ユーザー参加型のモータースポーツイベント「FMD 2010」リポート
レーシングドライバーによるトークショーや各種イベントを多数実施

ユーザー参加型のモータースポーツイベント「Fuji speedway Motorsports Dream 2010」

2010年3月28日開催



 富士スピードウェイは、3月28日にユーザー参加型のモータースポーツイベント「Fuji speedway Motorsports Dream 2010」(FMD 2010)を開催した。

 FMD 2010はファミリー向けのステージイベント、レーシングコースでの体験走行やデモ走行、レーシングドライバーによるトークショーなど多彩なイベントを同時進行で開催。実際に走るユーザーも、見て楽しむファンも一緒に楽しめるイベントとなっていた。ここでは、各イベントごとに詳細をリポートしよう。

同乗体験走行、フォーミュラニッポンのデモ走行、無料走行会などが行われる

同乗体験の当選番号の表示

 今回はレーシングコースを利用したイベントが多数開催された。

 その1つは体験走行の実施だ。体験走行には、セーフティーカー、D1GPの車両、Gazoo Racingと呼ばれるトヨタの車両などが利用されており、プロドライバーが運転する助手席に乗ってレーシングコースを2周(メインストレートを1回通過)できるというものだ。

 これらの体験走行に乗るには、抽選で選ばれる必要がある。来場者には入場時に腕にリストバンドを巻いてもらうのだが、ここに番号が書かれており、パドック裏に設置されたテントで当選番号が表示される仕組みになっていた。自分の番号が書かれていれば、40分以内に搭乗の申し込みをすると体験走行に参加できる(手続きを行わない場合は次点の人に権利が移行)。

GAZOO Racingのレクサス「IS 250」レーシングドライバーの体験同乗走行では、結構本気で走ってくれる。車両はGAZOO Racingの「Vitz turbo MN」レースなどで利用されるオフィシャルカーも体験走行に利用された
こちらはレクサスISを使用したセーフティーカーD1GP車両を利用した同乗体験走行。派手なドリフトをさせながら走行

 極めつけは、チーム・インパルが所有する2人乗りのフォーミュラ・ニッポン車両が用意されていることで、J.P.オリベイラ選手の後ろに乗って、フォーミュラ・ニッポン車両で富士スピードウェイを走れるという夢のような体験が可能になっていた。

チーム・インパルの2人乗りフォーミュラ・ニッポンカーをドライブするのはJ.P.オリベイラ選手パッセンジャーズシートはかなり高い位置にあるので、実際に乗ったらちょっと怖そうだ

 また、フォーミュラ・ニッポンの車両を利用したデモ走行も行われた。参加したのはチーム・インパル、チーム・ルマン、セルモのトヨタエンジンを利用する3チームで、今年もフォーミュラ・ニッポンで利用されるスイフト製のFN09を利用してのデモ走行が行われた。デモ走行とは言え、各チームともコストをかけて車を走らせることもあり、かなり本気モードでの走行が行われた。と言うのも、このデモ走行はデータ取りを行うのに絶好の場であり、本気で走ってデータ収集を行っていたからだ。

チーム・ルマンから今年デビューするケイ・コッツォリーノ選手
チーム・インパルで3年目を迎え、エースナンバーの19を背負う平手晃平選手
チーム・インパルから復帰するJ.P.オリベイラ選手
セルモ・インギングから今年デビューする井口卓人選手

 そのほか、レーシングコースではセーフティカーが先導しながら自分の車で走れる体験走行が行われた。各車両のオーナーズクラブごとにレーシングコースを走ったほか、イベントの最後には一般の来場者が走る無料体験走行会も行われた。普段は見るだけのレーシングコースを自分の車で走ってみると、また違った視点でレースを見ることができて面白いのではないだろうか。

各車種ごとのオーナーズクラブによる体験走行。セーフティカーを先頭に各車種が走る姿は壮観。さまざまなクラブが走った
ショートサーキットではインストラクターの個別指導によるドライビングレッスンが行われていた

ハイブリッドカーを利用した燃費チャレンジレース
 ハブリッドカーだけが参加できる「ハイブリッドチャレンジ」レースも行われた。

 このレースのユニークな点は、周回タイムを競うのではなく、規定時間内に計2周走行し、走行燃費を競うというもの。2周は9分~9分20秒の間で回らなければならず、不足ないしは超過すると、ペナルティとして減点/失格扱いとなる。参加できるのはハイブリッド車であればよく、トヨタ「プリウス」、ホンダ「インサイト」などが対象となる。

