「FC EXPO 2010(第6回国際水素・燃料電池展)」開催
一般公道で燃料電池車を試乗可能

FC EXPO 2010は、PV EXPO 2010などと併催される

2010年3月3日~5日開催
東京ビッグサイト(東京都江東区有明)
入場料:当日5000円(Web事前登録で無料)



 燃料電池関連の展示会「FC EXPO 2010(第6回国際水素・燃料電池展)」が東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開幕した。「PV EXPO 2010(第3回国際太陽電池展)」「バッテリージャパン(第1回国際二次電池展)」「PVシステムEXPO(第1回太陽光発電システム施工展)」「第1回量産試作加工技術展」と併催されており、会期は3月3日~5日で、開催時刻は10時~18時(3月5日のみ10時~17時)。当日入場料は5000円となっているが、PV EXPO 2010のWebサイトから事前登録することで、いずれの展示会も無料になる。主催はリード エグジビジョン ジャパン。

 FC EXPO 2010は、今年で第6回目となる燃料電池(Fuel Cell)の展示会で、燃料電池の素材、製造機器、応用製品などを手がける企業が出展。上記すべての展示会の合計出展社数は1261社になる。多くの展示は、主に企業ユーザー向けの展示となっており、一般ユーザー向けと言えない部分があるのだが、それでもいくつかの企業は市場に提供する製品を展示していた。本記事ではそれらを中心にお届けする。

燃料電池車を見ることができ、一般公道試乗も可能
 燃料電池車が一堂に取りそろえられていたのがJHFC(水素・燃料電池実証プロジェクト)のブース。JHFCは経済産業省や日本自動車研究所らによるプロジェクトで、水素ステーションを設置し、燃料電池車の実証実験を行っている。

 展示されいた燃料電池車は、トヨタ自動車「FCHV-adv」、日産自動車「X-TRAIL FCV」、本田技研工業「FCXクラリティ」、GM「Equinox Fuel Cell」、メルセデス・ベンツ「Aクラス F-Cell」の5台で、X-TRAIL FCVは構造が分かるようなカットモデルが展示されいた。

FCHV-advFCXクラリティ
Equinox Fuel CellAクラス F-Cell
X-TRAIL FCVはカットモデルを展示。助手席下に燃料電池スタック(写真中)を、後席下に高圧水素容器(写真右)を配する

 燃料電池は、水素を空気中の酸素と反応させることで電気を取り出すもの。そのため、発電するためには水素が必要となる。現状その水素は水素ステーションから、燃料電池車に搭載する水素タンクに補給するような形態が考えられており、水素ステーションの水素供給機も展示されていた。水素タンクは、35MPaと70MPaの2種が主に用いられており、展示されていた水素供給機は、両対応のものとなっていた。

水素ステーションの水素供給機。スタンドの給油機と同様のデザインとなっている。左側に35MPaの、右側に70MPaの供給ノズルを用意35MPaの供給ノズル部。70MPa用もほぼ同様の構造と言う車体側の接続部。写真はX-TRAIL FCVのもの

 このFC EXPO 2010では、これら燃料電池車を一般公道で試乗できるのが、大きなトピックス。試乗可能な燃料電池車は先ほどの5台に加え、水素ロータリーエンジンと電気モーターを組み合わせたシリーズ式ハイブリッドシステムを搭載するマツダ「プレマシー ハイドロジェンRE ハイブリッド」の計6台。東京ビッグサイトの周囲の道路を一般車に混じって走行できる。

屋外の試乗用には、プレマシー ハイドロジェンRE ハイブリッドも用意X-TRAIL FCV(左)と、Aクラス F-Cell。Aクラス F-Cellは、「第6回ブリヂストンこどもエコ絵画コンクール」入賞作品がペイントされたものだった

 そのほか、トヨタと日野自動車の共同開発による燃料電池バス「FCHV-BUS」も用意。燃料電池バスはさすがに運転することはできないが、東京ビッグサイトの最寄り駅となるりんかい線の東京国際展示場駅との間のシャトルバスとして運行されており、乗客としてその加速感や乗り心地を確かめることができる。

