首都高、東日本大震災によって29個所の施設が被災
4月度定例記者会見より

2011年4月27日



首都高速道路 代表取締役会長兼社長 橋本圭一郎氏

 首都高速道路は4月27日、4月度の定例記者会見を行い、東日本大震災に伴う対応や平成23事業年度計画の概要などについて代表取締役会長兼社長の橋本圭一郎氏が発表した。

2010年度の通行量
 まずはじめに、2010年度(2010年4月~2011年3月)の通行台数について紹介。首都高では2009年12月以降、15カ月連続で前年同月比を上回る通行台数を記録してきたが、3月は東日本大震災の発生により80.9%となった。この3月のマイナスが響き、2010年度の総通行台数は111万3870台となり、前年度比99.5%にとどまる結果となった。

 しかしながら、東日本大震災が発生した3月11日は対前年比40%まで落ち込んだものの、徐々に回復をみせ、「直近の4月18日~24日の交通量は-5.8%まで回復してきている」と橋本氏は説明する。

 また、東京線の通行台数を対前年で比較してみたところ、震災発生前までは+1.3%(渋滞の規模をあらわす指標である渋滞損失時間は+15.5%)と増加傾向にあったが、震災影響期間を含めると-0.4%(渋滞損失時間は+4.5%)まで縮小した。

 なお、ゴールデンウィーク(4月28日~5月8日)の渋滞予測についても触れ、「今年は震災の影響により例年よりも全般的に渋滞が少ない」(橋本氏)と予想しており、比較的渋滞が発生しやすいのは連休直前の4月28日および3連休の初日にあたる5月3日と予想している。

2010年度の通行台数は3月の震災の影響により前年度を下回る結果に東京線は震災発生前までは交通量が増加したものの、震災影響期間を含めた2010年度全体の交通量は-0.4%減少となった

東日本大震災に伴う対応
 次に、東日本大震災の発生に伴う同社の対応についての紹介が行われた。

 3月11日14時46分の地震発生後、同社はただちに全線を通行止めとし、14時55分に巡回パトロールカーによるパトロールや緊急点検を実施した。翌12日1時に1号羽田線の一部、3号渋谷線の一部、横羽線、狩場線、湾岸線の一部で交通開放を行い、以降安全が確認された区間や補修が完了した区間を順次交通開放。もっとも補修に時間を要した大黒JCTも、3月27日21時に交通開放している。

 今回の震災によって、ジョイント破損10個所、路面損傷(隆起、陥没、段差、ひび割れ、液状化など)11個所、トンネル内漏水5個所、支承脱落1個所(大黒JCT[ジャンクション]連結路)、トラス部材の損傷1個所(荒川湾岸橋)、料金所損傷1個所(川口線[下り]足立入谷料金所)の合計29個所の道路施設が被災したが、いずれの個所も修復は完了している。

大黒線 大黒ふ頭付近のジョイント破損個所。伸縮継手が損傷したジョイント破損個所を路面養生したところ
湾岸線 東扇島付近で発生した路面損傷(液状化)。写真右は鋪装補修したところ
湾岸線 川崎航路トンネルではトンネル継ぎ目から漏水した。写真右は漏水補修したところ
湾岸線(東西)新木場出入口~葛西JCT(荒川湾岸橋)では構造部材を接続する部材が破断。写真左は部材(横支材-下横構)が損傷したところで、右が取り替えたところ
同じく写真左は部材(横支材-対傾構)が損傷したところで、右が取り替えたところ
大黒JCT連結路では橋桁を支持する支承が脱落(写真上段左/右)したため、橋桁をベントで支持し、支承を補修(写真下段左/右)。今回の震災でもっとも補修に時間を要した個所となる

首都高の電力対策自主行動計画

 また、首都高では電力不足に対する政府の方針を受け、3月15日から節電対策を実施しており、JCT部分や事故多発地点の照明灯をのぞき、首都高総延長(301.3km)の約75%の区間にある照明を消灯または減灯したほか、PA(パーキングエリア)内の商業施設の営業時間の見直しや屋内照明の減灯、事務室の照明を2割程度消灯、自社ビルのエレベーターや自動販売機の稼働を半減させている。

 ちなみに道路上での消灯・減灯対策による事故は今のところ発生していないそうで、これは交通量自体が減少したことのほか、暗くなったことによってより慎重に運転をしているドライバーが増えているためと同社は予測している。

 また、政府は現在、節電計画として大口需要家に対して使用電力を昨夏のピーク時と比べ25%程度節電する目標を設定していることから、首都高でも自主行動計画を予定している。

 それによると、高速道路上では「地上部の道路照明を消灯する」「各トンネル部の道路照明の減灯および換気設備の運転時間の見直しを実施」「横浜ベイブリッジ、レインボーブリッジなどのライトアップを中止」を、PAでは「商業施設の営業時間を見直すほか、照明を2割程度消灯する」「自動販売機の照明を消灯する」「空調設定温度を28度とする」「電気機器を使わないときはコンセントからプラグを抜く」「トイレについて、暖房便座等一部の設備を停止とするほか、照明の一部消灯を行う」といった案が盛り込まれるとともに、事務所での照明の2割程度の消灯、昼休みおよび帰社時にはパソコンの電源をOFFにするといったことも予定していると言う。

建物耐震診断業務の開始
 そのほか、平成23事業年度計画についての説明も行われ、今年度は「中央環状品川線」「横浜環状北線」などのネットワーク整備を全面的に展開するとしたほか、「自然共生型の新しい都市高速道路」を目指し、埼玉新都心の見沼田んぼ地区にビオトープを整備すること、大橋JCTの緑化整備を行うことを紹介。

 また、同社は4月1日から一級建築士事務所として建物耐震診断に参入。首都高沿道を含む1都3県において、昭和56年5月以前に建てられた鉄筋コンクリート造建物を所有するオーナーを対象に、建物耐震診断を実施する。

平成23事業年度計画今年度に開催予定の環境イベント。首都高のさまざまな取り組みを見学できる「首都高講座」には多くの人が参加しており、講座を開始した2008年8月から4月末までに957名が参加したと言う

(編集部:小林 隆)
2011年 4月 28日