「フォルクスワーゲン ポロTSI」長期レビュー
第8回:タイヤを交換してみた


暖かくなっていよいよドライブという時期だが、ポロはしばらく最小限の走行にとどめておこう

 このたびの東北地方太平洋沖地震で被災された方々に、謹んでお見舞い申し上げます。

 関東地方でも駐車場にある自転車やバイクが倒れたり、何かが落ちてきたりしてクルマに傷が入ったという方もあり、たいへん心が痛んでいる。幸いにしてうちのポロは無傷だった。

 2月来のガソリン高騰に追い打ちをかけるように、震災で一時的にガソリンの入手が難しくなり、さらにガソリン価格が上がったことで、走行距離はあまり伸びていない。しばらくの間はポロをなるべく動かさないで、ポロを観察していきたいと思っている。

 今回はタイヤを交換している。前のタイヤはわずか5000kmの走行で、摩耗もほとんどなし。新しい状態から新しいタイヤへの交換なので、違いが正確に分かると思う。

2~3月は燃費が改善しているはず
 2月の燃費の推移は燃費表では悪くなっているが、これは1月に遠出が多かったことに対して、2月はチョイ乗りが多かったため。3月に入ってからも満タン法の数値では改善されていないが、実際に気温の高いときに乗ってみると、区間燃費の延びがよくなっている。

 2月から乗り方が変わったのは、ガソリンが値上がりして走行を控えたこともある。そのため余計に走行距離の少ない移動が増え、満タン法での燃費が悪化しているというスパイラルになっている。

 それでも、後述するタイヤ交換の効果もあり、区間燃費では真冬にはない18km/L台を記録するなど改善傾向も見られる。まだこの表にはないが、震災直前とその後に中距離を走り、次回満タン時の燃費はもう少し良い数値が期待できる。

 気温が上がるにつれて燃費がよくなることは、毎日の通勤で気温と燃費のデータをとっている読者の方からも、同様の報告をいただいた。残念ながらうちのポロは毎日定時に定距離を走る通勤には使用せず、必要なときに必要なだけ走るという使い方なので、定性的なデータはとれていない。燃費の経過も走行条件を合わせた厳密な比較ではなく、気温などの比較データにならないことは申し訳なく思っている。

給油日走行距離(km)給油量(L)燃費(km/L)
2011/1/1064741.5615.57
2011/2/558438.915.01
2011/2/1318313.6413.42
2011/3/921416.4113.04

 なお、震災以後、給油はしていない。このレポートが掲載される頃にはガソリン供給が改善されているだろうが、しばらくはガソリンを補給せずに済むように走行を最小限にしたいと思う。

タイヤをミシュラン エナジーセイバーに交換
 今回は、クルマの大きな消耗品のひとつであるタイヤを交換した。筆者のポロはコンチネンタルの「プレミアムコンタクト2」が装着されていたが、工場装着タイヤはプレミアムコンタクト2と、ミシュランの「エナジーセイバー」の2タイプということで、もう片方のタイヤに俄然興味が湧いてきた。

 今までいろいろな個体のフォルクスワーゲン車に接してきたが、ゴルフの新車にエナジーセイバーが付いているのは見たことがあるものの、新型ポロに付いているのはまだ見たことがない。エナジーセイバーとの違いに興味があったので、ほとんど減っていない「プレミアムコンタクト2」から、思い切ってタイヤ交換を試みた。

 エナジーセイバーの検討を始めたのは、もうひとつの工場装着タイヤであるということのほかに、比較的最近登場した製品であることと、ラベリング制度に準じた性能が示されていること、そして、久々にミシュランタイヤを使ってみたかったからだ。

 タイヤのラベリング制度とは、転がり性能と、相反しがちなウェットグリップ性能を指標化したもの。タイヤの特性のうち、燃費改善が期待できる転がりやすいタイヤかどうかと、雨の日の安全性が判断しやすくなる。

 しかし疑い深い筆者は、ラベリング制度の導入で、ラベリングの測定法に特化した性能を持つだけで、現実に即した性能を持っていないタイヤも現れるのではないかと恐れている。ならば、ラベリング制度が始まる前のタイミングに登場し、世界で販売されているミシュランエナジーセイバーなら、日本のラベリングだけに特化したズルいタイヤではないと思ったのだ。もちろん、ラベリング制度の指標は現実に即している部分も多く、ラベリング頼みのタイヤ選びも間違いだけではないと思う。

