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ガジェット系BEVオーナーが最新軽BEV「N-ONE e:」に乗ってみた! 使い勝手から乗り味、充電環境まで徹底チェック

木更津⇔水戸の往復ロングドライブで見えてきた答えは?

BEV(バッテリ電気自動車)に乗るのであれば、家庭用の普通充電器の設置は必需品であると声を大にしていいたい

 筆者は2023年に東京から千葉県木更津市に移住するにあたり、アラフィフにして初めて自家用車を購入したのだが、そのとき中古のBEV(バッテリ電気自動車)を選択した。若いころはバイクに乗っていたものの、4輪の公道運転経験は数回程度という、ほぼペーパードライバー状態でBEVを買ったので、この年代としては珍しい“BEVネイティブ”としてクルマデビューした。

 仕事は主にモバイル分野の製品レビューなどの記事を書くライターだが、この奇特なクルマ経歴を見込まれ、Car Watchに「ホンダのN-ONE e:に乗ってみませんか?」と声がかかった。

 実は筆者が中古BEVを選択したのは、早期で買い替える前提だったりする。2年半前は新車BEVの選択肢が少なかったが、2030年にかけて多数の新BEVが登場すると予想されていたので、それを待ちたかったからだ。そして今秋は多数の国産BEVが登場し、買い替えタイミングに入ってきた。そこで有力候補のN-ONE e:にガッツリ乗れるチャンスを逃す手はない。

 といっても、筆者はクルマ分野は素人だ。ガジェット系ライターのサガとして、BEVについては研究しているが、ガソリン車の事情やクルマの基本は詳しくない。そこで今回はモータージャーナリストの藤島知子氏に同乗いただき、筆者の知らないことを補足してもらいつつ、N-ONE e:でドライブしつつその魅力を探ってみた。

モータージャーナリストの藤島知子氏と一緒に「N-ONE e:」のロングドライブを試みた

年齢・性別を問わないカッコカワイイデザイン

 まず外観デザインは、ガソリン車のN-ONEと共通する部分が多いが、フロントフェイスはかなり違う。上端の欠けたリングライトは、常に光るデイタイムランニングランプ兼ウインカーで、これがスポーティでもあり可愛くもある。

 今回お借りしたN-ONE e:は、車種のイメージカラーでもあるチアフルグリーン。発色が綺麗で、年齢や性別を問わずに合いそうだし、駐車場で目立つのも地味に便利そうだ。

試乗車のグレードはエントリーモデルの「e: G」に、メーカーオプションの「Honda CONNECT for Gathers+ディスプレイオーディオ装着用スペシャルパッケージ」と「急速充電ポート」を装備した仕様
ボディサイズは3395×1475×1545㎜(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2520mm、車両重量は1030kg

 さらに純正アクセサリーの「デカール センターストライプ」や「テールゲートスポイラー」などが装着されていた。このセンターストライプは、小さくてすばしっこいN-ONE e:のイメージにピッタリで、半ズボンのオジサンファッションも似合いそう。

藤島氏:そうやってクルマに合わせて自身のファッションを考えるのも楽しいですよね。

 確かにそうだ。軽自動車のデフォルメされたようなフォルムにスポーティなセンターストライプなどのオプションを加えると、故鳥山明氏の表紙イラストみたいなイメージとなり、筆者のようなアラフィフオジサンのテンションを上げてくる。

スポーティでもあり可愛くもあるフロントフェイス。グリルには純正アクセサリーの「デカールフロントグリル」を装備している。カラーは画像のブラックとブラック×シルバーから選べる。価格は1万6500円
「デカールセンターストライプ」は3万8500円で、ボンネット、ルーフ、テールゲート、テールゲートスポイラー分がすべてセット。カラーはどのボディカラーにもマッチするマットグレー
ブラックとシルバーから選べる「デカールボディサイド」は、「N」の切り抜き部分がありボディ色の「N」が現れる。3万3000円
クリスタルブラック・パール色の「テールゲートスポイラー」は2万7500円
サステナブル素材を使った「ドアバイザー」は4枚セットで2万8600円
「14インチアルミホイール MS-024」は、カラーがステルスベルリナブラックで1本2万9700円

