鈴鹿サーキット、「プッチタウン」リニューアルイベント開催 プッチグランプリで優勝してきました |
鈴鹿サーキットは3月5日、翌日にリニューアルオープンを控えた同ゆうえんち内「プッチタウン」の発表会を行った。発表会では、実際にアトラクションに試乗することができたので、その様子を動画も含めて紹介しよう。
今回のリニューアルの目玉は、何と言っても「プッチグランプリ」だ。プッチグランプリはその名のとおり、鈴鹿サーキット国際レーシングコースを全長184mにスケールダウンしたゴーカートコースだ。S字あり、立体交差あり、スプーンも2つのコーナーが連続するなど、まさに鈴鹿サーキットなのである。細かなところを見れば「シケインがない」とか、「逆バンクからダンロップの登り勾配がない」とか、「スプーン2つ目からは下りだろう」とか、実際のコースとの違いはあるが、全体の雰囲気が似てるからよしとしよう。
まずはマシンから見ていこう。マシンは2シーターで、親子で乗るには丁度よいが、大人2人ではかなり狭い感じだ。ステアリングにグリーンのボタンが2つある。これがスピードアップボタンで、走行中に押すと最高速が5.5km/hから6.5km/hにアップする。助手席の前にはスピードアップポイントのパネルが用意され、ポイントが表示されている。さらに助手席にはスーパースピードアップボタンと呼ばれるオレンジ色のボタンがある。グリーンのボタンとオレンジのボタンを2人で同時に押すのがこのマシンの隠し技らしく、使えるポイントが増える仕掛けがあるらしいが、詳細は公開されていない。ざっくり言うとフォーミュラ・ニッポンに搭載されたオーバーテイクシステムや、昨年F1に搭載されたKERSの様に、制限付きの加速システムを搭載しているといった感じだ。
グリーンのボタンがスピードアップボタン。2つ同時に押すとスピードアップ | 助手席にはオレンジのスーパースピードアップボタンとポイントの表示がある |
コースを紹介しよう。グリッドは10台まで同時スタートが可能となっている。抜きにくい鈴鹿サーキットがベースとなっているので、スターティンググリッドが勝敗に大きく影響する。実際のサーキットと同様、レッドシグナルのブラックアウトでスタートが切られる。1コーナーはゆるやかに曲がり、回り込むように2コーナーへ侵入する。S字、逆バンクと続き、ダンロップコーナーの部分が大きく右に振られデグナーへ向かうレイアウトだ。
スタート直後の1コーナー、2コーナー | 2コーナーからS字方面 | 上から見る1~2コーナーの雰囲気は実際のコースに似ている |
S字、逆バンク、ダンロップと続く東コース | ダンロップのイン側にはトラップが埋め込まれているようだ | デグナーのイン側の黄色い半円はトラップかも。レース後に気付いたのだが、青白の矢印はポイントアップの印かも |
ダンロップコーナーのイン側のランオフエリアは要注意だ。そのままショートカットして抜きたくなるが、ここに入るとセンサーが反応して急激にマシン速度が落ちるトラップが仕掛けてある……らしい。デグナーは複合ではなく1つのコーナーとなっている。1987年のF1開催以前のコースレイアウトと同じだ。デグナーを立ち上がると立体交差がありヘアピンカーブだ。ヘアピンと言うより直角コーナーに近い感じだ。ここからゆるやかに右に曲がりスプーンカーブの1つ目、2つ目と続く。この辺りは実際のコースに雰囲気が似ている。
ヘアピンは直角コーナー。イン側にはトラップ、アウト側にはポイント加算と思われる印がある | 東コース全体はこんな感じ |
立体交差の上に向かうため、スプーンからは下りではなく上りとなる。実際のコースと同様、このバックストレッチから130Rに向かうところがパッシングポイントとなりそうだ。130Rの部分は立体交差の構造上、高速コーナー+ストレート+高速コーナーとなっている。そこを抜けるとシケイン……ではなくゴールとなる。1周のレースなのでグランドスタンド前からスタートしてシケインでゴール、細かく言うと0.8周くらいのレースだ。
■伊藤大輔選手と松田次生選手がプッチグランプリでバトル
オープニングのセレモニーには、この日から始まったSUPER GTの公式テストに参加していた、伊藤大輔選手と松田次生選手がゲストとして駆け付けた。2人は、招待された地元の幼稚園児の前で「小さな鈴鹿サーキットのコース、すごく楽しみです。負けないように頑張ります!」(松田選手)、「すごいコースができたという噂を聞いて駆けつけました。すごく楽しみです!」(伊藤選手)と語り、記念すべき「第1回プッチグランプリレース(仮称)」に参戦した。
