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「愛車」写真を100倍ステキに仕上げよう! 誇らしい愛車写真に仕上げるための撮影と画像処理のコツ
- 提供:
- アドビ株式会社
2022年8月31日 00:00
自動車、バイク、自転車、船など、自分が所有する乗り物をカッコよく写真に撮りたいと思う人は多いだろう。乗り物系は特に愛着が湧くようで「愛車」「愛船」といった言葉もあるほどだ。なかでも特に自動車はユーザーも多く、ネットを検索するとたくさんの「愛車」写真がヒットする。それらの写真の内容はというと、自宅前やガレージで撮られたものをはじめ、街中で撮られたもの、湾岸エリアで撮られたもの、さらにはロケーションを求めて山や海を背景に撮られたものなど、さまざまだ。そのような写真を見ていると改めて「自分も愛車をカッコよく撮ってみたい」という衝動が沸き起こる。
極上の愛車写真を求めて撮影をプロカメラマンに依頼するケースもあるが、自分の気がすむまで撮ってみれば、それだけ自動車と写真に対して愛着も増すに違いない。そして、愛車を写真に撮るのなら、「よりカッコよく」「よりきれい」に撮りたいもの。撮影時の機材やセッティングを工夫することで写真のレベルはアップするが、難しいのが自動車のディテールの表現やボディやウィンドウへの映り込み、さらには不要なものが画面に入ってしまうことなどの処理だ。
撮影時に回避することが難しいそのような点は、RAW現像やレタッチで対処できる。レタッチというのは写真の修整のことだが、RAW現像というのは簡単に言えば「高画質での写真編集」とでもいえばいいだろうか。デジタルカメラや一部のスマホでは「RAW」という特殊なファイル形式で画像を記録できる。特殊なファイルなのでそのままでは写真として見ることができず、専用ソフトによる処理が必要となる。それがRAW現像という作業だ。
JPEGを画像調整すると多少なりとも画質の低下が生じるが、RAW現像では高画質のまま画像調整できるのが大きなメリット。画質を優先するならJPEGよりもRAWのほうがよりきれい仕上げることができるのだ。ちなみに、自動車写真ではRAW現像やレタッチは特別なものではなく、当たり前に行なわれているようだ。なぜなら、先ほど述べたように撮影だけでパーフェクトな写真を仕上げることが難しいから。
では、Car Watchに掲載されるようなカッコよくきれいな自動車写真はどのように撮られ、どのように仕上げられているのだろうか。その裏側を垣間見てみたい……。そこで、Car Watchでの撮影や執筆で活躍する安田剛氏に協力をいただき、実際の撮影やRAW現像を再現してもらった。クオリティの高い愛車写真にするためのヒントが満載。ぜひ参考にしてほしい。
撮影編
ここでは、Car Watchにレビュー記事を掲載するというつもりで安田カメラマンに写真を撮ってもらった。自動車単体だけではなく、背景を生かした写真やタイヤまわり、インパネなど、こだわりの撮影法を見ていく。
ちなみに、どんなジャンルでもそうなのだが、被写体特有の撮り方というのがある。「かっこよく写す」「きれいに見せる」「ディテールをしっかり再現する」「印象を強くする」など、言葉にすれば一般的な被写体を撮るときと注意点は同じだが、自動車という被写体に対する撮影法や撮影技術があるのだ。そんな点にも注目してもらいたい。
さて、7月某日、集合したのは「アネスト岩田ターンパイク箱根」。自動車写真や自動車ムービー撮影のメッカだそうだ。午前中から撮影を始め、青空の下でまるでカタログ写真のような1枚も撮ることができた。午後には雲が沸いて見通しがわるくなったので撮影を終えたが、自動車写真の撮影は天候にも左右されるので、時間的に十分な余裕を持って望みたいところ。
なお、今回の撮影では安田カメラマンのほかに、撮影助手がいたり、プロならではの機材を使っていたりする。撮影条件としてはやや敷居が高いが、自動車仲間を募って互いの愛車写真の撮影を手伝ったり、カメラに詳しい友人がいればドライブがてらに誘ってアドバイスもらったりと撮影自体を楽しんでほしい。
富士山バックの定番7:3カット
天候も味方をしてくれた今回のメインカット。雲をかぶった富士山をバックに、晴天の青空の下、車体のプラズマイエロー・パールが映える1枚。少し斜めから撮るのを自動車業界では「7:3(しちさん)」というのだそうだ。ただ斜めといっても条件があり「4つのタイヤがすべて見える角度が大事」なのだとか。なぜなら「その角度がもっとも自動車がカッコよく見えるから」と安田カメラマン。なるほど。写真では右の後輪が影になっているがタイヤのシルエットが出ているのが分かるだろう。また、ローアングルから撮ることで写真としての安定感も増す。