使いやすく不便のないサイズ感

 N-ONE e:のボディサイズは、3395×1475×1545mm(全長×全幅×全高)。全長と全幅は軽自動車規格ギリギリのサイズで、全高は高さ制限のある機械式駐車場にも入る1550mm以下。しかし、BEVは自宅の駐車場で充電できないと使いにくいので、マンションなどの機械式駐車場が使えてもあまり意味がないような気もする。

藤島氏:でも最近はEV充電器のある機械式駐車場も登場しています。あとは通勤に使うクルマの充電ができる会社とかもあるので、自宅で充電できなくてもEVを使ってる例はあるんです。

 なるほど、そうした環境ならN-ONE e:は運用できそうだ。そういえば現行の国産BEVは、SUVやワゴンが多く、全高1550mm未満のBEVは珍しかったりもする。最近の機械式駐車場だと1550mm制限がないことも多いが、1550mm未満の駐車パレットだと安いことが多いし、選択肢は多い方がありがたいのも事実。

 安いといえば、軽自動車なので普通車よりも高速道路の料金が少しだけ安い。N-ONE e:は往復200kmくらいなら無充電で往復できるし、軽自動車離れしたパワーと安定性で高速道路も快適だ。往復200kmくらいの移動を週に何度もするようなら、ガソリン軽自動車や普通車BEVよりも賢い選択肢になるのかも。

ルーフが低いから室内は狭いかもと思ったが意外と快適な広さが確保されている

 人気のスーパーハイトワゴンやトールワゴンに比べると、N-ONE e:は車高が低い分、車内空間は狭い……と乗る前には思っていたが、実際に乗ってみると、身長176cmの筆者でも運転席・助手席は狭さを感じない。後席は荷室空間を確保しながら、大人でも膝前空間はそこそこある。乗車人数が増えても余裕のある電動パワーも頼もしい。

 2名乗車なら、後席の背もたれを前に倒すとダイブダウンするので、フラットで広い荷室が作れるし、ホンダ独自のチップアップ機構で後席の座面を跳ね上げれば、高さのある荷物も積みやすい。下手なコンパクトカーよりも荷物が積めそうで、日本の軽自動車の設計はスゴいと思った。

内装にはA-Collectのデジタルカーボン柄のパネルを装着。インパネラインパネル(アッパー1万6500円、ロア1万4300円)、シフトパネル(1万1000円)、PWSWパネル(1万6500円)、ドアベゼルパネル(1万4300円)

「アームレストコンソール」は運転に適した高さでありつつ、小物も収納できる便利アイテム。1万9800円
ダッシュボードには車外からでも充電状況を確認できる「充電インジゲーター」を完備(3万1900円)
防水性があり濡れた荷物も気にせず積める縁高折り畳みタイプの「ラゲッジトレイ」は6600円
閉じるときにあると便利な「テールゲートストラップ」は1100円

藤島氏:ベースとなっているガソリンエンジンのN-ONEは、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトを採用することで、車内空間の広さを実現しています。プラットフォームを共有するN-ONE e:もその設計思想を受け継ぎ、バッテリ容量を大きくしながら車内が広くなっているんですよ。

 N-ONE e:の公式サイトを見ると、床下に搭載されているバッテリは運転席の下だけ分厚い特徴的な形状だ。これはセンタータンクレイアウトをそのままBEVに移行したからとか。やはり日本の軽自動車の設計ってスゴい。

使いやすい軽自動車サイズに優れた走行性能

 木更津近辺の上総(かずさ)地区だと、アクアライン以後に開発されたエリアは道も駐車場も広いが、君津製鐵所と同時期に開発されたエリアは当時のクルマのサイズ(現在の軽自動車に近い)に合わせたせいか、道も駐車場も狭い。筆者のBEVは幅1800mm未満で大きくはない普通車だが、それでも最近までペーパードライバーだった筆者としては、古いエリアではストレスを感じることもある。

 そんな筆者としては、軽自動車の小まわりのよさに感動してしまう。全幅が小さいので、普通車だとすれ違い時に少し緊張するような狭い道もスイスイ走れる。最小回転半径もN-ONE e:は4.5mと小さいので、Uターンもラクだし、狭い駐車場でも少ない切り返しで駐車できる。軽自動車って快適だ。近所を走っていると、視界に入るクルマの体感8割が軽自動車みたいなことがあるが、みんなが乗っている理由がよく分かった。

