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憧れのクルマを“共同オーナー”というカタチで提供する新サービス「ランデヴー」とは? 浅岡代表にその魅力を聞いてみた
2025年1月27日 17:27
「買う」でも「借りる」でも「サブスク」でもない新たなクルマの所有方法?
すでに「RENDEZ-VOUS(ランデヴー)」のサービスをご存じの人もいるかもしれないが、提供しているのは、「1台のクルマを複数人で共同オーナーとして所有する」もの。いったいどんな発想で生まれたどんなサービス形態なのか? 代表の浅岡亮太氏にお話をうかがってみた。
浅岡代表にとって最初のクルマとの接点は、中学のころに母親が始めたという中古車販売店。それもクセ強めのイタフラ(イタリア&フランス)系だけを扱っていて、なかなか興味深い。気になる人は「アウトレーブ」のホームページもチェックしてみてほしい。
「免許をとったころ家にあったのが特殊なクルマばかりで、最初は興味なかったけれど、乗ってみるとレンタカーとぜんぜん違って、操作が難しくてエアコンもないけど、なんだかめちゃくちゃ楽しい! という気持ちが勝りました。それからどんどんクルマが好きになったので、どちらかというと後発です」と、小学校から大学までずっとボクシングをやっていて、高校時代はキャプテンを務め、平成21年の国民体育大会でウェルター級日本一にもなったほどの実力の持ち主でもある浅岡代表は振り返る。
早稲田大学を卒業した浅岡代表はIT企業のDeNAに入社、カーシェア&レンタカーサービス「Anyca(エニカ)」の立ち上げに携わった。やがてメルカリに移籍して自動車関連のプロジェクトリーダーとなり、より円滑で安全に売買できるよう、陸運局などと連携してナンバープレートを読み込むだけで即座に出品できるような仕組みを構築するなどした。
浅岡代表は、「実はエニカをやっているころからすでにRENDEZ-VOUSの構想はありました。エニカも素晴らしいサービスでしたが、もっと固定メンバーで会員制にして共同所有すれば、劇的にコストを抑えられて、1人で何台もクルマを持てると思いました」と語る。
RENDEZ-VOUSを立ち上げた2022年当初は、コレクタブルな希少性の高いクルマを扱っていたところ、より幅広い人たちが気軽で自由に使ってもらえるようにと2024年6月に現在のサービスを開始するや、わずか10日でガレージがキャパオーバーになってしまうほど申し込みが殺到。年末の取材時点で約400台に達しており、「僕らが想定していたよりはるかに多くの方々に興味を持っていただけています」と浅岡代表。
このRENDEZ-VOUSのオーナーになるには2パターンの申し込み方法がある。1つはクルマが明確に決まっている人は「車種」「年式」「予算」などを入力すればよい。一般的な販売店のように在庫車両をズラリと並べるような売り方ではなく、4~6人の申し込みがあったらそのクルマを仕入れるというスタイルをとっていて、もし途中でオーナーが解約して枠が空けばWebサイトに掲載して再度募集する。
ピンポイントで集める上記のパターンに対して、「ボディタイプ」「予算」「トランスミッション」の3つの軸で申し込むパターンもある。1つめのパターンで挙がったクルマを、2つめのパターンで申し込んだ人にも提案してマッチングを図りつつ、人数が集まったらクルマを探してきて納車という流れ。
車種により人数や金額は変動するが、1台に対してのオーナーは4~6人いて、各自が月額金を支払い、4人なら1人あたり年間72日、6人なら1人あたり年間38日、オーナー専用サイトの予約ツールで入力し、空いていれば24時間365日いつでも使える。
浅岡代表は、「いろいろと比較されるのですが、レンタカーでもカーシェアでもなく、まったく新しい『RENDEZ-VOUS』です。共同オーナー型の所有というのは僕たちだけです。そこで大事にしているのは、あくまで“所有”という感覚です。利用形態としてもレンタカーやカーシェアは1日や半日という単位で使いますが、RENDEZ-VOUSでは週単位で利用される方が多いです。普段はミニバンに乗ってるけど、この1週間はフェラーリを家において、フェラーリとの暮らしを楽しむということができます。ミニバンはここに置いておけます。また、費用を抑えて、メンテナンスや置き場所など、いろんなものから解放されて、端的にいうとリーズナブルで楽に手間もなく利用できるサービスである上に、大事なのはその後で、共同オーナーになっていただいてからのサポートです」と説明する。
料金にはタイヤやオイルやバッテリといった消耗品やメンテナンス込みで、基本的な整備はここでやっているが、重整備の場合も近くに付き合いがある業者がたくさんあるので、直ぐに対応してもらえるという。
出先で何かあっても、例えばファンベルトの音が気になるという連絡があった場合、状況を確認して、それなら大丈夫とか、直ぐに戻ってきてほしいと伝え、必要とあればロードサービスで対応するなど、すべてサポートしている。