 交換は激安店や量販店ではなく、この道40年以上のベテラン職人がいるという東京・新橋の小林タイヤ商会さんに依頼した。ミシュラン公式ストアからオーダーしたのだが、知らない店でも公式ストアなら費用などを事前に確認でき、気軽に頼める点でおすすめだ。

交換するタイヤの発注はミシュラン公式ストアで。交換するお店は、ミシュランタイヤの性能を活かせる技術を持った“3つ星店”を厳選して取次いでいるとのこと。老舗が多いらしいタイヤはエナジーセイバーをチョイス。ポロのサイズは185/60 R15。驚くことにタイヤ値上げの時勢に反して、公式ストアでは3月から値下げされていた……交換店はほぼ全国を網羅。便利な都心部に位置し、ベテランタイヤ職人がいるという小林タイヤ商会を探して選択した
交換のために出向いた東京・新橋の小林タイヤ商会。霞が関や虎ノ門が近い場所柄、グリーン購入法などによりエコタイヤ需要が多いというオーダーしておいたエナジーセイバーが届いていた交換前にエナジーセイバーをチェック。手でめくれそうなほど柔らかいサイドウォールがミシュランタイヤの特徴
ピットにポロを入れる小林社長の手によってタイヤが外されていく古いタイヤを外し、まずはバルブの交換。空気漏れのトラブルを防ぐため、こちらでは原則交換しているとのこと
ミシュランタイヤはいわゆる軽点といったマークがないので、小林タイヤ商会では銘柄の記載があるところをバルブ位置に合わせているとのこと石鹸水で空気漏れチェックも行うバランサーでホイールバランスを確認する
画面にウェイトの位置が表示される。オモリの量が多いと表示されたときは、タイヤとホイールをずらして組み直すオモリを打ちつけてタイヤのホイールへの組み付けは完成だ
ボルトはいきなりインパクトで締め込むのではなく、まず手締めから最後はもちろんトルクレンチで仕上げるホイールキャップを押しこんで完成だ
ちなみにポロの空気圧は給油口のリッド裏に記載されている作業をしていただいた、この道42年の小林社長。「タイヤはただ丸いだけじゃないんだよ」と言う言葉にも重みが感じられる

路面や空気圧の状態が分かりやすく、燃費走行マニアにもおすすめタイヤ
 エナジーセイバーの第一印象だが、タイヤに携わって42年間という小林タイヤ商会の小林社長が「今のタイヤは慣らしはいらない」と言う通り、交換直後に新橋付近の第一京浜を走り出したときから、地面に吸いつくようなグリップを感じ、安心して走行ができた。しかし、反面、転がりが期待ほどではないかも……というのも正直な印象である。

 交換してすぐに雨の日があり、雨中走行を試みたがこれもグリップに問題なし。雨にもかかわらずグニュっと吸いつく印象で走っている。ただ、今までのミシュランに抱いていた、履きはじめからカッチリとした乗り味で真円度が高く感じるタイヤとはちょっと違うような印象を受けていた。

 しかし、100kmほど走行したころから変化した。グニュっとした感じは少なくなり、カッチリとして路面状況が手にとるように分かるタイヤに変わった。それでいて、大きな衝撃は適度に和らげてくれる。今までミシュランタイヤに抱いていた印象そのままに変化したのだ。

 そして、さらに走行を重ねると、転がり性能も改善したことに気がついた。路面が良好な道路では、アクセルを離した後の惰性走行の伸びが大きくなり、逆にブレーキを踏むことが多くなったほど。転がりのよいタイヤのおかげでブレーキパッドの摩耗が進むという、嬉しいような困ったようなことになりそうなほどだ。

 タイヤノイズは、プレミアムコンタクト2の「シャー」という高めの音からエナジーセイバーは「コー」という少し低い音になるとともに、路面の状況による音の変化も分かりやすくなった。

 特に最近舗装した道に多い静音舗装では、プレミアムコンタクト2では音質が変化するだけで音量が大きく変化する印象はなかったが、エナジーセイバーでは、はっきり音量が小さくなるのが確認できた。逆に荒れた路面では、エナジーセイバーで「ゴー」という音が目立ってしまう。