 バスの運転手に燃料電池バスと通常のバスの違いについて聞いたところ、「通常のバスと異なり、モーターを動力として用いるため、トルクがあって運転しやすい」とのこと。実際に駅まで乗客として乗ってみたが、車内は静かで、スムーズな加速が印象的だった。

トヨタと日野によって共同開発されたFCHV-BUS。屋根がハイルーフ状になっているが、ここに高圧水素タンクを7本搭載している
FCHV-BUSのメーターパネル。タコメーターが廃され、燃料計の代わりに圧力計が設置されているシフトレバー。モーター駆動のため変速機は1段のみとなる
FCHV-BUSの後部。後部パネルを開くと、エンジンの代わりに燃料電池などのシステムが収まっている。左右2系統のシステムを見ることができるが、これは実際に営業運転に用いられたことがあり、信頼性を高めるために2重化されたもの銀色の大きなタンク状の容器に燃料電池ユニットが納められている
東京ビッグサイトと国際展示場駅の間を結ぶシャトルバスとして運行している。写真はビッグサイト東ホール横の発着場。燃料電池バスの横を、試乗中の燃料電池車が通り過ぎていく。東京ビッグサイトから国際展示場駅に行くためには、JHFCブースで受付を行う必要がある国際展示場駅へ移動中。車内はとても静かバスの車内には液晶モニターが設けられており、燃料電池の解説が上映されている
国際展示場駅に到着。発着場は国際展示場駅を出て左手にある。国際展示場駅から乗る際は名刺が必要。名刺がない場合は記名のみでOK。運転間隔は午前中は20分ごと

そのほかの燃料電池関連展示
 最終製品に近い形で展示を行っていたのは、カセットコンロで知られる岩谷産業。岩谷産業は、水素自転車「Hydrogen Bicycle」(燃料電池式電動アシスト自転車)を展示しており、水素タンクはリアキャリア部にセットするカセット形式になっていた。この水素タンクは0.5MPaの圧力に耐えるもので、岩谷産業としては水素タンクカセットを販売するようなビジネスモデルを検討しているとのこと。

岩谷産業の水素自転車「Hydrogen Bicycle」(燃料電池式電動アシスト自転車)。リアキャリア部にカセット式の水素タンクを搭載する。燃料電池は、タンク下部に配置される
ステアリングポストに設けられたHydrogen Bicycleのコントローラー。電源を入れると水素(と空気中の酸素)によって発電が行われバッテリーが充電される岩谷産業は、水素ステーション用の水素供給機も展示していた

 ケー・エム・テクノロジーは、ホライゾン フュエルセル ジャパンの学習キットを展示。この学習キットは、燃料電池を利用した自動車の模型や、太陽電池などをエネルギー源として利用する模型で、燃料電池の仕組みを理解できるようになっている。また、これらの学習キットはケー・エム・テクノロジーから購入することもできるが、会場での割引販売も行われており、興味があるならすぐに購入することができるようになっている。

 ホライゾン フュエルセル ジャパン自身もブースを出展しており、そこではタミヤの1/10電動RCカー「TRF416」に燃料電池を搭載したものが展示されいた。このRCカーでは、電池状の小型の水素吸蔵合金ボンベ「ハイドロスティック」から水素が供給されるものとなっていた。

ケー・エム・テクノロジーブースで即売が行われていたホライゾン フュエルセル ジャパンの「H-Racer」。太陽電池で水を電気分解し水素取り出し、模型の燃料電池車に供給する。FC EXPO会場直売価格は1万8000円「ハイドロカー」。後部タンクに積む水を、外部の太陽電池パネルから供給される電力で水素と酸素に電気分解。水素と酸素は水タンク下部にたくわえられる。その水素と酸素を使って燃料電池で発電し走行する。FC EXPO会場直売価格は1万5000円
ホライゾン フュエルセル ジャパンブースでは、タミヤの1/10電動RCカーにハイブリッド水素燃料電池パワーキット「H-CELL 2.0」を搭載して展示。電池状の水素吸蔵合金ボンベであるハイドスティックを車体左右に2本搭載していた

 5つの展示会が同時開催となっているため、1日ですべての展示を見て回るのはかなり難しいほどの規模。展示会に行かれる方は、時間に余裕を持って出かけるほうがよいだろう。

(編集部:谷川 潔)
2010年 3月 3日