ダンナの愛で妻はクルマの運転が好きになる、かも?
週末2日間で行った講習会には、たくさんの親子、ファミリーが参加してくださいました |
先日、毎年恒例となっている「母と子の楽らく運転講習会 ~お父さんもご一緒に~」が開催されました。これは私も会員になっている日本自動車ジャーナリスト協会が毎年主催しているイベントです。
近年は、お台場で開催されている「モータースポーツジャパン」の開催日に、隣接する会場で同時に行っています。すぐ近くでどこぞ(チーム)の何か(マシン)の走る音を耳にしながら運転アドバイスを行うのは、モータースポーツ好きの私にとっては少々酷な話ではあります。が、自動車に携わる者としてはお母さんとお子さんの安全運転促進を目的としたこのイベントを成功させたいし、「来てよかった」と思っていただくために雑念を払い、できるだけ丁寧なアドバイスを心がけていました。
この講習会の内容は、いざという時の急ブレーキの踏み方やESP(横すべり防止装置)の体験をメインプログラムとし、サブプログラムにはエアバッグの展開デモ、さらに様々なサポートプログラムも用意されていました。
今回私が担当したのは「車庫入れと縦列駐車」のパート。日常の運転の中で最も苦手意識を持つ方の多い運転操作。自由に参加できるパートなので、かなり人気もありました。
そこで気づいたことは、思いのほか男性陣も奥様の運転技術向上には理解があるということでした。このイベントにやって来てくださる方々ですから、向上心をお持ちなのでしょうけれど、ご主人の協力体制と応援姿勢にはインストラクターをする私も「しっかりアドバイスしなくては」とヤル気モリモリになった次第です。
だたし運転に対して苦手意識を持っているお母さんもしくは奥さんの中には、ご主人に信用されていないがためにハンドルを握らせてもらえない方も少なくない様子。ご主人は大事な愛車を傷つけられたくないから、自らがハンドルを握る。その気持ちもよ~くわかります。その一方で奥さんも運転が上手になればいいと願ってもいるわけです。
しかし、最初からうまい人なんていないわけで、やはりそこは経験を積まねば上手になんてなりません。それについてもご主人だって分かっているんですが、でも愛車を傷つけられたくない。自分が傷つけたって何も言わないクセに奥さんがやってしまったら黙ってはいられない。お互いそんなことでモメたくないから、それなら「ダンナさんに運転をまかせておこう」となってしまいます。
運転の基本中の基本は正しいドライビングポジションとハンドル操作。これらを見直すだけでも運転のしやすさは変わるはずなんです | 少しばかりハードな急ブレーキ(ABS)やESC体験。これらの装置は付いていれば安心と思うのではなく、万一の際に最大限の効果を発揮するための正しい知識や理解、そして操作の仕方を知ることが大事なんです |
というわけで、この講習会が夫婦やご家族にとって、家族の絆を深める絶好の機会になっていたのではないでしょうか。当日、何組ものご家族を担当させていただきましたが、ご主人がお子さんと一緒に奥さんの車庫入れの練習を見守る姿には“愛”がありました。「ママ、頑張れ~!」と、お子さんと一緒に応援してくれていたんです。何度かうまくいかなくても、「ほ~らウチのカミさん、駐車もうまくできないんだから」なんて顔をするダンナさんは1人もいませんでした。その雰囲気から、ダンナさんだって奥さんがもっと運転上手になることを願っているんだという“愛”を感じたわけです。
この日、そういうファミリーの担当に私が決まって、お話し、いやお願いしたことがありました。それはいつものお買い物タイムに、少しだけ余裕を持って出かけていただいて、スーパーの入口に近い駐車スペースではなく、むしろ空いている少し離れたところで「奥様にもハンドルを握るチャンスを、車庫入れの練習をするチャンスを与えてあげてください」と。
もっと時間余裕が持てるのであれば、空いている公園などの駐車場で練習できたらなおいいでしょう。とにかくハンドルを握る機会が増えれば、それが少しずつ自信に繋がるはずなんです。車庫入れをうまくできるようにすることを目的とするだけでなく、クルマを動かす(操る)練習と考えていただいてもいいかもしれません。車庫入れや縦列駐車レッスンを受ける奥様を、お子さんと一緒に応援する“愛情”があれば、少しぐらい辛抱できるでしょう?
主婦は、日頃お台所で熱いお鍋やフライパンを同時に扱い、さらに包丁を使いながら「次はこれを火にかけよう」とか「このお料理はあのお皿や器に入れよう」などと先を読んでいるわけです。これは運転にも大切な、「先を読みながら危機管理する能力」を持っていることになります。包丁でちょっと指を切ってしまったり、熱いお鍋を触ってやけどしたりしながら、身に付けていくこともあるでしょう。分かっていても不注意で同じ失敗をしてしまうこともあるかもしれません。でもそれがクルマの場合、大きな事故やアクシデントにつながることもわかっているから、女性は躊躇するのです。だから少しずつでもいいから、安心して練習のできる機会を与えてあげてください。自分の家のクルマのエンジンのかけ方やパーキングブレーキの解除方法すら知らないのは、もったいないとは思いませんか?
というわけでこのイベントは“運転”を通して夫婦の愛の深さを再確認していただく、よい機会にもなっているのかもしれません。クルマの運転操作に対して何か言う場合でも、それは“文句”ではなくて“アドバイス”です。言う側も言われる側も、くれぐれもその認識をどうか忘れずに……。どうか、ケンカはしないでくださいね。
この講習会には自動車関連メーカーをはじめ多くの自動車メーカーも協力してくださり、軽自動車やコンパクトカー、ミニバンやSUVなどより身近な車種で様々な体験をすることができました | 受付の際に渡されたカードにインストラクターのサインを集めていくと、帰りに参加賞のお土産が手渡されました |
■飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/
(飯田裕子 )
2011年 11月 10日