フォーミュラ・ニッポン、2012年にシンガポールでレースを開催へ
2012年には電動モーターによるアシスト機能搭載で環境対応をアピール

フォーミュラ・ニッポンを運営するJRP 代表取締役社長 白井裕氏

2011年3月7日発表



 日本のフォーミュラカーレーシングの最高峰となるフォーミュラ・ニッポンを運営するJRP(日本レースプロモーション)は3月7日に記者会見を開催し、フォーミュラ・ニッポンに参戦する各チームの2011年の体制に関して発表を行った。

 その席上、JRPはシンガポールベースの企業であるSGC(SG Changi PTE.)がプロモーターとなり、同社がシンガポールのチャンギ国際空港近くに所有する常設サーキット「Changi Motorsports Hub」において2012年にフォーミュラ・ニッポンのレースを開催する計画であることを明らかにした。

2012年にシンガポールでフォーミュラ・ニッポンのレースを開催
 全日本選手権の格式が与えられ、日本最高峰のフォーミュラカーレースという位置づけのフォーミュラ・ニッポンだが、以前より海外、特にアジアを含めた形での選手権という形ができないかを常に模索してきた。しかし、実際にはかなり厳しい状況だったのも事実で、日本での知名度こそそれなりにあるフォーミュラ・ニッポンだが、アジアでの知名度は高いとは言えない状況となっており、これまでのところ日本国外で開催された例はなかった。

 しかし、今回シンガポール初の常設サーキットとなる「Changi Mortorsports Hub」を、シンガポールのチャンギ国際空港に隣接した地域に建設中のSGC(SG Changi PTE)との協業が成立。これにより2012年にシンガポールにおけるフォーミュラ・ニッポンの開催に向けて、計画が推進されていくことになったのだ。

 SGCは、昨年のSUPER GTにおいて雨宮レーシングのRX-7やフォーミュラ・ニッポンのKCMGをスポンサードするなど、日本のモータースポーツファンには知られている企業。2008年にシンガポールで設立され、Changi Mortorsports Hubの建設に3億8000万シンガポールドル(約247億円)を投資。2011年末までにサーキット施設を完成し、2012年からの営業を目指しているという。

【お詫びと訂正】記事初出時、サーキットの建設費をドル表記をしておりましたが、正しくはシンガポールドルになります。また、日本円換算値も間違っておりましたので、1シンガポールドル=約65円とし、約247億円に変更しました。お詫びして訂正させていただきます。

 今回の発表会には、シンガポール側から、SGC会長の村橋郁徳氏のほか、シンガポールのASN(日本ではJAFに相当する組織)であるSMSA(Singapore Motorsports Association)副会長 ハロルド・ネット氏、そしてJAF(日本自動車連盟)モータースポーツ部 部長 樋山良毅氏とJRP 代表取締役社長 白井裕氏が参加し、いずれもフォーミュラ・ニッポンが初めて海外に展開することに期待感を表明した。

 なお、現時点ではカレンダーのどのあたりでレースが行われるかなど具体的なことについては、特にアナウンスはなかった。

フォーミュラ・ニッポンの2012年シンガポール開催を発表し、がっちり握手を交わすJAF モータースポーツ部 部長 樋山良毅氏(左)、JRP 代表取締役社長 白井裕氏(左から2番目)、SGC会長の村橋郁徳氏(右から2番目)、SMSA(Singapore Motorsports Association)副会長 ハロルド・ネット氏公開されたサーキットのイメージ画像。完成は2011年末を予定しており、フォーミュラ・ニッポンのレースは2012年に開催予定

2012年よりバッテリーによるモーターアシストを搭載し、エコをアピール
 JRPの白井氏は「今後フォーミュラ・ニッポンはアジアのフォーミュラカーレースのスタンダードになっていきたいと考えている。さらに、環境問題への取り組みもアピールしていきたいと考えており、2012年には新しい環境に配慮したパワートレインを搭載していきたい」と述べ、2012年に新しいエンジン規定を導入し、エンジンだけでなくバッテリーで駆動するモーターをアシストとして利用できるようすることを明らかにした。なお、エネルギー回生技術については特に触れられていないため、レース前に充電し、それを元に走るという形になるものと考えられる。

2012年に新しいパワートレインが導入される。それにあわせて現在開発中で、5月から実走テストを行う

 JRPが公表した資料によれば、「System-E」という仮称が与えられたこのシステムは、永久磁石同期式モーター(最大出力、40kW)とIGBT型インバーター、最大300Vのバッテリーから構成されている。ユニークなのは、モーターとインバーターこそ標準品が採用されているが、バッテリーに関しては外観サイズや安全基準こそ決まっているがそれ以外は各チームが自由に設定することができる。つまり、そこがチーム間で競争ということになる。より優れたバッテリーを開発すれば、より長い時間システムを利用することが可能になり、他チームに差をつけることができる。