小まわりのよさには感動だし、高速道路も安心して走れる……スゴイぞN-ONE e:

藤島氏:BEVのN-ONE e:は、軽自動車離れした走行性能も特徴なんですよ。バッテリが床下に配置されていて重心が低く、車体骨格の剛性も高いので、安定性も高くなっています。

 そういえばそうだ。筆者が普段乗っているBEVは同クラスのガソリン車に比べると加速に優れるハズだが、それに慣れていても、N-ONE e:はほぼ同じ感覚で運転でき、パワー不足は感じない。停止からの発進加速も高速道路の合流や上り坂でも、アクセルを大きく踏み込む必要がなく、音もなくスムーズに走る。そういえば車内はずっと静かで、高速道路などでも普段の声量で会話ができた。

 安定性などは、正直クルマに乗り慣れていない筆者には違いがそこまで分からないが、たとえば売れ筋のスーパーハイトワゴンはN-ONE e:とほぼ同重量なのに全高が高い。それに比べると大きな重量が床下にあるN-ONE e:がコーナリング時に傾きにくいのは当然だ。軽自動車の使いやすいサイズ感でありながら、この走行性能や安定性があるのは素晴らしい。

車内はとても静かでいつものボリュームで普通に会話ができる

 あと地味にスゴいと思ったのは、Honda SENSINGの運転支援機能だ。今回は高速道路でほぼアダプティブクルーズコントロール+車線維持支援システムを使いっぱなしだったが、精度が高く、速度もハンドルも違和感ない感じで安心して使えた。そしてこの機能がN-ONE e:では全グレード(といってもe: Gとe: Lの2種類だけど)に搭載されているのもスゴい。

 さすがにハンズオフには対応しないが、今回お借りした車両に装着されていた純正アクセサリーの「アームレストコンソール」がちょうどいい高さで、ハンドルを握りながら腕を休めることができた。これ、高速道路走行が多い人は必須だと思う。

Honda SENSINGの運転支援機能の高い性能には驚かされた

 N-ONE e:にはアクセルペダルだけで減速もコントロールする「シングルペダルコントロール」も搭載されている。最新の国産EVでは珍しく、完全停止まで減速できるので、ブレーキペダルは急制動時や停止中の右足の置き場にしか使わない。筆者は自分のBEVでも同等機能をオンにしっぱなしで慣れているが、N-ONE e:でもほぼ違和感なく、高速域まで細かくスピードコントロールできた。

完全停止までできるシングルペダルコントロールは筆者の必須機能だ

普段使いには十分なバッテリ容量

 N-ONE e:の主要諸元表によると、WLTCの充電走行距離は295km、電力消費率は105Wh/km(電費は9.52km/kWh)、バッテリ容量は29.6kWhだ。このバッテリ容量と走行距離は、普通車BEVに比べると小さいが、他社の軽自動車BEVに比べると約1.5倍とかなり大きい。

 クルマ必須地域で暮らすBEVユーザーの筆者からすると、約300kmの充電走行距離は、普段使いには十分だと断言できる。BEVのいいところは、自宅で充電できれば基本的に出発時はいつも満充電なことだ。通勤や買い物、送り迎えなどの日常用途なら、100kmも走らないので、追加充電は必要ない。残量を気にしてガソリンスタンドに寄るという必要がないのはBEVの最大のメリット。

軽BEVはロングドライブには向いていないのか?

藤島氏:最近は地下タンクの規制強化や低燃費車の増加によって、ガソリンスタンドが減っています。BEVはガソリンスタンドがなくなったエリアでも使いやすいのがいいですよね。

 筆者宅の近所にもガソリンスタンドの跡地があるし、以前住んでいた東京宅の近所でも何軒か廃業していた。給油のたびに安いガソリンスタンドまで数km走行し、毎回30分くらいかかるような人も少なくないのでは?

