R&Dスポーツ レガシィB4、SUPER GT富士を18位で初完走
オートポリスを欠場し、最終戦もてぎに備える

GT300クラスに出走する「R&D SPORT LEGACY B4」

2009年9月12日、13日



 R&Dスポーツは、9月13日、14日に開催された「2009年 AUTOBACS SUPER GT 第7戦 FUJI GT300kmRACE」のGT300クラスに「R&D SPORT LEGACY B4」で参戦し、18位で完走を果たした。LEGACY B4は今回が出場2戦目、デビュー戦となった前戦鈴鹿では、マシントラブルにより、決勝進出もかなわなかった。現在SUPER GTに出走している唯一の4WD車で、駆動レイアウトもまったくの新規の開発とあって、前途は多難かと思われたが、まずは完走することにより、データ収集という最初の足がかりはつかめた格好だ。

トラブルの対策とマシンセッティング
 デビュー戦では、フロントデフからオイルが漏れ、出火という事態に陥ったレガシィB4。今回はその対策として、デフケース自体の剛性アップと、フロントセクションのフレームの剛性アップを施してきたと言う。これが効を奏して、フリー走行から大きなトラブルもなく、セッティングに専念することができた。R&Dスポーツのチーム監督である本島伸次氏はとにかく4WDのセッティングはどの方向にセットすればよいのか手探り状態で、ウォームアップ走行の8分前までセッティング変更を繰り返したと言う。

 最終的なセッティングはタイヤにとっては厳しくなる方向のものであった。そのため、早めにピットインすることも想定したと言うが、「走っている山野選手のコメントで『まだ大丈夫』というのがあったので、行けるところまで行ってみようと、できる限り引っ張った」とは本島監督。実際他のチームが30ラップ前後でピットインしている中、山野選手が43ラップまでピットインを伸ばしている。

 もちろん山野選手がタイヤをいたわって走っていることや、マージンを取って走っていることもあるので、これで問題ないとは断言できないが、方向性は見えてきたと監督。「予選などと比べると車のバランスはだいぶよくなっている」と言う。

予選日の公開車検の段階から、レガシィB4のピットには多くのファンが集まる
今回補強を加え剛性をアップしたというフロントセクションバルクヘッドからV字型に延びるバーは、前戦ではなかったパーツだスタビライザーやステアリングラックが固定されるアルミ削り出しのブラケットも、前戦とは若干変更が加えられている
リアトランクにカーボン製のアウトレットが追加されている追加されたアウトレットは、ブレーキまわりを冷却するためのもののようだ
ブレーキは前後ともにAPレーシングフロントブレーキの脇から水平対向エンジンのカムカバーが見える
フェンダーアーチが大きく盛り上がったマッシブなエクステリアヘッドライトはカバーが黄色い以外は市販車と同じ模様。ブラックアウトされていることからS-Packageのヘッドライトのようだワイパーは1本でフラットタイプのブレードが装着される
リアディフューザーテールランプも市販車と同じもののようだ後方の視界は皆無なので、リアカメラによって後方を確認する
ドア自体はドライカーボン製だが、グリップは純正部品に見える後席部分は完全に囲われ、燃料タンクなどが装備されるドライカーボン製のフロントドア。ウインドーの開閉もできない
助手席側から見たコクピット。MOTECのデータロガーが見える運転席後方はカーボン製のパネルで完全にふさがれ、真後ろの視認性は皆無

優勝チームにベストラップで約3.5秒まで迫る
 実際にタイムを見てみると、予選(ウェット)でのレガシィB4のタイムが2分00秒779。GT300クラスの予選トップタイムが1分55秒969なので、約5秒のタイム差。対してセッティング変更後の決勝(ドライ)でのベストラップは、レガシィB4が1分50秒544、優勝したダイシン アドバンFerrariのベストラップが1分47秒085なので、3.5秒程度まで詰まっている。

 予選は雨だったので4WDには有利にも思えるが、「いくらAWDであってもセットできてない状況では走れない。逆にセットのわるさが雨でわるさをしてしまう。ちゃんとドライでセットができて、それが上位と2秒落ちとかだったら、雨で上に行けるレベル」とのこと。当面の目標はトップ集団の2秒落ち程度で、中盤争いに食い込むことだ。

