東洋ゴム工業、マレーシアのSilverstone Berhadを完全子会社化
グローバル市場の成長に対応

Silverstone Berhadの完全子会社化を発表する、東洋ゴム工業 代表取締役社長 中倉健二氏

2010年10月21日発表



 東洋ゴム工業は10月21日、マレーシアのSilverstone Berhadの全株式を取得し子会社化することを発表し、都内において記者会見を開催した。

 Silverstone Berhadはマレーシアのクアラルンプールに本社を置く、東南アジア地区の大手メーカー。マレーシア国内でのシェアは24%で、2位のメーカー(1位はコンチネンタル、3位はグッドイヤー)になる。主にマレーシア国内の自動車メーカー向け新車用タイヤ、市販用タイヤを販売しており、従業員数は約1400人になる。

 東洋ゴム工業はこのSilverstoneの全株式、約2億300万株を取得。取得価額は日本円換算で約125億円になる。

 このSilverstone買収の背景として、同社 代表取締役 中倉健二氏は、同社の中期経営計画に沿ったものだと言う。東洋ゴム工業は、中国を中心としたアジア市場の本格的拡大推進、国内販売での積極的な拡販、北米事業の収益力回復、NITTOブランドの世界展開を掲げており、北米タイヤ工場「TNA」の第3期生産能力向上と、中国タイヤ工場「東洋輪胎張家港有限公司」の建設を進めているものの、成長する東南アジア市場を背景に、さらなるタイヤ生産能力の獲得に踏み切った。

 Silverstoneのタイヤ生産工場であるタイピン工場の生産能力は年間約300万本。取締役 執行役員 タイヤ事業本部長の高田健治氏によると、「この工場は開いている建屋があり、ここに日本国内のバリュータイヤ向けの生産機械の一部を移すことで、早期約200万本の増産を図る。さらに空いている敷地を使いさらなる増産を図っていく」と言い、将来的には年間約800万本の生産能力を持たせる。

東洋ゴム工業の中期事業計画。アジア市場の拡大へ向けて、生産拠点の早期確保の必要性があったSilverstone Berhadの概要Silverstone Berhadのタイピン工場。現在、年間約300万本の生産能力を持ち、ほぼフル稼働中だと言う
Silverstone Berhadの状況。直近で7.7%と、高い利益率を誇る買収後のブランド構成。マレーシア、ASEANでは3ブランドを展開。Silverstoneがバリュータイヤを受け持つ。日本国内へのブランド展開の予定はない

 東洋ゴム工業は同業他社と比べて国内の生産比率が高いと言い、同社の持つTOYO TIRES(トーヨータイヤ)、NITTO(ニットー)の2ブランドのタイヤについても、マレーシア国内、ASEAN向けは、このタイピン工場で生産していく。タイヤの需要が拡大していることから、国内で生産していたバリュータイヤを海外に移管した部分については、ハイパフォーマンスタイヤの生産を増やしていくとする。

取締役 専務執行役員 タイヤ事業本部長 高田健治氏取締役 常務執行役員 企画本部長 信木明氏取締役 常務執行役員 タイヤ事業本部 タイヤ営業本部長 覚野卓也氏

 今回の買収の背景は、「円高という環境を考慮したのは当然。ただもともと生産能力の増強を考え、提携先を探していた。たまたま、今回Silverstoneの親会社が売却の意があることが分かり、M&Aに至った」(中倉社長)としたほか、取締役 常務執行役員 企画本部長の信木明氏は、「円高によるマイナスの影響を、この買収により相殺できる部分もある」と語った。

 東洋ゴム工業は、Silverstoneを買収したことで、年産約300万本の工場を手に入れ、拡大するグローバル市場へ向けての増産を行っていく。

(編集部:谷川 潔)
2010年 10月 21日