東京理科大、磁石を使わないハイブリッド車用モーターを開発
プリウスのモーターと同等以上の性能を実現

プリウスのモーターと同等以上の性能を持つSRMの試作品

2009年12月16日発表



試作SRMの性能曲線と効率マップ

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京理科大学科学技術交流センターは12月16日、東京理科大学の千葉明教授が、磁石を使わないハイブリッド車用モーターを開発したと発表した。

 研究は、次世代電気自動車向け研究開発プロジェクトの一環として行われ、レアアース(希土類元素)を用いないモーターとして、「スイッチドリラクタンスモーター」(SRM)という磁気抵抗の差を用いて回転させるモーターの小型化に成功した。

 現在、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HEV)などで使用されるモーターは、ローターの内部に永久磁石を埋め込んだ構造を持つ、回転界磁形式の同期モーター(IPMSM)が用いられている。省エネルギー、高効率、高トルクを特徴とするが、永久磁石に使われるレアアースは中国からの輸出が9割を占めるなど産出量が限られており、需要の増大により価格が2~3倍に上がりつつある。そのため、磁石を一切使わないモーターであるSRMの実用化が待たれていると言う。

 従来からあるSRMは、簡単な構造のため耐熱性に優れ丈夫であるという特性があるが、IPMSMと比較してトルクやエネルギー利用効率が劣っている。そのため、HEVに使用するのに必要な性能を確保するには、大型になってしまい車体に搭載できないという課題があった。

 今回、東京理科大学の千葉明教授(理工学部電気電子情報工学科)らが開発に成功した試作機は、トヨタの先代「プリウス」に搭載される50kW出力のモーターと同一寸法で、同等またはそれ以上となるトルク・効率を記録。最大トルク403Nm/1200rpm、効率86%の数値を達成している。なおIPMSMの場合は400Nm/1200rpm、83%となる。

試作SRMの構造と特性

 試作モーターの開発では、モーターの構造と材料の選定で最適な組み合わせを模索した。構造においては、モーターの部品である回転子や固定子の数がトルクと関係しているため、回転子と固定子を増加させた18/12極モデルを設計。また、固定子に傾斜(テーパー)をつけることで、トルクの増加に繋げた。材料の選定においては鉄心の材料に着目し、鉄心材料に6.5%ケイ素鋼板「10JNEX900」を適用したことで、特に低出力時の効率を上昇させることに成功した。

 これらの成果により、従来のSRMにはないトルク密度(45Nm/L)を実現、HEVへの搭載可能な大きさおよび効率を達成した。なお、数値は磁界解析によるものであるが今後実験での検証を行う予定としている。

(椿山和雄)
2009年 12月 17日