環境省、「タイヤ単体の騒音対策検討会」をスタート

環境省で開催された「タイヤ単体騒音対策検討会」

2009年11月11日開催



 日増しに高まる自動車分野への環境規制。排出ガスのみならず騒音の分野においても、止まることなく規制の強化が広まりつつある。

 騒音規制といえばその代表となるエンジン騒音に関する規制がこれまで中心を占めてきた。ガソリン、ディーゼル・エンジンごとにアイドリング時はもちろん、加速時や一定速度域での騒音発生に対する規制で、乗用車や商用車ごとに定められている。その一方で、動力源としてのエンジンも、今や化石燃料からハイブリッドや電気自動車の時代に移行する、ゼロエミッションに近い環境のため、排出ガス規制どころか“静かな走行音の時代”になりつつある。

 そこで新たな発生源の中心となるのが、タイヤ単体からの発生音となるわけである。その点で先行するヨーロッパ連合諸国(EU)では、すでに“タイヤ単体騒音規制”が実施され、現在その強化に向けた作業が行われている。さらに国際機関の国連欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラム(UN-ECE/WP29)においても、同様の動きが予想されている。

 このような状況を踏まえて、わが国でも2008年12月に答申された“中央環境審議会の中間答申”をもとに、タイヤから発生する騒音の実態を把握し、EUやUN-ECE/WP29の動向も参考にしながら、タイヤ単体騒音規制について検討する旨の提言がされたところである。

 そこでこれを取りまとめる環境省では、このほど学識経験者をはじめ、自動車業界団体やタイヤ業界、研究機関等から構成される「タイヤ単体騒音対策検討会」を設置。11月11日にその第1回目の会合が開催されたので、検討会の概要や今後の方向性などについて紹介する。

意外と大きいタイヤの騒音
 クルマから発生する騒音といえば、誰しもエンジン音というのが一般的な理解だった。しかしそのエンジンも技術の進歩に従い、乗用車を中心に静粛性が向上。代わって路面と接するタイヤから発生する音や風きり音が目立つようになっている。

 いまさら言うに及ばないかもしれないが、路面と接するタイヤの機能は多彩で、エンジンからの駆動力を路面に伝える機能から、ブレーキによる制動や乗り心地の実現、さらに旋回運動まで、幅広い性能が要求される。これに路面状況によって、走破性の高いタイヤや雪上などに適したスタッドレスタイヤなど、使用条件に合わせたタイヤが用意されている。

 路面と接するタイヤも、いったん動き出すと摩擦による振動騒音が発生するわけで、タイヤ側のトレッドパターンと路面状況、速度によって騒音レベルも変化してくる。さらに同一路面の条件であっても、ボディーサイズやタイヤサイズ別によっても騒音レベルは異なるので、沿道に及ぼす影響は考慮されるべき状況にある。しかも、路面と接する部分のみならずトレッドパターンごとの空気共鳴や、接地前後部分で発生するホーン効果音とも重なるなど、タイヤが回転する限り騒音は発生する。

タイヤ騒音規制に向けた検討会の方向性
 タイヤ単体の騒音規制の実施に際しては、自動車騒音規制のための試験法が参考となる。現在、新型車には加速走行騒音をはじめ、定常走行騒音、近接排気騒音の3種類が採用されている。それぞれ決められた測定法で、決められた場所に集音マイクを設置し、テスト車から発生する騒音を計測するようになっている。そして、タイヤを供給するタイヤメーカーでも測定が実施されており、国内および輸出用タイヤにおいては、それぞれの規制値をクリアするようになっている。

 第1回目となるタイヤ単体騒音対策のための検討会は、法制化のための環境省水・大気環境局と国土交通省自動車交通局技術安全部をはじめ、関係する大学(東京大学、神奈川工科大学の教授)や交通安全環境研究所の環境研究領域の研究者、小林理学研究所の学識研究者、自動車業界団体となる日本自動車工業会、タイヤ業界団体の日本自動車タイヤ工業会の関係者、そして実際にタイヤの騒音実験やデータ作業を行う日本自動車研究所が出席して、規制導入へ向けた検討会の進め方について協議が行われた。

 学識経験者で検討会の座長となった東京大学大学院工学系研究科の金子成彦教授は、「自動車の走行にともなう騒音発生も時代とともに変化する中、欧米において問題化されつつあるタイヤ単体の騒音対策について、わが国としても積極的に取り組む時期にきているので、検討会の発足を機会に関係分野の方々との議論やテストの吟味をしながら、タイヤ単体の騒音規制の具現化を図りたい」と抱負を述べる。

 騒音試験についてはすでに2008年度から乗用車領域で進んでおり、今年度はバンやトラックなどの試験が実施される、さらに現在EUでも実施されていない2輪車についても4輪車の状況を見ながら、順次策定する方向にあると言う。また、今回一部の委員から発言のあった路面別試験実施の必要性についても、今後の検討会で討議される予定だ。

(浜田拓郎)
2009年 11月 13日