 とはいえ、フォーミュラ・ニッポンのエンジンは、トヨタ自動車、本田技研工業の2メーカーにより供給されているので、実際には各メーカーがそれぞれ開発するという形になるだろう。いずれのメーカーもハイブリッドやEV(電気自動車)などに取り組んでおり、それらのメーカーのノウハウがフォーミュラ・ニッポンにフィードバックされたり、逆に市販車よりも厳しい環境になるフォーミュラ・ニッポンで技術を鍛え、それを市販車にフィードバックしたりするなどの形が考えられるだろう。

 JRPとしては、そうしたメーカー間の“環境技術競争”を促していくことで、環境にも配慮したレースという面をアピールしていきたいという思惑があるものと思える。白井氏によれば、今年の5月から実走テストを予定しており、現在それに向けて開発を行っている段階であるという。

KONDO RACINGはドライバー未定でエントリー、新人は6人参戦
 体制発表会では、すでに明らかになっていた分も含めて、2011年のシリーズに参戦する各チームの体制が明らかになった。

チーム名カーナンバードライバー出身地エンジン
TEAM IMPUL1ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラブラジルTOYOTA RV8K
2平手晃平日本/愛知県
KONDO RACING3未定未定TOYOTA RV8K
Team LeMans7大嶋和也日本/群馬県TOYOTA RV8K
Team KYGNUS SUNOCO8石浦宏明日本/東京都TOYOTA RV8K
REAL RACING10小林崇志日本/広島県HONDA HR10E
TEAM 無限16山本尚貴日本/栃木県HONDA HR10E
SGC by KCMG18アレクサンドレ・インペラトーリスイスTOYOTA RV8K
NAKAJIMA RACING31中嶋大祐日本/愛知県HONDA HR10E
32小暮卓史日本/群馬県
Project μ/cerumo・INGING33国本雄資日本/神奈川県TOYOTA RV8K
PETRONAS TEAM TOM'S36アンドレ・ロッテラードイツTOYOTA RV8K
中嶋一貴日本/愛知県
DOCOMO TEAM DANDELION RACING40伊沢拓也日本/東京都HONDA HR10E
41塚越広大日本/栃木県
Le Beausset Motorsports62嵯峨宏紀日本/愛知県TOYOTA RV8K

 基本的にはこれまで決まっていた範囲内での発表となっているが、目につくところでは、昨年松田次生選手を走らせていたKONDO RACINGのドライバーが未定になっていることと、KCMGのドライバーが新人のアレキサンドリ・インペラトーリ選手に決まったことが新しい発表となる。

 それ以外は昨年のテストやすでに体制が発表されたものがほとんどになる。新人ドライバーは6人と非常に多いのが今年の特徴で、前出のインペラトーリ選手にくわえて、元F1ドライバーの中嶋一貴選手がPETRONAS TEAM TOM'Sで走るほか、その弟の中嶋大祐選手がNAKAJIMA RACINGで、昨年の全日本F3 Cクラスチャンピオンの国本雄資選手がProject μ/cerumo・INGINGで、同じく昨年の全日本F3選手権 Nクラスチャンピオンの小林崇志選手がREAL RACINGから、嵯峨宏紀選手がLe Beausset Motorsportsから参戦することが正式に発表された。

KONDO RACINGのみがドライバー未定勢揃いしたドライバーと監督、新人選手が6人参加するのが今年の特徴で、熱いシーズンが期待できそうだ

 フォーミュラ・ニッポンの開幕戦は、4月16日、17日に「鈴鹿2&4レース」として2輪レースとの併催で開催され、ツインリンクもてぎ、オートポリス、富士スピードウェイ、スポーツランドSUGOなど全7戦が予定されている。レースフォーマットも最終戦では2レース方式になるほか、第4戦富士のレースでは、予選、決勝を日曜日1日で行うスーパーサンデー方式が予定されているなど、さまざまな工夫が行われ、そうした点でも大いに楽しめそうだ。なお、テレビ放送は、CS放送のJ SPORTSにおいて全戦生中継されるほか、レース終了後の金曜日にBS FUJIにおいても録画放送される予定となっている。

大会日程会場予選方式決勝レース方式タイヤ交換義務づけ
第1戦4月16日、17日鈴鹿サーキットノックアウト220kmあり
第2戦5月14日、15日ツインリンクもてぎノックアウト280kmあり
第3戦6月4日、5日オートポリスノックアウト280kmあり
第4戦7月16日、17日富士スピードウェイノックアウト250km3月中に決定予定
第5戦8月6日、7日ツインリンクもてぎノックアウト250km3月中に決定予定
第6戦9月24日、25日スポーツランドSUGOノックアウト250km3月中に決定予定
第7戦11月5日、6日鈴鹿サーキットノックアウト2レース第2レースのみあり

(笠原一輝)
2011年 3月 8日