トピック

正直者は得をする!? カープライスが作る“シンプルでフェア”なインターネット・ライブオークションとは

「クルマを高く売りたい」と思っている人にオススメなサービス

インターネット・ライブオークションのサービスを展開するカープライスで、サービスの仕組みや狙いを伺ってきた

 Car Watchでは毎日のように新型車の情報をお伝えしているので、好みのクルマの記事が掲載されたときは、今のクルマからの乗り換えなどを考えながら読んでもらっていることと思う。実際、この記事を書いている筆者も、今気になるクルマがあって乗り換えを検討中。この時期はいろいろ妄想するのが楽しかったりするのでいいのだけれど、乗り換えとなれば今乗っているクルマがいくらで売れるのかも大いに気になるものだ。

 そんなときにタイムリーな取材案件が舞い込んできた。それがカープライスという企業が運営するインターネット・ライブオークションについてレポートするというもの。取材前に聞いた話によると、現在ある個人向けのオークションとは違い、このオークションは個人ユーザーが出品したクルマを中古車販売店が落札するもので、条件が合えば一般的な車両買い取り価格より高値で売ることも可能だという。時期が時期なのでこれはとても興味がある話だ。

 ということで、今回は「クルマの売却を検討している人のための耳より情報」として、カープライスが運営するインターネット・ライブオークションシステムについて紹介していこう。

カープライス株式会社 代表取締役 梅下直也氏。東京大学 経済学部卒。2002年に三井住友銀行に入行。2006年にはロシアにて現地銀行設立プロジェクトの中核メンバーとして実務に携わったのち、現地企業向けに10億ドル規模のファイナンス組成に従事する。2013年からはイギリス ロンドンで新興国の企業向けの大型ファイナンスの組成などを行なう。そして2015年に銀行を辞め、同年11月にカープライスを創業
カープライス株式会社 代表取締役 林耕平氏。アメリカのバブソン大学でMBAを取得。帰国後はオープンソース系のシステム開発を提供する株式会社オーディアを設立し、2010年には日本初となるフラッシュマーケティングベンチャー「Piku」の立ち上げに参画。2011年には株式会社ジャパンベンチャーリサーチの代表取締役となり、ベンチャー企業と投資家をつなぐコミュニティーサイトを立ち上げた。2015年にカープライスを創業

インターネット・ライブオークションの流れを紹介!

ライブ・オークションシステムは、車両のユーザーと中古車販売店を直接つなげる仕組み

 さて、それではインターネット・ライブオークションの話だが、まずはこのシステムについて簡単に解説していこう。

 一般的な中古車の買い取りでは、業者の査定員がクルマごとの状態をチェックして値付けを行ない、それを依頼者へ提示して「この金額でどうですか?」となるのに対して、カープライスではカープライスでは同社自身が査定額を提示することはない。

 そもそもカープライスは中古車の買い取り会社ではなく、独自のシステムによるインターネットオークションの運営会社だ。そのためカープライスがユーザーの依頼で検査をしたクルマは、カープライスが買い取るのではなく自社のインターネット・ライブオークションサイトへ掲載する。ここには国内外約900店もの中古車販売業社が登録しているので、出品されたクルマはそれらの業者によって競りが行なわれる仕組みである。

一般的な下取りや買取では複数の中間業者のマージンが発生。しかし、ライブ・オークションシステムは中間業者が存在しないので、売却価格がアップしやすい

 このほかの詳細については後から紹介するが、とにかく多くの業者が参加するオークションだけに成約率は高く、人気車の場合は活発な入札があるので「思っていた以上に高く売れた」ということも珍しくないという。

 反対に価格が伸びないクルマもあるのだけれど、それはオークションという公開された場での結果なので、そこで付いた価格には客観性がある。だから、通常の査定で同様の評価を提示されることに比べると納得しやすいと言えるだろう。

