「第5回 全日本学生対抗 エコドライビングコンテスト」リポート インサイト、プリウス、マーチの3車種で開催 |
8月30日、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で「第5回 全日本学生対抗 エコドライビングコンテスト」が開催された。エコドライビングコンテストは、速さだけでなく環境負荷の小さい運転技術を競うレースで、全日本学生自動車連盟が主催しているイベントになる。
開会式の前には、エコドライブ・トークイベントが開催された。モータージャーナリストの日下部保雄氏が司会進行を務め、特別協賛している自動車メーカー3社から本田技研工業 環境安全企画室室長 篠原道雄氏、トヨタ自動車 トヨタ第2開発センター主任 山崎隆氏、日産自動車 マーケティング本部マーケティングマネージャー 小口武志氏が参加。KONDO RACINGからフォーミュラ・ニッポンに参戦しているレーシングドライバーの松田次生氏、学生代表3名も参加した。
最初にメーカー各社のエコカーへの取り組みが紹介された。その中で、日下部氏からの「エコドライブの方法は?」という質問に、「コースアウトしてはいけないがコーナーリング速度を速くする」「ハイブリッド車はゆっくりとブレーキング。急加速はだめですが、加速は強く行い、目的の速度になったらアクセルを離し惰性走行をする」といったアドバイスがあった。
学生からは「デザインを見てワクワクするようなカッコイイ車が少ない」「自動車部で乗れる安くて、軽くて、いじれる車がない」など忌憚のない意見がメーカーにぶつけられた。松田選手からはフォーミュラ・ニッポンの観客が少ない事に対する意見などを学生に聞くシーンもあった。予定は45分であったが、トークイベントは1時間を超える盛り上がりをみせていた。
開会式では、欠席となった長谷川聰哲大会会長のコメントを副会長の鈴木伸一氏が代読。「エコドライビングコンテストを通じて、加盟大学自動車部員らが地球温暖化防止を考え、実践するきっかけとし、学内、さらには全国の学生に対する地球温暖化防止運動に拡げていくことを期待します」と挨拶を行った。
開会式の様子 | 大会副会長の鈴木伸一氏 | 学生代表による選手宣誓 |
■競技方法
エコドライビングコンテストは、トヨタ、ホンダ、日産から競技車両が提供されている。車種はトヨタ「プリウス」、ホンダ「インサイト」、日産「マーチ」の3車種で、各15台を用意。車種ごとに異なった課題で争う形式となっている。
インサイト | プリウス | マーチ |
競技方法は車種ごとに異なるパートを走行し、タイムと燃費をポイントに換算し競う。鈴鹿サーキットのレーシングコースは2輪のコースを使用(ヘアピン先のシケイン、最終コーナー手前も2輪用シケインを通過)。最高速は110km/h、ピットレーンは40km/hなどのルールがあり、違反があった場合はポイントが減算される。
各車両の具体的な競技内容は以下のとおり。
●ハイウェイコース(使用車両:インサイト)
鈴鹿サーキット国際レーシングコースを7周。7周を周回する間に1回ピットインし、自作のコメントを書いたボードを持って記念撮影する課題が与えられている。レーシングコースは2輪用のコースを使用するので、ヘアピン先のシケイン、最終コーナー手前も2輪用シケインを通過する。
●チャレンジングコース(使用車両:プリウス)
鈴鹿サーキット国際レーシングコースを1周。2周目のダンロップコーナー先でコースを外れ、逆バンク、S字、2コーナーの観客席の後ろを通り交通教育センターへ。交通教育センター内でS字、スキッドパッド(濡れた滑りやすい路面)、7.5m四方のボックス内で方向転換、バックでの車庫入れといった課題をクリアした後、パドックへ戻る。
●エンジョイSUZUKAコース(使用車両:マーチ)
鈴鹿サーキット国際レーシングコースを5周、毎周裏ストレートにある西ピットにピットインしてオフィシャルのチェックを受ける。6周目のダンロップコーナー先でコースを外れ、観客席の後ろを通り交通教育センターへ。交通教育センターを通り抜け(課題なし)パドックへ戻る。
