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SUPER GT300クラス「SUBARU BRZ R&D SPORTS」の2014年シーズンを振り返って
辰己英治 STI総監督に聞くBRZ GT300の2015年シーズンの方向性
(2014/12/30 11:50)
SUPER GTの2014年シーズンが終わりました。GT500クラスはミシュランタイヤを履くMOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)がシリーズチャンピオンを獲得。GT300クラスは2台のメルセデスベンツSLS AMG GT3を擁するGAINERがチームチャンピオン。ドライバーはBMW Z4 GT3の谷口信輝選手、片岡龍也選手(グッドスマイル 初音ミク Z4)がチャンピオンを獲得しました。
3年目の挑戦となるSUBARU BRZ R&D SPORTSは佐々木孝太選手に加え、新たに井口卓人選手を起用する新体制でチャンピオンを狙いましたが、結果は残念ながらドライバーランキング5位、チームランキング6位と昨年を下回る結果で今シーズンを終えました。24台中の6位ですから立派とも言えますが、チャンピオンを狙っていたチームとしては残念な結果だったことでしょう。おそらくファンの方々も大方同じ想いではないでしょうか。
そんな2014年もあとわずか。2015年1月の東京オートサロンではまた新たな体制が発表されるでしょうから、その前に今年1年の「SUBARU BRZ R&D SPORTS」の戦いをちょっとだけ振り返るとともに、STI(スバルテクニカインターナショナル)総監督である辰己英治氏のインタビューをお届けします。
Rd.1 岡山国際サーキット
予選12位 決勝21位
デビュー当時から2.0リッターエンジンながらピンポイントなセッティングで高い予選順位を獲得してきたBRZにとってみぞれが降ったり止んだりする不安定な天候の中で得た予選順位12位は、それほど悲観する結果ではないと思います。決勝は晴天に恵まれたものレース中に追突されリアディフューザーを破損。ピットでの修復作業で遅れをとったBRZはトップから14周遅れの21位。仕方ない結果とはいえ今振り返ると何か今シーズンを象徴するようなスタートのようです。
Rd.2 富士スピードウェイ
予選2位 決勝12位
予選2位でそろそろエンジンがかかったように見えたBRZですがここでは2回のセーフティーカー導入により、車重が軽くタイヤの温まりが遅いBRZはその後ペースアップできず苦戦。しかも決勝中にシフト不能となるトラブル。またもや完全な状態で走りきることができないレースとなりました。セーフティーカーはルールに則った導入であり仕方ないのですが、マシントラブルはチャンピオンを狙うチームであれば最も避けたいファクターです。なおこの時点ではまだ獲得したチームポイントは4点。トップを走るGOODSMILE RACING & TeamUKYOはすでに26点獲得していました。
Rd.3 オートポリス
予選1位 決勝2位
BRZのマシン特性とは相性のよいとされるコースです。しかも今年から台風に翻弄される時期から春の開催と変更され天気も上々。これ以上は望めないシチュエーションで開催されました。結果は素晴らしく、今年初の表彰台獲得。ピットインのタイミングによりARTAのCR-Zの先行を許す結果とはなりましたが、その走りにやっと今シーズンの希望が見えた1戦でした。
Rd.4 スポーツランドSUGO
予選2位 決勝14位
オートポリス同様BRZのマシン特性を考えれば相性のよいコース。しかし一方でどうしても結果が残せない「縁起のわるい」コースでもあります。ただし縁起など吹き飛ばさなければチャンピオン獲得など夢のまた夢。勝たなければならないコース、それがSUGOです。
結果は……。正直言ってファンもあの日のことはもう思い出したくもないでしょう。なんとピットでの違反行為でのペナルティを1レース中に2回も受けたのです。万事休す。コース上では素人目にもハッキリ分かるほど切れ味のよい動きをしていたBRZだっただけに残念な結果でした。
Rd.5 富士スピードウェイ
予選1位 決勝1位
苦手苦手といいながらそれなりの成績も残している富士。実は長いストレートのスピード不足に目が行きがちですが、それ以外の場所では割とBRZ向きではないかと思えるコースレイアウトです。なんと今季初優勝を果たしました。全戦全力疾走が身上のBRZですが相性も縁起もいい鈴鹿で70kgものウエイトを積み戦うことになるとは想定外。第2戦でも予選2位と実は今年のBRZは富士との相性はよかったのです。
Rd.6 鈴鹿サーキット
予選4位 決勝9位