「もちろんクルマなので、駐車するときにちょっと当てちゃったということもあります。それも含めてカーライフじゃないですか。修理完了したので明日からまた使えますよと連絡すると、僕たちが一番うれしいのは、助かった、RENDEZ-VOUSでよかったといってもらえることです。1人だとどうしていい分からないことも、RENDEZ-VOUSがすべてサポートします。そこが大事だと思っているので、力を入れています。心配せずに気軽に楽しんでほしいですね」(浅岡代表)
クルマを選ぶにはどう目利きすればいいのか分からないという人も多いが、それも金銭面を含めRENDEZ-VOUSならすんなり突破できる。
浅岡代表によると、「世の中の9割以上の人は実はオープンカーに乗ったことがありません。ましてやポルシェ、フェラーリなんてなおのことです。でもいつか乗ってみたいと思っている人は少なくありません。1人で所有するのは大変ですが、例えば月額5万ぐらいでフェラーリに乗れるとなると、一歩踏み出してみようかという気になりますよね? 僕も実際に共同オーナーになっていて、こんなにいいサービスないと思ってるところです。僕は今3台ばかり共同所有しているんですが、自分で所有しているクルマを4台ほど売れば、10台ぐらい共同所有できるんですよ。そっちのほうがよくありませんか? 例えばスーパーセブンなんて、1人ではなかなか買えません。でも乗るとめちゃめちゃ楽しくて、とんでもないと思って、僕も共同オーナーとして入っています。この週はマスタングと暮らそうとか、春になったらスーパーセブンとか、そういうこともRENDEZ-VOUSだから味わえるんです。もっともっと広げていきたいなと思っています」と続ける。
オーナーの属性は大別して3タイプで、シンプルにクルマ好きな人のほか、30~40代のパパ前後世代、そして60歳以上の還暦世代が多いという。パパ前後世代は、ある程度その子供も大きくなってきたとか、子供はいないけど新しい楽しいこと始めたいと好奇心を持って探しているような人だ。例えば子供が生まれる前にRX-7に乗っていて、生まれてからファミリーカーに乗り替えたが、子供も大きくなってきたので、また、RX-7に乗りたいのだが、手元にはファミリーカーが必要で、もう1台増やすのは難しく、しかもRX-7は高騰している。そんな中でRX-7を契約したというケースがあったそうだ。
還暦前後の層では、もともとクルマに興味はあったが、1人で趣味性の高いクルマを持つにはtoo muchで、メンテナンスなどの不安もあるが、時間もあるし、免許を返納する前に乗れるうちに乗っておきたいという人が多いという。
興味深いエピソードも枚挙にいとまがない。取材日には、いつかポルシェに乗りたくて、湘南の海沿いを走ってみたかったという初回利用の人を送り出したばかりで、うれしそうに「江ノ島に行ってきます!」と走っていったという。
「そんな夢のお手伝いができると僕らもうれしくて、まさにそのためにやっています。本当に1人ひとり、それぞれの方にロマンや感動やいろいろなエピソードがあるんです」と浅岡代表は目を輝かせる。
その前日に納車した人は、フェラーリなどいろいろな高級車に乗ってきたが、教習所を卒業してから 30年以上MT車に乗ったことがなく、とはいえペーパードライバー講習に1人で行くのもはばかられ、縁があって仲間入りしていただき、昨日レクチャーしながら一緒に走ったところ、問題なく走れるようになったという。
「走り終わったあとに、ありがとう! と本当に感謝して、これでMTを楽しめるようになったといってくれました。そういうお手伝いができるのもRENDEZ-VOUSならではです」(浅岡代表)
大学生の人が初めて買うのがスーパーセブンということもありえる。彼らの世代からすると共同オーナーは当たり前で、民泊を扱うAirbnbや、Uberといったシェアリングエコノミーが生まれたときから普通にある世界で育ってきたので、何の抵抗もなく、むしろいいと思ってもらえるという。
もちろん若いと普通にマイカーを所有すると保険料も高い。クルマに興味はあってもどこかで諦めていて、だから見ないようにしている若い人は少なくない。ところがRENDEZ-VOUSを介すれば、自分ごとにできるかもしれない。
ぜひ父親を乗せたいという若い人もいれば、昔フェラーリに乗っていて維持費が大変で手放したが、どうしてもまた乗りたくなったという年配の人が、エンジンかけた瞬間、「あぁ、この感じだ」と目をうるませていたこともあったという。
つい最近も、ヒストリックカーから最新の高級車までいろいろ持っている界隈では有名な人が黒いポルシェ930を見て、そういえばポルシェに乗ったことがないことに気づき、黒は好きではないが、共同所有ならありだと思い始めた。しかも駐車場代ぐらいの出費で、「ポルシェに乗ったことのない人生を送るよりも、ぜひ乗ってみたい」とその場で申し込んでくれたという。
「1人ひとりにドラマがあって、予期せぬ出会いもRENDEZ-VOUSだからこそ起こります。自分もそうなんですけど、自分の好きな路線のみで国産車には今までぜんぜん手を出したことがありませんでした。でも、見て見ぬふりしてきた面白いクルマというのはいっぱいあって、ひとたび出会ってしまうと、興味はあっても1人では所有できない。でも共同所有だったらありだなと思えてきます。自分だけなら買ってない、新しい接点になるんですよね。楽しみ方の幅がすごく広まります」(浅岡代表)
