クルマを買うなら今がチャンス!? エコカー減税とエコカー補助金を考える


 第4次補正予算が昨年12月に閣議決定され、2012年度税制改正によりエコカー減税が4月以降も3年間延長される見通しだ。大好評のエコカー補助金も再開される。自動車販売店各社も最大の商戦期に突入している現在、これらのエコカー特需の追い風を受けて動きが活性化している。新車を買うならば、今が大きな買い時のチャンスと言える。何しろ1~3月までの年度末決算期は、販売店が一番クルマを売りたい時期だ。買い手側はより一層の値引きが期待できる上に、エコカー減税とエコカー補助金がプラスされれば、トータルの値引き幅もグンと大きくなるだろう。

 そこで、本記事ではエコカー減税と、再開されるエコカー補助金について、改めて紹介していく。

財務省 平成23年度補正予算(第4号)
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2011/hosei20111220.htm

財務省 平成24年度予算政府案
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/index.htm

 エコカー減税は、自動車取得税と自動車重量税、自動車税の3つが減税対象となっているが、中身は「自動車グリーン化税制」と「環境対応車普及促進税制」の2つに分けられる。

エコカー減税、エコカー補助金の対象となる代表的な環境対応車。左から電気自動車「リーフ」、ハイブリッド車「アクア」、プラグインハイブリッド車「プリウスPHV」

 毎年支払う自動車税は、4月1日時点の所有者に課税される地方税で、排気量ごとに年額が設定されている。普通乗用車なら、1リッター以下の29,500円から6リッター超の111,000円まで10段階に分けられているが、この自動車税に対する優遇措置が「自動車グリーン化税制」であり、2014年3月31日まで2年間延長された。

東京都主税局 自動車税(地方税のため、都道府県管理)
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/car.html

 今までは新規登録時に翌年度の税額がおおむね50%減額だったが、今回は「2015年度燃費基準」の達成車を対象に、軽減率を25%から50%と段階的に設定する。新車で1回限り適応される減税とはいえ、維持費に関わる数万円は決して小さくない。この税制は環境負荷の小さいクルマを普及させるのが目的なので、環境負荷が大きいとされる新車登録後13年超のクルマは適用外どころか、翌年度の税額を10%重課されてしまう仕組みだ。

 自動車取得税と自動車重量税には、「環境対応車普及促進税制」による優遇措置が用意されている。

東京都主税局 自動車取得税
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/car_shutok.html

国土交通省 自動車重量税等の減免について
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000005.html

 自動車取得税は文字どおり、クルマの取得に対して課税される地方税で、自家用車は取得価格の5%、営業車と軽自動車は3%が税額となる。自動車取得税は今から40年以上も前に道路整備のために導入された目的税で、自家用車は1974年に3%の本則税率から5%に増税された。自動車取得税が道路特定財源ではなく一般財源化した現在も、そのまま同じ税率が適用されている。

 車検の度に支払うことになるので車検税だと勘違いする人も多い自動車重量税は、これも文字どおり車重に対して課税される国税だ。自家用車であれば0.5tにつき5,000円を車検の有効期間分をまとめて納税する。これも1971年に道路整備のための目的税として導入された。自家用車は本則税が2,500円/0.5tだが、1970年代から40年以上にわたり暫定税率として5,000円から6,300円と2倍以上の高い税率が課せられてきた。2010年4月の改正で5,000円に減額されたが、新車登録から18年以上経過しているクルマは旧税率のままだ。今年の税制改正法案では自動車重量税の1500億円軽減が盛り込まれたので、エコカー減税とは別に、抜本的な税率の見直しも期待できるだろう。

 今回のエコカー減税でも、自動車取得税と自動車重量税には全額免除から減免まで段階的な減税措置が適用される予定だ。対象車は「2015年度(平成27年度)燃費基準」の達成が要件で、今までよりも対象車が絞られる。

 自動車取得税の場合は、新車でも中古車でも取得時にかかる税金が燃費基準によって全額免税または減免される。自動車重量税は新規または継続検査の1回限りの適用だが、これも燃費性能によって全額免税または減免されるのだ。新車だけでなく、条件さえクリアすれば中古車の購入時にもエコカー減税が適用される。

