日産、「the new action TOUR」の第1弾を神奈川県で開催【前編】
電気自動車「リーフ」の試乗会に、「たま電気自動車」登場

日産グローバル本社向かい、新高島駅近くで開催された「リーフ体験試乗会」

2010年7月31日開催



 日産自動車は7月31日、EV(電気自動車)の普及、啓発を目指した取り組み「the new action TOUR(ザ・ニュー・アクション・ツアー)」の第1弾を神奈川県の日産グローバル本社を中心としたみなとみらい地区で開催した。このthe new action TOURでは、あらかじめ募集した約100名の参加者による「リーフ体験試乗会」や、日産グローバル本社内でのゼロエミッションに関する講演会、EV普及による街作りアイデア市民ワークショップが開催された。

 前編ではリーフ体験試乗会を、後編ではゼロエミッションに関する講演会の模様をお届けする。

EVの加速力を体感できた試乗会
 リーフ体験試乗会は、日産が12月に市販を予定しているリーフを実際に運転できる試乗会。市販前の車のため、日産本社向かいの駐車場内にパイロンで簡易な特設コースを作り、そのコースを2周ほど運転できるようになっていた。運転する自信のある人は自分でステアリングを握り、ペーパードライバーなど運転する自信のない人は日産のスタッフがステアリングを握る形で走行。途中に約40km/hまで加速可能な直線区間が設けてあり、EVならではの加速力を体感している人が多かった。

 実際に運転を終えた人にリーフの感想を聞いたところ、「静か」「トルクがある」「加速がよい」というものが多く、ほぼすべてが肯定的な意見。助手席に座って同乗走行しただけでもその違いは分かるようで、同様の意見を聞くことができた。

運転を希望する人は運転を、同乗を希望する人は同乗をする形で試乗会が行われていた試乗コースは途中40km/hほど出せるような区間が設けてあり、ここでEVの加速を体感していた
たま電気自動車と、日産の有志による再生サークルのメンバー

リーフより人気のあった「たま電気自動車」
 この試乗会には、日産の電気自動車のルーツとも言える「たま電気自動車」が展示されていた。たま電気自動車は、第二次大戦後間もない1947年に、航空機メーカーの立川飛行機によって作られたEV。その後社名を東京電気自動車とし、たま電気自動車→プリンス自動車工業となり、日産自動車に吸収合併されることになった。設計は立川飛行機の田中次郎氏で、氏はその後日産の専務になる。

 展示されたたま電気自動車は、生産1号にあたるもので、日産の倉庫に眠っていたもの。それを日産の有志による再生サークルが再生作業を行って、当時のままに再現したと言う。当時の性能は、最高速35km/h、1充電走行距離65kmだったが、バッテリーの進化もあり、再生後は40km/h以上の速度が出ると言う。

 リーフの体験試乗会の参加者の中から抽選で3名を選び、同乗走行を何回か行っていたが、4名乗車でも力強くスムーズに加速していた。2BOXタイプのノスタルジックなスタイルは、参加者の人気を集め、たま電気自動車の傍らに立つ再生メンバーに積極的な質問を行っていた。


たま電気自動車のボディーサイズは3035×1230×1630mm(全長×全高×全幅)。当時のフルサイズとのこと
EVのため、発進・加速はとても静か。しかも加速力もよく、大人4人乗っても快調に走る
たま電氣自動車と書かれたプレート。E4S-47Iは、Electric(電気)、4人乗り、Sedan(セダン)、1947年、1号車を表すボンネット部のエンブレムは、オープナーを兼ねているボンネットを開けたところ。電装系のバッテリーなどが収まる。右側には、設計者の田中次郎氏のサインがされていた
オリジナルでは、電送系バッテリー後部に充電用のコネクターがあったとのこと。再生後は専用充電器で走行用バッテリーを充電するボンネット内部にあるシリアルプレート。型式と車台番号から1号車と分かると言うたま電気自動車は、1968年に1度補修作業が行われており、その際はオリジナルとは異なったヘッドライトガラスが入っていた。今回の再生作業では、オリジナル同様にするため、オールドダットサンのレストアで名高い名古屋在住の木村氏から提供を受けたと言う
点滅しないので、ウインカーではなく方向指示器。当時一般的だったアポロ製の方向指示器で、たま電気自動車では2種類のサイズが用いられていたと言う。これはサイズの大きいタイプ
駆動用バッテリーは車体下部にある。交換はカバーを外して行う。当時と同じユアサ製のバッテリーを用いるが、バッテリー性能が向上しているため、最高速も速くなった
後部にはブレーキランプと尾灯が付く。尾灯は当時の法規で必須だったと言う。尾灯右に見えるのがスイッチ。外部スイッチで点灯させる尾灯を点灯させたところトランクを開けたところ。容量は小さく、木と金属の組み合わせて作られている
ドアは2ドア。大きく開くので乗り降りは容易だ後席に乗る際は、前席のシートバックを前に倒す。ロック機構などはない
たま電気自動車のインストルメントパネルステアリングは3本スポーク。中央には、「たま」を組み合わせたデザインインストルメントパネル右側から。右のレバーが方向指示器のコントローラー。イグニッションスイッチは再生の際に取り付けたとのこと
方向指示器動作時。当時からこのようなプラスチック素材が使われていたと言う中央部には電圧計がある。40Vで走行する電圧計の左側には電流計
その左には速度計。ただし、ギヤ比があっておらず、現在は正確な速度が表示されないとのこと。改修予定一番左にはグローブボックスがある。「本当にグローブくらいしか入りませんね」とはスタッフの弁
操作はアクセルペダルとブレーキペダルで行う。ブレーキにはコツが必要とのこと前進/後進スイッチ室内灯は前回の再生時に取り付けられたスカイライン(C10)のもの。この辺りは図面や写真がなく、どうなっていたか本当のところは不明と言う
ドアのロック機構。特別なロック機構はなく、非常にシンプルな構造再生の際に苦労したのがこのマイナスネジ。ネジ屋さんに頼むことになり、最低ロットの問題で、3種類のネジをそれぞれ3万本作ることになったドア部には釘も用いられていた

 このたま電気自動車は、the new action TOURで行われるリーフの試乗会に、今後も帯同する予定。the new action TOURに参加する機会があるなら、戦後わずか2年、しかも混乱期のため資材のない中で作られたEVと、現時点の最新EVであるリーフを、ぜひじっくり見比べてほしい。

(編集部:谷川 潔)
2010年 8月 2日