ガレージには製作中のサーキット仕様のインプレッサもあり、浅岡代表は、「やっぱり走ってみたいじゃないですか。サーキットを知らない人生よりは、走ったことのある人生のほうが絶対にいい。でも、いろんな知識や準備が必要なので、詳しい仲間に助けてもらいつつ、まずは身内ベースで共同オーナーのサービスを始めようと思っているところです。いろんなことを制限せずにやっていきたいなと思っています。キャンピングカーなんかもやりたいです」と浅岡代表の夢は広がる。
ガレージの2階には、オートモビルカウンシルで一緒に登壇したカーグラフィックの加藤社長から、メンバーのみなさまが来たとき読んでもらえるようにと、創刊号からすべて寄付してもらったというバックナンバーがズラリ。共同所有している自分のクルマのWebにはない新車当時のインプレッションを、オーナーたちは興味津々で読んでいるそうだ。
そのとなりには、ペブルビーチの オークションに行った際の実際のリストや、浅岡代表がクラシックカーラリーに出場して優勝したときの記念品などが飾られていた。遊びコーナーには、昔なつかしい「アウトラン」では、オーナーらが童心にかえって楽しんでいるという。ちなみにアウトランで主役のテスタロッサは、RENDEZ-VOUSが最初に扱った記念すべきクルマでもある。そのとなりのドライビングシミュレーターは、近所に住む若手レーシングドライバーの川端伸太朗選手が手ほどきしてくれるという。
中央には、来客対応と「音声メディアに興味を持って最近始めた」というRENDEZ-VOUS Podcastの収録のためのスペースがある。独自に始めたPodcastでは、中村史郎さんら著名人からオーナーまでいろんな人にいろんな角度からクルマの話をしてもらっている。インタビューだけでは伝えきれないプラスアルファを伝えていきたいという。
取材時点で横浜のガレージはキャパの上限に達しており、都心部で春頃を目処に次の拠点の準備を進めていて、2025年内にもう40~50台ほど納車し、さらには100台と増やしていくとともに、首都圏以外の東名阪や、軽井沢や瀬戸内や沖縄といったリゾート地や空港の近くなど、いろいろなところで展開することも考えているという。
「将来的にRENDEZ-VOUSが広がることで、日本中どこにでも自分のマイカーがある暮らしを作りたいんです。冬も終わったことだし、白馬に置いてあるスーパーセブンに乗りに行こうとか、夏はフェラーリの458に乗りに北海道へ行こうとか、最高ですよね。そういうことは、世界のピラミッドの頂点にいる大富豪しかできなかったのですが、RENDEZ-VOUSがあることで幅広い方々ができるようになります。ぜひそうしたいですね。みなさんが人生を楽しむことにもっと欲張りになれるようにRENDEZ-VOUSがあるんです」。
「ある車種に乗りたいという強い思いを持っている方には、ぜひ乗って幸せになっていただければと思いますが、特定の車種に強い思い入れのない人にも、好きになれるものと出会えるきっかけになりたいと思っています。だから車種が決まっていなくても大丈夫なように積極的に問戸を開いています」。
「みなさん本当にうれしそうなお顔をされますからね。クルマを納車するときってどうしてあんなにうれしいんでしょう(笑)。エンジンをかけて走り出すときに笑顔じゃない方はいません」と浅岡代表。
続けて、「ただ、僕らがやりたいのはクルマだけじゃありません。1台を複数人で所有する僕らの場合はオーナー間のコミュニティというのもとても大事です。同じクルマじゃなくても、RENDEZ-VOUSのオーナー間でのつながりも、同じような価値観を持った方たちが集まるので、これまたすごく強いです。1人で食事をするよりも、みんなで味わったほうが美味しく感じられるのと同じで、喜びや楽しさというのはみんなで分かちあったほうが大きくなると思います」。
「RENDEZ-VOUSなら、コストは数分の1で、喜びを数倍にすることができます。そんなつながりを届けることで、結果的に1人ひとりの人生に豊かで幸せな時間というものを増やしていきたいというのが本質的に僕たちのやりたいことです」。
「もっと欲張りになっていただいて、その選択肢でよかったと思ってもらえる人が増えてくれたら、もうお互いハッピーですよね。この仕事冥利につきます。RENDEZ-VOUSがあってよかったといってくれる人がいて、ウェイティング登録が増えれば増えるほど僕らもがんばれます」と浅岡代表は今後のビジョンも語ってくれた。
お話をうかがったあと、メンテナンスが済んだばかりというメルセデス・ベンツSL500(R107型)をドライブした。それはもうとんでもなく手入れが行き届いた状態で、かつてだいぶ前に筆者がドライブしたSLよりもずっとコンディションがよいことに感心するとともに、このクルマが現行型だった当時の記憶がいろいろ蘇ってきて、タイムスリップしたような気分を味わうことができた。


















