写真で見るトヨタ「FJクルーザー」


 2003年のデトロイトショーでのお披露目された後、2006年から北米でリリースが開始されたトヨタ「FJクルーザー」。現地での発売直後から日本でも販売が熱望されていたが、2010年12月からようやく発売が開始された。右ハンドル化などのローカライズが必要だったとしても、生産が日本で行われていることを考えれば、4年も経っての導入は遅すぎるといってもよいくらいだ。

 FJクルーザーでもっとも目を惹くのは、そのスタイリングだ。ランドクルーザー40系(ヨンマル)をモチーフとした丸みを帯びたちょっとファニーな出で立ちは、最近の乗用車とは一線を画すキャッチーさを持っている。ただ、見た目だけのクルマなのかといえばそんなことはなく、シャシーは「4Runner」(ハイラックス)/ランドクルーザー・プラドと共通。つまりモノコック構造を採用する最近のSUVとは違い、ラダーフレーム+リアリジッドという本格派なのだ。

 搭載されるエンジンは4リッターV型6気筒の「1GR-FE」ユニット。「FJ」は、F型エンジンを搭載したランドクルーザーに付けられた型式名だから、「それじゃ『FJ』じゃないじゃん」という突っ込みがあるかもしれないが、直列6気筒の大排気量ガソリンエンジンなんてごく一部を除いて絶滅してしまっているのだから仕方がない。

 とはいえ、そのスペックはDual VVT-i(吸排気連続可変バルブタイミング機構)の採用などにより、最高出力は276PS/5600rpm、最大トルクは38.8kgm/4400rpmを実現。F型エンジンの最終モデル、3F-Eが同じ4リッターながら155PS/29.5kgmだったのを考えると隔世の感がある。燃費面でも10・15モードで8.4km/Lと、車重を考慮しても「F」では考えられなかったような数値となっている。

 パワートレインは5速AT&パートタイム4WDの組み合わせのみ。北米仕様には6速MTやフルタイム4WD仕様が用意されているのだから、マニア向けなら6速MT&パートタイム4WD、カジュアル向けなら5速AT&フルタイム4WDの組み合わせが受けると思われるだけに、この設定はちょっと不可解。販売台数的に最大公約数を狙ってのことかもしれないが、中途半端感があるのは拭えない。そのほかパワートレイン系では車両の横滑りを防止するVSC&トラクションコントロール、EBD付ABSを標準装備するほか、オプションとしてアクティブトラクションコントロール、リアデフロックが用意されている。

 サスペンションは乗用車のような4輪独立懸架ではなく、フロントがダブルウイッシュボーン、リアがコイルリジッドの組み合わせ。オフロードパッケージには専用チューニングが施されたビルシュタイン製モノチューブショックが標準で装着される。標準モデルおよびカラーパッケージはツインチューブタイプのガスショックが標準だが、オプションでヤマハが開発したX-REAS(X-リアス)も選択することが可能。これは前後対角線にあるショックアブソーバーを中間ユニットを介して連結したもので、コーナリング時の横揺れや悪路での縦揺れを抑え乗り心地や操縦性を向上するシステムだ。

 ボディーサイズは、外観から受ける印象よりかなり大きい。ホイールベースと全長は、ランドクルーザーで言えばステーションワゴン的な扱いだったかつての50系並み、全幅に至っては80系(前期)とほぼ同じ。ベースとなったプラドと比較すると全長は125mm短いものの、全幅は20mm広い。トヨタのミニバンで言えば、全長はヴォクシー並みながら全幅はハイエース・スーパーワイドをさらに広げた感じになる。それだけのボディーサイズに加え、見切りがよいとはいえない丸っこいボディーのため、市街地の狭い路地や林道などではちょっともてあましてしまいそうだ。

 ただ、最低地上高が230mm確保されているほか、前後のオーバーハングが短いため、対地障害角はアプローチアングルが34度、デパーチャーアングルが27度、ランプブレークオーバーアングルが28.5度と、まずまずの数値を実現している。このところ主流となっている乗用車色の強いSUVとは違い、クロスカントリーカー的な側面もキッチリ抑えられているのは貴重な存在といえる。

