現代美術の巨星、アウディフォーラムに降臨
草間彌生とR8のコラボレーションを展示、2010年1月5日まで

2009年12月12日~2010年1月5日
東京 アウディフォーラム東京



 芸術家の草間彌生(くさまやよい)氏とアウディのコラボーレーションイベント「水玉に覆われた未来のアウディ・スピリットが、12月12日~2010年1月5日にアウディフォーラム東京で開催されるが、そのオープニング・イベントが、開幕に先立つ12月11日に同所で開催された。

 幼少から幻想的な絵画が評価されていた草間氏は、大量の水玉をモチーフとした前衛作品が欧米で評価され、美術のみならず小説や映画の分野でも世界的な評価を獲得、「前衛の女王」の異名をとった。21世紀に入ってようやく日本でも評価が高まり、2009年には文化功労賞を受賞している。

 「Audi100周年と未来を草間彌生が祝う」と題されたアウディフォーラムでの展示は、技術的・カースタイリング的な前衛性をブランドイメージとするアウディと、草間氏の前衛作品を重ね合わせたもの。その目玉は、草間氏の作品「宇宙の中の水玉かぼちゃ」と、アウディのフラッグシップ・スーパースポーツ「R8」に草間氏が装飾を施した新作。これらにはすべて、草間氏がモチーフとしている「膨大な量の水玉」が用いられている。

草間氏の手で水玉模様になったR8 V8。草間氏のサインが入っている

 作品はアウディフォーラムの2階に展示されているが、水玉は作品にとどまらず、1階から2階へ上がる階段や、2階の壁面、床まで侵触し、アウディフォーラムをまるごと草間氏のインスタレーション作品に変貌させてしまっている。展示期間中にアウディフォーラム東京を訪れた人が、草間氏のいわゆる「Dot Obsession(水玉強迫)」の世界に否応なく巻き込まれ、草間宇宙を体験することを強要されるのが、このイベントの最大の見どころ。

 2階の一角には、水玉模様のマネキンや、過去、草間氏が作成してきたインスタレーション作品の記録写真も展示されており、新旧いとわず草間ファンには堪えられない展示となっている。

「宇宙の中の水玉かぼちゃ」を中心に置く2階。床、壁、テーブルも水玉で埋め尽くされている過去の草間作品を展示するコーナー
2階だけでなく1階から2階への階段や外壁も水玉に彩られている

 オープニング・イベントには、アウディジャパンのドミニク・ベッシュ社長と草間彌生氏が登場。ベッシュ氏は、「今年ここでは30回イベントを開催したが、こんなに印象的で美しく表現されたアウディフォーラムは初めて見た。伝説のクリエイティブな精神をみなさんに肌で感じ取ってもらえると思う。また、このようにインスピレーションに溢れた方法で100周年を祝っていただけることに感謝する」と草間氏を紹介。

 草間氏は自らの作品が「愛と平和」を訴え、「ハッピーな人生」を賞賛するものと言い、「大きな希望と花に満ちた社会を作るために、アウディに乗って世界中を飛び回ってほしい」と今回のインスタレーションのメッセージを語った。

オープニング・イベントに登場した草間氏。自作の詩を朗読した
ベッシュ社長に水玉を貼り付ける草間氏

 自動車と芸術の関わりは、ルネ・ラリックのカーマスコットや、ジャック=アンリ・ラルティーグの自動車の写真、フラミニオ・ベルトーニがデザインしたシトロエン車、リキテンシュタインら数々の芸術家による「BMWアートカー」など、多数の前例が見受けられる。しかし、このアウディと草間彌生氏のコラボレーションは、日本が生んだ世界的現代美術家と最新のスーパースポーツを結びあわせた、「日本発」の事例として画期的と言える。

 アウディフォーラム東京は期間中、無休でオープンし、カフェも営業する。年末のショッピングや初詣の帰りに立ち寄るのに便利なロケーションでもある。理性の塊のようなアウディ車が、狂気を誘う草間氏の作品と絶妙なマッチングを見せる、世界的にも稀有なコラボレーションを、ぜひ体験されたい。

1階にはR8のホワイトボディを展示

(編集部:田中真一郎)
2009年 12月 14日