 各車スタートラインに並び、十数秒感覚でスタートしていく。勢いよく飛び出していく車もあるが、多くはゆっくりと慎重にアクセスを踏んでいったようだ。バッテリーだけで走らせることが容易なプリウスは、見ているとエンジン音を出さずにスタートしていく車が多く、できるだけエンジンを使わずに燃費を稼ぐ作戦のようだ。これに対して少数派だが存在したインサイトはエンジンを使わないモードが存在していないためか、あまりそのあたりは気にしていないように感じた。なお、参加車の中には初代インサイトやプリウスPHV(プラグインハイブリッド)など珍しい車も参加していたのが印象的だった。

 なお、優勝はNo.13 ハタハタ&ポプリ From PRIUSな日々SNSチームの2代目プリウスで、タイムは10分5.190秒、燃費43.6km/Lという結果だった。

 個人的な感想としては、燃費を競うというユニークなレースの半面、見ている側にとっては派手さのない印象を受けた。もう少し抜きつ抜かれつがあるとさらに面白いのになぁと感じたが、参加者は普段使っている車を利用しているわけで、そこまで求めるのは厳しいかもしれない。

ピットに整列したハイブリッドカーハイブリッドチャレンジのスタートの様子。1台ずつスタートしていく静かにコースを駆け抜けていくハイブリッドカー
ハイブリッドチャレンジでは追い抜きは禁止で、制限内で2周し、かつその燃費を競う。黄色いプリウスはプラグインハイブリッドハイブリッド車が静かに駆け抜けていく姿はいつものレースとは違う感じ
参加者はプリウスがほとんどだったが、中にはインサイトの姿も……初代インサイトも参加していた南米大陸縦断などをした2代目ベースのエコミッション車

レーシングドライバーチームも参戦したタイヤ転がしGP

出走準備をするレーシングドライバーチームの面々

 タイヤ転がしGPは、2009年6月28日に行われたフォーミュラ・ニッポン第4戦で初開催されたイベントで、今回で第2戦目となる。

 ルールは簡単で、F1世界選手権用のタイヤを転がして、その速さで優劣を競うというもの。6人一組でチームを構成し、タイムで優勝を決定する。利用するのは、ブリヂストンが昨年のF1世界選手権で実際に利用したタイヤで、参加者の持ち込みないしはブリヂストンから提供されるタイヤを利用して行われる。ちなみに持ち込んだ参加者は誰もいなかった模様だ。

 ブリヂストンから提供されたタイヤはミディアムレインとプライムのスリックで、各チームに選択権はなく、抽選でタイヤの割り当てが行われた。なお、路面は直前から降り出した雨でちょい濡れ。F1カーであればミディアムのレインが有利そうだが、これだけ低速かつ低温度ではどちらでも有利不利はなさそうだ。

 今回はレーシングドライバーチームが急遽結成され、伊藤大輔選手、松田次生選手、石浦宏明選手、平手晃平選手、井口卓人選手、国本雄資選手の6人が参加して、一般の参加者とタイムを競った。

 結果は、チームNo2がスタート時に素早く飛び出し、レーシングドライバーチームの追い上げを振り切って堂々の優勝。レーシングドライバーチームは、伊藤選手、石浦選手、国本選手、井口選手、松田選手とつなぎ、最終走者の平手選手も追い上げたのだが惜しくも優勝はならなかった。なお、もともとドライバーチームは賞典外での参加となっていたため、優勝しても商品はもらえなかったのだが、真剣に悔しがっている姿が印象的だった。やっぱりドライバーという人種は、どんなレースであっても負けると悔しいのだと再確認した。

各チームがピットガレージからメインストレートにパレードラップ!?普段のレースよりもさらに気合いが入っているように見える? かもしれない松田次生選手レーサーチームの第1走者は伊藤大輔選手
スタート、チームNo2はすでに第1走者から飛び出している。伊藤選手は少し出遅れている。レインタイヤが路面にマッチしていないのか?タイヤを一度横に置き、たすきを次の走者に渡すたすきを掛けたら、再度タイヤを持ってスタート
負けてしまって苦笑いの平手晃平選手優勝したチームNo2の皆さん惜しくも優勝はならなかったが健闘したレーサーチーム。お疲れ様でした!

