「第14回組込みシステム開発技術展」に見る、車載システムのトレンド
スマートフォンと車載システムの連携や、Androidに注目集まる

会期:2011年5月11日~13日
会場:東京ビッグサイト



 「第14回組込みシステム開発技術展」が5月11日、東京ビッグサイトで開幕した。

 組込み(エンベッデッド)システムとは、家電製品やゲーム機、AV機器、通信機器(電話など)、産業機械などに入っているコンピューターシステムのこと。クルマにおいてはエンジンやシャシーの制御、カーナビやカーオーディオなどのインフォテインメントシステムにコンピューターが使われている。

 本展は組込みシステムの業者向け展示会だが、ドライバーにも興味深い展示がいくつかある。ここではそれらをピックアップし、クルマにおける組み込みシステムのトレンドを概観する。

QNXの車載システム
 組込みシステム用OSのメーカーであるQNXは、iPodなどのポータブルオーディオやスマートフォンの画像を車載ディスプレイに表示するシステムと、デジタルクラスタ(デジタル計器盤)のデモを行っていた。

 車載インフォテインメントシステム(IVI)に接続したiPodを、IVIからで操作できる仕組み「iPod out」と、iPod以外のスマートフォン(会場ではBlackBerryが使用されていた)を接続し、その画面をIVIのディスプレイに表示し、やはりIVIから操作できるというもの。

 スマートフォンの接続には、「VNC」という仕組みが使われている。VNCはパソコンやサーバーでも使われているが、パソコンやスマートフォンなどで、ほかのパソコンやサーバーのデスクトップを操作するソフトウェアだ。QNX CARとBlackBerryにVNCがインストールされており、BlackBerryのホーム画面がQNX CARのディスプレイに表示され、タッチパネルでそれを操作できるという仕組みだ。

 これにより、カーナビや検索機能など、スマートフォンの様々な機能を車内で利用できるわけだ。

QNXのデモ。左上のIVIディスプレイに、右下のBlackBerryのディスプレイと同じ画面が表示されているIVIのディスプレイに表示されたBlackBerryの画面。IVIのタッチパネルで操作できる
QNX CARが持つインフォテインメント機能。QNX CARはAndroidベースのシステムよりもセキュリティが高く、CANなどの車載ネットワークで車両を制御することもできるのがメリットと言う。すでにいくつかのメーカーで採用されている
QNXのデジタルクラスターのデモ画面。タッチするとタコメーター部分にインフォテインメントの情報が表示される。メーターパネルはOpenGLで、インフォテインメント情報はアドビのFlashで描画されている

 同じようなシステムはエーアイコーポレーションのブースでも展示されている。こちらは実物のデモではなく、デモのムービーを見ることができるだけだが、QNXと同じようにVNCを使ったスマートフォンの接続システム「USBware」や、IVIに接続されたiPod touchやiPhoneにインストールされたアプリを、IVIから操作できるソリューションを紹介している。後者は欧州メーカーの上級車種から採用が始まっていると言う。

Androidカーナビ
 「Android」はもともとスマートフォンやタブレット端末のために開発されたOSだが、車載インフォテインメントの世界でも注目を浴びており、いくつかのプロトタイプがすでに発表されている。Androidの魅力は、開発者が多く、様々なAndroidアプリを簡単に活用することもできるところだ。。

 インテルの代理店であるバイテックのブースには、ホンダアクセスのカーナビに、Androidベースのシステムを搭載した試作品が参考展示されていた。

 このシステムの興味深いところは、プロセッサーにインテルの「Atom」を使用していること。Androidは「ARM」プロセッサーとともに使われるのが主流だが、Atomでも十分なパフォーマンスが出せることをデモンストレーションしているとのこと。

 システムではナビタイムジャパンのAndroid用カーナビアプリ「NAVITIMEドライブサポーター」が動いており、スマートフォン向けにすでにリリースされているアプリが動作することも、アピールしている。

ホンダアクセスのカーナビでデモしていたAndroidベースのカーナビ

 Androidカーナビの隣には、インテルが推進する車載インフォテインメントシステム用プラットフォーム「GENIVI」のデモも行われていた。こちらはAtomプロセッサーのハードウェアに、「GENIVI Apollo」(やはりインテルが推進する組込みOS「MeeGo」をベースとした車載OS)を組み合わせたもの。

 このシステム上で動いていたのが、全周囲モニターシステム。シフトレバーをリバースに入れると、クルマの前後左右に搭載されたカメラの画像を合成することで作り出された、クルマを真上から見ているような画像を表示するようになっていた。

GENIVIベースのインフォテインメントシステム。右のハマーの模型に4つのカメラが搭載され、これらの画像から全周画像を合成し、左のステアリング前のディスプレイに表示する
通常はラジオの画面(左)だが、シフトレバーをリバースに入れると全周画像(右)に切り替わる

その他
 リコーは、BMWのIVIに採用された同社の組込システム用フォントを展示。同社のフォントは小容量で多言語に対応しているのが特徴とのこと。特に中国語簡体字は、アウトラインフォントを電子機器に搭載する際に中国政府の認可が必要で、日本でこの認可を受けているフォントは少ない。この簡体字と繁体字、ハングル、日本語、英語をまとめて提供できるのが、同社の強みのようだ。

BMWのIVIに採用されたリコーの組込みフォント中国簡体字中国繁体字
ハングル英語

 ユビキタスは、組込システム用データーベース「DeviceSQL」を展示。アルパインのリアビジョンナビVIE-X08Sに、楽曲管理用データベースとして採用されている。

 DeviceSQLには最近、「空間検索」機能が追加された。これは地図上のある範囲にあるものをすべてピックアップするなどの機能を持っており、例えばカーナビ画面上の地図のルートを指でなぞると、そのルート沿いにあるコンビニなどをすべて表示するといったことが可能になる。

DeviceSQLが採用されたアルパインのカーナビDeviceSQLには空間検索機能が搭載された

(編集部:田中真一郎)
2011年 5月 12日