トピック

「Modulo」ホイールの原点と今、そして未来

“純正”ホイールの開発とは? ホンダアクセスの開発者、デザイナー、設計者に聞く

Moduloのホイールはどのようにして生まれてくるのか、技術陣に聞いた

 ホンダ車向けの純正アクセサリーとして、各種ドレスアップパーツやカーナビ、サスペンションやホイールといった機能パーツなどを開発するホンダアクセス。現在では「Modulo」というブランドでさまざまな高品質機能パーツを世に送り出しており、「Modulo X」という所有する喜びや上質な乗り味にもこだわった完成車としても展開しているのはみなさんご存じの通りだ。

 しかし、この「Modulo」ブランドのスタートがホイールだったことを知る人はあまり多くないかもしれない。今回はModuloの原点でもあるこのホイールの開発について、テストなどを担当する同社開発部の清松氏と、デザイン担当の南波氏、そして設計を担当する船橋氏の3人に、ホイール開発の詳細や今後の取り組みについて話を伺った。

株式会社ホンダアクセス 開発部 NVD2ブロック 清松邦人氏
株式会社ホンダアクセス 商品企画部 デザインブロック 南波大舗氏
株式会社ホンダアクセス 開発部 NVD2ブロック 船橋昌也氏

Moduloがもっとも大事にするポイントは「純正品質」

――まず初めに、ホンダアクセスのホイール開発の始まりについて教えていただけないでしょうか。

清松氏:ホンダアクセスのディーラーオプションホイール開発は1980年代に始まり、Moduloブランドのホイール開発としては、1994年から始まりました。ホンダ車専用のディーラーオプションとして、標準装着とは異なるデザインのホイールをお客さまにご提供する、というのが主な目的です。

 Moduloというブランドは、今ではホイール以外のエアロなどのエクステリア、さらには完成車のModulo Xにまで広がっています。でも最初はアルミホイールからModuloがスタートしたんです。

 その後、1995年の道路運送車両法の改正による規制緩和などでホイールのインチアップが流行し始めたこともあり、徐々にModuloの認知度が広がっていきました。

――その頃は性能を追求するというより、デザインバリエーションを増やす意味合いが強かったわけですか。

清松氏:当時は、最近ではあまり見なくなったマグネシウムホイールが出始めた頃だったんですね。デザインバリエーションを増やすだけでなく、そういった高性能なホイールをホンダ車専用の純正アクセサリーとして作れないかと考えました。そこからマグネシウムホイールのような新たな機能を持つ、ホンダ車に1番マッチするデザインの純正ホイールってなんだろう、ということを模索し始めたんです。

ユーザーにバリエーションと高い性能をもつホイールを提供するべく開発をスタートした、という清松氏

――話は少しそれますが、クルマ用のマグネシウムホイールが最近あまり見かけないのはなぜなのでしょうか。

清松氏:予想以上にアルミホイールが普及したというのが理由の1つだと思います。各メーカーがアルミホイールを製造する設備に大々的に投資したのと、アルミでも十分に高い性能をもつ製品が作れるようになったこともあります。マグネシウムという素材は製造時の管理が難しく、大量生産も困難で単価が高くなってしまうのが課題でした。

――ホンダアクセスでのホイールの開発における大まかな企画の流れを教えていただけますか。

清松氏:車両それぞれのモデルごとに根幹となるコンセプトがあります。ホンダアクセスとしては、そのクルマのコンセプトのなかで世界観をより広げていくようなテーマを作っていく。ホイールであればそのテーマに合ったデザインを提供したり、車両の標準装備にはないインチアップサイズを提供したりと、車両のコンセプトによって企画を決めていきます。

 あとは南波のいるデザイン部門ですとか、船橋の設計部門が、企画を元に「ホイールとして、どうやってその世界観を実現するか」を話し合うところから開発スタートとなります。

――Moduloブランドとしてのホイールのコンセプトはどういうものなのでしょうか。

清松氏:ホイールとしては、まずは「純正品質」が第一。ホンダ車にマッチした最適なものを提供する、というのも大前提としてあります。規格として決まっている部分もありますが、それに加えてたとえばリム形状などについては、車両を開発しているホンダ独自のノウハウや考え方があり、それをホンダアクセスとしても車両開発チームと共有しています。

