誠にありがとうございます。

 父が永眠いたしました2月14日は、偶然にも尊敬する佐吉の誕生日でした。父は毎年この顕彰祭でみなさまにお会いできることを楽しみにしており、また、みなさまが佐吉に思いを寄せてくれることを本当に大変感謝しておりました。心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

 先ほど影山市長さまより、コサイバッテリーパークの整備が順調に進んでいるとのお話がございました。少し古い話になりますが1925年に佐吉は、当時のお金で100万円の懸賞金をかけて蓄電池の開発を奨励いたしました。

 その翌年の1926年に設立された豊田自動織機製作所の資本金が100万円でしたから、当時としては大変な金額になります。佐吉が電池に求めていたものは、飛行機に乗せて太平洋をひとっ飛びできるという、とてつもない性能でした。100年近く経った今でもこの電池は実現できておりませんが、未来に向けて挑戦し続ける研究と創造の精神が、故郷湖西市で次世代にしっかりと受け継がれていることを佐吉自身が一番よろこんでいるのではないかと思っております。

 最後になりますが、今東京ではジャパンモビリティショーが始まったところでございます。「乗りたい未来を、探しに行こう」というテーマのもと、自動車業界の枠を超えて多くの仲間が集まり、みんなで一緒に未来を作ろうと挑戦をしております。

 湖西少年少女発明クラブのみなさん、未来を担うみなさんにこの言葉を贈りたいと思います。「新しいものを作るために知恵を絞り、汗をかき、時間を忘れて熱中する。その瞬間が極めて楽しい。苦心した末に物ができ上がったとき、それを誰かが使ってよろこんだり、助かったりしたとき、この上ないよろこびと感動に包まれる。だから、もっと勉強し、働いて、もっとよいものを作ろうと思う」、これは父章一郎の言葉です。

 みなさん、たくさん挑戦して、たくさん失敗して、たくさん勉強してください。私は、それが未来を拓く力になると信じております。私どもトヨタグループも、「研究と創造に心を致し 常に時流に先んずべし」の精神を胸に、失敗を忘れず、未来のモビリティ社会を切り開いてまいりますことを、佐吉の胸像と、みなさまの前でお誓い申し上げ、私のごあいさつとさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

令和5年10月30日豊田章男