「井口選手と国本選手は深い関係」と新田選手が暴露!?
 ピットビル内では、レーシングドライバーによるトークショーが行われた。トークショーはGT300/若手ドライバー、チーム監督/ベテラン選手、GT500/フォーミュラ・ニッポンドライバーの3回が行われた。

 GT300/若手ドライバーの回には、なぜかベテランの新田守男選手が参加したほか、期待の若手ドライバーとして今年からフォーミュラ・ニッポンへの参戦が決まっている井口卓人選手、全日本F3のCクラスでチャンピオンを目指す国本雄資選手、GT300を走ったことのある山内英輝選手と坂本雄也選手が参加した。

 この直前のSUPER GT開幕戦にARTAガライヤで参加した新田選手は、1周目にスピンしてしまったことを司会者に指摘されると「忘れてしまいたい」と述べ、会場の笑いを誘った。今年の目標について問われると「GT300のタイトルは3度取っているが、2002年が最後。パフォーマンスが拮抗し、若手の台頭もあることから競争が激しくなっている。スタートは微妙だったが、ここから巻き返してチャンピオンを狙う」と、今年の意気込みを語った。

 今年からフォーミュラ・ニッポンにセルモ・インギングチームから参戦する井口卓人選手は、「GT300は2年目で、車にもチームにも慣れてきたのでチャンピオンを狙っていきたい。フォーミュラ・ニッポンは富士のテストでは雨でなかなか思うようには走り込めていないが、開幕までに準備してなんとか表彰台に乗れるように頑張りたい」と、初めてのフォーミュラ・ニッポンに戸惑いもあるようだが、まずは表彰台を目標に据えているようだ。

 今年もチームトムスから全日本F3のCクラスを走る国本雄資選手は、「今年は自分との戦いだと思っている。目標はもちろんチャンピオンしかないし、全部勝つ」と述べ、全日本F3のCクラスで全勝(つまりチームメイトに全部勝って)を目指すことを宣言した。その上で「将来の目標はF1なので、もちろんマカオも勝ちに行きます」と述べ、2008年に兄である国本京佑選手が成し遂げたマカオデビューウインを再現するとした。

 なお、山内英輝選手と坂本雄也選手の2人は今年のシートが未定で、2人ともよいシートを探すべく活動中であると述べた。

 新田選手は、「ARTAガライヤでのパートナーである高木真一選手との仕事での付き合いが長いため、“オホモダチ”なんで呼ばれることが多いが、井口君と国本君はもっとひどくて、夜になると手をつないで寝ているらしいよ」と暴露すると、名指しされた2人は顔を真っ赤にして否定する一幕もあり、和やかな感じでトークショーは終了した。

GT300/若手ドライバーの回のトークショー。新田選手1人で平均年齢を引き上げているが、新田選手を除くと平均年齢は20代前半。国本雄資選手はまだ19歳だ新田守男選手(左)が井口選手と国本選手の特殊な関係を暴露!?

星野&中嶋氏がチーム交換!? 大いに盛り上がった監督トークショー
 続いてチーム監督などによるトークショーが行われた。参加したのはチーム・トムス監督の関谷正徳氏、チーム・インパル監督の星野一義氏、ナカジマレーシング監督の中嶋悟氏、ENEOSルマン監督の黒澤琢弥氏、荒聖治選手、山路真一選手。

 なかでもSUPER GT、フォーミュラ・ニッポンで熱い戦いを繰り広げるトップ3チームの監督は、トークショーでも火花を散らしていた。関谷氏が「GT500は今年からイコールコンディションになったので大変。それでもなんとか2年連続でチャンピオンを狙っていきたい」と言うと、星野氏は中嶋氏を見ながら「そんなことさせねーよ、なぁ」と応じて、会場を盛り上げた。星野氏は「今年は日産で唯一のブリヂストンタイヤ使用チームになり、ドライバー、エンジニア、車、タイヤ、すべてが揃っている。だから普通にやれば勝てると思っていたが、いきなりエンジンが止まっちゃって残念だった。レースでも失敗し、子育てでも失敗して散々だ」とジョークで締めると、会場からは大きな笑いが巻き起こった。

 さらに話がフォーミュラ・ニッポンに移ると、星野氏は中嶋氏を見ながら「どっかのチームが速くて大変。正直この間のテストを見ていても小暮君がダントツ。それだけに組織を組み替えたりしてなんとか対抗しようと考えているが、どうやったらあんなに速くなるのか教えてほしい。友達なんだから教えてよ」と言うと、その中嶋氏は「まぁ小暮君は速いだけの人だから、結果が残らない。昔の星野一義みたいなもの」と切り返した。