これは実際にカープライスのインターネット・ライブオークションが行なわれた後の画面。現在価格、入札件数、入札が入ったタイミング、そして金額が表示されるだけでなく、どこから(業者の所在地。都道府県表示)入ったのかまで分かる。すべてが公開されているので価格操作などは不可能。フェアであることがひと目で分かるシステムだ。なお、写真では分かりづらいが、入札数の下のメーターは、後で紹介する「ウリキリ価格」を超えるとレインボーカラーに変わる

 カープライスではオークション自体への出品料と検査費用はかからないので、オークションが成立して売ることが決まったときのみ依頼者はカープライスに手数料を支払うのだが、料金は落札金額にかかわらず1万円(税別)のみ。

 なお、オークションの最終価格に納得できなければ売却しなくていいし、そのぶんのペナルティもない。さらに不成立のときは手数料も発生しないので、この点もクルマを売りたい側から見れば理想的と言えるものである。

 以上がカープライスのインターネット・ライブオークションの概要だが、これまでの中古車買い取りとは大きく内容が違うだけにもう少し詳しく知りたいと思う人もいるだろう。そこで、ここからは買い取りを依頼したときの流れに沿って説明していこう。

クルマの検査、オークションへの出品、成約後の書類の手続き、さらに売れたクルマの引き取りにかかる陸送費といった経費はすべて無料となっている。ユーザーは成約時に手数料として1万円(税別)の手数料を払うのみで、この金額は落札価格にかかわらず一律となっている

売り手も買い手も安心できるサービスの要は認定検査員制度にある!

 一般的な中古車買い取り店は、クルマの販売なども行なうことが多いので各地に店舗を構えているが、カープライスはオークションのプラットフォーマーに徹した企業なので直営店舗は持っていない。

 代わりに、全国に約100店の「カープライスパートナー店」と、約3000店の「車両検査代行店」があり、買い取り査定依頼をすると依頼者の自宅から近い店舗にカープライスの検査員が出向き、無料で車両検査(査定)を行なうというシステムになっている。

 もちろん、依頼者の自宅などへの無料の出張車両検査も受け付けているが、車両の状態を正確に見るために、検査に適したスペースがある店舗で車両検査を行なうことが多いという。

 ちなみに、カープライスから派遣される検査員はすべて「認定検査員」の資格を持っているが、この認定検査員とは中古車の査定を1000台以上行なった実務経験があり、さらにカープライスが実施する実車を使った検査試験で100点を取った人のみに与えられるというかなり厳しい条件の上に設定されている資格だ。それだけに検査員の技術レベルは総じて高く、全国どこでも適正な検査を行なえる体制を整えている。

 こうした正確な検査は、売る側から見ると正当な評価をしてくれたという安心感と満足感に繋がることであり、買い取る側の業者に対してはクルマの情報を正確に提示してくれるという信頼感に繋がる。つまり、正確な検査はすべての面でオークションの信頼度を高めることになるということだ。

 このように、値付けに対する信頼感が担保されることは売り手、買い手の双方にとって利益のあることであり、それこそがカープライスの生命線であるということから、認定検査員に関しては技術レベルだけでなく接客に至るまで力を入れているところだという。

カープライスが検査したクルマへの信頼度が高くなるほど、売り手、買い手の両方に利益が出る。そのため検査員の採用は特に厳しい。実際のオークションでも、情報が出品票に細かく記載されているクルマは入札も活発になるという

入札を活発にする「ウリキリ価格」とは?