 筆者は知人からしばしば「BEVは充電が面倒では?」と聞かれるが、筆者にしてみると「ガソリンスタンドに行くのって面倒では?」となる。BEVはガソリンスタンドに行く必要はまったくない。エンジンオイル交換もなく、日常点検と車検時の点検で事足りる。普段は家に帰ってきたときに充電プラグを挿すだけなので、スマホと変わらない。

 逆にいうと、自宅で駐車中に充電できないと、「ガソリンスタンドに行かないでよい」というBEVの最大のメリットが「日常的にどこかに充電しに行かないといけない」というデメリットに入れ替わり、ほかのメリットを上まわってしまう。異論反論あるかと思うが、自宅で充電できない人はBEVを買うべきではないとまで筆者は個人的には思っている。

 ちなみにN-ONE e:には最大充電量設定を80~100%のあいだで変更できる。N-ONE e:が搭載する三元系リチウムイオン電池(エネルギー密度が高いので、BEVからスマホまで広く使われている)は、100%に近い充電状態が長く続くほど劣化が速くなる性質があるので、それを防ぐための設定だ。

 最近のスマホでも同様の機能があり、筆者もiPhoneで使っているが、けっこう効果があるので、スマホもBEVも可能なら80%設定を推奨したい。そうなると使えるバッテリ容量が減ってしまうが、N-ONE e:はもとのバッテリ容量が軽自動車としては余裕があるので、80%くらいでも日常使いにはまったく問題がない。

N-ONE e:などホンダ車の多くは、Honda Total Careに加入して操作アプリをインストールすれば、車両をスマホで管理できる

 この手の細かい設定は、最近のクルマだと中央のタッチパネルディスプレイでやりそうなところだが、N-ONE e:の場合、スマホアプリから操作できるので、ナビレスのe: Gグレードでも使い勝手が変わらないのは面白い。また、クルマから離れていても充電量などの確認や設定変更ができるので、「普段は80%充電だけど、明日は中距離ドライブだから100%まで充電したい」というとき、わざわざクルマに行かないでも100%充電できるのも便利だ。

N-ONE e:は長距離ドライブもこなせるのか?

 N-ONE e:は軽BEVとしては295km(WLTCモード値)と航続距離が長いが、長距離ドライブはどうだろうか? 筆者の居住する木更津市だと、N-ONE e:なら無充電で房総半島全域を周遊できるので、海も山も行くのに不安はない。ただ今回は、走行性能を十分に堪能するのと、急速充電の使い勝手をチェックするべく、あえて経路充電が必要な水戸まで、あんこう鍋を食べにドライブに行ってみた。

今回はあえて水戸までロングドライブに出た

 BEVの急速充電の充電速度にはさまざまな要素があって奥が深いのだが、解説するには長くなってしまうので、とりあえず大雑把に「急速充電なら30分で残量20%くらいから80%くらいまで回復できるけど、バッテリ残量が多いほど充電速度が落ちて非効率」と考えていただきたい。

 今回のドライブでは、最終的に走行距離369.3km、平均電費8.7km/kWhだった(エアコンは不使用)。筆者の経験だと、車種により若干違いはあるが、BEVは90km/h以上で走行すると極端に電費が悪化する。その点で言うと、今回は東関東自動車道の120km/h区間をしっかり飛ばしたので、電費はカタログスペック(9.52km/kWh)よりも落ちてしまった。しかし、そうした過酷な条件で8.7km/kWhだったのは、むしろかなり優秀だ。きっと電費に配慮しながら走れば、WLTCスペックを超えるのも難しくないだろうと感じた。

今回お土産を買いに立ち寄った「ひたちの里 水戸インター店」は、その名の通り水戸インターから2分という好立地。営業時間は9時~18時だが年中無休。駐車場も50台分を完備しているし、コンビニも隣接している
店内は明るく広いスペースで、ゆっくりと買い物を楽しめる。納豆や芋けんぴなど茨城各地から届く名産品や特産品などが豊富で、ついつい買い過ぎてしまいそうになる

 片道約150kmのロングドライブのため、この時点で帰路分の充電残量としては足りないので、近所の急速充電でサクッと充電しておきたいところ。しかし急速充電器を利用するのは少し手間がかかる。筆者の場合、急速充電が必要な長距離ドライブは年に数回あるかどうかレベルなので、月会費が必要な充電ICカードは持っていない。そうなると充電スタンドに貼ってあるQRコードを読み込んで、オンラインで登録して、充電器に番号を入力、クレジットカードを登録……みたいなゲスト充電の手順を踏む必要がある。