――デザインや設計の観点ではいかがですか。

南波氏:先ほどお話ししていたように、もともとの車両のコンセプトがあり、それに対してModuloとして、純正アクセサリーとしてのコンセプトがあります。デザインとしてはModuloのコンセプトに最もふさわしい、かつその車両の純正アクセサリーとしてしっかりマッチするようなデザインにする。純正品質に求められる基準もありますので、それにも完全にマッチした形で作り上げていきます。

 純正アクセサリーのコンセプトは、ベース車両のデザインの方向性から少し離れるような、違ったアレンジを加えて異なる魅力を引き出すことが多いです。そのアレンジの方向性にマッチしたホイールのデザインを展開していくという形になります。

Moduloホイールでは「元の車両がもつデザインから少し離れる、違ったアレンジを加える」と話す南波氏

船橋氏:設計側では、企画から出てきたコンセプト、デザインから上がってきたスケッチを見て、いかにそれを具現化していくかを考えます。ただ、単純にそのままの見た目を再現すればいいわけではなく、安全性や純正の安心感を守っていく、というのをもっとも大事なところに据えながら開発しています。

清松氏:Moduloのホイールはホンダ車にマッチするのが大前提であって、さらにそのうえで車種ごとのコンセプトをかみ砕き、車種専用設計で開発しているのが1番大きなポイントかと思います。

――開発において、企画、デザイン、設計、そして製造からテストと、一連の工程を経ていく間には、こちらを立てればあちらが立たず、みたいな問題も出てくるかと思います。その場合はどうやって意見や方向性を収束させていくのでしょうか。

船橋氏:設計の場合、コンセプトや優先順位をデザイン側と議論して、変えられるところと変えられないところをはっきりさせ、変えられないとすればどうやって解決していけばいいのかを検討します。もっとも重要なのはコンセプトを守ること、捨ててはいけないのは安全性。そこを両立させることは外せないですね。

清松氏:最終的には「お客さまに製品をどういう形で届けたいのか」というところに立ち返ることになります。部門間で意見を戦わせることももちろんありますが、最後はお客さま。そこでは何があっても合意できますよね。

企画やデザインをそのまま再現すればいいわけではないと船橋氏

他社市販ホイールと、車種専用設計ホイールの違い

――ホンダ純正アクセサリーとして、Moduloブランドのホイールとして特に大事にしているところ、こだわっているところとはなんでしょう。

清松氏:製造の観点では、やはり「純正品質」というところですね。標準装着のホイールと同じ規格、基準で開発していますので、例えば強度、耐久性という部分の品質はしっかり担保しています。また、これは純正アクセサリーを開発しているわれわれならではの強みだと思うのですが、車両の各種適合性テストをクリアしていることもそうです。

 車両本来の性能に悪影響が出たり、その性能に何らかの制約が入ってしまわないよう、車両開発チームと連携して動いています。たとえばホイールのインチアップで荷重の入力の仕方が変わってしまったときに、車両に対してどんな風に影響していくのか、というところも車両開発チームと一体になって取り組んでいます。

南波氏:デザインとしては、車種専用設計であるところが重要なポイントになっています。たとえば一般のサードパーティのホイールメーカーは、いろいろなクルマが装着してもいいようなデザインのホイールを作っていますよね。どんなクルマでも見た目がある程度マッチするようにしているわけです。

 しかしわれわれが開発しているホイールは車種専用設計です。もちろん標準装着のホイールがベストマッチなデザインの1つではありますが、それとは違うバリエーションとして、きちんと車両のよさを活かしながらModuloのコンセプトを具現化していかなければなりません。たくさんスケッチを描いて議論し、ベストなものを探っていっています。

船橋氏:設計においても「純正アクセサリー」というところを1番大事に考えています。安全性の高さに加えて、何も心配せずにずっと使い続けられるのが純正アクセサリーのよさでもあります。タイヤ交換時の脱着性、あるいはタイヤのエア圧のチェックや調整といった日常のメンテナンスのしやすさなど、そういう部分まで考慮して設計しています。なんの不安もなく、長く使っていただけるところが純正の強みですから。

まるで陶器のような素材感のN-WGN用Moduloのアルミホイール

N-WGNに装着した「MG-022」(サイズ14×4.5J タフタホワイト塗装、価格2万3100円/本)