 さらに中嶋氏は、「でもこんなにうちが速いことはなかなかなかったんだから2年ぐらいは許してよ。その前はそっちが速くて大変だったんだから」と述べると、星野氏は「じゃあ、オレがそっちの監督をやるから、アンタがこっちの監督やってくれよ」と、本気と取られかねないような冗談を繰り出すと中嶋氏はたじたじで、やはり会場の大きな笑いを誘っていた。

 今年からENEOSルマンの監督に就任した黒澤氏は、「GT500の開幕戦ではマッチのチームにやられちゃったが、まずは2位でスタートできてよかった。先輩方と同じ監督業はいろいろ大変だけど、胸を借りるつもりで謙虚に行きたいと思う。まずは1つ優勝したい」と述べ、近年優勝から遠ざかっているチーム・ルマンのGT500での優勝を実現したいと意気込みを語った。

監督・ベテラン選手トークショーに参加した6人。左から関谷正徳氏、星野一義氏、中嶋悟氏、黒澤琢弥氏、山路慎一氏、荒聖治氏トムス、インパル、ナカジマの3チームの監督がトークショーでも火花を散らした

タイヤの暖まりが勝負を分けたSUPER GT開幕戦、無地のスーツでスポンサー募集も?
 GT500およびフォーミュラ・ニッポンの回には、松田次生選手、伊藤大輔選手、平手晃平選手、石浦宏明選手、平中克幸選手が参加した。今回はSUPER GTの開幕戦の後だったこともあり、話題はSUPER GTに集中することになった。

 開幕戦は惜しくもリタイアに終わった松田次生選手は「開幕戦のことは聞かないでください(苦笑)。それでも目標はチャンピオンを取ることで、チームメイトのロニー・クインタレッリ選手とも同じレベルで戦えるし、楽しみなシーズン」と述べ、今年はGT500に集中して、まだ取れていないGT500のタイトルを今年こそ取りたいとした。

 開幕戦で2位になった伊藤大輔選手は「ピットアウトした時には今日はもらったと思っていただけに、ライバルがノーピットと聞いたときにはがっくりきた。今年はチーム全体がいけそうな雰囲気になっていて、そうした体制をこれまで整えて来たわけで、今年こそチャンピオンを目指したい」と語った。

 対して開幕戦では大嶋選手からドライバー交代するまでトップを走っていたチーム・クラフトのレクサスをドライブする石浦選手は、「あの場面だけを見ていると自分がものすごく遅いみたいで苦しかった。本当にタイヤの暖まりがわるくて、GT300のカローラに抜かれて、そのあともカローラとサイドバイサイドになるほどだった(苦笑)」と、開幕戦での苦労話を聞かせてくれた。

 その石浦選手と開幕戦で順位を争った平手晃平選手は、なぜか白いレーシングスーツで登場し、「スポンサー募集中です」と述べ、会場の笑いを誘った。平手選手によれば、フォーミュラ・ニッポンのスポンサーがまだまだ足りないらしく「どんなに少額でもいいからよろしく!」とのことらしいので、興味があるスポンサーの方はチーム・インパルまでご一報をとのことだった。

 フォーミュラ・ニッポンについては「まだまだナカジマレーシングとの差は大きい。台数も3台から2台になったことでデータも少なくなり厳しいかもしれない。それでもなんとかナカジマレーシングのお尻に噛みつくつもりで頑張りたい」と意気込みを語ってくれた。

 今年1年ぶりにフォーミュラ・ニッポンに復帰することになる平中選手は「今回、香港人がオーナーのチームからチャンスをいただき復帰することになった。スイフトの車は初めて乗って思ったよりもGがすごいと感じた」と、久々に乗るフォーミュラ・ニッポンだが早く慣れて優勝争いに絡みたいと話した。

チーム・インパルからSUPER GTに参戦している松田次生選手チーム・ルマンからSUPER GTに参戦している伊藤大輔選手チーム・ルマンからフォーミュラニッポンに、クラフトからSUPER GTに参戦している石浦宏明選手
チーム・インパルからフォーミュラニッポンに、サードからSUPER GTに参戦している平手晃平選手KCMGからフォーミュラニッポンに、JimgAINERからSUPER GTに参戦している平中克幸選手

