ホンダ、「停電時対応技術説明会」を開催 家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニット、防災向けLPガス発電機を紹介 |
本田技研工業は10月2日、東京 青山の本社ビルにおいて「停電時対応技術説明会」を開催した。
昨年の東日本大震災以降、電力と熱といったように2種類以上の2次エネルギーを取り出す「コージェネレーション(熱電併給)システム」など、停電時でも発電を行える製品に対する市場ニーズが高まっている。同社は、ガスエンジンと独自の発電技術「正弦波インバーター」を組み合わせた家庭用小型コージェネレーションユニットを2003年から販売するなど、かねてから家庭で使える発電ユニットの開発に取り組んでおり、震災以降はこうした発電製品への問い合わせが多数あると言う。
同社はガスエンジンで発電し、その際に生じるエンジンからの排熱を利用して給湯や暖房を行う家庭向け熱電併給システム「エコウィル(ECOWILL)」をラインアップするが、9月に停電などの非常時の際も使用できる自立運転機能付きモデルを発表するとともに、8月にプロパンガスを燃料に使う防災向け低圧LPガス発電機を発売しており、今回の説明会ではこの2製品にスポットを当てて紹介が行われた。
家庭向け熱電併給システム「エコウィル(ECOWILL)」の自立運転機能付きモデル |
防災向け低圧LPガス発電機「EU9iGP」。赤く塗装されているのがEU9iGPで、その横の白い箱はオプションの防音ボックス。この防音ボックスで、約6~10dBの騒音を低減させることが可能と言う |
本田技研工業 取締役 執行役員 汎用パワープロダクツ事業本部 本部長の志賀雄次氏 |
説明会の冒頭、同社の取締役 執行役員 汎用パワープロダクツ事業本部 本部長の志賀雄次氏は、「昨年から今年にかけ震災、竜巻被害、集中豪雨など、日本はこれまでに経験したことのない災害に見舞われた。そのような中、震災発生後にお届けした発電機は避難所での生活、各家庭での避難生活などでご活用いただいた。お使いいただいた方々からは『おかげさまで暖を取ることができました』『夜、灯りが点いてホッとしました』など沢山の感謝の声をいただいた」と述べ、全国的な電力供給の不安から非常用電源として発電機の需要が高まってきていることを紹介。
また、発電機の需要が高まっていることを受け、「こうしたニーズに速やかにお応えするために、現在すでにプロパンガスで使える防災向け低圧LPガス発電機をお届けしている。さらに来月から、自立運転機能を追加した家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニットを、各ガス事業者様を通じてお届けする」とし、新たな家庭用発電機を展開していくことを紹介するとともに、「ホンダだからこそ実現できる、人と環境に優しい製品や技術の開発にチャレンジし、役立つ喜びをさらに広げたいと思っている」と、今後の抱負を語った。
開発責任者の本田技術研究所 汎用R&Dセンター 戸川一宏氏 |
■停電時自立運転機能付きガスエンジンコージェネレーションユニット
停電時自立運転機能付きガスエンジンコージェネレーションユニットについては、開発責任者の本田技術研究所 汎用R&Dセンター 戸川一宏氏が説明した。
日本では、これまで長時間停電がないとされてきたが、震災やその後の計画停電、台風による自然災害など、停電は身近な話題となりつつある。これまでの家庭用コージェネレーションユニットは、停電になると発電を休止すると言う。これは各家庭は近くの電柱から電気の供給を受けており、「停電時に家庭で発電した場合、電気の逆流のおそれがあるとして、自宅向けであっても電柱側とつながった家庭の電気機器への電気供給は、規格によりできない」(戸川氏)ため。
そこで登場するのが、停電時でも自立運転が可能なガスエンジンコージェネレーションユニット「エコウィルプラス」となる。エコウィルプラスでは、システムの運転・停止にかかわらず、その間に停電した場合でもガスが供給されている間は、自立始動させることで常に発電できるという特長を備える。自立始動は、同社のポータブル発電機の技術を応用し、ユニット本体に内蔵した機械式のリコイルスターターで行い、簡単かつスムーズな始動を実現できると言う。
停電時は、エコウィルプラス専用の自立運転専用コンセントから最大消費電力約980W(AC100V-980VA)まで使用可能としており、戸川氏は「屋内では照明(白熱灯スタンド100W)、扇風機(30W)、液晶テレビ(32インチ液晶:125W)、パソコン(デスクトップPC:200W)、携帯電話の充電(15W)などを十分まかなえるし、電力が必要なシャワーやキッチンでの給湯や床暖房にも使える」と述べるとともに、「お風呂の照明を自立コンセントから取って、停電でもゆっくり湯船に浸かっていただくことができる」とアピールした。
エコウィルプラスの使用方法 |
専用の自立運転専用コンセントから最大消費電力約980Wまで使用可能 | エコウィルプラスの主要諸元。使用燃料は天然ガス(都市ガス)仕様とLPガス仕様がある | 排熱利用給湯暖房ユニットについて |
排熱利用給湯暖房ユニットの主要諸元 | エコウィルシリーズの開発の歴史 | エコウィルシリーズは国内外から評価を得ていると言う |
開発責任者の本田技術研究所 汎用R&Dセンター 初谷勉氏 |
■防災向け低圧LPガス発電機
防災向け低圧LPガス発電機については、開発責任者の本田技術研究所 汎用R&Dセンター 初谷勉氏が解説を行った。
震災後、同社は1000機の発電機を被災地に寄贈したが、「その中で、ガソリン発電機はあるがガソリンを入手できない」との声があったと言う。特に軒先にあるLPガスを使って発電できないのかという要望が多かったため、「いざという時に簡単に、安心して、長時間、使える発電機」をコンセプトに低圧LPガス発電機の商品化の検討を始めたと説明。
LPガスは配管が短いため、異常があれば即修理が可能であること、また一戸ごとで安全を確認して復帰させることが可能で、復旧までの時間が短いという特長があることから、「そういった意味で災害に強いエネルギーであり、全国総世帯の約半数(2500万世帯)がLPガスのお客様に向け、900Wの出力が取れる低圧LPガス発電機を開発した」と初谷氏は説明する。
同社は、燃料にガソリンを使う既存のインバーター搭載発電機「EU9i」(定格出力900VA)をベースに、燃料にLPガスを使った「EU9iGP」を今夏からLPガス機器事業者に向けて供給を開始。その製品特長について、正弦波インバーターの搭載により、商用電源同等の安定した出力を提供できること、2台並列に接続できる並列運転機能により最大1800VAまで出力が可能なこと、外気温-15度~40度まで使用可能と、冬場や夜間と言った低温環境での使用も可能なこと、50kgのLPガス容器を使えば900Wを約110時間使えること、転倒検知センサーを搭載し、発電機本体が60度以上傾くと必ずエンジンが自動停止することなどを紹介した。
発電機の原点について | 発電機の歴史・経緯 | 被災地からLPガスを使って発電できないのかという要望が多かった |
防災向け低圧LPガス発電機「EU9iGP」の開発コンセプト | LPガスを採用した理由 |
低圧LPガス発電機システムの概要 |
LPガス供給システムについて | 低圧LPガス発電機の使用機器例 |
低圧LPガス発電機の販売・サービスはLPガス事業者によって行われる | 「EU9iGP」の価格は3mコードセットが23万790円、5mコードセットが23万2890円 |
「EU9iGP」の使用方法 |
「EU9iGP」の主要諸元 | オプションの防音ボックスを使用すると、発電機からの約10dBの騒音を低減できる |
(編集部:小林 隆)
2012年 10月 2日