――車両開発チームと連携できるという純正アクセサリーならではメリットもあれば、反対に純正アクセサリーとして製造することにおける難しさもあるかと思います。

南波氏:一般のサードパーティのホイールメーカーが実現している表現方法が、純正アクセサリーだからこそできない、というのはありますね。たとえば切削ホイールの場合、切削面と塗装面の角度は他のメーカーだと90度の鋭角だったりしますが、ここはホンダが定めている基準で鈍角にしなければいけません。純正アクセサリーは強度基準もかなり厳しく、細すぎるスポークもできませんから、そういったところでデザインの制約はあるかなとは思います。

「走り」の性能も追求するModuloの開発手法

――Moduloのホイールはデザインだけでなく、「走り」の面でもこだわりがあるかと思います。そのあたりを詳しく教えていただけますか。

清松氏:まずわれわれの考えでは、ホイールはクルマのサスペンションの一部だということ。クルマはタイヤしか路面に接地していませんが、そこからボディに至るまでの間がサスペンションであると捉えています。バネやダンパー、ゴムパーツのブッシュ類など、そうしたサスペンションを構成する1パーツとしてホイールも含まれる、という考え方です。

 特に完成車であるModulo Xではタイヤの接地圧に着目して、「四輪接地」や「四輪操舵」というものを実現しようとしています。ホイールのデザイン形状によるディスク剛性と、リムの厚さによるリム剛性とのバランス、それによってコーナリング時など荷重がかかる際の接地面でのタイヤ形状が変わり、接地圧も変わってきますので。

――そういった走りへのこだわりは、机上の理論だけでなく、実際に製造して走らせないと分からないところもあるかと思います。何度も開発とテストを繰り返すのだとすると、大変な手間や時間がかかりそうですが。

清松氏:われわれの場合、ホンダの車両開発チームと同じ敷地内にホンダアクセスのホイール開発メンバーがいます。しかも実走テストがすぐにできる環境ですので、そこが純正アクセサリーメーカーとしての強みでもありますね。

――土屋圭市さんをはじめとするレーシングドライバーの実走テストからもフィードバックを得ているそうですが、そうした意見は具体的に開発にはどういう形で取り入れているのでしょうか。

清松氏:製品開発の最初の段階から関わっていただくというよりは、われわれが考えるコンセプトでいったん作り上げて、そのこだわった部分がしっかりドライバーに伝わるのかが大切です。そのうえでレーシングドライバーの方には、高い次元での走りのフィーリングなど、われわれにはない観点からアドバイスをいただいています。

――そういったフィードバックはすぐにその製品に反映されるのでしょうか。あるいはその意見が次回の製品開発に活かされる、ということになるのでしょうか。

清松氏:Modulo Xでは製品の開発途中から加わっていただき、その意見をすぐに反映させる、といった形で進めています。一方、純正アクセサリーのホイールやサスペンションなどについては、完成した段階で乗っていただいて、そのフィードバックを次の開発に活かす、というような場合もあります。さまざまなモデルを平行して開発しているため、スケジュールの都合上開発途中で乗っていただく機会がないこともあります。

――土屋さんにダメ出しされることも?

清松氏:土屋さんからは、あくまでも土屋さんの視点から「いいか、わるいか」をはっきり言っていただきます。ダメ出しされることもありますが、その原因の根本がなんなのかをわれわれ自身で深掘りして、ディスカッションしながら土屋さんにも理解していただきます。われわれにはわれわれの達成したいコンセプトがあり、車両として達成したいコンセプトもあります。ホンダアクセスとしてリリースする製品ですから、そこはわれわれが責任を持たないといけません。

S660に装着した「MR-R01」(フロント用サイズ15×5J 価格3万6300円/本。リア用サイズ16×6.5J、価格3万8500円/本)
画像はブラックスパッタリング仕上げ。他にステルスブラック塗装とプラウドシルバー塗装もあり

――純正アクセサリーとしてのModuloと、完成車としてのModulo Xとで、ホイールの開発において何か違うところはあるのでしょうか。

清松氏:純正アクセサリーのModuloは、もともとの車両の世界観がベースにあります。Modulo Xにもベース車両はあるものの、走りに特化しながらも一般道で気持ちよく乗れるクルマを作る、という大枠のコンセプトがあるので、それぞれでアプローチが変わってくるところはありますね。

南波氏:デザイン視点では、Modulo Xの大枠のコンセプト、世界観はすでに決まっていて、それを他の車種に継承していくものなので、「今回のModulo Xでどう見せるか」「今回はどんなModulo Xにしようか」というところで考えます。

