トヨタ、トヨタ車体と関東自動車工業を完全子会社化へ
「“現場力”“先進技術力”をさらに発揮できる体制をつくる」と豊田社長

トヨタ車体と関東自動車工業を完全子会社化することについて述べるトヨタ自動車・豊田章男社長

2011年7月13日発表



 トヨタ自動車は7月13日、子会社のトヨタ車体、関東自動車工業を株式交換により完全子会社化(2012年1月予定)すると発表した。また、関東自動車、セントラル自動車、トヨタ自動車東北は、2012年7月を目標とする3社統合に向け協議を開始した。

 この発表に伴い、トヨタ自動車 取締役社長の豊田章男氏、取締役副社長の新美篤志氏、トヨタ車体 取締役社長の網岡卓二氏、関東自動車 取締役社長の服部哲夫氏、セントラル自動車 取締役社長の葛原徹氏、トヨタ自動車東北 代表取締役社長の杉山正美氏の6名が名古屋市内で記者会見を行った。

トヨタ自動車 取締役副社長 新美篤志氏トヨタ車体 取締役社長 網岡卓二氏関東自動車 取締役社長 服部哲夫氏
セントラル自動車 取締役社長 葛原徹氏トヨタ自動車東北 代表取締役社長 杉山正美氏

 これまでトヨタ車体と関東自動車工業は、トヨタと連携・協業して個々の車両の開発や生産を行ってきたが、完全子会社化によって各社が企画から開発・生産まで一貫して行うことになる。

 そのメリットは経営のスピード化であり、個々のメーカーの専門性が強化されることで、ユーザーの要望をよりスピーディに取り入れることが可能になるほか、コスト面へのてこ入れや、技術力・現場力の向上につながるとしている。

 具体的には、トヨタ車体はミディアムクラスのミニバン/商用車/SUVを担当するとともに、海外での部品生産事業の強化、車両生産事業の拡大、特装・架装事業のグローバル展開を行う。関東自動車はコンパクト車を担当し、コンパクト車を中心に海外生産車両の開発・生産の支援や部品生産事業のサポートを行っていく。

 そしてトヨタ自動車については、レクサス車・グローバルカーなどを担当するとともに、次世代環境車の開発、高効率ガソリンエンジンの開発、ハイブリッド(HV)車のラインアップの拡充といった取り組みを強化する。さらにスマートグリッド、新モビリティといったクルマの新しい付加価値の創出・展開に向けた役割を果たすと言う。

 一方、関東自動車、セントラル自動車、トヨタ自動車東北による3社統合については、東北を中部、九州に次ぐ第3の国内生産拠点に位置づけるための動きで、コンパクト車の企画・開発に加え、ユニット部品の生産、海外事業支援業務までを含めた総合車両メーカーへの発展を目指すとしている。この動きにより、中部は新技術・新工法などのイノベーション技術の開発拠点、九州はミディアム系やレクサス系のクルマづくりの拠点とし、各々の役割をより明確なものにしていく構え。

 今回の動きについて、豊田社長は「今回の新体制づくりにあたり、日本でのモノづくりをどう戻していくか、いかに国際競争力高めることができるのか、ということを中心に検討してきた。以前から申し上げているとおり、日本の製造業は大変厳しいものがあるが、将来に向けてまず自分たちにできることを実行したいとの想いから、今回の体制変更を決断した」と述べるとともに、「震災の直後から当社の従業員らが現地に駆けつけ、東北の販社、サプライヤーが心を1つにして復旧・復興に向け即断・即決・実行を繰り返し、期待を大きく上回って生産を回復してくれた。これが日本の現場力であり、世界に誇るべきものと感じている。この現場力をベースとし、お客様の変化をとらえ、未来に向けたイノベーションにチャレンジすることが日本でのモノづくりを守り、強化していくものと確信している。本日発表させていただいた体制をもとに、トヨタグループが一丸となってこれを実践し、世界のお客様に喜んでいただけるよう精一杯の努力をしていきたい」と、今回の子会社化および統合についてのきっかけを説明した。

 また、現在日本は震災の影響、円高、高い法人税、電力の供給制限といった6重苦を抱えていることにも触れ、こうした理由を背景に「日本でのモノづくりは大変厳しい状況にある。政府に対して海外メーカーと同じ土俵で戦えるよう環境整備をお願いしているが、戦う力士は我々製造業であると思っており、自分たちにできることはやり切る気概で今回の決断に至った。トヨタおよびトヨタグループは日本で生まれ、育てられたグローバル企業であり、環境が不利でも簡単に(日本でのモノづくりを)諦めるわけにはいかない」としたほか、「“現場力”“先進技術力”をさらに発揮できる体制をつくること」が日本のモノづくりの強化につながると述べるとともに、「日本の製造業として、自分たちの城は自分たちで守るという気概で、石にかじりついてでも日本のモノづくりのコスト競争力強化に向けた取り組みを実行していきたい」と、豊田社長の想いを話した。

 なお、トヨタ車体と関東自動車工業は株式交換により完全子会社化され、トヨタ車体の普通株式1株に対してトヨタの普通株式0.45株を、関東自動車の普通株式1株に対して、トヨタの普通株式0.25株を割り当てる。完全子会社後は、両社は上場廃止になる予定。

(編集部:小林 隆)
2011年 7月 13日