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WRCで圧倒的シェアのヘルメット「Stilo(スティーロ)」が日本上陸。その特徴とは?
カーボンヘルメットが17万円台から。インカム装備で耐久レースにも対応
- 提供:
- Stilo Japan
2020年3月27日 00:00
モータースポーツにとってヘルメットは絶対切り離せない存在だ。レース用、ラリー用、フルフェイス、オープンフェイスと多様なヘルメットが存在し、世界にも多くのヘルメットメーカーがある。
今回紹介するのはイタリア生まれのStilo(スティーロ)である。日本ではまだ馴染みのない名前だが、WRCではほぼ全てのワークスチームがStiloのヘルメットを愛用し、更にF1でもメルセデスのボッタスをはじめ他に4人のドライバーが使用するメジャーなヘルメットメーカーだ。ヘルメットは高い安全性を求められるが、特にFIA格式のモータースポーツで使用するには非常に厳しい安全基準が設けられる。ゆえにそれに参加できるヘルメットであることそのものが、高い技術力の証となっている。
Stiloの創業は1990年。ちょうどそれから30年になる今年、Stilo Japanが設立されて、日本への本格的な導入が始まることになった。そこでレース用品販売店 モノコレで以前よりStilo製品を輸入販売していたNEOS 代表取締役の阪直純氏にStiloの特徴を聞いた。
対応する規格や素材などによって多種をラインアップ
Stiloでは多くのヘルメットをラインアップしているが、今回Stilo JAPANで扱うのは大きく分けると3種類。サーキット向けのフルフェイスとラリー用のオープンフェイス、そしてカート用のフルフェイスだ。
このうち、カート用は内装色の違いだけだが、サーキット向けとラリー向けヘルメットには、それぞれ、厳しいFIA8860規格対応品と、それよりも緩いFIA8859規格対応品が用意されるという。すべてのモータースポーツでFIA8860が要求されるわけではないので、参加するカテゴリーが決まっているのであれば、それに応じて選択することになる。最近では海外のレースでFIA8860が要求されることが多いそうで「アジアン・ル・マンで必要になり、急きょ現地調達したドライバーもいる」と阪氏。
また、素材についてもサーキット向けとラリー向けヘルメットには、FRP製とより軽量なカーボン製がラインアップされる。さらにサーキット向けについては、インカム用マイクシステムと接続用のインテグレーテッドプラグシステムが付いているモデルと、付いていないモデルがある。ラリー用については全モデルでインターコム(マイクとスピーカー)が標準装備だ。
阪氏によれば、Stilo のセールスポイントは大きく2つあるという。1つはカーボン製ヘルメットの仕上がりのよさとリーズナブルな価格。もう1つはコミュニケーションキットなどアクセサリーの豊富さだ。
カーボン製ヘルメットは軽量で強固なのが特徴だが、帽体をきれいに仕上げるのは難しいとされる。見せてもらったフルフェイスのStiloは、左右に2分割された帽体を合わせて1つの帽体としているが、その繋ぎ目は正確で開口部で僅かに継ぎ目が判別できる程度だ。分割線はカラーリングすると全く分からないが、「カラーリングを行なう職人達から帽体整形の正確さに感心される」とは阪氏の経験談。
重量で比べると、FIA8859規格に対応するFRP製のフルフェイス「ST5F N COMPOSITE FIA8859-2015」(9万1500円:税別)では1520g(スモールシェル)なのに対して、同仕様のカーボン製「ST5F N CARBON HELMET FIA 8859-2015 SNELL SA2015」(17万7000円:税別)では1350gとなる。軽さを追求するヘルメットでは100gといえども常に前後左右Gに晒されているドライバーにとって疲労軽減に大きな効果を発揮する。しかもカーボン製ヘルメットが17万円台からというのも魅力的だろう。
ラインアップは安いモデルだけではない。基本的には規格が厳しいFIA8860規格のほうが重量が重くなるが、軽さを追求したハイポジションのヘルメットとなると、FIA8860規格に対応しながらも、さらに150gほども軽い1200g(スモールシェル)を実現。手に取るとその軽さを実感できる。
ラリー用オープンフェイスにもカーボンモデルは用意されており、FIA8859対応モデルながら、下は17万2500円(税別)からと、カーボンモデルとしては手が届きやすいモデルが用意されている。
レース用にも通信用コネクター装備モデルを用意
