矢野経済研究所、2010年の中古車小売市場規模は減少傾向に
「中古車流通市場に関する調査結果 2011」より

2010年の中古車流通フローと各取引市場別中古車台数(出典:矢野経済研究所)

2011年12月14日発表



 矢野経済研究所は12月14日、「中古車流通市場に関する調査結果 2011」を発表した。同調査は2010年度の中古車流通市場についてまとめたもので、自動車メーカー、自動車ディーラー、中古車販売事業者などに同社の専門研究員がヒアリングを行った。調査期間は7月~11月。詳細な調査結果は、11月30日に同社から発売された「中古車流通総覧 2011年版」(A4判421ページ、157,500円)にまとめられている。

 調査結果によると、2010年の中古車小売市場規模は台数ベースで2,150,000台、金額ベースで2兆1995億円と推計。前回調査の2008年と比較して90%の水準にあり、今後も中古車の供給不足と需要低迷により、中古車小売市場の拡大が見込みにくい状況にあると言う。

 市場が縮小している原因として、自動車使用期間の長期化とエコカー補助金(環境対応車普及促進対策費補助金)終了の反動により、良質な中古車の発生台数が減少していることを挙げている。

 そのため、商品車となりやすい車両は仕入競争が激化し、取引相場が高騰している一方で、中古車輸出市場が堅調に推移していることから、「今後国内中古車販売店と中古車輸出業者との仕入競争が再加熱する可能性もある」と指摘している。

 同調査では、「中古車買取市場」「オークション市場」「中古車小売市場」の市場別の動向と展望についても触れている。

存在感増す中古車買取専門店
 中古車買取市場は2009年の新車購入補助制度の影響もあり、やや落ち込みを見せたものの、中古車発生台数が減少するなかでも堅調に推移していると指摘。良質な中古車になりやすい車両はメーカー系ディーラーと中古車買取専門店が主な供給源となるが、メーカー系ディーラーによる下取の競合として、中古車買取専門店による買取は中古車流通市場の中で存在感を増しつつあると言う。

 従来、中古車買取専門店は中古車の販売は行わず、ユーザーから買い取った車両をオークションで転売することを主たる事業としていた。しかし、昨今では買取価格の差別化と新たな収益の確保に向け、戦略的に中古車買取のための中古車販売を行う中古車買取専門店が増加しているとの見方を示している。

特色が求められるオークション会場
 オークション市場では、出品業者(主にメーカー系ディーラーおよび中古車買取専門店)による中古車の直接小売が強化されることで、オークションへ流入する車両の低年式過走行化が進んでいると言う。

 新車購入補助制度に伴うスクラップインセンティブ終了を契機としてリユースオークション(低年式過走行車両が中心に取引される場)も再拡大しており、オークション出品台数の5台に1台がリユースオークションに出品されている。オークション事業者にとって低年式過走行車両の流通増加は手数料収入の縮小にも繋がりやすいことから、新たな収益源の確保と業務の効率化が必須となる。

 そのことから、「オークション市場はすでに出品台数を求める時代ではなく、顧客サービスを拡充することで出品落札業者の囲い込みを行い、確実に収益を得ることができる体制を構築することが重要な時代に突入している」「オークション会場のネットワーク化が進む中において、今後は特色を持つことができないオークション会場は整理統合が進む」と指摘している。

中古車販売店は在庫がカギ
 中古車の流通量減少と仕入価格の高騰を背景に、中古車販売店では一般ユーザーからの直接仕入れに注力だけでなく、オークション即時落札サービスの活用や一般ユーザー参加型オークションの活用など、仕入れチャネルの拡大を進めているところだと言う。

 また、中古車自体の流通量が減少しているため、1台1台の仕入車両の価値が増していることから、在庫入替に伴い発生するロスを低減し、最大限に在庫回転率を高めるための在庫戦略の強化が必須となっている。小売の可能性を残しながらも在庫回転率を高めるための共有在庫サービスの活用や、在庫車両の特色付けと在庫車両に適した中古車検索サイトの活用など、在庫リスクの最小化に向けた取り組みが進められている。

 一方、中古車検索サイトや中古車買取サイトが浸透することで、一般ユーザーが入手できる情報量が増加し、中古車販売店の仕入/販売価格の透明性が増したことで、収益が圧迫されやすい状況となっている。

 そのため、中古車販売店では新たな収益源確保とメーカー系ディーラーへの対抗策として、整備事業を核とするストックビジネスの強化を進める必要性が高まっているとし、今後中古車販売店が事業を継続していくための必須条件として「小売に適した車両の確保」「在庫コントロールの強化」「収益の確保」の3点を挙げている。

(編集部:小林 隆)
2011年 12月 14日