国土交通省、「ハイブリッド車等の静音性に関する対策」について発表
EV走行可能なハイブリッド車や電気自動車への義務付けを目指す

一般的なエンジン車とハイブリッド車のEV走行時の騒音比較。20km/hではほぼ同等の騒音となる(報告資料より抜粋)

2010年1月29日発表



 国土交通省は1月29日、「ハイブリッド車等の静音性に関する対策」を取りまとめ、その報告書を公表した。また、条件を満たした装置を任意で装備できるよう、同日ガイドラインを設け、自動車メーカー等に周知した。

 国土交通省では、自動車ユーザーや視覚障害者団体等から、ハイブリッド車や電気自動車の走行音が小さく危険だとの意見を受け、2009年7月より「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」を開催し、ハイブリッド車や電気自動車等の静音性に関する対策について検討を進めてきた。同年11月には対策案を取りまとめパブリックコメントを公募。それらを考慮した上で、自動車と歩行者のコミュニケーション手段の1つとして、音は重要だとして、音付けによる対策を取りまとめた。

対策を適用するのは、EV走行が可能なハイブリッド車と電気自動車
 音付け対策を行うのは、エンジンを始動しないEV走行(モーターのみの走行)が可能なハイブリッド車と、電気自動車、燃料電池車を対象としている。EV走行が不可能なハイブリッド車やアイドリングストップ車は、発進時にエンジンを始動するため、通常のエンジン車と同等の気づきやすさがあるとの判断による。また、静粛性の高い高級車への対策も検討したが、調査の結果、一般的な車両と比較しても2dB程度の差にとどまるため、対策の対象からは除外したと言う。

発進時から20km/hまでの走行時と後退時に発音
 発音の対策が必要な場面は、発進時から20km/hまでの走行時と後退時だと言う。これは、20km/h以上では、タイヤと路面の接触による音が増加するため、EV走行であっても一般エンジン車と同等の騒音がするため。なお、停車中の対策を求める意見もあったが、エンジンを止めて駐停車している一般エンジン車と同じ状態だとして、適用範囲からは除外している。また、EV走行可能なハイブリッド車であっても、エンジン始動状態では、発音しないシステムにする。

システムは自動で作動するもの。ただし一時的な解除は可能に
 発音する方法としては、上記の条件時に 自動で発音するシステムにすると言う。任意でON/OFFできるものを求める声もあったが、それだと必要な際にもドライバーがシステムを使わない可能性があり、対策そのものの意味がなくなるため、自動での発音にした。ただし、高速道路での渋滞時のような明らかに歩行者がいない場合や、周辺住民への配慮が必要な場合もあるため、一時的に発音を停止できるスイッチを設けることを認める。この場合、発音停止状態のままにならないようなシステムにする必要があると言う。

発生する音は車速に応じて変化。ただしメロディなどは除く
 発音する音の種類は、クルマの走行状態を連想させる連続音にするとしている。ただし、サイレンやチャイム、ベル、メロディ音、また警音器の音は除外する。また、動物や昆虫の鳴き声、波や風、川の流れなど自然現象の音、クルマから発せられることが想定できないような音も除外すると言う。

 音は車両の速度によって音量や音程を変化させるなど、車両の動作を認知しやすいものにし、音量は一般のエンジン車が20km/hで走行する際の走行音量を超えない音量にするとしている。

新車装着の早期義務付けを目指す
 装置の装着を義務にするか任意にするかについては、社会的な受容性や技術開発、試験方法の整備なども踏まえ、義務付けの時期を検討するとしている。また、義務付け前の段階でも、一定の条件を満たす装置を任意で付けられるようにする(標準装備も含む)と言う。

 早期普及の観点から、パブリックコメントで多くの要望があった、手動式の発音装置についても検討すると言う。また、新車以外の使用過程車については、速度に応じた音の制御などが難しいとしながらも、それら条件を緩和した基準を設け、後付けの装置の開発を促進する方策を講じるとしている。

(瀬戸 学)
2010年 1月 29日