Stiloのもう1つの魅力がコミュニケーションキットだ。レース、特に耐久レースではピットとのコミュニケーションが戦略の重要な要素だが、Stiloでは、これら通信機材用のジャックを収める突起をヘルメットに埋め込んだモデルをラインアップしていて、ハーネスがスマートに装着できる。
通信に用いるアンプは日本では法規の関係で既存の製品を使うことになるが、ポピュラーなモトローラやケンウッドなどの機材に合うハーネスは専用のアクセサリーキットが用意される。つまりチームがどのアンプを使っているか確認できれば、ドライバーはそれに合ったハーネスを持っていけばすぐにチーム間の通信に入ることができるわけだ。
レース用のフルフェイス向けに用意されるスピーカーはイヤープラグタイプになり、しっかりと耳に入る。他にもオープンフェイスで採用されるヘルメットの中に固定するヘッドホンタイプもあり、こちらであればイヤホンのずれを気にすることなく、フェイスマスク→ヘルメットと被ることができ、利便性は高い。
私の場合、レースをやっていた頃はスピーカーをヘルメットに張り付けるモノだったので車両の騒音で聞き取れずに難儀したことが何回かある。イヤープラグタイプやヘッドホンタイプでノイズキャンセラー付きなら齟齬は回避できそうだ。
プラグ付きのモデルではマイクが標準で装備される。そのマイクも口元にスッポリ収まり、ヘルメットとコミュニケーションキットの進化には驚いた。
WRCで圧倒的なシェアのStilo
ラリー用ヘルメットでは全モデルでマイクとスピーカーが標準装備される。なにしろStiloのヘルメットを有名にしたのはWRCで、オープンフェイスだがユニークなマイクサポート用のアームが出ていることで一目見ればStilo製と分かる。
私もラリーに参加していたころ、オープンフェイスのヘルメットを使っていたが、騒音対策でナビゲーターとの会話にはインターコムを使っていた。最初は自製で、しばらくして海外で購入したものを使ったりもしたが、マイクの位置が決まらず、気が付くと口元から離れてしまって不便を感じたこともあった。
しかしStiloのようにアームが出ている構造なら、マイク位置が固定されているので想定外のことは起きない。スピーカーはイヤホンではなく、帽体の中にヘッドホンが埋め込まれる形だ。AMPとつなぐジャックホールもフルフェイス同様ヘルメット側に備わっているので、ジャックの差し込みは容易だ。
アクセサリーキットのAMPも3種類あり、参加する競技によって選択するとよい。価格も約2万6000円から本格的な5万7600円まである。コ・ドライバーと会話をスムーズに行なうためのアイテムで、防音材などを剥がしてしまって騒音の大きなラリー車にとっては必需品と言えるだろう。AMPはリエゾン区間で使うヘッドホンとも共用になり、こちらもStilo製が揃っている。価格は約2万6000円とリーズナブルだ。
サイズは2種類、欧米人向けなので形状に注意
レース用フルフェイスとラリー用オープンフェイスの帽体はスモールシェルとラージシェルの2サイズが用意される。ただしイタリアのメーカーなのでその形状は欧米人向け。頭の形は欧米人の卵型に対して日本人は丸型なので、通常の帽子サイズでは当てはまらないことがある。ヘルメットは必ず被って確認することが大切だ。
また帽体は変えることはできないが、インナーパッドを変えることで自分にマッチしたヘルメットにすることもできるので購入の際は相談してみるのもよいだろう。ただしそれでも帽体の関係で前頭部はきつく感じることがある。ヘルメットは長時間被るものなので、適正なサイズを選び、ドライビングに専念できるようにしたい。最新のヘルメットはフィット感が素晴らしいので、ピッタリ合うと非常に快適だ。
スポイラーやクーリングなど細部にまで配慮が及ぶ
Stiloのヘルメットの特徴は、そのほかにも細部に及ぶ。レース用フルフェイスでは、クーリングのために空気の流れにも工夫を凝らしており、インテークやアウトレットも多数設けられている。またエアダクトなどのオプションを揃えているのもStilo の特徴だ。またバイザーはセンターロック式でボタンをつまんで開閉できる。しかも2段階でホールドできる機能を持つので、少し開けた状態にもできる。
また、オープンフェイスのバイザーは固定されているのが一般的だが、Stiloの場合は上下に可動するので陽が低い場合などはバイザーを下げて遮光することもできる。
ヘルメットはいざという時に安全を担保する重要なレーシングギア。個人で後から追加できるのはカラーリングぐらいだ。もし個人で改造するとなるとFIA規定に抵触してしまう可能性も大きい。Stilo はコミュケーションやクーリングシステムなど、最初から安全基準をクリアした多くのオプションを揃えているのが最大の特徴だ。
FIAの規格が厳しいFIA8860になっていく中で、世界で通用するヘルメットを多くラインアップするStiloの存在は大きい。