 グレードは1モデルのみ。これに「カラーパッケージ」と「オフロードパッケージ」の2つのバリエーションモデルが用意される。前者はドアトリムをボディー同色とするほか本革巻ステアリングやクルーズコントロールなどを標準装備したモデル、後者はビルシュタイン製のショックアブソーバーやリアデフロックを標準装備としたモデルだ。価格は順に314万円、324万円、332万円。ボディーカラーはルーフ部分がホワイトに塗装されたツートーンカラーのみで、ツートーン イエローなど全7色が用意されている。

 撮影車両はオフロードパッケージで、オプションの寒冷地仕様となっている。ボディーカラーはツートーン ブルー。

遠目にはそれほど大きく見えないが、実際は4635×1905×1840mm(全長×全幅×全高)とかなりファットなボディー。ホイールベースが2690mmと長いが、前後オーバーハングは短めなので、オフロード性能は期待できそうだ

 

エンジンは4リッターV6の1GR-FEユニット。スペック的にはランドクルーザープラドに搭載されているモノとまったく同じで、平成17年基準排出ガス50%低減レベルを獲得しているオフロードパッケージはビルシュタイン製ショックアブソーバーが標準装備。激しいストロークを繰り返すようなシチュエーションでもパフォーマンスを維持できる、モノチューブタイプだ
全モデルが標準ではスチールホイールだが、撮影車両はオプションのアルミホイールを装着。タイヤは265/70 R17でブリヂストンのオンロードタイプ。標準&カラーパッケージには245/60 R20タイヤ&アルミホイールもオプション設定されている丸みを帯びた独特の表情を持つフロントマスク。グリルにはトヨタのブランドマークではなく「TOYOTA」ロゴが輝く。これは現在のラインナップでは唯一の存在
フロントにはFJ40譲りの丸形ヘッドライトと横長のマーカーランプ。ただし、ヘッドランプは汎用パーツではなく、マルチリフレクター化&ポジションランプを内蔵した専用品
最近のクルマとしては類を見ないほど直立したフロントウインドー。デザインはもちろん空気抵抗も考慮して縦方向が短いため、ワイパーは3連タイプ。撮影車は寒冷地仕様のためデアイサー付となっている右フェンダー上部には取り外し可能なアンテナが付く。伸縮はできない日本仕様のみ装着される補助確認装置。ボディー同色だがあまり格好のよいものではない
縦長の大型ドアミラーはボディーカラーにかかわらずシルバー。寒冷地仕様の場合はヒーター付となるシルバー塗装の大型ドアハンドル。ボディーとの隙間も広く設定されているので、グローブをはめたままでも操作しやすいサイドステップ。ルックス的にはない方がスッキリしているが、幅が広く足を載せやすい形状なので実用面では便利。全車、オプション設定だ
観音開きドアの開閉パターン。リアドアだけを開けることはできず、必ずフロントドアを開ける必要がある。リアドアは90度に開くため、乗り降りは意外とスムーズにできるが、ノブが室内にしかなく、開けるのがやや面倒だ
リアまで回り込んだサイドウインドーがヨンマル的なムード。後方視界は存在感抜群のスペアタイヤのおかげで、あまりよくない。そのためかバックソナーが全車標準装備となっているバックドアにはFJクルーザーのエンブレム。個人的にココは「4 WHEEL DRIVE」であって欲しかったところ。車名はもちろんフロントフェンダー部分でスペアタイヤがあるため持ち上げた状態で固定できないリアワイパー。そのためか、未使用時にはちょっと浮いてガラスから離れた位置にマウントされる
丸い形状のストップランプを採用した横長のコンビランプ。このあたりもちょっとヨンマルのイメージだ。下部にはリアフォグも装備
バックドアは横開き。スペアタイヤがマウントされているためけっこう重いが操作自体はスムーズにできるバックドアはガラス部分のみを開けることができるため、後方にスペースがない場所でも荷物の出し入れが可能。開けるためにはキーをバックドアに差し込んで回す必要があるバックドアの開口部よりバンパーが飛び出しているため、腰掛けることが可能。推奨された行為ではないけれどけっこう便利

 