 次はオークション出品価格について。ここでは相場価格を参考にしたスタート価格が設定されるのだが、例えば100万円をスタート価格として最終的に110万円になったとする。この金額で納得すれば売却となるが、価格に不満があれば売らなくていいし手数料などもいっさい発生しない。

 これは売る側にとって都合のいいことだが、入札側からすると「売る気があるのかどうか分からないクルマに本気の入札はしにくい」という意識が働くので、入札が盛り上がりにくくなる。すると何度出品しても価格が上がらないという状況にもなるのだ。

 そこで、インターネット・ライブオークションでは「ウリキリ価格(最低希望落札価格)」と呼ぶ価格を設定する。これは「その値段を超えたら必ず売る」ということを示すもので、この設定があると業者も「売る気がある」と判断するので、仕入れたいと思うクルマには本気の入札をしてきてくれるということ。

 さらに、オークションの画面にはウリキリ価格を超えたことを示す表示が出るので、画面を見ているすべての業者に「このクルマは買える」ということがアピールできる。するとオークションへの参加者をさらに呼び込めるので、最後の競り合いで価格が伸びるような展開も大いに期待できるのだ。

 このウリキリ価格をいくらにするかは、カープライスのシステムにより導き出される推奨ウリキリ価格をもとに、オークションの展開に慣れている検査員のアドバイスを聞きながら設定するのが一般的とのことなので、インターネット・ライブオークションを利用するときは検査員と相談しながら、いい条件で売却が成立する価格の設定を行ないたい。

どうやって競りを盛り上げていくか?というところがオークションを成功させるポイント。そのために導入しているのが「ウリキリ価格」だ。早めにウリキリ価格を超えるとオークションが活性化する傾向もあり、予想外の金額になることもある。一般的な買い取りの現場ではクルマの売り買いに慣れていない人が買い取り価格の交渉を成功させるのは困難だが、このシステムは経験や知識のありなしは関係なく、ウリキリ価格を設定することで価格が伸びる可能性がある。クルマの売り買い慣れていない人のためのシステムとのこと

落札金額はクルマと書類を引き渡し後、7営業日で入金!

 インターネット・ライブオークションは週5日で開催されていて、車両検査を9時~14時に済ませた場合は翌日、それ以降の時間だと翌々日のオークションに出品される仕組み。早めにクルマを売りたい人にも適したシステムになっている。

 1台あたりのオークション開催時間は5分となっていて、出品されているクルマの詳細な検査データは業者側にも公開されているので、業者はそれを見てクルマを判断して入札を行なう。

 なお、自分のクルマが出品されているオークションの模様は売り主も見ることができるので、入札の状態や最終価格まで自分で確認することができるのだ。このように、クルマの値段が決まっていく状況をすべて見せるような透明性のあるやり方は従来の買い取りシステムにはなかったものなので、クルマを売りたいが買い取りサービス自体に不安を持っているという人こそ、インターネット・ライブオークションは向いていると言えるだろう。

オークション画面では入札総数や最高入札価格などがひと目で分かる
オークションの模様はスマートフォンでもリアルタイムに確認できる

 そして見事成約となった場合だが、クルマと必要書類を引き渡したあと、7営業日ほどで指定の銀行口座へ振り込まれるようになっている。ここも十分スピーディと言える対応だが、早めにお金が欲しい場合は書類の準備やクルマの引き渡しを迅速に行なうといい。

 なお、前記したようにオークションでクルマが売れたときにカープライス側へ支払う料金は成約手数料の1万円(税別)のみ。これは落札額がいくらであろうとも同額だ。

 さらに、落札業者へ引き渡すための陸送もカープライスが手配するので、売り主側は自分で車両を運ぶことも陸送代を負担する必要もない。指定日に取りに来る陸送業者へクルマを引き渡すだけでOKだ。つまり、売った後は1万円を支払うだけなので、高く売れればそれがしっかりと次のクルマの購入に生かせるというわけだ。

日本の中古車流通を健全化するカープライスの存在

 ここまで読んでみて感じるのは、日本の中古車流通界においてカープライスはユニークな企業であるということだと思うが、実はカープライスという企業はインターネットを利用した中古車売買が盛んなロシアで生まれたものだった。

 ロシアはクルマが多く走っていても販売網、特に中古車販売に関しての近代化は少し遅れているので、中古車の取り引きにはインターネットを使った個人間のオークションが多く使われている。