逆光でもきれいな写真にする
こちらは、どうしても逆光の条件で撮らざるを得ない場合を想定しての写真。影になるフロント部分の表情を出すためにヘッドライトを点灯しているのもポイント。太陽の位置がカメラの前方に来る逆光の場合は、どうしてもレフ板やフラッシュなど、陰になる部分を明るくするための「補助光」が必要だ。ただ、薄曇りなど日差しが弱ければ陰も暗くなりすぎないので補助光が不要になることも多い。これは撮影の後、RAW現像に加えHDR処理も行ないさらに陰影などを調整している。
タイヤまわりを品よく仕上げる
自動車好きがボディの次に気になるであろうタイヤとホイールまわり。撮影前に、ホイールのセンターオーナメントが正立するよう10cm刻みで自動車を前後させて調整していた。そして安田カメラマンがレンズを向けたのが、日向ではなく日陰になっている方のタイヤとホイール。というのは、「太陽の光が直接当たるとコントラストが強くなりすぎて質感が分かりにくいから」というのがその理由。そこで敢えて太陽の陰になるように自動車を配置して強い光を避けている。
ただ、そのままでは逆にコントラストが低くなりすぎるので、光を感じさせるためにレフ板で光を当ててタイヤまわりを明るくしている。さらに、車体の下からもフラッシュの光を当ててタイヤパターンがわかるようにする。こうすることで品の良い写真に仕上げることができる。
見応えのあるインパネ写真
インパネまわりの写真。一見すると宇宙船のコクピットを連想させるような見応えのある写真だ。太陽光が直接差し込むと、暗すぎる部分が生じて細部が分かりにくくなるので、わざわざ日陰に移動して撮影をした。見た目が美しくなるように左右のシート前部の位置を揃え、ハンドルも真っ直ぐにしている。
表示がきらめくメーターまわり
メーターまわりの写真。LEDの表示がより輝くように、標準的な露出よりも暗くなるように設定して撮影した。またRAW現像ではコントラストが強くなるように調整している。コントラストを強めると明暗差が強調され、写真の印象はより力強く、また華やかになる。
ラグジュアリー感が漂うシフトレバー
ラグジュアリー感が漂うシックに仕上げられたシフトレバーまわりの写真。黒いものを黒く写すことでそのような雰囲気を出すことができる。このような黒い被写体が画面を占めるシーンでは、カメラはもっと明るく写そうとするので、わざと暗く写るようにカメラを設定する。なお、黒い部分ではゴミやホコリが目立つので、ブラシやダスターなどでできるだけ払っておきたい
RAW現像編
ここからはRAW現像について見ていく。先述したようにRAWは、RAW現像によって高画質のまま明るさや色などを調整することができる。RAWを調整するにはRAW現像ソフトが必要になるが、ここではプロカメラマンからアマチュアカメラマンまで広く使われているAdobe Photoshop Lightroom︎ Classic(以下Lightroom)を使う。Lightroomは明るさや色の調整だけでなく、質感調整や不要物の除去なども行なえる多機能なソフトだ。
撮ったままできれいに見える写真もLightroomでひと手間を加えることで、より魅力的な写真に仕上げることができる。また、屋外で撮ることの多い自動車写真では、レフ板などを使っても光と影を完全にコントロールするのは難しいが、Lightroomによって理想的な光と影を手にすることができる。さらに、ボディやガラスへの映り込みを消したり、画面に入り込んでしまった不要物を消したりすることも可能だ。そんな「Lightroomマジック」の一端を安田カメラマンに見せてもらった。以下「撮影編」で取り上げた中から何枚かの写真をピックアップし、RAW現像の様子を紹介する。
なお、以下の作例だが「Car Watchに掲載する写真の場合、Web媒体ということもあり、彩度やコントラストをかなり強めに仕上げています。自分の愛車写真をRAW現像する際は、少し抑えた方が自然に見えると思います」と安田カメラマンからアドバイスをいただいた。好みの仕上がりがあると思うので、RAW現像をする際は落とし所を見つけてほしい。
富士山バックの定番7:3カット
上のBefore写真とAfter写真を見比べれば、多くの人がAfter写真の方がきれいで美しいと思うに違いない。After写真を見なければBefore写真も十分にきれいなのだが、After写真を見てしまうと、その印象が目に焼き付いて離れない。Lightroomを使えば、ほんのひと手間をかけるだけで、記憶に鮮やかに残る写真に仕上げることができる。