出先の急速充電器を利用する場合、あらかじめ登録してある充電ICカードを所持するか、毎回ゲスト登録する必要がある

 ところがN-ONE e:はちょっとスゴい。N-ONE e:の発売と同時にスタートしたホンダの充電ネットワークサービス「Honda Charge(ホンダチャージ)」は、Honda Total Careに加入してクレジットカードを登録しておけば、充電プラグを挿すだけで自動認証し、充電を開始、決済まで完了できる。対応の充電器は全国のホンダディーラーを中心に設置が進んでいる。今後は商業施設への設置拡大も予定されているそうだ。日本製EVと日本の急速充電器規格(CHAdeMO)では初めての機能。他社BEVユーザーである筆者としては、かなり羨ましいポイントだ。

アプリ「Honda Charge」の利用画面。近隣の充電スポットを検索し、空きがあれば60分の取り置きができたり、充電の開始・終了も画面で操作できる

 今回は個人のスマホのため車両と連携していなかったので、Honda Chargeアプリとクレジットカード登録で利用したが、これでも充電用のICカードを所持しなくていいし、スマホの画面で開始・終了の操作もできるので、筆者のようなBEVスタイルなら利便性が高い。

プラグを充電ポートに挿し、開始・終了・支払いもアプリで完結するので、ICカードを持参してかざしたりする必要はない
Honda Chargeに対応した充電器は、現在どんどん設置が進められているそうだ
Honda Chargeは50kWの急速充電なら1分55円、90kWなら1分77円と固定料金となっている。今回は50kWで30分充電して、N-ONE e:の充電は79%まで回復。支払いは1650円だった

 なお、N-ONE e:のエントリーモデルである「e: G」グレードは急速充電ポートはメーカーオプションとなる。ルート配送など近所限定の運用だと不要なので、オプション扱いは分からないでもないが、N-ONE e:は高速道路も走りやすく、中距離ドライブもこなせるので、どうせなら急速充電ポートを追加するか、上位のe: Lグレードを選ぶことをオススメしたい。

ひたちの里 水戸インター店でお土産購入後に、Honda Chargeアプリで検索したところ、もっとも近くに急速充電器が設置されていたので立ち寄ったホンダカーズ水戸内原店。スタッフにお話を聞くと、北関東エリアでN-ONE e:は予想以上に売れていて好調とのこと。戸建てで買い物や駅までの送迎がメインのクルマならBEVに切り替えてしまうオーナーが増えているそうだ

普通充電器は推奨アイテムではなくマストアイテム

 前述した通り、自宅か職場で充電できない人は、BEVを持つべきではない。普通充電器は絶対に必要だ。実は最近のBEVは、普通充電器が付属しない車種が多く、N-ONE e:でも別売りだ。しかしこれは「なくてもいい」という理由ではなく、「必須アイテムだけど、ユーザーの環境によって必要なタイプが違うから」だ。

 例えばN-ONE e:の純正アクセサリーには7mと15mと、2種類の充電ケーブルがラインアップされているが、駐車場のコンセントの位置と駐車位置によって、どちらの長さが適しているかが異なってくる。長すぎるケーブルは扱いづらいので、大は小を兼ねるの精神で15mを選ぶのはオススメできない。

 また、BEVの充電器は「コンセントに繋げっぱなしにしてクルマが帰ってきたら挿す」という運用になる。スマホの充電器と一緒でいちいち収納はしない。しかしこういった運用だと、ケーブルタイプの充電器はぶら下がって見た目が美しくないし、コンセントプラグに負担がかかるし、あと盗難リスクもある。

普通充電器(Honda EV Charger)は標準設置費用込みで約37万円~。販売店のHonda Carsも設置を推奨している

 これから200Vコンセントの設置工事をするなら、同じく純正アクセサリーの「普通充電器(Honda EV Charger)」がオススメだ。純正アクセサリーだからホンダディーラーで購入できる。別途設置工事手配が必要なので、充電ケーブルよりも高価だが、200Vコンセントを増設するのもコストがかかるので、いっそ普通充電器(Honda EV Charger)を設置するのも手である。もともと壁面設置するための機器なので、見た目もスマートだし、耐久性もあるし、盗難の心配もない。

N-ONE e:の普通充電ポートは正面向かって左側に配置されている。また純正アクセサリーには、屋外での充電の際、充電ポート内や充電コネクターを「ほこり・汚れ・雨」から保護してくれるほか、紫外線の低減にも役立つ「ポートリッドカバー」もラインアップされている。価格は収納袋付きで1万6500円

