レノボ、ジェンソン・バトン選手のトークショーを開催
F1マシンのセッティングなどにThinkPadが活躍

ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス・チームのF1ドライバー、ジェンソン・バトン選手

2010年10月5日開催



 大手パソコンメーカーであるレノボ・ジャパンは10月5日、同社の流通や販売店向けに同社の戦略などを説明するイベント「パートナーカウンシル 2010」を、東京都内のホテルで開催した。同イベントでは、代表取締役社長 ロードリック・ラビン氏ら同社の幹部が登壇し、詰めかけた流通や販売代理店の関係者向けに、今年から来年にかけての、マーケティング戦略、製品戦略などに関しての説明を行った。

レノボジャパン 代表取締役社長 ロードリック・ラビン氏今後のパートナー施策について語った、常務執行役員 エグゼクティブ・ディレクター パートナー事業担当 留目真伸氏製品戦略に付いて語った、製品事業部 事業部長 佐塚千帆氏
イベントでは、ノートパソコンの「ThinkPad」や、デスクトップワークステーションの「ThinkStation」など最新機種を展示

 このイベントの中で、同社はオフィシャルサプライヤー契約を結んでいるボーダフォン・マクラーレン・メルセデス・チームのF1ドライバーであるジェンソン・バトン選手と、同チームのプリンシパルエンジニア 今井弘氏によるトークショーを行い、F1世界選手権への取り組みをアピールした。バトン選手、今井氏とも、今週末に鈴鹿サーキットで開催されるF1日本グランプリへの移動途中に立ち寄ったものだ。

レノボのF1への取り組みの歴史は長い
 レノボと言えば、パソコンメーカーとして、今ではよく知られた存在だ。レノボは元々中国のLegend(レジェンド)というパソコンメーカーだったのだが、2004年に米IBMのノートパソコン事業とそのブランドである「ThinkPad」を買収。グローバルブランドの“Lenovo”に改称し現在に至っている。

 レノボは、企業向けノートパソコンのThinkPadだけでなく、デスクトップパソコンの「ThinkCenter」、およびコンシューマー向けノートパソコンの「IdeaPad」などの複数のブランドを展開しており、世界市場におけるマーケットシェアでは第4位となる。

 そのレノボのF1への取り組みは、すでに5年にわたっている。レノボがF1とF1のかかわりは、2006年にウィリアムズのスポンサーとなったことに始まる。ウィリアムズとの関係は2008年末まで続き、2008年の末からボーダフォン・マクラーレン・メルセデスとオフィシャルサプライヤー契約を結び現在に至っている。

 このオフィシャルサプライヤーというのは、スポンサー契約とは異なり、“現物支給”の契約になる。つまり、お金を払って車体に自社のロゴを書いてもらう契約ではなく(実際マクラーレンの車にはレノボのロゴは描かれていない)、パソコンやサーバーなどをマクラーレンチームに供給するという契約なのだ。

 車体に自社のロゴは掲示されないが、自社の広告や各種マーケティング活動などにマクラーレンがレノボのパソコンを使っていることなどをアピールできる(ちなみにF1ではこうした契約が多く、例えばオイルやダンパーなどがこうした契約で供給されることが多い)。

 レノボ・ジャパンのオフィスがある六本木ヒルズの大型ビジョンには、マクラーレン所属のドライバーであるルイス・ハミルトン選手が登場する映像が流されているなど、レノボのマーケティング活動に活用されているのだ。

会場で流されていたビデオ。オフィシャルサプライヤーは、こうした映像などで製品の優秀性をアピールできる

F1のセッティングやエンジンの暖気にThinkPadを活用
 レノボの幹部による、流通や販売代理店向けの説明会が終わった後に、ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス・チームのプリンシパルエンジニア 今井弘氏と、レノボ・グループ レノボカスタマーセンター プログラムマネージャー ケビン・ベック氏によるトークショーが始まった。

 今井氏はかつてはブリヂストンに勤務しており、その後マクラーレンチームへと移籍。現在は同チームのタイヤ関連のエンジニアとして活躍している。

マクラーレンチームのプリンシパルエンジニア 今井弘氏。F1マシンの開発競争は激しく、鈴鹿では最終のパーツが土曜日朝に届くなど、ギリギリまでアップデートを行っていく今井氏の使っていたThinkPad。肌身離さず持ちあるいているとのことレノボカスタマーセンター プログラムマネージャー ケビン・ベック氏