幼稚園児を前に挨拶する伊藤選手 | 伊藤選手は8番手からスタート | 松田選手は最後尾から追い上げを狙う |
レースは9台のマシンで争われた。7組の親子の後ろ、伊藤選手は8番グリッド、松田選手は最後尾の9番グリッドからのスタートだ。基本的に子供が運転席に座り、親が助手席でサポートするのだが、本気モードの2人は、ペアとなる子供を助手席に乗せ自らがステアリングを握った。が主催者から「逆です」と言われ助手席に座り直してスタートを待った。
レッドシグナルが消えたらスタートだ | レース開始 |
スタートランプに注目。レッドシグナルが1つずつ点灯、そしてブラックアウト。レースが始まった。ロケットスタートを決めたのは最後尾スタートの松田選手(with子供:以下省略)。伊藤選手ともう1台を抜き7番手で1コーナーへ侵入した。松田選手に抜かれた伊藤選手は最後尾からの追い上げとなった。
伊藤選手は1コーナーでイン側にラインを振り、2コーナーの進入で1台パスして8位にポジションアップ。松田選手の背後にピッタリと付いた。松田選手はS字をリズミカルに無視して直進、6番手までポジションを上げトップ集団の背後に追いついた。
2台を抜き、7番手に上がった松田選手 | 最後尾で1コーナーのインに飛び込む伊藤選手 | 松田選手は6位、伊藤選手は8位でS字を通過 |
逆バンクからダンロップへ向かうところで松田選手は一気に攻めに出た。松田選手の指示か、子供の判断かは不明だが、イン側のランオフエリアをショートカットし大幅なジャンプアップを狙うが、ここにはトラップが仕掛けられていた。マシンは急減速、最後尾まで落ちてしまう。松田選手には今年も不運がつきまとうのか!?
伊藤選手はここを冷静なライン取りで抜け、一気に6番手を奪取。ヘアピンを抜けスプーンへ。ここから勝負所のバックストレッチだ。ところが前半でオーバーテイクボタン……、ではなくスーパースピードアップボタンを押しまくった伊藤選手は速度アップができない。そのまま6位をキープしてゴールとなった。
スプーンでは、伊藤選手は6位、松田選手は最後尾 | ゴール。チェッカーフラッグはロボットが振ってくれる |
最後尾からの巻き返しを狙った松田選手だったが、簡単に抜けないのが鈴鹿だ。1台だけパスして8位でゴールするのが精一杯だった。松田選手はゴールした後の最終コーナー付近でピットウォールにゆっくりと激突、動けなくなってしまった。世界一優秀な鈴鹿のコースマーシャルに押し戻されるおまけが付いた。
伊藤選手は6位でフィニッシュ | 松田選手は8位でゴール | ゴール後にウォールにぶつかりスタッフに押してもらう松田選手 |
レース後に「ランオフエリアに入ったら、マシンが減速した」と驚く松田選手 |
レース後の表彰式にゲストとして参加した松田選手は、「難しいですよ。ランオフエリアに入ったら急減速するし」とサーキットに住む魔物にしてやられた雰囲気だった。伊藤選手は「前半でボタンを押しすぎて、後半は加速できなかった」と戦略ミスを語った。司会者の「(スピードアップできる)ポイントを増やす方法があるんです」とのコメントを聞いて「今度、子供と一緒に来ますから、教えてくださいよ」と裏技の公開を迫るが「何回も乗って、試してください」と返り討ちにされてしまった。こうして第1回プッチグランプリレース(仮称)は終了した。第2回の開催日程は決まっていないので、この悔しさは3月20日、21日に開催される「2010 オートバックス SUPER GT Rd.1 SUZUKA 300km」で晴らすしかないだろう。
■大人げなく勝ちに行きます
筆者自身もレースに参戦してみた。車載カメラでその様子を撮ったので、動画と併せてそのバトルを見ていただきたい。ここまでの取材で見えてきた勝つためのポイントは、
・スピードアップボタンは後半に残しておく
・ランオフエリアにはトラップが仕掛けてある
の2点だ。裏技があるが、詳細は不明。レース展開の鍵となるのはダンロップコーナーとバックストレッチだ。
伊藤選手、松田選手が帰った後も、雑誌社のモデルさんやテレビ局の女子アナの参加があり、一段落したところで筆者も参戦することになった。基本的に1人取材のCar Watchなので、筆者は1人でドライビングすることになった。コクピットに座ろうとすると、予想以上に狭い。助手席の足下に車載映像を撮るための三脚を立て、真ん中付近に座って、右手でハンドルを持ち、三脚が倒れないよう左手で押さえてのドライビングとなった。