昨年の覇者BRZが臨んだ鈴鹿1000km。昨年のブッチギリの走りが頭の片隅に残っているであろうBRZだけにその期待は大きいものでした。おそらく70kgのウエイトなどなんのその!って誰もが思っていたでしょう。ところが予選は4位。ちょっと冷静な目で観戦することとなった決勝レースではどうも精彩に欠ける走りでした。後で分かったことですが、決勝序盤でリアをヒットされ空力デバイスが壊れ、リアのダウンフォースが減少していたとのこと。今季2度目のリア破損。残念。
Rd.7 チャーンインターナショナルサーキット(タイ)
予選 タイム抹消により最後尾スタート 決勝5位
予選では2位のタイムを出し、初めてのコースでそのポテンシャルを見せつけたBRZですがなんと車両検査で最低地上高が不足していることが分かりあえなくタイム抹消。決勝では最後尾スタートとなりましたが何とそこから挽回して5位。このコースともBRZは相性はよさそうです。ちなみにこの車高、前日の練習走行中に他車から接触を受けたフロントサイドの下面が変形していたとのこと。
辰己STI総監督に聞くこれからのBRZ GT300
──2014年を振り返って印象的なレースを教えてください。
辰己STI総監督:シリーズ終盤ではありますがタイでのレースはいろいろな意味でターニングポイントとなりました。それまでは予選順位がよかったこともあり、決勝レースでは例えばタイヤを温存する作戦を採ったり、上位を走っている時にはシリーズポイントを考え順位をキープする方向で作戦を採ったり、安定志向での戦い方も実はありました。しかしながら結果としてその考えでいいことは何もなかったように感じます。最後尾スタートのタイではそういう考えを捨てざるを得なくなり決勝では攻めの姿勢でレースに向かいました。サスセッティングも大きく変えてみました。これが当たってこれで今後の方向性が決まりました。また暑いタイと寒いもてぎでの違いから見えてきたことも今さらではありますが大きな収穫となりました。それは3年目にしてつかんだ大きな飛躍のための大きな材料です。
2014年はミスで落としたレースもありましたが、攻める姿勢の足りなさが生んだものもあると思います。もっともっと攻め続ければ防げたものもあるでしょう。もちろんそれゆえに生まれるミスもあるかもしれませんが、それはそれで受け入れたほうが全体としてはミスも減るでしょうし、チームにもその方向でいこうと話しています。
──SUPER GT(GT300クラス)についての考えを教えてください。
辰己STI総監督:現在のGT300の主流はご存知のとおりFIA-GT3マシンです。プライベートチームによる参戦であっても実質的には「メーカー」が開発した量産レーシングカーで参戦します。つまり多くのチームがワークスマシンと言って差し支えないのです。
現代のレースはレースから市販車にフィードバックすることが少なくなってきています。むしろ精度の高い量産技術がレーシングカーに注入されることの方が大切だと考えています。その最たるものが欧州メーカーが生み出すFIA-GT3マシンともいえるでしょう。実際我々が戦う相手であるFIA-GT3マシンはレース後半でもその性能を維持し続けます。これがワークスの力なのです。
WRブルーの我々のマシンは一見ワークスのように見えますが、JAF-GTマシンというのは基本的にそういうFIA-GTマシンと成り立ちが違うのです。GT300マザーシャシー(専用モノコック)の案は面白いと思いますが、我々は今まで戦ってきたBRZ GT300に富士重工やSTIの持つ基礎技術や量産技術を組み込み生かすことによって強くしていきたいと考えています。
2015年のモータースポーツ活動については2015年1月開催の東京オートサロンで発表を予定しております。詳細についてはそれまでお待ちください。ひとつ言えることはスバルのブランドイメージにおいてモータースポーツは不可欠なものだとは考えております。スバルはこれからもモータースポーツとともに歩んでいきます。
──Car Watchの読者にメッセージをお願いします。
辰己STI総監督:(前述したように)スバルがモータースポーツから撤退することはありません。また現代のモータースポーツにおいてはメーカーの基礎技術や高い量産技術は戦うレーシングカーにおいても重要なことはFIA-GT3の活躍を見ても明らかです。
もちろん皆様にお届けするスバルのクルマやSTIのコンプリートカーは戦うために作られている訳ではありませんが、そのテクノロジーがこれからはレースにおいても大切なものとなるのです。皆様の普段乗られているクルマに使われている技術こそ我々レースの世界で戦う者の武器となるのです。そんな我々が生み出したディーラーで買えるクルマでぜひ豊かなカーライフを楽しんでほしいと思います。
オートサロンでは是非我々のブースに足を運んでみてください。よい報告ができるよう頑張っております。