日本初のアバルト・ワンメイクイベント「アバルト・デイズ」 |
アバルトは、日本で特に人気のあるブランド。昨年には、アバルトが独立したブランドとして日本でも正式発足したことから、近年では特に大きな盛り上がりを見せている。
ところが不思議なことに、かつての黄金時代から現代に至るまで、アバルトのワンメイク・イベントの類は事実上皆無に等しかったのだが、今年4月末になって、ついに長い沈黙が破られることになった。愛知の「チンクエチェント博物館」とアバルト・デイズ実行委員会の主催で、現代アバルトの日本の窓口であるフィアットグループ オートモービルズ ジャパンが協賛する事実上のオフィシャルイベント「アバルト・デイズ」が、初めて開催されることになったのである。
会場として設定された、静岡・沼津の「ニューウェルサンピア沼津」に結集したアバルトは、新旧合わせて約30台。
アバルトは世界初のチューニングメーカーとしても知られ、レーシングパーツをキットの状態でも販売していた。また前世紀末には外観のみをアバルト・ブランドのパーツでモディファイしたコスメティックチューン車も販売されていたことから、非常にオリジナリティの線引きが難しいブランドなのだが、今回の「アバルト・デイズ」の参加対象とされたのは、新旧のアバルトs.p.aで生産もしくは発売されたアバルトで、車体/エンジンなどに「ABARTH」の打刻がある車両に限る(認定が曖昧な車両に関しては主催者が決定)とされた。
旧くはアバルトが独立・創業して間もない1955年に製作されたアバルト207Aボアノ製バルケッタを筆頭に、フィアット・アバルト750ザガートやそのスパイダー版、フィアット・アバルト・ビアルベロ(DOHC)の姿もあった。アバルト・シムカは1300と2000GTの双方が参加。純粋なレーシングスポーツで、おそらくワンオフとも言われているフィアット・アバルト1300SPも現れ、その激しいサウンドで会場を魅了した。
また、フィアット600をベースにモンスターのごときチューンを施したフィアット・アバルト1000ベルリーナ・コルサ(いわゆる1000TCR)は4台も並び、日本に於けるこのモデルの人気の高さを実感させてくれた。
さらに、124スパイダー・アバルトや131アバルトなど、1970年代に活躍したラリーカーや、こちらもアバルトが製作したランチア・ラリー037のワークスカーもエントリーし、かつてアバルトというブランドの名声を決定的なものとした車たちが一堂に会する、素晴らしい光景が展開されたのである。
一方、現代のアバルトは「エッセエッセ」を含むグランデ・プント・アバルトと、わずか49台のみが限定製作された「アセット・コルサ」などに代表される500アバルトの双方が複数参加。クラシックモデルにも負けない存在感を放っていた。
■初回としては大成功
大会初日となる24日は、伊豆・箱根を中心に約190kmのツーリングとタイムラリーを開催。なんと、季節外れの雪という予想外の荒天に見舞われたものの、関東・東海一円から集結したエントラントたちは、そんなシビアな天候をものともせず、迫力たっぷりの咆哮を響かせながらワインディングロードを楽しんでいた。
また、この日の夜には地元・沼津在住の人気漫画家、西風氏を迎えて楽しいパーティも行われた。
そして翌日曜日は、前日とはうって変わっての快晴。鮮やかな若草色の芝生上に並べられた新旧アバルトとともに、ミーティングやコンクール・デレガンス、新旧のアバルトに同乗試乗ができる「アバルト・ライド」、そして不肖筆者の司会でトークショーなども開催された。
こうしてエントラントはもちろん、一般ギャラリーやスタッフに至るまで、麗らかな陽光のもとで穏やかな「アバルトデイ」を過ごすことができたのである。
今回の成功を見て、来年も4月23日、24日、舞台も今回と同じくニューウェルサンピア沼津を基点に開催することが決定。今回のイベントの仕掛け人でもあるエンスージアスト、チンクエチェント博物館の伊藤精朗代表は、早くも来年に向けてさまざまなアイデアを用意しているとのことなので、アバルトを所有するエンスージアストはもちろん、アバルトに憧れるファンも、来年は是非とも沼津に集結することをお勧めしたい。
(武田公実)
2010年 6月 8日