 対して純正アクセサリーのModuloでは、考え方としてはゼロスタートに近いものがありますね。たとえば、標準装着のホイールよりもSUVっぽくアクティブに見せたい場合は、標準ホイールとは異なった表現でそう見えるようにゼロからデザインを作っていきます。ですので、スタートから違ってきます。

「タイムレス」なデザインの新ホイールが目指したものとは

――ホイール開発において、設計の観点では現在にかけてどんな進化を重ねてきていますか。

船橋氏:1994年のModuloホイールの開発元年、そのときはもう手探り状態で、無限に近い組み合わせのなかから考えなければいけませんでした。しかし今ではレーシングドライバーの方やユーザーのみなさんのフィードバックをどんどん取り入れてデータを積み重ねてきたおかげで、その車種に最適な剛性、走りを実現する手法にピンポイントでアプローチできるようになってきています。

 ある部分をどの程度の強さにしたら、剛性感や接地感がこうなっていくだろう、という理論も積み上がってきています。確度高く、狙ったものが作れるようになってきているという実感がありますね。

――電動化や先進安全性能、自動運転といったテクノロジーの進化が著しい時代になってきていますが、ホンダアクセス、あるいはModuloとして、未来に向けてどんな取り組みをされていますか。

清松氏:われわれは欧州向け製品の開発もしているのですが、欧州では燃費基準が一段と厳しくなっています。そんななかでわれわれはホイールのインチアップの認可も取得していまして、それに伴って車両の燃費性能にまで踏みこんだ開発も行っています。WLTPのような新しい燃費基準では、ホイールの空力やタイヤの転がり抵抗まで考える必要があります。

 たとえばホイールの開口面積をどうすればどのような影響があるのかなど、多くのノウハウが貯まってきていますから対応もしやすいですし、すでに国内でもそういう観点を入れながら開発しています。

船橋氏:設計側では、車両がもつ先進安全性能の維持も観点に入れて開発しています。ホイールを変えたことで自動ブレーキ、レーンキープなどが機能しなくなれば、当然のことながら安全にも関わってきますので。実際にHonda SENSINGの開発部門と直接話をしながら、このホイールサイズならこのクルマには機能を損なわずに安全に装着できる、というところまで踏み込んで確認しています。

CR-Vに装着した「MG-027」(サイズ19×7.5J、価格4万9500円/本)

――今後の取り組みについて、デザイン視点で考えているものはありますか。

南波氏:欧州のクルマの空力に関わる要件が国内に入ってくると、必然的にホイールの開口面積が制限されます。それをいかに満足させながら純正アクセサリーとしてのコンセプトを達成するのか、そういったところにもこれから取り組んでいかなければいけないと思っています。すでに欧州向け製品の開発を手がけ始めていますから、国内でも同じ基準が求められるようになったときには、そのノウハウがホイール開発に活かされるだろうと考えています。

――これからのホイール開発でユーザーや市場に求められるのはどのようなことだと思いますか。

清松氏:国内では今、インチアップのブームが下火になっている印象です。インチアップやホンダ車専用設計を売りにしていたModuloですが、今後お客さまがホイールに何を求めていくのかはわれわれとしても先読みするのが難しいところもあります。

 ただ2020年の今年は、時代を選ばない、流行廃りに左右されない「タイムレス」なデザインのホイールを開発しました。一貫性を持たせたデザインで、多様化するお客さまのニーズに応えていきたいと考えています。

南波氏:そのホイールは、正直デザインとしては“普通”かもしれません(笑)。けれども、人の趣味嗜好は変わってきています。かつてはユニークかつスポーティな見た目にしたり、凝ったデザインのホイールに変えるなどして、個性を表現する時代もありました。でも今回作ったホイールは没個性と言いますか、あまり目立たないものにしています。

 コンバースのALL STARっていうスニーカーがあるじゃないですか。ごく普通の見た目のスニーカーですけど、そんな感覚で履けるホイールができないのかなと思ったんです。普通だけれど、特に目立つわけじゃないけれどいいよね、みたいな。それが純正アクセサリーだったら安心感もありますし、いつまでも使い続けられそうな形を追求しました。そのためにWebでアンケートも取りました。

――そのアンケートで何か面白い傾向は見つかりましたか。

南波氏:すごく記号的な絵を使って、ディッシュホイールが好きか、5本スポークが好きか、6本スポークが好きか、というようなアンケートをとりました。所有している車両のタイプも併せて質問したので、ミニバンのユーザーが好きなホイールはこれ、SUVのユーザーが好きなホイールはこれ、という結果が得られたんですが、そのどれにも共通して上位に入る形状があって、それが今回開発したホイールに活かされています。

