自工会、7月度定例記者会見 「新成長戦略の実現のためには政府の積極的なインセンティブが必要」 |
自工会(日本自動車工業会)は7月7日、7月度の定例記者会見を行った。定例記者会見は、今年度自工会 会長となった日産自動車 代表取締役 COO 志賀俊之氏が行い、政府が6月に閣議決定した「新成長戦略」、ベルギーで行った「JAMA(Japan Automobile Manufacturers Association:自工会)レセプション」についての報告が行われた。
■新成長戦略について
「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ~」は、2009年12月30日に政府で閣議決定された「新成長戦略・基本方針」をベースに、経済産業省で施策検討・立案され、6月18日に閣議決定されたことで、政府全体の方針となったもの。
その中では、2020年までに「普通通充電器200万基、急速充電器5000基設置。新車販売に占める次世代自動車の割合を最大で50%に」することがうたわれており、環境・エネルギー大国を目指すとしている。
志賀会長はこれについて、「新成長戦略の中で、自動車産業にとって重要な項目がいくつかある。環境と経済にあわせた次世代自動車の開発促進が挙げられている。自工会としても将来のCO2削減やエネルギー削減の観点から、次世代に自動車について期待しており、その開発に取り組んでいる。新成長戦略では、2020年に次世代自動車の普及率を50%にするという政府目標が示されているが、(政府の)積極的なインセンティブが必要であると認識している。自工会として、積極的なインセンティブ施策の実施をお願いしたい」と言う。
また、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築を通じた経済連携戦略、法人税の実効税率の引き下げ、交通の高度情報化についても触れ、とくに志賀氏は法人税の実効税率の引き下げについて強く言及。「我が国の法人税の実効税率は40.69%とEUやアジア諸国と比べて極めて高いものとなっている。日本で生産活動を行う企業のために、ぜひ法人実効税率の引き下げを実現してほしい」と言い、その数字については「25~30%をお願いしたい」と語った。その上で「この新成長戦略が今後の予算措置や税制改正議論の基本スタンスとなる重要なものと認識している」とした。ただ、地球温暖化対策税の導入など自動車業界のスタンスと異なる記述もあり、これらについては今後の議論の動向を注視したいと語った。
税金に関しては、「参議院選挙中ではあるものの」と前置きした上で自動車関係の税金についても触れ「民主党は昨年の(衆議院)選挙のマニフェストで、(ガソリンなどの)暫定税率を廃止することを公約に掲げていた。当分の間これを維持するとの結果になったことは誠に残念だ。ただ、昨年末にとりまとめられた税制改正大綱では、車体課税については簡素化など抜本的に見直しを検討することが明記され、参議院選挙の民主党と自民党のマニフェストにおいても簡素化と負担の軽減が盛り込まれている。これについては必ず実行していただくようお願いする」と語り、一般財源化によって課税根拠を失っている自動車取得税と重量税については、直ちに廃止すべきであるとした。
とくに自動車取得税は消費税との二重課税になっており、消費税を含めた税制改革論議の中で「確実に廃止すべきものである」(志賀氏)と強調した。
新成長戦略に盛り込まれた自動車業界関連項目 | 課税根拠を失った自動車取得税、自動車重量税については廃止を求めた |
■JAMAレセプションについて
JAMAレセプションは、自工会が主催して欧州で行っているもので、今年はベルギーのブリュッセルで開催。EU委員会、欧州議会をはじめ欧州自動車関係者などとの交流を促進し、欧州内におけるネットワークの拡大を図ることを目的としている。
1996年から毎年開催しているが、昨年はリーマンショックの影響や、欧州議会が改選直後だったことから開催が見送られており、2年ぶりに開催されたことになる。志賀会長にとっては自工会会長として海外で初めての大きなイベントとなった。
今年は150名を招き、成功裏に終了したとし、自工会各社による欧州経済への貢献、日本EU-EIA(経済統合協定)、国際的な車両型式認証の相互承認(IWVTA)、道路交通分野におけるCO2削減についての意見交換ができたと言う。
「自工会各社による欧州への投資額は214億9000万ユーロで、欧州には13の工場と12の研究施設を持ち、2009年実績で日本からEUへ輸出は54万2000台。これに対し、EU域内での生産は113万6000台で、13万6000人の雇用を創出していることに理解を得られた」(志賀氏)と述べる。ただ、懸念事項として韓国と欧州の間で進んでいるFTA交渉があり、これが発効されると韓国から欧州への自動車輸出関税が0%になる。現在日本から欧州への輸出は乗用車で10%かかっており、「これは競争市場において結果的に日本製自動車を不利にするとともに、欧州における事業活動の悪影響になると認識している」と言い、日本EU-EIA(経済統合協定)への政府の取り組みを積極的に支援していきたいと語った。
JAMAレセプションで意見交換した4つのテーマ | 欧州にある自工会会員各社の13の工場 |
日本から欧州への出荷台数(橙色)と、欧州内での生産数(青色)。2001年以来、欧州での生産数が上回っている | 欧州生産の自動車は、欧州域外へも輸出されている |
■景況感について
志賀氏は記者からの質問に答える形で、消費税の引き上げや景況感についてもコメント。消費税の引き上げ論議については、政府の掲げる「強い経済、強い財政、強い社会保障」には賛同する部分もあり、財政規律を守るという点から理解を示しものの、消費税と自動車取得税の二重課税など自動車諸税に関する問題点はただすべきであるとした。
また、景況感については、円高が進行していることに対しての懸念を示した。国内市場においては、エコカー減税(環境対応車普及促進税制)やエコカー補助金(環境対応車普及促進対策費補助金)施策もあって、昨年同期比ではプラス成長を続けている。ただ、エコカー補助金は9月末日で終了する(予算がなくなれば、それ以前に終了)ことが決まっており、「円高の影響と、エコカー補助金の終了の影響がダブルで来るのを懸念している」(志賀氏)と言う。
志賀会長は5月の新任会見時には、経済環境が緩やかに回復しており、エコカー補助金の延長の終了とうまくかみ合って、販売状況への影響が小さければと考えていたが、現在は状況が異なり、厳しい状況にある言う。しかしながら、自工会では、エコカー補助金延長などの施策を要望する論議を現時点では行っていないと述べた。
(編集部:谷川 潔)
2010年 7月 7日