首都高に聞く、1月1日0時導入の距離別料金とは?
ETC普通車は500円~900円、現金普通車は基本900円


 2012年1月1日0時より、首都高が料金圏のある均一料金から、距離別料金に移行する。首都高は大都市圏に設けられた道路のため、土地の問題などから料金所が入口にしか設置できず、走行距離の把握ができなかった。そのため、均一料金を採用していたが、ETCの普及(首都高利用者の約88%)に伴い、ほかの高速道路会社(NEXCOなど)と同様に走行距離が把握できるようになり、距離別料金に移行することになった。

 首都高が距離別料金を採用するのは初めてのことであり、この料金に関する疑問点を、首都高速道路株式会社 距離別料金本部事務局 料金企画グループ 橋本課長と、同広報室 池谷室長にうかがった。なお、とくに注記しない限り、本記事は普通車の料金を記載しており、大型車の料金は、基本的に普通車の倍に設定されている。

首都高速道路株式会社 距離別料金本部事務局 料金企画グループ 橋本課長首都高速道路株式会社 広報室 池谷室長


──距離別料金の基本的な料金体系について教えてください。
首都高 橋本課長:すでに発表させていただいているように、2012年1月1日0時より距離別料金に移行します。これまで3つあった、料金圏のある均一料金(普通車、東京線700円、神奈川線600円、埼玉線600円)から、料金圏のない距離別料金(500円~900円)へ移行します。

 距離別料金の概要ですが、下記の表のようになります。

●ETC料金
料金距離普通車大型車
~6.0km以下500円1,000円
6.0km超~12.0km以下600円1,200円
12.0km超~18.0km以下700円1,400円
18.0km超~24.0km以下800円1,600円
24.0km超~900円1,800円

 下限を500円、上限を900円として6km刻みで100円ずつ上がっていくという仕組みを採っています。

 これはETC車の料金となり、現金車の場合は異なる形になります。首都高の場合、NEXCO3社と違い料金所が入口にしかないため、現金車の場合、距離を把握することができません。そのため、普通車の場合、現金車は一律900円という料金をいただくことになります。

 ただし、郊外方向に向かう(放射線の外側方向)場合、入口によっては出口が決まる場合があります。その場合は、距離に応じた料金(500円~700円)をいただくことになります。

──ETC車は、距離別料金が適用されて従来より安価になる場合がありますが、現金車は端末区間を除き上限の900円になってしまいます。現金車に関する対策はありますか?
首都高 橋本課長:「首都高ETCキャンペーン」というものを実施しております。これは、ETC車載器購入助成、ETC車載器取付料割引(キャッシュバック)、ETC利用履歴発行プリンタープレゼント、ETCパーソナルカードキャッシュバックキャンペーン、首都高パーキングエリア買物割引券プレゼントなどからなり、ETC車載器の取り付けを促進するものです。それぞれキャンペーン期間、助成台数などは異なりますが、ETC車載器代金5,000円を助成するETC車載器購入助成の場合、先着80,000台(四輪車75,000台/二輪車5,000台)となり、12月21日時点の助成台数は四輪車37,136台(残り37,864台)/二輪車2,011台(残り2,989台)となっています。詳細は、首都高ETCキャンペーンのWebページ(http://www.shutoko.jp/service/fee/fee/camp_etc.html)をご覧ください。

──距離別料金では、これまでより高くなる利用者、安くなる利用者が存在すると思うのですが、どういう利用形態のときに高くなる、または、安くなるのでしょうか?
首都高 池谷室長:距離別料金では料金圏が撤廃されます。そのため、神奈川線から東京線、埼玉線から東京線と乗り継いでいた方は、上限が900円となるため安価になります。一方、東京線の中だけで、西から東まで横断するように長距離を走行していたような方は、700円が900円となるため高くなります。

値下がり、値上がり、同額の具体例ルート図を指しながら、説明を行う橋本課長

──距離別料金となることで、特別な注意点はありますか?
首都高 橋本課長:距離別料金となることで、本来であれば料金圏の変わり目に設けられている本線料金所は必要なくなります。しかしながら、入口によっては本線料金所が料金所の代わりをしている場合があり、湾岸浮島本線料金所と川崎浮島料金所を除き、従来の本線料金所は残ります。

 ETC車の場合、首都高は入口チェックだったため、首都高を入った直後にETCカードを切り替えるという使い方をされる方もいたのですが、距離別料金移行後は、そのような使い方はできません。必ず入口で使用したETCカードを差したまま通行してください。

 また、現金車の場合、入口で受け取った領収書のチェックを本線料金所で行います。そのため、入口で受け取った領収書は、首都高を利用中には捨てないでください。この2点が、利用上大きく変わってくるところです。

──2012年1月1日から割引などはどう変わるのでしょうか。
首都高 橋本課長:現在行っている「平日夜間割引」「土日祝割引」「特定区間割引」「お得意様割引」が12月31日でなくなります。一方、「会社間乗継割引」「埼玉線内々利用割引」「中央環状線迂回利用割引」「羽田空港アクセス割引」「放射道路端末区間割引」は新たな割引として加わり、「大口・多頻度割引」「障がい者割引」など継続する割引もあります。

──今回、6kmごとに100円ずつ上昇し、上限900円という料金は、どのような観点から決まった数字なのでしょうか?
首都高 橋本課長:もともと首都高の料金決定は、道路の建設費を償還するために必要な費用という観点から決まっています。基礎となる数字が、完全対距離の料金制度となります。首都高ですと、210円+31円×距離(km)という数字になります。NEXCOの場合ですと、地方部は150円+25円×距離、大都市近郊区間は150円+31円×距離となっています。NEXCOの場合、150円の部分は料金所の費用(ターミナルチャージ)となっていますが、首都高の210円の部分は道路の償還も考えて設定している費用になります。対距離の31円×距離は、NEXCOの大都市近郊区間と同じ金額になります。