 ベック氏によれば、レノボからマクラーレンチームに供給されているのは2100台におよぶThinkPadやThinkCenter(パソコン)、ThinkServer(サーバー)、ThinkStation(ワークステーション)で、うち600台がノートパソコンのThinkPadシリーズであると言う。機種は、ThinkPad T410、ThinkPad W510、ThinkPad X201 Tabletの3機種で、いずれも「市販されているモデルと同じもの」(ベック氏)とのことだ。

 今井氏によれば供給されているパソコンは、ピットガレージの中で2台の車の間に置かれており、F1マシンに付けられている250を超えるセンサーから送られてくるデータをリアルタイム、または走行後に読み込んで、さまざまなセッティングに役立てていると言う。

 「走行前にエンジンの暖気を行うが、その暖気の際のアクセル操作は、ThinkPadのタッチパッドでコントロールしている」(今井氏)など、実に意外な使われ方をしているのだ。現在のF1マシンのアクセルは、ドライブバイワイヤーと呼ばれる電子的に開度をコントロールする仕組みを採用しており、ThinkPadからリアルタイムにコントロールできるのだ。なお、パソコンの設置個所には、いつでも取り外し可能な状態でX201 Tabletが置かれ、ドライバーは走行時間のわずかな合間にデータを確認することが可能になっている。

会場でスライド上映されたThinkPadの活用シーン。世界最高峰のモータースポーツであるF1には、IT技術がフル活用されているピットガレージ内に置かれ、さまざまな情報を表示している

 レノボのThinkPadやThinkCenter、ThinkStationはそうした現場だけでなく、マクラーレンチームの開発センターでも多数利用されていると言う。「ちょうど今は来年利用するF1マシンの開発が佳境に入っており、開発センターではCFD(Computational Fluid Dynamics)を利用するために、レノボのThinkStationを活用している」(今井氏)とのとおり、膨大な数値計算が必要となるCFD解析を行うために、レノボのワークステーションが現在フル稼働であるという説明が行われた。

少なくとも表彰台、タイトル争いを考えれば優勝を狙う
 トークショーの後半には昨年のチャンピオンである、ジェンソン・バトン選手が登場し、会場は大いに盛り上がった。

 ホンダチームのドライバーである時期が長かったこともあって、親日家とも言われるバトン選手だが、「日本に戻ってこれて嬉しいよ。去年はワールドチャンピオンになる夢が叶ったし、よいシーズンだった。今年はすごくリラックスしてドライブできている。ドライブに自信を持っているよ」と述べ、ワールドチャンピオン獲得後、初めて日本のファンの前でレースをすることが楽しみと言う。

 パソコンの活用方法について問われると、「ギア、ギア比、サスペンション、タイヤといろいろなパラメータがあり、それらの値を確認するのに使っている。自分のフィーリングと異なっていないかを確認するにThinkPadは役立っている」と言う。

 チームメイトとデータは共有しているの?という質問には、「しているよ、もちろん。お互い1つしかないチャンピオンを争ってはいるけど、チームメイトと協力したほうがよい結果を残せるしね」と述べるなど、司会者からの質問に1つ1つ丁寧に答えているのが印象的だった。

トークショーの後半は、ジェンソン・バトン選手も加わった司会者からの質問に丁寧に答えていくバトン選手バトン選手の印象を聞かれた今井氏は「見たとおりの真面目な人です」と答えていた
ピット風景のスライド。今井氏を挟み、2人のドライバーがデータ検討か?「データは共有しているよ」とバトン選手ホンダF1のドライバーとして活躍してきたバトン選手は、日本での人気が高い。鈴鹿での活躍が期待されるところだ

 F1日本グランプリが終わった後は何をしているのか、また日本に帰ってくるの?と聞かれると「日本に帰ってくるよ。なんでって僕の彼女は日本人だしね(笑)」と、日本グランプリの翌々週に開催される韓国グランプリでの滞在は短く、日本での滞在を彼女である道端ジェシカさんと楽しむのだジョークで返し、会場からの笑いを誘った。

トークショーの最後には、レノボのスタッフから花束の贈呈が行われた

 最後に日本GPに向けての抱負を聞かれると「もちろん優勝だよ(笑)。それがダメなら少なくとも表彰台に乗ることだね。でもタイトル争いのことを考えれば、ここで優勝することには大きな意味があるのでぜひがんばりたい」とその決意を語り、2年連続のF1選手権獲得に向けての活躍を約束した。


(笠原一輝)
2010年 10月 6日