この作例で行なったのは、写真をビビッドなカラーにすること、明るさを調整して見やすくすること、金属の質感の強調と背景をクリアにすること、そしてボディのきれいでない映り込みを修正し、なおかつ地面の不要物を消すことだ。
ビビッドなカラーにする
色鮮やかなビビッドカラーの写真にしてみよう。色が鮮やかになると印象も強くなる。大きく影響を与えるのは「プロファイル」と「彩度」の調整だ。カメラ本体には写真の雰囲気を決める「標準」「風景」「人物」「モノクロ」などのモードがあるが、Lightroomでも同様の指定が可能だ。その上で、もう少し色を濃くするために「彩度」も上げる。
明るさを調整する
明るさの調整については安田カメラマンは細かく行なっている。このあたりはさすがプロのこだわりというところか。安田カメラマンのイメージとしては「白黒をはっきりさせてコントラストを強めつつ、暗く見にくい部分のディテールを出す」というもの。調整前より調整後の方が全体的にハッキリとした印象になっているだけでなく、背景の緑やタイヤなどが明るくなっていることがわかる。
車体の質感強調と背景のクリア感の調整
違いが少し分かりにくいかもしれないが、青空や遠景の富士山がよりクッキリと見えるような処理を行なった。また、同時にボディの金属感やガラスの質感などを調整することで、自動車の重量感や存在感を示す。
ボディへの映り込みと白線を消す
ボディやガラスに何かが映り込んでいると、ボディの美しさが損なわれてしまう。気になる映り込みを消すことでボディの美しさが引き立ち、写真としての完成度も高まる。このような処理もLightroomを使えば簡単だ。同じ機能を使って地面の白線も消している。
タイヤまわりを品よく仕上げる
日陰になるようにして撮ったタイヤまわりの写真だが、RAW現像前は上左の写真のようにかなり明るく写している。というのも先にも述べたように、最初から適正露出で撮ってしまうとタイヤが黒くなりすぎてタイヤのロゴや溝などのディテールを再現しにくいからだ。RAW現像を前提とすると、このような撮影方法も選択肢となる。「デジタルカメラを使い始めて20年以上、RAW現像も同じくらいやってきました」という安田カメラマンならではの撮影・現像スタイルだ。
落ち着いて見られる明るさにする
タイヤのディテールがきちんと残るように、加えて写真全体も見やすい明るさに調整する。Before/After写真を見比べて、これほど調整できることに驚きを覚える人もいるのではないだろうか。このような調整ができるのは、調整できる幅が広いLightroomを使ったRAW現像ならではといえるだろう。
色彩を強めてメタリック感を出す
日陰で撮っているということもあってか、ボディカラーの発色がいまひとつと感じた安田カメラマン。色のノリがよくなるように彩度を上げる処理を行なった。また、ホイールやボディのメタリック感も強めて写真を引き締めた。
見応えのあるインパネ写真
このような角度から撮ったインパネ写真は見応えがある。撮影編でも触れているように、レフ板(ディフューザー)を使って直射光を遮っているため、マットな質感も十分に再現されている。これに対して安田カメラマンがRAW現像で手を加えたのは、ホワイトバランスと明るさの調整、そして角度調整だ。そのプロセスを見ていこう。
・水平・垂直になるように角度を調整する
写真を見ると少し左に傾いている。ハッチバックからカメラを手持ちで撮影しているので無理もない。写す被写体の中に水平や垂直の線があれば、それをガイドにカメラの角度を修正できるが、ほぼ曲線で占められたインパネではそれも難しい。そんな難しい角度修正もLightroomの強力な機能を使えばワンクリックで修正可能だ。
・ホワイトバランスを調整してウォーム調にする
安田カメラマンはカメラのホワイトバランスを「太陽光」で撮るのが基本だそうだ。取材など、限られた時間の中で撮ることが多いため、カメラの設定を変える時間も惜しいという。そこでホワイトバランスはRAW現像で調整している。
これもその「太陽光」で撮られているが、日陰で撮っているため青みが強い。青みが強い写真は、冷ややかに見えて見る人に緊張感をもたらしやすい。穏やかな気分で見てもらえるよう、ホワイトバランスを赤みを帯びたウォーム調に調整した。
・明るさ調整でインパネに視線を集める
最後に明るさを調整しよう。上のBefore写真とAfter写真をよく見比べてほしい。After写真の方がインパネに視線が引き寄せられないだろうか。実は、人が写真や絵画を見るときなどは明るい部分に視線が向きやすいと言われている。Before写真でも、インパネよりサンバイザーや天井が明るいため、そこに視線が向きやすい。その明るさを抑えれば、写真の中心であるインパネに視線が向くようになる。