 ところが、クルマという商品の特性上、取り引きには難しさやリスクもあるのでそういった問題点を解決していき、誰もが安心して使える中古車オークションサイトを立ち上げたのがカープライスで、ロシアでは大きな成功を収めた。

 そして、次のステップとして海外へカープライスのプラットフォームを広げて行こうということになり、賛同者を募るためカープライスの創業者は日本を訪れた。そこで声をかけられたのが梅下氏と林氏だった。当時、梅下氏は務めていたメガバンクを退行し起業を準備していたときで、林氏はアメリカでMBAを取得したあと、日本で数々のベンチャー企業を立ち上げていた人物だった。

 両氏とも日本の中古車業界の知識はなかったが、調べてみるととても大きい業界であることに加え、流通構造が複雑であり、以前から仕組みがほぼが変わっていないところに着目。こういった業界にはインターネットを使ってビジネスを効率化していくことで大きなチャンスがあると考え、それを自分たちの手で実行できる部分に魅力を感じて日本での事業展開を引き受けたのだった。

 そのロシアのシステムをベースに日本向けにカスタマイズしたのが、ここで紹介しているインターネット・ライブオークションシステム。これまでお金の流れが不透明だったクルマの買い取りをシンプルで透明性のあるものとしただけでなく、自社で大々的な買い取りができない中小の中古車販売店にとっては良質なクルマを仕入れられる場として受け入れられているなど、日本の中古車業界に大きな変化をもたらせる重要な存在になっている。

カープライスはロシアで生まれた会社。ロシアでは通貨価値の変動が大きかった時期もあるため、決済まで一定の時間がかかる一般的なクルマ売買より、売りと買いが同時に決まるオークションに人気があった。また、インターネットのクルマ売買が盛んなので、カープライスがこれらの特徴を合わせたインターネット・ライブオークションを開発。ルールがシンプルで日本の業者オークションのような複雑さや不透明さはない

クルマの売り買いに「伝えたいこと」と「知りたいこと」を組み込んでいく

 そんなカープライスのインターネット・ライブオークションだが、代表のお2人ともに現状は「まだ発展途中」という。これに関してシステム開発を担当する林氏からは「直近でやっていくことは、今以上にバイヤーさんが使いやすいシステムやインターフェースにしていくことです。このオークションがバイヤーさんにとって使いやすいものであればより活用していただけるようになるので、それは出品されたクルマの価格が上がることにつながってくると思います」と言う。

 そして梅下氏からは「バイヤーさん側に向けたこととして、ユーザーさんの顔が見えるような、そんなサービスを組み込めたらいいなと考えています」という発言があった。

 これは個人情報を載せるということではなく、そのクルマにはどんな人がどのように乗っていたのかを想像できるようなヒントのようなもので、例えば「高速道路を使うドライブが多かった」といった使い方や、「駐車場は屋根付きです」といった使われていた環境についてのコメントなどである。こうしたひと言からオーナーとクルマのストーリーが見えてくれば、検査表からは分からないクルマの魅力が伝わるので、それはバイヤーの「いいクルマを買いたい」という気持ちに訴えることになり、値段のアップにもつながるということである。

 この発言は正直鳥肌が立った。個人にとってクルマとは思い出が詰まったものであるだけに、大切に乗ってきた人ほど売るにしても実は伝えたいことはたくさんあるだろう。しかし、従来の仕組みではそれは必要とされなかったが、それを汲み上げてくれる売り方なら、値段とは別の満足感が得られるのではないだろうか。これはぜひ実現してほしいところだ。

 というところでカープライスの紹介を終えるが、ここが提供するサービスには「賛同してもいい」という方は多いのではないだろうか。もし、そういう気持ちになったのならクルマを乗り換える際にはぜひカープライスのインターネット・ライブオークションを利用してみてほしい。そういう筆者も実際に買い取りに出すときは利用したいと思っている。