 もう1つ、新車購入時の目玉となるのが、エコカー補助金である。経済産業省のアナウンスによれば、対象車は「2015年度(平成27年度)燃費基準」または「2010年度(平成22年度)燃費基準+25%超」の達成が条件となり、かつ2011年12月20日から2013年1月31日までの新車新規登録車となる。登録車1台につき100,000円、軽自動車なら70,000円が支給されるので、エコカー減税と合わせれば、結構な額の値引きが交渉ナシで獲得できたようなものだろう。

国土交通省 「エコカー補助金」の概要について
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr10_000012.html

 条件が厳格化されたため、ほぼ電気自動車やプラグインハイブリッド車のための補助金となりそうだが、ガソリン車の場合でも、今までのエコカー減税で取得税と重量税が75%軽減されている「低燃費かつ低排出ガス認定自動車」に該当するモデルであれば補助金対象車になりそうだ。

 ただし、エコカー補助金は予算3000億円までなので、補助金申請額が予算額を上回る場合は2013年2月28日の補助金申請締め切り前であっても募集が終わる。前回のエコカー補助金も、2010年9月末の終了間際に駆け込み申請が相次ぎ、締め切り予定日の3週間以上も前に打ち切られている。今回の補助金予算は前回のほぼ半額の規模なので、補助金に期待するならば早めに動くのが肝心だろう。ちなみに補助金対象車には、原則的に新規登録日から1年以上は同一使用者による使用、という条件も義務付けられている。つまり、車検証の使用者名義を1年間は変更できない。親族間譲渡や事故等による廃車の場合を除き、この原則に違反すると補助金は返納しなければならないので注意が必要だ。

軽自動車では、最大70,000円のエコカー補助金を得ることが可能。左から「イース」、「アルト エコ」

 さて、エコカー減税とエコカー補助金の適合が受けられるクルマの条件として設定されている「2015年度(平成27年度)燃費基準」だが、これは2007年7月の省エネ法令改正により制定された自動車の燃費基準だ。目標年度の2015年までに、自動車メーカーには2010年度基準を上回る燃費性能改善が求められる。その内容は乗用車(ガソリン、ディーゼルともに)で16.8km/Lという、「2010年度燃費基準」に比べて29.2%の燃費向上を要求するものだ。「2010年度燃費基準」は1995年度比で22.8%の改善を求めたものだが、次の「2015年度燃費基準」が達成されれば、1995年度から51%の改善となる。20年で燃費を半分にしようというのだから、国内自動車メーカーの燃費改善技術は凄まじい発展を遂げているのだ。

自動車工業会 乗用車・貨物車の2015年度燃費基準
http://www.jama.or.jp/eco/fuel2015/index.html

 また、「2015年度燃費基準」では、燃費の測定モードが今までの10・15モードから、JC08モードとなる。JC08モードは10・15モードよりも細かい加減速を組み込んだ実地的な測定モードで、実際の燃費に近い数値が出るのが特長だ。そのため多くの場合10・15モードよりも1割ほど数値が低くなる。

 エコカー減税もエコカー補助金も、環境性能に優れたクルマの普及を後押しするための税制なので、今回の延長でも電気自動車やプラグインハイブリッド車、天然ガス自動車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル自動車(乗用自動車)といった、いわゆる次世代自動車の免税措置を講じることで、ますますの普及が見込まれる。

ゴルフは代表的なエコカー減税・エコカー補助金対象車エコカー補助金は、エコカー減税よりも対象車種が多い。キャディラック CTSも、エコカー補助金に対応する。詳細は各社のWebサイトを参照のこと

 こうしたエコカーには税制面だけでなく、各自動車保険会社からもお得な割引が用意されている。たとえば、三井ダイレクト損保の「ECO割引」は、契約車がハイブリッドカーか電気自動車であれば、保険料が割引されるという制度。基本的に自家用車が対象だが、割引率や対象車種などの詳細な条件は、各社のWebサイトで確認してみるとよいだろう。

三井ダイレクト損保 ECO割引
http://www.mitsui-direct.co.jp/term/car/discount/004.html

(西村直人:NAC)
2012年 2月 6日