予選はウェット路面での走行
直前までセッティングを煮詰め、いよいよ決勝を迎えるスターティングドライバーを務めるのは山野哲也選手
いよいよ決勝スタート。目標は完走のため、マージンを持って走らせたと言う

ドライバーのコメント
 決勝後、山野選手は、まず完走できたことが大きな一歩だとし「速さはまだまだだけど、これからどんどん詰めていって、よいレースにしていかなければと思う。セッティングとしてはまだこれから。動き始めたばかりなのでセットは取れていないけど、今日の中ではベストセットだったと思う」と述べた。

 鈴鹿ではマシンについて、アンダーステア傾向が強いと述べていたが「まだアンダー傾向は残ってる、でもだいぶ解消した」と述べ「パワーはまだまだ追いついていない。もっと速くならないといけない」と加えた。タイムが遅かった理由についても「エンジンが大きいと思う」と述べた。

 密山選手は「完走できてよかった。車のわるいところもよいところも見つけることができたので、とりあえずはよかったという気持ちは強い」とし「どうしても直さなければ勝負ができないというところもいっぱい見つかった。スピードが遅いのも1つ。デフの制御もまだまだ煮詰めていきたい」と今後の課題の多さについても触れていた。

 ただしセッティングに関しては「今日初めて大きくセットをがらっと変えて、タイヤに厳しいセッティングだと思っていたが、タイヤにすごく優しかったし、タイムも遅いなりに安定して走ることができて、ある程度車のバランスが取れていることは分かった。周回を重ねるごとに車のバランスがどんどんわるくなるようなことがなかったのはよかった」と、その方向性がわるくなかったと述べている。

ゴール直後にレーシングコースが開放され、コースウォークが始まったが、ここでもレガシィB4のピット前には人だかりができ、山野選手も思わず歩み寄って握手。「完走おめでとうございます」「応援しています」と熱い声援が送られていた走り終えて戻ってきた密山選手とまずは完走をたたえあう山野選手
密山選手の玉のような汗がレースの過酷さを物語る。しかしドライバー2人がそろったところで、休むことなくマシンのコンディションや不具合について、詳細に報告が行われる。ドライバーにとってもメカニックにとってもすでに次のレースに向けた戦いは始まっているようだ
インタビューに応える本島伸次監督。監督自身もスバルファンの熱い応援に驚かされていると言い、その期待に応えるべく1日でも早くトップ争いに加われるようにしなければと、意気込みを語った

エンジンのパワー不足が速さのネック
 ドライバー2人が課題に挙げたエンジンだが、その原因は何かのトラブルというわけではなく、リストリクター(吸気制限)による部分が大きいと監督は語る。

 リストリクターはさまざまな車種が混走するSUPER GTで、各マシンの性能を調整するために装着される吸気制限装置。エンジンのスペックに対してどの程度のリストリクターを装着するかは、実際の速さにあわせてしばしば変更される。しかしSUPER GTでは、レガシィの積む2リッターターボというサイズが他に類がないためデータが少なく、現状はかなり厳しいサイズになっていると言う。これをどの程度大会側が認めてくれるかが問題だと言う。

 リストリクター径はトップスピードなども考慮して変更が加えられるため、今後救済措置を受けられる可能性はあるとのこと。ただし、その前にちゃんと走れるようにすることが課題だと言う。

次戦オートポリスを欠場し最終戦もてぎに備える
 最後に次戦以降のレガシィに関するスケジュールだが、次戦10月17日、18日開催の第8戦オートポリスは出走をせずマシンの改良に専念して、11月7日、8日開催の最終戦もてぎに備えるとのこと。やりたいこと、やらなければならないことはたくさんあるが、なにより必要なのはテストなので、大会側にもてぎ以外のサーキットを使ったテストを申し出ると言う。

 オートポリスでその姿が見られないのは残念だが、今回の完走で得たデータを元に、確実にステップアップし、もてぎでは戦線で活躍する勇姿を見せてもらいたい。

(瀬戸 学 Photo:奥川浩彦)
2009年 9月 15日