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【SUPER GT開幕直前インタビュー】11号車 GAINER TANAX AMG GT3、新型車両投入で悲願のチャンピオン獲得を目指す

平中選手とビルドハイム選手にマシンの手応えを聞く

ビヨン・ビルドハイム選手(左)と平中克幸選手(右)

 SUPER GTのGT300クラスには優勝争いに関わるトップチームが複数あるが、その中でもGAINERがその1つであることに疑いを持つファンはいないだろう。とくにそのエースカーとなる11号車は、ここ5年で何度もチャンピオン争いに絡んでおり、2011年、2013年、2014年に2位になっており、間違いなくチャンピオン級の実力を持ちながら、わずかな差でタイトルに手が届かないというまさに"無冠の帝王"的な存在と言ってよい。

 その11号車をドライブするのは、平中克幸選手、ビヨン・ビルドハイム選手の2人で、以前は2人ともGT500クラスのマシンをドライブしていた経験もあり、いずれもトップドライバーの1人と言っていいだろう。特に今シーズンは、車両が同じメルセデス・ベンツながら「Mercedes-Benz SLS AMG GT3」から「Mercedes-AMG GT3」へと変更されている。Mercedes-AMG GT3はメルセデス・ベンツのMercedes-AMG GTをベースに開発されたレーシングカーで、V型8気筒 6.3リッターの自然吸気エンジンをフロントに搭載してリア駆動のFRカーとなっている。両選手はこのMercedes-AMG GT3を駆って、悲願のドライバーチャンピオンを目指すことになる。

11号車 GAINER TANAX AMG GT3

昨年までのSLSとは全く別のクルマとなるMercedes-AMG GT3

 GT300クラスのレーシングチームであるGAINERは1999年から全日本GT選手権(SUPER GTの前身にあたる)に参戦を開始した歴史あるチームだ。現在は、タナックスという京都市に本社を置く企業をメインスポンサーとしてSUPER GTに参戦している。

 現在は、今回記事で紹介している11号車 GAINER TANAX AMG GT3、さらに別記事で紹介している0号車 GAINER TANAX GT-Rの2台を走らせており、2015年と2014年のチームタイトル、さらには2015年10号車(今年の0号車)GAINER TANAX GT-Rがドライバータイトルを獲得するなどの結果を残している。

 そのGAINERのエースカーが11号車 GAINER TANAX AMG GT3。ドライバーは平中選手とビルドハイム選手の2人が今年も搭乗する。同チームの最大の話題は、昨年までのMercedes-Benz SLS AMG GT3から新型車両となるMercedes-AMG GT3を投入すること。Mercedes-AMG GT3は、メルセデス・ベンツの最新車両であるMercedes-AMG GTをベースにしたFIA GT3規定のレーシングカーだ。

 このMercedes-AMG GT3は昨年の3月に発表され、昨年末から顧客へのデリバリーが開始されたという新型車両で、今シーズンから初めてGT3レーシングのシーンに登場することになる。車両としては、昨年までのSLSと同じようにロングノーズのスタイリングが特徴的だが、空力やフロントのデザインなどは大きく変更され、より精悍なイメージの車両となっている。

平中克幸選手

 その新しいMercedes-AMG GT3について平中選手は「基本的に昨年のSLSとは別のクルマになっている。SLSの弱点だったところを強化しており、仕上がりはわるくない。SLSよりもホイールベースが少し短くなり、ダウンフォースが増え、コーナリングが改善されている」とファーストインプレッションを語っている。平中選手によれば、昨年までのSLSに関してはハイスピードコーナーで他車に劣っていた部分があったそうだが、この新車に関してはそこが改善されているということだった。また、車重に関してもSLSより軽くなっており、性能調整次第だが、そこもアドバンテージになる可能性があるとした。

 その平中選手のチームメイトとなるビルドハイム選手は「まだそんなに周回をこなしていないが、昨年のSLSよりも大きく進化していることは実感している。ダウンフォース、ブレーキ、ハイスピードコーナーでのコーナリング、すべてがSLSより改善されていて、安定性も改善している」とやはりこちらも高評価だ。

ユーザーチームの増えたダンロップタイヤ。開発は加速するだろうと平中選手

 今シーズンの展開や戦力図に関して平中選手は「SUPER GTに関しては性能調整が前提となるレース。その調整後の速さ的に昨年はやや足りない部分があった。今年は新車になり、メーカーも本気で作り込んでいることもあって戦闘力は高いと考えている。ただし、他メーカーも日産を除けば新車になっている状況なので、自分たちがどこにいるのかはまだ見えてきていない。開幕戦までにセッティングをつめてベストの状態で臨み、優勝したい」と述べ、開幕戦での優勝を目指したいとした。

 また、11号車の強みの1つになるダンロップタイヤについては「2010年からずっとダンロップタイヤの開発を担当してきたが、どんどん開発が進み、昨年の10号車のチャンピオン、一昨年と昨年のチームタイトルにつながった。去年からスバルさんが、そして今年からはアウディがダンロップになり、僕らの独占使用ではなくなっているが、台数が増えることはフィードバックも増えるし歓迎している」とユーザーチームが増えることが、結果的にダンロップユーザー全体の底上げになるだろうとした。

ビヨン・ビルドハイム選手

 今シーズンに向けた抱負としてビルドハイム選手は「新しいシーズンが始まるのを楽しみにしている。非常にモチベーションが高まっているし、最初のレースで勝つことは重要だと思っており、まずはそこにフォーカスしている。そして、今年は僕がSUPER GTに参戦してから10年目のシーズンになる。多くのファンが応援してくれているので、10年目に相応しい年にしたい」と述べ、2007年にSUPER GTに参戦してから10年目となる今年こそチャンピオンを獲得したいと意気込みを語ってくれた。

(笠原一輝/Photo:高橋 学)