船橋氏:あと面白かったのは、ホイールを交換する理由を問う質問ですね。ドレスアップ目的と回答した人は非常に少なく、3分の2ほどの方がスタッドレスに履き替えるためだと。いわば半分妥協で交換しているんですね。であれば、そこに純正の安心感と、タイムレスなデザインでアプローチできるのでは、とも考えました。ホイール中央のキャップもModuloの文字ではなくホンダのHマークにしたので、まさにコンセプトとしても転換期を迎えているのかな、という思いもあります。

3人の好きな、思い入れのあるホイールとは

――ちなみに皆さん、これまで作ったなかでお好きなホイールや思い入れの強いホイールはありますか。

南波氏:現在開発中のFIT Modulo Xの専用ホイールですね。自分の中でも、ホンダアクセスの中でもこれまでで最もこだわって開発したホイールの1つだと思います。ベースデザインはSUPER GTのModulo NSX-GTのものを継承していますが、開発スタートから通常の3~4倍の量のシミュレーションを回して、徹底的に無駄な部分を排除して、車両装着品として許容できる製法においても限界を追求しました。縦と横の剛性バランスもとてもよく、本当に機能美と呼べるデザインができたと自負しています。

南波氏が「バランスよく仕上がった」と話す開発中のFIT Modulo Xの専用ホイール。写真は2020年の東京オートサロンで展示されたもの

清松氏:私は新型アコード用のインチアップのホイールがお気に入りですね。自分が担当した訳ではないのですが、テスト車で走りに行こうとすると自然と人が集まってくるんです。そんなことは今までにありませんでした。

 インチアップにしたうえで、ホンダアクセスとしては初めて樹脂パーツによるガーニッシュを付けていて、本当に新しい世界観を醸し出している感じ。何も説明していなくても人が集まるホイールって、なかなかありませんよね。

清松氏がお気に入りというアコード用のホイール「MS-043」。サイズは19×8.5Jで切削&グリントブラック塗装、価格4万9500円/本。クロームメッキ仕上げの「アルミホイールガーニッシュ」(1万6500円/1本分セット)

船橋氏:個人的には開発をずっと担当していたこのCR-Vの19インチホイール、これは売れて欲しいなという思いもあるのですが、ホンダアクセスとしてうまくできたなと感じているのは、シビック ハッチバックの「エキサイトスポーティパッケージ」のオレンジ塗装が入った18インチホイールですね。車両のガーニッシュやカバーだけでなく、ホイールにも同じアクセントカラーを入れてクルマ全体として世界観を達成できたのがよかったと思っています。

南波氏:こういった多色ホイールは他社の製品にもあるのですが、純正品としてホンダの基準を満たしながら実現できたことに価値があったと思います。

シビック ハッチバック用のホイール「MS-037」(サイズ18×8J 切削/ガンパウダーブラック+オレンジ塗装、価格4万6200円/本)

オレンジ塗装のホイールはエキサイトスポーティパッケージとして提供される

――最後に、読者に伝えたいメッセージがありましたらお願いします。

清松氏:やはり純正アクセサリーとしてのクオリティに非常にこだわっている、というところですね。強度もそうですが、それ以外の部分でも厳しい品質管理を行なっていて、ホイールにこだわるお客さまであればあるほど、塗装1つにしても違いが伝わるんじゃないかなと思っています。

船橋氏:国土交通省が定める技術基準に適合していることを示すJWLなど、一般の安全基準では確認する必要のない部分でもテストするなど、製造工程で品質を厳しくチェックしていることもModuloのホイールの特長です。壊れることなく長く使い続けられる、というところもアピールしておきたいですね。

南波氏:車種専用設計ですから、ぱっと見の外観の違いはもちろんですが、車種ごとに異なるブレーキキャリパーとの距離や強度基準に合わせて、1つひとつスポーク裏の断面まで専用にデザインしています。さきほど話した「タイムレス」なデザインの新ホイールも、4穴、5穴で統一デザインのフェイスをしているんですが、実際には1つとして同じ断面がなかったりします。

 同じように見えるのに作業は多くて面倒臭いんですけど(笑)、きちんと同じようにかつ、美しく見えるように丁寧に作りこんでいます。他のホイールも同じように手間をかけて開発していますので、そういう意味でもModuloのホイールはプロダクトとしての完成度が非常に高いと思っています。