アウディ、ハイエンドモデルの展示・試乗会を開催
「アウディ アルティメット コレクション2010」

「アウディ アルティメット コレクション2010」会場

2010年3月4日開催



 アウディ ジャパンは、既存ユーザーや同社Webサイトから事前登録したユーザーを招待し、同社のハイエンドモデルを展示する「アウディ アルティメット コレクション2010」を開催した。すでに名古屋、大阪で開催され、3月4日には東京の恵比寿ガーデンプレイス内にあるウェスティンホテル東京で開催。Car Watchも訪れたのでその模様をお届けする。

 会場となったのはウェスティンホテル東京の地下2階にあるギャラクシーホール。会場内には全9台のアウディ ハイエンドモデルが展示。関東近郊のアウディディーラーのコーナーが設けられ、商談も行われていた。また、ホテル前には多くの試乗車が用意され、実際に試乗も行われていた。

各ディーラーのブースも用意され、その場で商談も行われたホテルの前には試乗車が並ぶ。R8の試乗ができるなど貴重な機会だ会場内にはBANG&OLUFSENのブースも設けられていた

 展示されていたのは、1月に発表開始した「A5 スポーツバック エクスクルーシブ」や、2月2日に発表した「TT RSクーペ」 、アウディで最もスパルタンな「R8 5.2 FSI クワトロ」のほか、「A6 3.0 TFSIクワトロSライン プラス」「A5カブリオレ」「RS 6」「S8」「S5エクスクルーシブ」「S4」で、いずれも実際に触れてその質感を確かめることができる。

A5 スポーツバック エクスクルーシブTT RSクーペR8 5.2 FSI クワトロ
A6 3.0 TFSIクワトロSライン プラスA5カブリオレRS 6
S8S5エクスクルーシブS4

 また、スペシャルゲストとして、日本人で唯一ドイツでアウディのカーデザインに携わった和田智氏とナビゲーターとして別所哲也氏を迎えたスペシャルトークショーも開催された。

 和田氏は1988年から昨年の夏までアウディのデザイナーとして活躍した人物。会場に展示してあるクルマの中でもA6やA5シリーズすべて、Q7やQ5のデザインにもチームを組んで関わったと言う。それ以前は国内の自動車メーカーでデザインを行っていたが「日本車の様にコロコロ変えるデザインはしたくないと思ってドイツに行った」という。

 当時から、アウディの持つ質実剛健でシンプルなデザインに憧れていたと言う。入社して2日目にディレクターに「智にはAシリーズのデザインをやってもらう。課題は“ブレイクスルー”だ」とだけ言われ、憧れていたデザインをブレイクスルーしろと言われ困惑したと当時を振り返った。

 そこで、日本車のようにすべてを変えるのではなく、1点に絞ってブレークスルーしようと考えたと言い、「ならばこれまでのエレガントなサイドビューを変えずに、顔の持っているパワーだけは何か主張するべきではないか」と生まれたのが、今やアウディのアイデンティティとなったシングルフレームグリルなのだと言う。

元アウディAGのデザイナーによるデザイントークステージA6やA5、Q7などをデザインした和田智氏ナビゲーターには俳優の別所哲也氏が参加

 また、デザインする際には「アウディの持っているクワトロのイメージ。動きのよさ。そういったイメージをデザイナー同士で話し合うこともある。止まっている美しさと動いたときの美しさも考えて作っている」と言う。実際のデザイン作業では、塗装されたクレイモデルを前にして、そうしたデザインのコンセプトや意味を、社長や役員を前にプレゼンテーションするのだと言うが、この日は来場者を前に、そのプレゼンを行った。

 プレゼンを行うのは、発売されたばかりのA5 スポーツバック エクスクルーシブ。実際にはボディー全体のプレゼンを行うのだが、会場では特に特徴的だというサイド面のショルダー部分のラインに絞って説明した。クルマのサイド面のデザインは左面を使ってデザインするのだと言い、それに習って会場でも来場者が車両左側へ移動してプレゼンを見守った。

 和田氏によれば、A5はクワトロをイメージさせるために、4輪の周辺のラインから作ったと言う。和田氏はそう言いながらS5スポーツバックのフロントフェンダー部のショルダーラインへとテープを貼り付ける。実際のプレゼンでも同様にテープを貼りながら説明するのだと言う。テープはプレスラインに沿って引かれるのだが、前輪を中心に隆起した緩やかなカーブを描く。しかしカーブのピークは前軸の真上よりも少し前に持ってきていると言い、これは動物が四肢で地面を蹴る時のような、前傾姿勢の躍動感を表現するためだと言う。

 さらにリアフェンダーにも後輪の車軸を中心にした緩やかなラインが描かれており、S5スポーツバックのショルダーラインは、前後輪を中心とした2つのラインとそれを繋ぐラインの3つのラインで作られているのだと言う。また、デザインする際には手で触ってデザインを確認することも多いと言い、「よいデザインは触り心地もよい」のだと言う。

来場者をクルマの左側に集めてプレゼンを行うフロントフェンダーのショルダーラインに合わせてテープを貼るカーブのピークは車輪の真上よりも少し前にあることが分かる
こうすることで前から後ろに向かって流れる勢いを表現するのだと言うクワトロ(4WD)をイメージさせるためリアフェンダーにも隆起したラインを描く前後のラインを真っすぐ繋ぐことでA5スポーツバックのショルダーラインができあがる
さらにテープを垂直に貼っていく正面から見ると垂直なラインだが、斜めから見ることでボディーの隆起が見て取れる
デザインする際には何度も触るのだと言う。触ることでよいデザインかが分かると言うテープでマーキングされたA5。前後のフェンダーでショルダーラインが隆起しているのがわかる

 確かに会場にあるそのほかのクルマを注視してみると、すべてのクルマにおいて、ショルダーラインが個性を出しているのが分かった。普段は、例えばシングルフレームグリルのような分かりやすい部分に注目してしまうことが多いが、改めてデザインについて興味を持たせられるトークショーであった。来場者にとっては、今一度アウディのデザインをじっくり見つめ直す機会になったのではないだろうか。

RS 6は初代クワトロのイメージを踏襲。そのためシンプルな直線的ラインと張り出しの強いブリスターフェンダーを組み合わせたデザインなのだと言うS4のショルダーラインも直線的。これはS4というクルマの特徴から躍動感よりエレガントさを出すためR8のショルダーラインも躍動感にあふれるが、より大胆なもの。これはレーシングカーのDNAを引き継ぐもの

(瀬戸 学)
2010年 3月 8日