 首都高の最長区間は、さいたま見沼~幸浦の約86kmなのですが、この完全対距離で計算すると約2,900円くらいになってしまうのです。もちろん、最短区間では約210円と安くなるのですが、お客様や地方自治体などから意見をうかがった結果、上限が高すぎるという声が多かったのです。

首都高 池谷室長:そういったご意見を踏まえて、上限を抑えた結果が、1月1日から導入する距離別料金になります。

首都高 橋本課長:下限に関しては、道路の建設費の償還を考えねばならないので、上限を抑えた分上げる必要があります。その上で、分かりやすい料金に設定する必要があり、その結果、500円~900円の100円刻みの料金になりました。

距離別料金の料金推移グラフ。上限を引き下げ、下限を引き上げ、料金を分かりやすい100円刻みのものにしている現在、首都高の各PA(パーキングエリア)などで配布されているパンフレット

──6km刻みで100円料金が上がっていきますが、この6kmを利用者が体感しやすい個所とかはありますか?
首都高 橋本課長:この6kmという数字は、特定の区間を念頭に置いて決めたものではありません。あえて、分かりやすい場所を挙げると、3号渋谷線を用賀から入って都心に向かう場合、池尻がちょうど6kmの地点になります。池尻で下りれば6.0kmの500円、次の渋谷で下りれば8.2kmの600円になります。
(編集部注:東名高速道路~池尻間の場合、6.4kmで600円となるが、会社間乗継割引(-100円)が適用され、500円となる)

──距離別料金をあらかじめ知る方法はありますか?
首都高 橋本課長:首都高では、距離別料金検索サイト(http://fee.shutoko.jp/)をすでに公開しています。こちらであらかじめ距離別料金を知ることができます。

──従来、NEXCOの料金検索サイトでは、首都高と一体になった料金検索を行うことができました。NEXCOの料金検索サイトも、距離別料金に対応するのでしょうか?
首都高 橋本課長:情報交換はしておりますが、未定です。(編集部注:この点を首都高と接続するNEXCO東日本[東日本高速道路]、NEXCO中日本[中日本高速道路]に確認したところ、NEXCO東日本の料金検索サイト「ドラぷら」[http://www.driveplaza.com/]は、2012年1月5日15時より現金車のみに対応。NEXCO中日本の「ドライブコンパス」[http://dc.c-nexco.co.jp/dc/DriveCompass.html]は、1月1日0時よりETC車の料金を含め完全対応する)

首都高の距離別料金検索サイト。首都高の料金のみ検索可能NEXCO中日本のドライブコンパス。首都高を含めた全国の高速道路料金の検索が可能

──距離別料金の導入に伴って、具体的に交通量や渋滞などの変化は発生するのでしょうか?
首都高 池谷室長:実際に距離別料金に移行してみないと分からないところはありますが、例えば、距離別料金によって従来は料金圏の変わる個所で首都高を下りていた方が、継続して利用することで出口の利用が変わり、出口渋滞が緩和する、ということはあると思われます。横浜から東京へ向かう場合、浅田や大師で下りる人も多かったのですが、料金は変わらずそのまま東京へ乗り入れができるため利用しやすくなります。

首都高 橋本課長:つまり、今後はお客様のもともとの利用ニーズに沿ったものになるということだと思います。また、短区間の利用は、従来の700円より安くなる個所もあり、そういった個所では利用が増える可能性もあります。

──入口と出口を結ぶルートが複数可能な場合、実ルートで料金が発生するのでしょうか? それとも最短距離のルートとなるのでしょうか? また、首都高は周回が可能な構造となっており、たとえば、C1(都心環状)を周回した場合、周回数分の料金となるのでしょうか?
首都高 橋本課長:基本的には入口と出口を結ぶ最短ルートで計算されます。

──1月1日0時から距離別料金に移行しますが、一般的には正月休み中ということもあり、トラブル発生の際の対処が難しくなることが想像されます。その辺りの対策はあるのでしょうか?
首都高 池谷室長:1月1日には、万が一に備えて、何が起きても対応できるような体制を取っていますし、首都高ETCコールセンター(TEL:03-6667-5859)も料金制度が切り替わる12月31日は、通常の営業時間(9時~18時)を延長して18時~翌9時まで営業し、お客様からの問い合わせに対応できるようしております(編集部注:1月1日は0時~18時まで営業)。

 詳しい情報はホームページ(http://www.shutoko.jp/)でご案内しておりますので、是非そちらもご活用いただければ幸いです。

──1月1日0時から距離別料金に移行しますが、12月31日に首都高に入り、1月1日0時以降に首都高から出た車両の料金はどうなるのでしょうか?
首都高 橋本課長:首都高では、入口を通過した時刻、また料金圏を越える際にある本線料金所通過時刻での判断となります。12月31日に首都高に入った(本線料金所を通過した)車両は料金圏のある均一料金、1月1日0時以降に入った車両は距離別料金となります。

現在建設中の道路の建設費も距離別料金には含まれている。そのため、3つの新線の開通による、料金値上げはない

──首都高では今後、中央環状品川線、川崎縦貫線、横浜環状北線の開通が予定されています。これらの新線が開通した際には、値上げなどが行われるのでしょうか?
首都高 橋本課長:距離別料金では、これらの道路の建設費を含んだ形で設定させていただいています。民営化以前は、新たに道路を供用する際に償還費用を組み込んでいたのですが、現在は、これらの道路の建設費の償還費用を計算した上で、料金設定しています。そのため、これらの道路が開通したことでの値上げはありません。



(編集部:谷川 潔)
2011年 12月 27日