メインステージではFSWリニューアル5周年を記念した式典が開催

多くの来場者が記念式典を見学していた

 今回のFMD 2010は、2005年に富士スピードウェイがリニューアルオープンしたことを記念して開催されたイベントとなっており、お昼前後にそれを記念する式典がメイン会場で行われた。

 記念式典には地元自治体である小山町の高橋宏町長、小山町の隣接自治体となる裾野市の大橋俊二市長、レース業界を代表してチーム・トムスの関谷正徳氏、チーム・インパルの星野一義氏、ナカジマレーシングの中嶋悟氏、レースメディア業界を代表してJMS(日本モータースポーツ記者会)会長の高橋二郎氏とJRPA(日本レース写真家協会)会長の小林稔氏、さらには富士スピードウェイ 取締役社長の加藤裕明氏が出席し、来賓挨拶などが行われた。

 富士スピードウェイの加藤社長は「今年は、5月にサーキットで初めてとなる音楽イベントを行い、11月にSUPER GTとフォーミュラ・ニッポンを同時開催するイベントも開催するなど、新しい取り組みをどんどん行っていく。お客様を笑顔でお迎えして、笑顔でお帰りいただくような取り組みを行っていきたい」と述べ、今年富士スピードウェイが行う新しい取り組みなどに関して説明した。

 小山町の高橋宏町長は「もう5年も経ったのかという感じ。その間にたくさんのお客様を小山町にお迎えすることができたことは嬉しい。小山町には自然を楽しめる場所もあるので、ぜひサーキット以外の場所も楽しんで欲しい」とし、今後も町がサーキットをバックアップして共存共栄を図りたいと述べた。また、裾野市の大橋俊二市長は「F1開催の時には裾野市の子供たちを招待してもらい、子供たちも大変喜んでいた。そうした子供たちの中には、将来F1ドライバーになりたいと言っていた子供もいた。ぜひ富士スピードウェイにはそうした子供たちに夢を与える存在でいて欲しい」と述べた。

 レース界で一番最初に挨拶の場に立ったのは、チーム・インパルの星野一義氏。初代“日本一速い男”の称号を与えられた星野氏だが、よく知られているように富士スピードウェイで鍛えられ、トップカテゴリーへとステップアップしていった、富士スピードウェイの申し子のような存在。「富士スピードウェイがあったからこそ、僕たちはレースができた。レースウィークエンドは緊張していてレーサーに声をかけたりとかできないと思うが、今日であれば全然OKなのでどんどん声をかけてほしい」と述べ、積極的にファンと交流したいという姿勢を強調した。

 最後に挨拶したのはナカジマレーシングの中嶋悟氏だが、「実は私は鈴鹿サーキットの大使を務めており、そういう意味ではあちら側の人間」と、軽いジャブを繰り出すとサーキットは笑いに包まれた。「日本には大きなサーキットが2つあり、それが鈴鹿と富士。私が最初にレースを見たのは富士で、最初にレースに出たのは鈴鹿だった。そうした意味では西と東が切磋琢磨してやっていくことが大事」と述べ、両サーキットがよい意味で競争しつつ、モータースポーツを盛り上げていくことが大事だと強調した。

 記念撮影後には、観客を対象にした餅まきが行われた。まずは子供を対象にした餅まきが行われ、加藤社長、両町長、星野氏、関谷氏、中嶋氏などがビニールに入った小さなお餅を子供たちにまいた。その後、一般の観客の対象にした餅まきも行われ、観客席は大いに盛り上がった。中でも一生懸命まいていたのは星野氏で、司会者がもうそろそろと言っても、子供達に一心不乱に餅まきを行う姿は、往年の日本一速い男の闘志からは想像できないお茶目な姿だった。

壇上に並ぶ来賓と挨拶をする富士スピードウェイ 取締役社長の加藤裕明氏小山町の高橋宏町長小山町に隣接する裾野市の大橋俊二市長
挨拶するチーム・インパル代表 星野一義氏チーム・トムス監督 関谷正徳氏ナカジマレーシング代表 中嶋悟氏
餅まきの様子。まずは子供を対象に開始餅まきにハッスルする星野氏まかれたお餅はこんな感じ

クレインズ新メンバー発表のほかお笑いライブなどで子供連れのファミリーに配慮

富士スピードウェイのレースクィーン「クレインズ」の2010年度メンバーも初お披露目された

 FMD 2010は、単にレース関係者に会えるだけでなく、ファミリーでも楽しめるという側面が重視されたものとなっていた。要するにお父さんが自動車やレーサーを追いかけている間に、お母さんとお子さんだけでも楽しめるイベントが同時進行で行われているということである。