RAW現像で大きく変わる写真の印象
ここまでRAW現像のプロセスを見てきたように、RAW現像を行なうと写真の印象を大きく変えることができるし、映り込みや不要物などを消して写真のクオリティを上げることも可能だ。はじめは多少の知識やコツが必要にはなるが、慣れれば数分程度の操作で写真を仕上げることができる。実際に安田カメラマンがRAW現像にかけた時間もわずかだった。そんな使いやすさもLightroomの魅力だ。
ここからはそのほかの写真について、Before、Afterを見ながら、安田カメラマンがどのようなRAW現像を行なったのか、そのポイントを見ていく。
逆光でもきれいな写真にする
逆光のシーンでは明るい部分が明るくなりすぎたり、暗い部分が暗くなりすぎたりする。撮影時に明るさを変えて何枚か撮影する「段階露出」を行なっておき、RAW現像で明るさを調整しやすい写真を選ぶといいだろう。作例では、Lightroomで明るさなどを調整したのち、Adobe︎ Photoshopでより印象的な写真になるようHDRという処理を施している。
調整内容
[Lightroom]
・明るさの調整
露光量:+0.25/コントラスト:+5/ハイライト:ー77/シャドウ+25/白レベル:+18
・彩度の調整
自然な彩度:+14
・質感や空気感の調整
明瞭度:+14/かすみの除去:+5
[Photoshop]
・HDR処理
HDRトーンを使用
・電線を消す
修復ブラシツール、パッチツールなどを使用
表示がきらめくメーターまわり
このような暗い被写体を撮ろうとすると、カメラはもっと明るく写そうとする。するときらめく表示が目立たない平凡な写真になってしまう。撮影では暗めに撮るのがポイントだ。RAW現像ではさらに暗さを強調しつつも、表示の明るさも強調してコントラストを印象づけている。
調整内容
・明るさの調整
コントラスト:+15/ハイライト:-14/シャドウ:+10/白レベル:+31/黒レベル:-48など
・質感の調整
明瞭度:+17
ラグジュアリー感が漂うシフトレバー
このシフトレバーもメーターまわりの写真のように、少し暗めに撮ると雰囲気が出やすい。RAW現像でもさらに暗くなるように調整しているが、暗くしすぎると平板な感じになるので、もともとあったグラデーションを残すようにすると立体感が損なわれない。なお、黒い被写体はゴミやホコリが目立つので、RAW現像時に消している。
調整内容
・色の調整
色温度:7500
・明るさの調整
露光量:-0.20/ハイライト:-16/シャドウ:+9/黒レベル:-29
・質感の調整
明瞭度:+17
・ゴミやホコリの消去
スポット修正ツールを使用
自動車をアクセントにした「ゆるCar写真」
こちらはうるさく目に付く白線と車止めをすべて消去し、スッキリと仕上げた写真。できれば不要物が映り込まないように撮れればよいが、撮影場所によっては条件が整わないケースも多い。しかしLightroomがあれば不要物の消去も簡単だ。安田カメラマンによると、白線と車止めを消すのにかかった時間は10分ほど。ほかに鮮やかな風景写真に仕上げるために、明るさや色、クッキリ感の調整なども行なっている。
調整内容
・明るさの調整
コントラスト:+12/ハイライト:+67/シャドウ:+16/白レベル:+15/黒レベル:-22
・色の調整
自然な彩度:+10
・質感や空気感の調整
明瞭度:+18/かすみの除去:+10
・白線と車止めの消去
スポット修正ツールを使用
魅せる愛車写真に仕上げよう
写真というのは撮った時とそれを見る時とで印象が変わることがある。よくあるのが、「もっと力強い印象だったのに」とか「もっと色鮮やかだったはずなのに」といったこと。撮影時のイメージが美化されて強く記憶に残るためだ。カメラはその場の景色をそれなりに忠実に記録しているはずなので、撮影者の思い込みとも言える。それは撮影者だけでなく写真を見る人にとっても同じで、美化された景色を基準に写真を見るため、撮ったままの写真に対してはあっさりとした印象を持つことが多い。「魅せる」写真にするためにはRAW現像は欠かせないと言ってもいいだろう。
そんなとき頼りになるのがLightroomだ。撮影に手間をかけたり遠出して撮ったりした愛車写真なら、なおさら魅力的な写真に仕上げたい。魅力的な写真に仕上がったのならSNSに投稿して多くの人に見てもらおう。スマホの待ち受け画面にすれば常に愛車を感じていられる。傑作ができたら愛車写真コンテストに応募するのもいい。ステキな写真は多くの人を幸せにしてくれる。そんな愛車写真ライフを豊かにしてくれるLightroomで、RAW現像を始めてみてはいかがだろうか。
撮影協力:株式会社SUBARU、箱根ターンパイク株式会社