トヨタ、地産地消を目指すIMVの生産累計500万台を達成
1つのプラットフォーム、2つのホイールベースで年80万台を生産

IMVの1台であるハイラックス。タイで放映されているTVCM

2012年4月6日発表



トヨタ自動車 常務役員 小林一弘氏

 トヨタ自動車は4月6日、140カ国以上の市場に導入することを前提に開発されたIMV(Innovative International Multi-purpose Vehicle)の累計生産台数が3月に500万台を達成したことを発表。IMVに関する説明会を開催した。

 IMVは「需要のある地域で生産」の方針のもと、グローバルで効率的な生産・供給体制の構築を目指しており、ピックアップトラック(ハイラックス)3車型、ミニバン(イノーバ)、SUV(フォーチュナー)で構成。11の国と地域で生産されている。その中でも、タイ、インドネシア(アジア)、アルゼンチン(南米)、南アフリカ(アフリカ)の3大陸・4拠点をIMVのグローバル拠点と位置づけている。

ハイラックス VIGO。現在のモデル(左)と2011年半ばまでの旧モデル
フォーチュナー。現在のモデル(左)と2011年半ばまでの旧モデル
キジャン イノーバ。現在のモデル(左、中)と2011年半ばまでの旧モデル

 このIMVプロジェクトを担当するトヨタ自動車 常務役員 小林一弘氏は、「IMVは、世界中のさまざまなお客様の要望に応えられる多目的車のこと」であり、「すべてのお客様へ、同じタイミンクで、より魅力的な製品を、より買いやすい価格で提供したい」というのを目的として、日本で生産し輸出する体制から、需要のある地域での生産に移し、そして世界規模での効率的な生産・供給体制を構築してきたと言う。

 このIMVプロジェクトが始まる前は、日本生産車両をベースとして現地生産化していたため、新興国市場にベストフィットした商品開発、低コスト・高効率化、為替変動などが課題だった。しかしIMVでは新興国市場向けの商品を専用開発し、現地生産を行うことで、それらの課題を解決している。また、早期からFTAに着目していたこともあり、タイなどからのグローバルな供給体制を構築してきたとする。

IMVの生産台数は3月で累計500万台を達成IMVは3車種5ボディータイプを生産日本・北米・中国を除く世界170カ国で販売
トヨタ海外ビジネスの歴史2003年以前の課題2004年に始まったIMVプロジェクトで課題を解決
車両生産の集約化グローバル生産体制

 現在の現地調達率は約94%。主要なパワートレーンであるディーゼルエンジンはタイ工場で、ガソリンエンジンはタイとインドネシアで、MTはフィリピンとインドで生産している。ATは、現地での需要が低いなどの理由があり、日本からの輸出となっている。

 その年間販売台数は、2010年が約81万台、2011年が東日本大震災やタイの洪水などの影響もあり約77万台。2012年に関しては、景気の回復などもあり2010年以上の販売台数となるだろうとの見通しを示した。

日本以外からの現地調達率を100%に販売台数の推移車種・ボディー別の販売台数
地域別販売台数生産台数の推移生産能力の向上

製品企画本部 チーフエンジニア 中嶋裕樹氏

タフで、エコで、実用的であらねばならないIMV
 IMVとして生産を行っている車種については、製品企画本部 チーフエンジニア 中嶋裕樹氏が説明した。

 ピックアップトラックのハイラックスには、B-cab(シングルキャブ)、C-cab(エクストラキャブ)、D-cab(ダブルキャブ)の3車型があり、シングルキャブは2枚ドア、ダブルキャブは4枚ドア、エクストラキャブは2枚ドアと4枚ドアの2種類がある。シングルキャブは積載スペースが大きく、ダブルキャブは小さい。シングルキャブは主にビジネスベースで使われ、ダブルキャブはパーソナルユース、エクストラキャブはその中間と言う。また、ハイラックスには、3085mmのロングホイールベース3車型と、2750mmのショートホイールベース1車型(シングルキャブ)がある。

 そのほか、ショートホイールベースでは、ミニバンのイノーバ、SUVのフォーチュナーがあり、計6車型を1つのプラットフォーム、2つのホイールベースのみで、年80万台を生産している。この数字はトヨタの生産台数の1割ほどを占め、80万台を1つのプラットフォームで作ることは利益率の向上に直結し、IMVプロジェクトの重要さにもつながっている。

ハイラックスイノーバ
各車の歴史IMVのボディータイプ
パワートレーンのバリエーション車両バリエーション

 ただ、中嶋チーフエンジニアが強調していたのは、IMVでこの台数を達成できている背景に商品力の強さがあること。新興国市場では、消費者が熟成した先進国と異なった商品力が求められ、市場のニーズに愚直に答えた製品開発の結果がこの生産台数に結びついていると言う。

IMVの使われ方
IMVの使われ方
IMVのユーザー

 このIMVに求められる要件として、「タフであること。タフであることがリセールバリューの高さ、お客様のベネフィットにつながる。壊れないことが絶対的な安心感につながり、クルマがライフにつながる。このライフは、生活はもちろん命という意味も持っている」「エコであること。新興国にはカタログ燃費などがなく、燃費は口コミや媒体で伝わる。燃費は重要視されており、燃料価格が上がると(トヨタ車の)売れ行きが伸びる」「実用的でコンフォートであること。たとえば中東などの暑い地域ではよく冷えること。モノがたくさん入ること。森林のレンジャーで使われる場合は、警察用、消防用、連絡用など無線機をたくさん接続する必要がある」と3つを挙げた。

 使われ方はとにかく実用的で、毎日川を渡って農場へ通勤するユーザー、ガレキ道を使って通うユーザー、富士山より高い4000m以上の高地で使うユーザー、50度以上の気温で使う中近東のユーザーや、マイナス30度以下で使うロシアのユーザーなど。さらにデッキに荷物を山積みするユーザーに加え、激しい渋滞下での短距離長時間運転など、こうした状態でも壊れないことが求められている。また、万が一壊れた場合の直しやすさも重要で、そのためのサービス体制を築いており、プラットフォームも通常の乗用車のようなモノコックではなく、シャシー+ボディーの車作りを行っている。

IMVの好評な点IMVに求められる要件タフであること
エコであること開発体制

 プラットフォームは同一だが、仕様は2010年で1050もあり、ユーザーのニーズに細かく応えてきたことが、累計500万台達成のこころであると言う。

 IMVプロジェクトの今後の課題としては、震災や災害時の調達力の向上、変化の早い新興国市場のユーザーのニーズに対して、いち早く応えていくことが大事とし、トヨタでは新興国市場向けに特別なブランドを導入することは、現時点では考えていないと述べた。

IMVの開発体制サービス体制500万台達成のこころ

(編集部:谷川 潔)
2012年 4月 6日