 転がり抵抗は、全体的に良好だったプレミアムコンタクト2と違い、荒れた路面では転がりは良好ながら、路面がよくなるつれて改善され、静音舗装のようなフラットな道でさらに大きく改善されるというように変化した。空気圧についても、ポロの標準の空気圧の前220/後200と荷物満載時用の240/220の違いが分かりやすく、空気圧を高くすると転がりがよく、そして硬くなることははっきりと分かる。

 つまり、いつでも良好なコンチネンタルに対して、転がりもノイズも路面の状況によって大きく変化し、路面が良好になるほど改善が著しいエナジーセイバー、という感じだろうか。走行状況によって燃費が大きく変化するポロの特性をさらに際立たせる感じで、なかなか面白い。

 筆者自身も、路面や空気圧の変化をよく感じることができ、いつも優等生だったポロに新しい楽しみを見つけたようで非常に満足している。低燃費走行の研究を楽しむ燃費マニアの方にも、ぜひおすすめしたいタイヤだと思った。

交換したばかりでピカピカのエナジーセイバー300km走行した後のフロントタイヤ雨の日でもグリップなどに変化は感じられず、安心して走行できた
これが交換前のプレミアムコンタクト2。安物タイヤではなくむしろ高級品なので不満は全くなかった。タイヤ重量は手持ちのヘルスメーターの計測で鉄ホイール込みでおよそ15kg、エナジーセイバーとほぼ同じだった空気圧の調整程度なら自転車用ポンプで問題なし。自転車用を買うときに米式バルブにも対応するポンプを買えばクルマに使えて非常に便利。ただし、完全に抜けた状態から入れる場合は苦労する空気圧計はイイ物を用意しておくと使いやすい。空気を抜きながら調整できるタイプは便利でおすすめ

ポロの説明書は“自炊”しやすい
 タイヤも新しくなったことだし、もっとたくさん乗ってみようと思っていたところにやってきた大地震。前述したようにポロを存分に動かせる状況でもないので、ポロの説明書に触れてみたい。

 ポロの説明書は、専用のバインダーに綴られている。ここに車検証や保険証券なども入るようになっており、車検証入れも兼ねている。

 バインダー式のため、改訂があった場合にページの差し替えや追加ができる。2010年のポロは1.2 TSIエンジン自体が追加モデルであるため、説明書の一部ページが差し替わっていてほしいのだが、残念なことに差し替えではなく、追補ページとして別冊子が綴られて提供されるようになっている。

 追補ページが残念な点はともかく、説明書本編は完全にバラバラの紙を綴じた状態になっているので、説明書を自分でまるごとスキャンして電子化する“自炊”も簡単なのではないかと思いついた。

 そこで早速、自炊の定番マシン、富士通の「ScanSnap S1500」で説明書をスキャンしてみた。章を区切るページが厚紙で、わずかにサイズも異なっているが、それもまとめてスキャン、わずか10分ほどでPDFファイルができてしまった。

 問題の追補ページも、ホチキスを丁寧に外してからスキャンした後、ページを編集して本編に追加した。

 こうしてできあがったPDFファイルは、表紙や追補ページを含めて327ページ。ページ数は少し多いが、電子化されたためにいつでもパソコンやスマートフォンで参照できて、たいへん便利だ。

 なお、トヨタなどは説明書を自社のWebサイトで公開している。今回のように自分で自炊せずともいつでも読めるほか、購入前に装備の細かな使い方も確認できて、たいへん便利。フォルクスワーゲンもぜひ、電子化した説明書ファイルの公開を考えてもらえればありがたいと思う。

ポロの説明書類のバインダーは、グローブボックスの下のフタを開けた場所に入っている
取り出したバインダー。説明書、整備簿、車検証などをすべて綴じておくことができる一緒に閉じられた説明書せっかく差し替え可能な説明書なのに、いきなり追補版が入っているのが残念
章立てごとに仕切りの厚紙が入っているが、そのままスキャン可能だった1枚1枚パラバラになるので、ドキュメントスキャナーにもそのまま入る読み取り中。これで一気に電子化できる
電子化されたポロの説明書を見開き表示したところ。メーカーがPDFファイルを公開してくれれば便利なのだが……

(正田拓也)
2011年 4月 4日