 また、ケーブル型の充電器は出力が3.2kWのため満充電まで約8.5時間かかる。一方、普通充電器(Honda EV Charger)は出力が6kWなので、約4.5時間で満充電となる。N-ONE e:のバッテリ容量なら3kW充電器でも不足はないが、例えば契約プランの深夜電力時間帯が短い場合などは、6kW充電器の方が頼もしいし、渋滞などに巻き込まれて帰宅が日付をまたいでも、普通充電器(Honda EV Charger)があれば、翌日早朝に満充電で出発できる。

さらに持っておきたい「AC外部給電器」

 日本のBEVは災害対策の意味も含め、巨大な蓄電池として使える設計になっている。N-ONE e:の場合、純正アクセサリーの「AC外部給電器」を使うことで、普通充電ポートからAC100V(最大1500W)を取り出せる。価格は2万9700円で、BEVからAC100Vを取り出す機器としてはかなり安価だ。

「AC外部給電器」があれば、普通充電ポートからAC100V(最大1500W)を取り出せる

 災害対策としても持っておく価値があるが、災害時以外でも使い道は多い。例えばキャンプなどのアウトドアで電気毛布や扇風機などの家庭用機器を使える。調理家電は消費電力が大きいので、カセットガスなどを使うべきところだが、火気厳禁の駐車場などでもお湯を沸かしたりできるのは便利だ。プリンターやプロジェクターを、ややマニアックなところではマキタの40Vmaxバッテリの充電器やStarlinkの通常モデルなど、使い道はいくらでもある。

 N-ONE e:のバッテリ容量(29.6kWh)は普通車BEVに比べると小さいが、バケツくらいのサイズでAC100Vを出力するポータブル電源はせいぜい1kWhなので、文字通りケタ違いだ。住宅に設置する家庭用蓄電池も、大きくても15kWhくらいで、そのくらいのサイズだと設置に200万円くらいかかる。BEVを電源として使うのは、実は容量コスパが良い。

火気厳禁のキャンプ場でもお湯を沸かしたりできて便利。1500Wまで使えるので電気毛布で暖をとることも可能

 実際のところAC外部給電器は常用するものではない。しかし、いざというときに持っていると、やれることが一気に拡がるので、使う具体的な予定がなくても持っておくことをオススメしたいアイテムだ。

軽の使いやすさとBEVの魅力を併せ持つオススメBEV

 N-ONE e:は使いやすい軽自動車サイズに、軽自動車とは思えない運動性能が詰め込まれた魅力的なBEVだ。BEVユーザーの筆者から見ても、完全停止まで減速するシングルペダルコントロールや最大充電量設定、Honda Charge、そして軽自動車としては大きなバッテリ容量など、スキの少ない装備構成だ。個人的にはマルチビューカメラやステアリングヒーターがないのはちょっと惜しいが、その分、価格は抑えられている。

N-ONE e:は補助金を利用すればかなりお得に買えるのが魅力の1つ

 N-ONE e:の価格は、上位グレードのe: Lで319万8800円。そこそこのお値段だが、国の補助金が57万4000円あり、実質価格は262万4800円になる。自治体によってはさらに補助金が出るので、とくに東京都では追加で40万円出るので、さらに安くなる。

 ガソリンエンジンのN-ONEのターボ車「Premium Tourer(FF)」は217万3600円だが、こちらはカーナビがない。カーナビがないN-ONE e:のe: Gは、国の補助金だけで実質212万5400円なので、実は自治体の補助金がなくてもガソリンターボ車より安い。そしてガソリンターボ車より走行性能は圧倒的に高い!

 もし自宅の駐車場で充電できて、日常の足として使う軽自動車を探しているなら、N-ONE e:はかなりオススメできる。ガソリンスタンドに行かないで済む快適さとBEVの運動性能は、400km超の長距離ドライブを公共交通機関やレンタカーに丸投げしてでも手に入れる価値のあるメリットだ。もはやBEVに興味がない人でも、自宅充電できるなら選択肢に入れないと損をする、そんな車種といえるだろう。

1日走ってすっかりN-ONE e:の虜になった筆者。自宅の駐車場で充電できて、日常の足として使う軽自動車を探しているなら、N-ONE e:はかなりオススメできる1台といえる

Photo:堤晋一