直線基調の直立したインパネも、イマドキのクルマとはひと味違ったムード。スイッチやボタンなど操作系は大きめにデザインされているため、操作性&視認性はとてもよい中央にスピードメーターがある凸型配置のメーターパネルもヨンマル譲り。表示はシンプルながら、余分な情報がないのでスッキリして見やすい
スポーク部にオーディオの操作スイッチを設けた3本スポークステアリング。グリップ部は、標準車とオフロードパッケージではウレタン製。カラーパッケージのみ本革巻きとなるステアリングはチルト機構付。奥のスイッチはオプション装着されている音声操作のトリガー用
ステアリング裏にはクルーズコントロールの操作レバー&スイッチ。カラーパッケージには標準装備だが、標準&オフロードパッケージではオプションだインパネ下部に各種スイッチをまとめて配置。スイッチ横にはDC12Vのアクセサリーソケットインパネ上部はDINスペースとエアコンの操作パネル。パネルはボディー同色にペイントされる。標準では全車オーディオレス&8スピーカー仕様となるが、撮影車にはディーラーオプションのHDDナビ「NHZN-W60G」が装着されていた
エアコンは全車にマニュアルエアコンが標準装備。操作ダイヤルは普通の乗用車に採用されているものよりかなり大きく、操作しやすいステアリング背後のダッシュボードには、ヘッドライトの光軸調整などのスイッチが縦に並ぶ。ドアミラーの操作スイッチがこの位置にあるのは珍しいダッシュボードの側面にはミリタリー風の造形が施されている。それに合わせてエアコン吹き出し口の調整もダイヤル式だ
ダッシュボード下部にはボンネットとフューエルリッドのオープン用レバー。その横はヒューズボックスになっているダッシュボード上面にはフタ付の収納ボックスがあるが、フルオープンの状態でフタが固定されない
グローブボックスは助手席側インパネの下側。容量は一般的な乗用車並みといったところセンターコンソール後部にフタのない収納とカップホルダー
センターコンソールには大型のシフトノブと2WD-4WDおよびハイ/ローレンジを切り替えるためのトランスファーノブ、それにカップホルダー。サイドブレーキレバーを含めキチンと右ハンドル仕様の配置になっている
ETC車載器はディーラーオプション。アンテナはダッシュボード上面の目立つ位置に据え付けられるシートはサポートが少ないフラットな形状で、乗り降りしやすい。シート表皮に撥水加工が施されるとともに、座面裏に透湿性防水フィルムを採用することでシート内部への水の浸入を防いでいる
シート調整は運転席が8ウェイ、助手席は4ウェイとなるが、すべて手動式。アームレストも標準装備だ標準&オフロードパッケージのドアトリムはブラック。カラーパッケージのみボディー同色となる。スイッチはパワーウインドーとドアロックのみ
3人掛けのリアシート。クルマの性格上、ミニバンのような快適性はないものの、足下や頭上にはそれなりに余裕があるため長距離ドライブもこなせそう。ただ、窓が真横にないため開放感に欠ける後ろヒンジとなるリアドア。前席の乗員が降りなくても後席から乗り降り可能な空間が確保されている。ただし、前席シートベルトがリアドアに内蔵されているため、外す必要がある。ドア上側にはペットボトルが入る大きめのカップホルダーを用意
フロントシートのシートバックにはアシストグリップと冊子類の収納が可能なポケットを用意サンバイザーはフロントだけでなくサイドにも用意されている。フロントバイザー裏にはバニティミラーとチケットホルダー
ボディーサイズがあるだけにラゲッジルームは広いが、ホイールハウスの出っ張りが意外と大きい。ただ、6:4の分割可倒式リアシートを倒すことで、約1500mmの荷室長を確保することが可能なため、長尺物もラクに搭載できる。フロア&リアシート背もたれ背面にはラバー調素材が使用されているため、濡れたり汚れたりしたスポーツギアなども気兼ねなく収納可能だ
右サイドのホイールハウス上側にはフタ付の収納スペースが用意されているが、容量はそれほど大きくない左サイド下側には工具およびジャッキを収納。パンタグラフタイプではなくダルマジャッキなのが「らしい」ところ
ルームランプはフロント、リア、ラゲッジと3カ所に設置されるコーナー部にはリアスピーカー。このほかダッシュボード上面、フロントドア、ルーフ(天井パネルを振動板として利用)に各2つずつの計8スピーカーとなっている

 

 


写真で見る バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/

(安田 剛)
2011年 1月 27日