第1ステージでマーチに乗ったチームは第2ステージでインサイト、第3ステージではプリウスと、全チームが3車種を順番に乗り換える。各車種のタイムと燃費で順位付けを行い、ポイントが与えられる。
燃費 | タイム | |
1位 | 200 | 100 |
2位 | 170 | 90 |
3位 | 150 | 80 |
4位 | 120 | 70 |
5位 | 100 | 60 |
6位 | 90 | 55 |
7位 | 80 | 50 |
8位 | 70 | 45 |
9位 | 60 | 40 |
10位 | 50 | 35 |
※11位以降は1ポイントずつ減少する。
3車種の燃費、タイムの計6項目を合計したポイントが成績となり順位付けされる。ポイントは、燃費での獲得ポイントが多くなっており、燃費とタイムのバランスをどう取るのかが、勝利への鍵となるわけだ。
45台の競技車両がピットウォールに並べられた |
第1ステージはメインストレートでル・マン式スタートを3グループに分けて行い、第2ステージ以降はピットレーンからのスタートとなる。今回の参加チームは男子学生の部が32チーム、女子学生の部が4チーム、一般の部が9チーム、合計45チームでの争いとなっていた。
■競技開始
12時、45台の競技車両がメインストレートのピットウォールに並べられ、競技は開始された。コ・ドライバーが競技車両に走り寄り一斉にスタートを切った。速さだけを争う競技ではないので、グッと加速する車両もあればゆるゆると走り出す車両もあり、各車それぞれの作戦で1コーナーへ向かった。1分遅れて第2グループ、さらに1分のインターバルをおいて第3グループがスタートして行った。
スタートは、ル・マン式スタート | 各車それぞれの作戦でスタート | 1コーナーへ向かった |
第2グループも1分遅れてスタート | S字を抜ける競技車 | |
第2ステージからは、車両を乗り換えピットからスタート | スタートが切られ、ピットアウトしていく | |
各車両が課題をクリアするとパドックを抜けピットに戻ってくる |
インサイトによるハイウェイコースのポイントは速度と燃費のバランスだ。速く走ればタイムの順位が上がるが、燃費の順位が下がる。タイムの順位より燃費の順位のほうがポイントが多いのでゆっくり走行し、燃費を向上させた方が高得点につながるが、1周のラップタイムは4分30秒以上6分以内と決められている。さらにタイムに影響するのはピットで行われる記念撮影だ。運悪く数台が撮影待ちの周にピットインすると、簡単に分単位のタイムロスとなる。
シケインを抜け最終コーナーを下るインサイト | 写真撮影のためピットロードへ | 撮影ポイントで停止。周回数が多いせいか撮影待ちの渋滞は少なかった |
撮影ポイントに停止 | 車を降りてボードを持って撮影 | 世界への発進 エコ鈴鹿!! |
ピットアウト | ゴールすると燃費をチェック | チェックが終わると車種ごとに縦に並べられ、次のスタートに備える |
プリウスによるチャレンジングコースは運転テクニックの差が出やすい。交通教育センターで行われる課題では7.5m四方のボックス内での方向転換や車庫入れで、タイムロスするチームもあった。
疾走するプリウス | 交通教育センターでS字の課題を走行する | スキッドパッドを走行 |
方向転換 | 時にはこんなことも | 課題をクリアすると交通教育センターを出てピットへ |
ピットに戻り計測 | モニターに表示された燃費 |
マーチによるエンジョイSUZUKAコースは、レーシングコースの西ピットで毎回オフィシャルのチェックを受けるが、降車する必要もなくタイムロスは比較的小さ目だ。
交通教育センターも外周路を通過するだけなので、運不運に左右されることは少ない。西ピットはわずかな時間のストップ&ゴーだが、新型マーチのアイドリングストップを体験することができる。停止するとほんのわずかな時差でストンとエンジンが停止し、ブレーキペダルから足を離すとスターターが自動的に動作し発進していった。