 実際、パドック裏に設置されたメインステージでは、富士スピードウェイのレースクィーン「クレインズ」の2010年度メンバーの初お披露目があったほか、ファミリーで楽しめるイベントとして以下のようなショーが行われた。

・天装戦隊 ゴセイジャーショー
・シンガーによるコンサート
・お笑い芸人によるお笑いライブ
・ゴセイジャー握手会

 ゴセイジャーのショーは立ち見が出るほどの大盛況で、詰めかけた“よい子の友達”(戦隊ものではこのように呼びかけるのがお約束のようだ)は大はしゃぎだった。このゴセイジャーのショーは2回行われており、どちらも満員御礼だった。

 また、エアギターで知られるダイノジや「心配ないさ~」で知られる大西ライオンなどによるお笑いライブは、どちらかと言うとお母さんたちに受けていたようだ。ドライバートークショーと時間がかぶっていたため筆者は見れていないのだが、トークショーの合間にビデオスクリーンに映された様子を確認したときは、かなりのお客さんが盛り上がっていたようだ。

 見ていて思ったことは、こういう取り組みは重要だと再確認できたこと。実際、子供用の遊具なども設置されており、そちらもけっこうな賑わいだった。子供のいる親は、どうしても遊びに行くときに子供中心になってしまい、“大人の遊び”であるレースにはなかなか足を向けることは難しい。しかし、こうしたものが併設されていれば、大人だけでなく子供もレースを楽しむことができ、子供時代からレースに親しんでもらうことや、次世代のレースファンの育成という意味でも大きな効果があると言える。

 ただ、惜しむらくは今回は子供向けの自動車関連のイベントがキッズカートぐらいしかなかったことだ。できれば、もう少し子供向けの自動車関連のイベントを行って、子供たちが自動車に親しむような環境がもっと作れれば、次世代の育成という意味でよいのではないかと感じた。

左からますあやさん(1985年8月6日生まれ)、南まことさん(1983年5月15日生まれ)、鴻上聖奈さん(1986年9月2日生まれ)
メインステージで行われたゴセイジャーショーの様子。“よい子”で埋め尽くされたアクションの派手なショーのようだった会場は家族連れで満員御礼
メインステージ横にはRALLIARTのブースも。「パリダカチャレンジ」と銘打って、三菱「パジェロ」を利用した体験走行を実施ラリージャパンで利用された00カーも展示

痛車500台が富士スピードウェイのメインストレートをジャック!
 FMD 2010と併催で、グランドスタンド裏では“痛車サミットinFUJI SPEEDWAY”と呼ばれる、萌え系アニメーションのキャラクターなどをラッピングした車のイベントが行われた。痛車は秋葉原などが発祥の地と言われているが、好きなアニメのキャラクターを描いた車のことを、イタリア車が“イタシャ”と呼ばれているのに引っかけて、人から見て“痛い車”という意味で痛車と呼ばれている。今回は日本全国からそうした痛車が集合し、500台近くが集まったのだと言う。

 グランドスタンド裏に行くと、そうした痛車が大集合しており、これだけの痛車が集まるとまさに壮観。街中で1台だけ見ると、どうしても凝視してしまうが、ここでは痛車がスタンダード。逆にあまり気合いの入っていない車を見かけると、残念に思えてくるから不思議なものだ。

 なお、展示されていたのは4輪車だけでなく2輪車もあり、いずれもオーナーが気合いを入れて作成したものばかり。こちらにも専用ステージが用意されており、「痛車オブ痛車」を選ぶイベントなどが行われていた。

 イベントのフィナーレには、痛車がレーシングコースのメインストレート上に整列するというデモ走行も行われた。メインストレートに4列で痛車が並んでいる姿はシュールを通り越して、「ここはどこのアニメーションの中なんですか?」という印象だった。ここまで台数が揃うのであれば、次は痛車レースを検討しても面白いかも。

痛車サミットのステージも用意されていたこれらすべてが痛車。全部で500台近く4輪だけでなく2輪車も展示されていた
富士のメインストレートに整列した痛車このようにずっと奥まで痛車が大集合これだけの痛車が並んでいるという図もなかなか壮観だ

痛車フォトギャラリー

(笠原一輝)
2010年 4月 1日