自工会志賀会長、任期の2年を振り返る 「就任当初は5重苦だったが、途中から電力問題が加わり6重苦に」 |
自工会(日本自動車工業会)は4月13日定例記者会見を開催。志賀俊之会長は、2年間の任期の中での活動を振り返った。志賀会長は、この定例会見が自工会会長としては最後となり、次回の定例会見からは新しく自工会会長に就任する豊田章男 現自工会副会長が行うことになる。
東日本大震災への対応 |
志賀会長は2年の任期の中で最も印象的だったことは、やはり東日本大震災関連だったと述べ、「被災したサプライヤーへ企業の垣根の越えた支援ができたこと、電力供給不足に対する業界としての統一行動ができたこと、海外での放射線風評被害に対する毅然とした対応ができたこと」を自工会の活動成果として挙げた。
被災したサプライヤーへの支援は、重複する支援がないよう自工会会員各社で調整し、必要な支援を実行。全社共通の取り組みで予想より早く生産が再開されたと言う。
電力供給不足に対する業界としての統一行動に関しては、昨年実施した休日を「土・日」から「木・金」へシフトする“休日シフト”を挙げ、「電気使用量が平準化されるなど大きな成果を得た」と評価する一方、「就業者には多大な負担を強いることとなった。政府には安定した電力供給を望む」と語り、自動車業界に就労する人の生活上の苦労が多かったと言う。
被災したサプライヤー企業への支援 | 電力供給不足への対応 | 放射線風評被害への対応 |
今年も電力に関しては厳しいとの見通しが出ているが、「あくまで個人的な意見だが、今年は休日シフトは実施できないと思う」と言い、自動車総連から休日シフトを受け入れられないとの意見が出ていること、休日シフトは健全な節電方法とは思えないことなどをその理由として挙げた。
その上で、「政府には休日シフトなどを考慮に入れず、社会のインフラである電力の安定供給をお願いする」と語り、日本のもの作りを維持していく上で、電力が安定的に供給される必要があると強く要望した。
海外での放射線風評被害に対しては、そのような意見が震災以降海外で出た際に素早く自工会として声明を出すことができたこと、基準を超える放射線量は検出されていないことを挙げ、日本で作られた自動車が世界で安心して使えるものであることを示せたと言う。
これら、東日本大震災への取り組みが、その後起きたタイ洪水被害への取り組みにもつながり、自工会会員相互の団結があったからこそ解決できた問題であるとし、会員各社に感謝していると述べた。
■あまりにも厳しい日本でのもの作り環境
任期の2年間で、訴えてきたことは、「日本のもの作りを担う自動車産業の置かれている厳しい状況」だと語る。「就任当初は5重苦だったが、途中から電力問題が加わり6重苦になった」「とくに円高の問題は大きく、就任時は90円程度だったのが、東日本大震災後には80円を切った」と、自動車産業を含め日本のもの作り環境が徐々に厳しくなっていると言う。
6重苦に関する取り組み | 会長就任以降の円高の推移 |
とくに円高については、経済のファンダメンタルと整合しないものであると言い、政府などによる会議では、何度もそのことを訴え、一時的には是正されたものの、厳しい状況にあるのは変わりないと言う。
本来のもの作りと関係のない、この6重苦の解決が課題であるとし、エコカー減税、エコカー補助金などの施策が終わるタイミングでは、円高などの環境が好転し、通常のレベルで輸出ができる環境になっていることが大切であるとの見通しを示した。
自工会会長職としてやり残したことは、本来の課税根拠を失った自動車取得税と自動車重量税の廃止や引き下げ。自動車関連では9種類8兆円の税を納めており、自動車取得税と自動車重量税が残ったままでの消費税の引き上げはあってはならないものであるとの見方を示し、「速やかに(自動車取得税と自動車重量税を)廃止するのが重要だと思っている」と述べ、これは豊田副会長への引き継ぎ事項になるだろうと語った。
また、会長任期中に開催された、2011年の東京モーターショーについては、「80万人目標のところ、84万人の来場者があり成功した」「低炭素社会に向けた都市システムの提案を行うことで、日本のもの作りを発信できた」と評価した。次回の東京モーターショーは、前回と同様東京ビッグサイトで2013年11月22日に開催される。
(編集部:谷川 潔)
2012年 4月 13日