1人乗車は重量的に有利に思えたが、母親と子供の体重を足しても60~70kg、筆者は1人で80kgなので重量のアドバンテージはない。グリーンのスピードアップボタンは押せるが、左手が三脚を押さえているからオレンジのボタンは押せないので、この点でも不利だ。ポールポジションからのスタートするのが唯一のアドバンテージと言えよう。
いよいよスタートだ。ポールポジションは右側。マクラーレンのアイルトン・セナ、フェラーリのアラン・プロストがスタート直後の1コーナーで散った1990年まで鈴鹿サーキットのポールポジションは右側だった。なんてことは関係ないが、インカムを付けたお姉さんの「前のシグナルに注目で~す」の声に緊張が走る。
レッドシグナルが点灯……ブラックアウト、レースが始まった。ややアウト側に寄せて牽制し1コーナーへ進入、トップをキープしたまま2コーナーイン側の縁石をかすめてS字に向かう。マシンの挙動はグリップ感が薄く、スリックカートの様なドリフト感のあるハンドリングだ。
S字を真っ直ぐ通過、逆バンクでアウト側から並ばれてしまった。おそらくスピードアップボタンを使用して追いついて来たのだろう。本能的にスピードアップボタンを押したが、時すでに遅しか。ダンロップイン側のランオフエリアにはトラップがある。トラップに注意しながら抜かれてなるものかと、大人げなくダンロップのインをキープするが、サイド・バイ・サイド、ボディーをぶつけながら強引にインにねじ込まれてしまった。
2位に後退しデグナーを抜けヘアピンへ。勝負は西コースの後半だ。ヘアピンの立ち上がりで前を走るマシンの挙動が乱れる。加速が鈍ったところで差を縮めスプーンへ。背後にピッタリ付きスプーン2つ目からバックストレッチへの加速で勝負だ。
ところがスプーン1つ目で前を走るマシンが急減速、何かトラップに引っかかったようだ。追突してこちらもスピードダウン。ここからの加速で勝つしかない。動画のテロップはバックストレッチでオーバーテイクボタンと書いたが、実際にはスプーン2つ目の進入からボタンを押した。エンジン(モーター)音が変わり一気に加速する。
相手は前半でボタンを押しすぎてポイントがないのか、加速が鈍く追突する。バックストレッチでアウト側に出て一気に並びかける。ボタンを押し続けたままサイド・バイ・サイドで130Rへ。大外刈りで抜きそのままゴールへ。前半にタイヤ温存……、じゃなくスピードアップポイント温存、後半勝負の戦略が当たり優勝となった。まさに本山選手の様なクレバーな走りだ。我ながら実に大人げない勝利だ。
フィニッシュラインを通過すると、マシンは自動的に減速する。コース途中のトラップは避けて走ってきたが、地面に埋め込まれたセンサーにより、マシンの動きが制御されていることを実感した瞬間だ。なかなかハイテクなゴーカートなのだ。
優勝タイムは1分21秒05、ここまでのトップタイムは1分14秒98、6秒も遅いタイムだ。記録=タイムよりも勝負に徹したレースだったと言えよう。
実際に走ってみると、大人も楽しめるアトラクションだと感じた。できれば2~3周のレースがしてみたいとも思った。システムの変更が簡単なら、例えば平日の午前中だけは3周走れるといったタイムサービスがあれば、チョットした集客効果につながるような気もする。それくらい魅力的なアトラクションだ。気になる裏技を解明するには、何度も乗ってみるしかないだろう。レース観戦の合間にぜひ参戦していただきたい。
■コチラドライビングスクール
プッチタウンにはプッチグランプリ以外にもクルマ系のアトラクションが用意されている。コチラドライビングスクールはお父さん、お母さんが教習所の先生となって、交通ルールや運転マナーを勉強するアトラクションだ。ゴール後の判定で免許証がもらえる。
コチラドライビングスクールのイメージ | 信号、赤の点滅信号、踏切、消防署の前のゼブラゾーンで判定される | 街並みの中を親子でドライブする |
赤の点滅信号の意味は? | 消防署の前のゼブラゾーン | ゴールすると右側のロボットが合格の札を上げてくれた |
免許証がもらえます |
■プッチパトロール
プッチパトロールはパトカーに乗って、迷子になった子猫達を探すアトラクション。オーバルコースを周回しながら、路面に書かれた猫の足跡マークを踏み、時間内に全員で全ての足跡が踏めたらクリアーとなる。乗車後にはプッチポリスカードがもらえる。
プッチパトロールはオーバルコースを周回する | 路面に書かれた猫の足跡マークを踏むアトラクション |
全員が踏んだ数でカウントダウン。ゼロになったらクリアー | 各パトカーの後ろには、自分が踏んだ数がLEDで表示される |
(奥川浩彦)
2010年 3月 12日