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国際アートアワード「HERALBONY ArtPrize 2025」表彰式、受賞アートの1つをラリーカーのデザインに起用
2025年5月30日 14:14
- 2025年5月29日 開催
ヘラルボニーが主催する国際アートアワード「HERALBONY ArtPrize 2025 Presented by 東京建物|Brillia」は、障害のある方が1人の作家としてその才能が評価され、活躍の場を切り開いていくようにという思いを込めて2024年1月31日に創設されたものだ。
2回目となる今回は「限界はない、障壁を越え、創造性を解き放て」をテーマに開催。今年は65の国と地域から総数2650点もの作品の応募があり、その中からグランプリ作品を1作品、企業賞を5作品、さらに審査員特別賞として4作品が選出された。
そして本年度のグランプリに選ばれたのは、フランス在住の作家であるエヴリン・ポスティック氏の作品「La Reine Charlote(シャーロット王妃)」である。
グランプリ作品「La Reine Charlote(シャーロット王妃)」について、審査員は「この作品は2021年に書かれたものであり、際立った美しさと高い完成度が非常に印象に残るものであった。作品はカナダの古地図上に書かれていて、海を漂う生物、あるいは地球外生命体とも取れるような形が表現されている。複雑な線が地図と重なりあうことで『モアレ』のような視覚的効果を生み出していて、それが伝統的な版画やエッチングの技法を想起させている。また、作家は羅針図など地図上の要素を巧みに用いながら、異形のフォルムや画面空間を前面に際立たせ、そして自在に操っている」とコメントしている。
エヴリン・ポスティック氏の「La Reine Charlote(シャーロット王妃)」を始めとする各受賞賞作家と最終審査進出作家(61名)による全65点の作品は、2025年5月31日より6月14日までの期間、三井住友銀行東館1階アース・ガーデンにて開催されるアート展「HERALBONY ArtPrize 2025 Exhibition Presented by 東京建物|Brillia」にて展示される。こちらの会場は入場無料となっている。
また、展覧会初日となる5月31日にはオープニングイベントとしてグランプリ受賞作家のエヴリン・ポスティック氏、審査員の黒澤裕浩美氏のほか、ヘラルボニーからCo-CEOの松田崇弥氏、松田文登氏によるトークイベント、さらにエヴリン・ポスティック氏による公開アート制作やアートクルーズなどの多くのイベントが用意されている。
開催時間は13時からで終了予定は16時だ。こちらも参加費は無料で、事前の申し込みなども不要。また手話での通訳もある。
受賞アートがラリーカーのデザインへと生まれ変わる
アート展「HERALBONY ArtPrize 2025 Exhibition Presented by 東京建物|Brillia」では、開催に先がけて報道陣向け説明会と先行内覧会が開催された。説明会ではヘラルボニーの松田崇弥氏、松田文登氏によりアワードについての概要と特徴が説明された。
アワードでは協賛企業の受賞作を、それぞれの企業ごとのアイデアで形を変えて世に出る仕組みを作っているのが特徴となっていて、これを「出口のあるアワード」と呼んでいる。
例として挙げられたのは、2024年にトヨタ自動車賞を受賞をした作品。トヨタでは受賞作をクルマやモータースポーツを通じてより多くの人の目に触れる存在とするため「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge」の参加車両にラッピング。世界で1台のアートラリーカーとして「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge in 利府」で出走している。
また、JAL賞の受賞作品は機内用紙コップのデザインに起用された。この紙コップは2か月間にわたってJALの全路線で600万個配布されたほか、受賞作は1部路線のビジネスクラス用アメニティのデザインにも起用されていた。
「HERALBONY ArtPrize 2025 Presented by 東京建物|Brillia」表彰式
「HERALBONY ArtPrize 2025 Presented by 東京建物|Brillia」では午前中に報道陣向けの説明会を開いた後、同日の夕方より都内のホテルにて表彰式を行なった。
表彰式はヘラルボニーCo-CEOの松田崇弥氏、松田文登氏のスピーチから始まった。両名からは受賞作家、応募作家に対して「私たちには到底及ばない。彼らだからこそ感じることができるクリエイティビティの光が存在している」とその活動を称えた。そして「そこに存在する1つの光が、もっともっと社会に開いていく、そんな未来を皆さんとともに見つけていきたいなと思います」と結んだ。
その後は審査員特別賞から企業賞、グランプリへと表彰の時間となった。トヨタ自動車賞を受賞した作家は古城貴博氏で、作品名は「はばたく」である。
この作品は古城氏が仕事から自宅に戻り、毎日20分ずつコツコツと仕上げられたもの。画用紙やキャンバスにジェッソで下塗りをした後、ポスカのペン先を細かく動かしながら模様を描いている。そのため、同じ模様は二度となく、その時々の感性によって唯一の表現となっていた。古城氏は言葉数が少ないということだが、描くということで表現の翼を手にし、周囲との関係を深める術を見つけたという。
表彰式の壇上ではトヨタ自動車のVC開発部の木全厚氏と中村昌子氏より古城氏に表彰状が授与された。選出の理由について木全氏は、「私たちは本当に行きたいとこに行けるとかやりたかったことができるというのが当たり前に感じております。しかし、日本では移動ということに障害があったり、困難だったりすることにより、行動自体を躊躇される方がいらっしゃると聞いております。私たちは“すべての行きたい”を叶えていきたいと考える企業です。私たちトヨタのこの思いに対して古城さんの作品“はばたく”からは大きな重なりを感じました。見る人全員が前向きな気持ちになり、自分も羽ばたいていきたいという気持ちになるような明るさを感じます」と説明した。
続けて中村氏は「こちらの作品は原色に加えてラベンダーといった柔らかく優しい色も使われております。そのように優しさと力強さが共存している印象を受けました。また、中心からこみ上げてくるような立体感も感じられ、まさに羽ばたく瞬間そのものを表現していると感じ、私の心に深く響きました」と語った。
トヨタでは、受賞作を2024年に続いて「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge」に参戦するラリーカー(ヤリス)のデザインに起用する。予定としては第8戦「石狩」にデビューし、その後、第11戦「高岡 万葉」まで「はばたく」をまとったヤリスが出走する。なお、ドライバー、コ・ドライバーは未定だ。
また、受賞作を起用したオリジナルカー用品の開発が行なわれていることも語られ、壇上で開発中の用品サンプルが公開された。こちらの続報も期待したい。