NEXCO東日本、上信越道、豊田飯山IC~信濃町IC間4車線化の見学会 11月下旬に4車線化 |
NEXCO東日本(東日本高速道路)は、現在対面通行になっている上信越自動車道 豊田飯山IC(インターチェンジ)~信濃町IC間の4車線化に向けた工事で、II期線の完成にともない、下り線をII期線に移行する車線切り替えを8月24日5時に行う。これに先駆け、報道関係者向けにII期線工事現場の見学会が開催されたので、その模様をお伝えする。
上信越道 豊田飯山IC~信濃町IC間は、トンネルと橋脚が連続する山間部を抜ける路線で、現状では上り線につながるI期線のみが開通している。そのため、下り線は豊田飯山ICを過ぎたところから、上り線に乗り入れる形になっており、この8.6kmの区間は、片側1車線の対面通行になっている。
現在この区間の4車線化に向け、上り線につながるII期線を作っており、8月24日には上り線をII期線へと移行する。ただし、従来上り線として使っていたI期線から、情報掲示板や非常電話、標識などの移設を行う必要があるほか、非常時用にI期線とII期線のトンネルをつなぐ避難連絡口設置工事などがあるため、当面は片側1車線規制が続き、11月下旬に完全な4車線化が実現する。これにより長野県内に対面通行の高速道路はなくなる。
現場見学は豊田飯山IC(長野県側)からスタート。写真左が進行方向で、右が後ろを振り向いたところ。ちょうどI期線との分離地点になる | 解説を行ったのは、NEXCO東日本 新潟支社 信越工事事務所所長の久保田謙作氏 | |
現在I期線に装着されている道路標識や情報表示板などの移設を残して、II期線の工事はほぼ完了している | 4車線化のためには、I期線に設けられた中央分離帯の撤去も必要になる |
NEXCO東日本 新潟支社 信越工事事務所所長の久保田謙作氏によれば、2005年~2008年の4年間でこの対面通行区間を要因とした渋滞は52件あり、この内交通集中による渋滞が78%を占めていると言う。4車線化が実現すれば、この交通集中による渋滞は払拭されるだろうとのこと。また、9月下旬にある大型連休(シルバーウィーク)には4車線化は間に合わないが、対面通行だったものがII期線に分離するだけでも、ドライバーにとってのストレスは減るので、渋滞解消への効果はあるだろうとした。
ただし、隣の新潟県の区間には、まだ対面通行区間が多く残されており、豊田飯山IC~信濃町IC間の4車線化の後には、新潟県区間の4車線化が急がれる。
信濃町IC側の合流地点 | 簡易的な分離帯しかない対面通行はドライバーに不安を与えるほか、片側1車線のため、交通集中による渋滞にもなりやすい |
■凍結の多い区間だけにII期線にはさまざまな工夫が施される
最新の道路ということで、II期線には多くの最新技術や工夫が盛り込まれている。特に当各区間は、5本のトンネルと4つの橋梁からできており、また冬には氷点下になることから、トンネル内の安全設備や、凍結の対策には力が入れられている。
積雪や凍結の対策としては、トンネルの出入り口付近に、路面の雪や凍結した氷を溶かすロードヒーティングが施工される。これは、積雪のないトンネル内から積雪のあるトンネル外へ出る箇所が、ドライバーにとって不安を感じさせるため、その境界周辺に、電熱装置を仕込み、路面の雪を溶かすというもの。トンネルとトンネルの間隔が短い滝ノ沢橋に関しては、全面にわたってロードヒーティングを施工している。なお、I期線にはお湯を使ったヒートポンプという同様の装置がすでに施工されている。
トンネル同士の間隔が狭い滝ノ沢橋 | I期線は外壁で橋を覆うことで、降雪による凍結を防いでいる | II期線は道路に電熱線を埋め込むことで路面上の雪や氷を溶かす |
赤と白の配線がロードヒーティング用の電源 | 157.4KP(キロポスト)付近にある滝ノ沢橋 |
また、積雪がないトンネル内と全面ロードヒーティングを施工した滝ノ沢橋を除き、積雪のある部分には、凍結抑制舗装と呼ばれる最新の舗装を採用している。これは高機能舗装の表面に、柔らかい素材と硬い素材でできた粒子をコーティングしたもので、タイヤがその上を走ると、表面がわずかにたわむため、舗装上にできた氷板が砕け、凍結を防ぐというもの。すでに施工実績はあるが、これほど広範囲にわたって凍結抑制舗装を採用したのは今回が初だと言う。
トンネルの中と外で舗装の種類が代わっているのが分かる | 写真左がトンネルの外に施工された凍結抑制舗装、右がトンネル内の高機能舗装。凍結抑制舗装の方が、細かい粒子が詰まっている |
トンネル内の安全対策としては、50m間隔で消火栓が用意される。消火栓は30mのホースを持ち、さらに20m先への放水が可能なため、1つの火災に対し2カ所の消火栓を使った放水が可能となっている。
非常電話は通常が1km間隔なのに対し、トンネル内は200m間隔で設置。また、非常時には隣のトンネルに避難できる連絡口も設けられている。その他にも、視認性の向上のため、通常50m間隔のところを、12mの間隔で高輝度反射板を配置している。これはトンネル内だけでなく、橋梁などにも同様に設置している。
(瀬戸 学)
2009年 8月 20日