ルネサス、次世代車載マイコン「RH850ファミリ」説明会 40nmプロセスを採用、最大コア数は3コア |
ルネサス エレクトロニクスは2月29日、次世代車載マイコン「RH850ファミリ」の概要を発表するとともに、その説明会を開催した。
RH850ファミリは、製造プロセスに40nmを採用する車載用のフラッシュマイコン。2012年秋にサンプル出荷、2014年に量産を開始する予定で、主な用途として、パワートレーン制御やボディーに取り付けられた各種機器の制御を見込んでいる。
同社では、このRH850ファミリをメインの車載マイコンと位置づけ、カーナビなどのIVI(In-Vehicle Infotainment)向けにはARMコアの別シリーズを、各種機器の個別制御用には昨年発表した「RL78ファミリ」をあてていく。
ルネサス エレクトロニクス 執行役員 兼 MCU事業本部 事業本部長 岩元伸一氏は、「これからはスマートカーの時代になる」と言う。ルネサスの考えるスマートカーは、人と地球にやさしいクルマというもので、安全・快適・環境性能の向上のため数々の電装品を搭載することになる。
具体的には、エンジン制御、車両制御、ボディー制御となり、今後はハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、ぶつからないクルマに代表される予防安全の分野が重要になるだろうとの見通しを語った。
RH850ファミリーはスマートカー向けの車載マイコン | ルネサスの考えるスマートカー | スマートカーの課題 |
その際に必要となるのが、高性能な車載マイコンで、RH850ファミリはハイパフォーマンス・ハイスケーラビリティ・ハイリライアビリティをあわせ持つものだと言う。
現在のルネサスのマイコンは90nmの製造プロセスで作られているが、他社の次世代マイコンが55nmや65nmであるのに対して、40nmを採用。メモリーの読み出しも他社の競合製品が30~40MHzであるのに対して120MHzの高速読み出しを実現、フラッシュメモリーサイズに関しても256KB~8MBまでを用意する。
フラッシュメモリーは、スプリットゲートMONOSを採用。シンプルな構造で高信頼性、微細化が容易としており、90nm世代で採用したものを40nm世代のRH850ファミリにも採用することとなった。
RH850のコアアーキテクチャは、V850を使用。ルネサスは2010年4月にNECエレクトロニクスと経営統合しており、NECエレクトロニクスのハイエンド製品のアーキテクチャを持つものとなっている。
このコアに関しては、スケーラビリティ可能なものとしており、動作周波数は最高320MHz、コア数は最大3コアまでをサポート。機能安全用のコア、高速演算用のコア、入出力処理用のコアをそれぞれ内蔵できる。なお、機能安全用のコアに関しては、2コアのロックステップ式にすることができ、その場合は4コアを内蔵することになる。
RH850は車載用のハイエンドマイコンになる | RH850のコンセプト | 40nmのプロセスルールを採用 |
スプリットゲートMONOSをフラッシュメモリーに採用 | 同社従来製品(90nm)に対し、35%の処理能力向上 | 消費電力も26%低減 |
マルチコアが可能 | 用途によって、各種機能を組み合わせる | 機能安全には、とくに配慮 |
そのほか、内蔵するフラッシュメモリーに書き込まれたソフトウェアの改ざんや不正読み出しを防止する機能も持ち、セキュリティ的にも優れたものであるとした。
同社は車載マイコンでは、2010年の金額ベースで44%と高いシェアを持つが、これまではSH系のアーキテクチャを採用してきた。それがV850系のアーキテクチャに変更されることになるが、統合開発ツール「CubeSuite+」などを提供することで、既存資産からの移行を支援し、開発TAT(ターン・アラウンド・タイム)短縮をサポートし、採用ユーザーの技術支援も行っていく。
改ざん防止や不正読み出し防止機能によって、不正改造や盗用を防ぐ | 従来製品からの移行を各種ツールや体制によってサポート | 各社とコラボレーションしていくことで、ユーザーとなる自動車メーカーの要求に応えていく |
(編集部:谷川 潔)
2012年 2月 29日