日本損害保険協会、第11回自動車盗難事故実態調査結果を発表 自動車盗難はハイエースが3年連続トップ |
日本損害保険協会は3月19日、2009年度の自動車盗難事故実態調査結果を発表した。調査対象としたのは、損害保険会社が2009年11月に保険金を支払った事案で、車両盗難619件、車上ねらい2988件となる。
同調査は2000年以降実施しており今回で11回目。2009年度調査では、自動車盗難の車名別ランキングで、トヨタ「ハイエース」が2007年度から3年連続でワースト1位となり、続いて「ランドクルーザー」「セルシオ」が同率2位、「クラウン」とスズキ「ワゴンR」が同率3位となった。また、車上ねらいにおいては、カーナビ盗難件数が1599件と過去最高を記録している。
自動車盗難を車名別にしたもの。トヨタ「ハイエース」が2007年度から3年連続でワースト1位、続いて「ランドクルーザー」「セルシオ」が同率2位、「クラウン」とスズキ「ワゴンR」が同率3位となった | 車上ねらいを車名別にしたもの。車両の盗難とは車種の傾向が違い、トヨタ「ヴォクシー」「エスティマ」「ノア」などミニバン系の被害が目立つ |
■インターネットオークションを利用してカーナビを処分
警察庁の調べでは、部品をねらった盗難の認知件数全体は減少傾向にあるが、そのうちの被害品別でカーナビは増加傾向で、部品ねらいに占めるカーナビの割合が増加してる。また、盗難にあったカーナビのほとんどは、転売目的で盗まれており、近年、盗品の処分先としてインターネット・オークションの利用が増加していると言う。
同協会によると、インターネット・オークションでは、オークション事業者は実際の出品物を確認しておらず、また、落札者はより安い価格で落札することにのみ注意を払い、結果として、盗品と気づかず落札した事例もあると言う。
一部のインターネット・オークション事業者は、オークションで盗品カーナビが処分されている現状を踏まえ、出品物と現物との同一性が担保された状態に近づけるよう、カーナビの製造番号の記載、製造番号部分に係る画像の掲載などの対策を講じている。ユーザー側も落札する際には、これらの点を確認する必要があると、同協会は警告している。
車上ねらいの被害品。カーナビが42.4%とトップ、外装部品が10.4%と2位、バッグ類が7.7%と3位になる | カーナビ被害の内訳。純正品が52.0%、後付けの市販品が41.5% |
車両本体盗難における施錠の有無。92.0%の割合でキーを抜きドアロックをしていた |
■ハイエースは3年連続でワースト1位。盗難車は部品に分解され海外へ
車両盗難のトップとなったハイエースは、耐久性に優れ部品の汎用性が高いうえ、解体・組み立てが比較的容易なことなどから、中東やアフリカ諸国で人気があると言い、盗難車両は解体工場で部品に解体されてから輸出されているとみられている。ハイエースには盗難防止装置のイモビライザーが2007年から装着可能となり、現状ではイモビライザーの装着されていないタイプが盗難被害に遭う傾向にあるとしている。
同協会では車両盗難に対しては、イモビライザーの標準装備が効果的であると考えており、その例として、2007年および2008年調査で40件弱の盗難件数だったスズキ「ワゴンR」は、今回の調査で26件に減少していることを挙げた。これは、2008年9月に軽自動車で初めてイモビライザーを全車標準装備としたことが影響しているとしている。
EU諸国、オーストラリア、中東湾岸諸国などでは、すでに法律でイモビライザーが標準装備とされており、自動車盗難防止の成果を挙げている。また、アメリカでは、イモビライザーは法律で標準装備とはされてはいないが、実態として約9割の車に装着されている。
調査結果をふまえて同協会は、2009年9月に国土交通省に今後我が国で生産されるすべての自動車に対し、イモビライザーを標準装備とすべく道路運送車両法等の改正を求める要望書を提出。また、2009年自動車盗難認知件数の7割以上が「キーを抜いた」にもかかわらず盗難被害に遭っていること、検挙事例を見ても一定の窃盗技術を有する組織的な窃盗団による犯行であるとみられることから、単に自動車ユーザーの盗難対策意識を高める啓発活動だけでは対処し難く、社会制度的対策が必要な状況にあると分析している。
なお、2008年12月末時点の継続生産車種数は180。このうち2009年10月末時点のイモビライザー装着可能車種数は156であり、86.7%(一部標準およびオプション装着を含む)にイモビライザーが装着可能だ(日本自動車工業会調べ)。
(椿山和雄)
2010年 3月 19日