ストレートを下るマーチ | 最終コーナーを下るマーチ | 燃費向上のためにはコーナーリング速度を高く |
マーチは向かって左側の西ストレートのピットへ | ピットインし、一時停止しチェックの印をもらう。このとき短時間でもアイドリングがストップする | |
マーチのメーターパネルに表示された燃費 |
■競技結果
各コースの成績は、ハイウェイコース(インサイト)の燃費順位1位は立教大学の25.9km/L、タイム順位1位は鳥取大学と専修大学の2校が34分00秒。
チャレンジングコース(プリウス)の燃費順位1位は慶應義塾大学と青山学院大学の2校が33.0km/L、タイム順位1位は慶應義塾大学の20分53秒で、慶應義塾大学は同じ競技で燃費と速さの両方で1位を獲得している。
エンジョイSUZUKAコース(マーチ)の燃費順位1位は京都産業大学の20.4km/L、タイム順位1位は一般の部参加のHonndaStyle☆EcoFasterの31分41秒だった。
ちなみに、ハイウェイコースのタイム順位1位の2校の燃費は11.0km/L、8.6km/Lで44位、45位。燃費順位1位の立教大学はタイム順位45位なので、ゆっくり走ることが燃費向上につながるのは間違いなさそうだ。
各コースの順位をポイント換算し、合計した結果で総合順位が決定する。32チームで争われた男子大学生の部は慶應義塾大学チーム、4チームで争われた女子学生の部は関西学院大学女子チーム、9チームで争われた一般の部は、HonndaStyle☆EcoFasterチームがそれぞれ優勝した。
チーム名 | 総合点 | ハイウェイコース | チャレンジングコース | エンジョイSUZUKAコース |
慶應義塾大学 | 472 | タイム4位/燃費23位 | タイム1位/燃費1位 | タイム19位/燃費21位 |
関西学院大学女子チーム | 471 | タイム37位/燃費3位 | タイム42位/燃費5位 | タイム5位/燃費3位 |
HonndaStyle☆EcoFaster | 344 | タイム9位/燃費29位 | タイム2位/燃費24位 | タイム1位/燃費13位 |
トークイベントの進行役を務めたモータージャーナリスト日下部保雄氏は、一般の部にチームEDCとして参加し、2位に入賞した。
モータージャーナリスト日下部保雄氏もチームEDCとして参加。結果は一般の部で2位 |
■表彰式、閉会式
競技終了後には表彰式、閉会式が行われた。審査委員長の多賀弘明氏は「経済事情で今年の大会が開けなくなりそうだったが、協賛各社のお陰で開催できたことに感謝したい」と挨拶した。その後、各部門の表彰式が行われ、賞状、トロフィーなどが手渡された。
鈴鹿市長杯は地元鈴鹿市の川岸光男市長から手渡され、「環境が大事な時代になり、その中で自動車の占める割合は高く、この大会も年々盛り上がっている。鈴鹿市も環境対策に取り組んでいる。皆さんも社会に出てからも日本の環境対策に取り組んで欲しい。できれば、鈴鹿市に就職してくれれば幸いと思う」と挨拶した。
レーシングドライバーの松田次生氏は、「メーカー各社の最新のエコカーに乗れることができたのは、各メーカーの協力があってイベントが開催されたお陰だということを憶えておいてほしい。この先、どのような道に進んでも、今日の経験を活かし、夢を持って社会に進んでほしい。できればモータースポーツの発展のため、友達を呼んでサーキットに来てほしい」と語った。
多くの学生が参加して閉会式が行われた | 審査委員長の多賀弘明氏 | |
男子学生部門1位は慶應義塾大学 | 一般の部で2位に入り表彰状を受け取る日下部氏 | 一般の部の入賞者 |
鈴鹿市長杯が川岸市長から送られた | 伊勢型紙で作られた表彰状 | 鈴鹿市の川岸市長 |
KONDO RACINGの松田次生選手 | 入賞者には賞品も贈られた。女子学生の部の賞品 | 男子学生の部の賞品 |
一般の部の賞品 | 閉会式の様子 | 全日本学生自動車連盟理事の磯野計一氏 |
(奥川浩彦)
2010年 9月 1日