トピック

冬の積雪路への対策として選びたい、雪と氷に強い布製タイヤチェーン「オートソック」とは

タイヤチェーンの新しい形であるスノーソックス。その先駆者であるオートソックの特徴を紹介する

 予報では今回の冬は日本の広い地域で「平年並み」に近い寒さになると言われている。この平年並みという表現、2020年代は1991年から2020年の間の気温のうちの中央値付近を平年並みと定めているものなので、直近数年の暖冬が基準ではない。そういうことであれば今回は「寒い冬」になりそうだ。

 寒いとなると気になるのは降雪。都市部に住んでいても少し遠出すると雪の影響を受けそうな雰囲気ではある。また、雪が多い地域ではいつも以上に厳しい冬になるかもしれない。

今年の冬は気温が低めで地域によっては降雪量が増える予報もある。北日本は暖冬傾向と予報されているが、ここはそもそも冬は寒く、雪も多い地域。そのため全国レベルで雪への備えを考えたほうがいいかもしれない

 積雪路を走るならスタッドレスタイヤに交換するのが常套手段だが、積雪や路面凍結の心配が少ない都市部などに住んでいると、冬用タイヤに履き替えることの必要性を感じにくいものでもある。

スタッドレスタイヤでも雪が積もった急な坂道では、グリップ性能が得られず進めなくなることもある。毎年、冬のニュースでは山間部で進めなくなったクルマの話題が取り上げられている

スノーソックス(布製滑り止め)という選択

 冬用タイヤに交換する習慣がない都市部のドライバーが「雪道対策」として選ぶことの多いのがタイヤチェーンだ。

 これなら必要な時だけ装着すればいいし、費用の面でも選びやすいものの、装着が面倒だったり、製品サイズが大きくクルマに常時積んでおくことが難しかったりする面もある。

人気のSUV。ラゲッジは広めではあるが、それでもタイヤチェーンが入った大きなケースを常時積んでおくと存在が気になるだろう

 タイヤチェーンは金属製とゴムやウレタン製の非金属のものがあるが、近年、第3の勢力として登場したのがスノーソックスと呼ばれる「布製のタイヤ滑り止め(布製タイヤチェーン)」だ。

 スノーソックスはここ数年で認知度が上がってきたので存在を知っている方も多いと思うが、まだまだ知られていないところが多いのではないだろうか。

 とくに材質についての誤解は多い。金属やゴム、ウレタンといった素材に対して「布」なので「本当に大丈夫か? 使い捨てではないのか?」と、耐久性に不安を持つ人もいるようだ。また、材質が柔らかいところからそもそも効果があるのかという疑問を持つ人もいるだろう。

 そこでここからはスノーソックスの代表的な製品であるオートソック社の「オートソック」を題材にスノーソックスの特徴を紹介していこう。

スノーソックスの元祖、オートソックとは?

 スノーソックスとオートソックは似たような名称なので、まずはここから整理しよう。「スノーソックス」とは布製のタイヤ滑り止め製品全体の名称だ。特定の商品名ではない。

 そして「オートソック」はオートソック社が販売するスノーソックスの商品名である。そのため、以下の話はオートソックという製品の特徴だ。ちなみにスノーソックスはオートソックを作るオートソック社が発明、開発したものである。つまりスノーソックスの元祖がオートソックだ。

スノーソックスという布製の滑り止めを開発したのはオートソック社

 オートソックは金属製タイヤチェーンの代替品となる布製タイヤチェーンで、3分あれば簡単に装着できるのが大きなポイント。軽自動車、普通車、小型トラック・SUV、大型トラック用まで幅広く用意され、現在市販されているほぼすべての乗用車用タイヤサイズに適合。ジャガー・ランドローバーやボルボ、フィアット、アルファ ロメオなど多くの自動車メーカーの内部基準に従って承認されており、さらに日産自動車の純正用品でもあることからも品質の高さが想像できるだろう。

オートソックは日産の純正用品としても採用されている。また、タイヤサイズの適合は広く、軽トラや軽バンサイズの145/80R12から、大型車用の305/35R24まである。適合はオートソックの公式サイトで確認できる
パッケージはこのようなもの。折りたたんで入っているのでかなりコンパクト
パッケージの裏面
収納状態がコンパクトなのも利点。冬の間、クルマに積みっぱなしにしても邪魔になることはない。収納スペースが少ないスポーツカーにも向いている

オートソックの構造

 一般的なタイヤチェーン(現代だと非金属チェーン)はゴムやウレタンなどを使ったもので、滑り止めには金属チップなどを使用していることが多い。対してスノーソックスは路面と接する繊維が、雪とタイヤの間に存在する水を吸収して逃がすことでグリップ力を発揮する。

 オートソックでは路面と接する面(ロード・コンタクト・ファブリックと呼ぶ)に、吸水と排水の効率が高い「リップストップ・クロス」という生地を使用することで、雪との密着率をより高めている。そしてタイヤと当たる面(インナーファブリック)にはタイヤへのフィット感向上を目的に、パラシュートと同じ耐久性が高く柔軟性に優れる素材を使用する二重構造となっている。

路面と接触する面は「リップストップ・クロス」という耐久性に優れる生地を使用。オートソックは積雪路を500km以上走行できることがテストで実証されている

 オートソックの側面はタイヤの内側と外側でデザインが違っていて、ホイールに被る外側のネット部には「ストラップ」と呼ぶ十字のベルトが追加されている。これはオートソックの取り付けと取り外しを容易にするために設けた「繊維の柱」のようなもので、オートソックを広げる際にストラップがあることでスムーズな展開ができるし、被せたあとの位置決めはストラップを引っ張ることで簡単に調整できる。

 また、このストラップがあることで被せたあとにオートソックに適度なテンションがかかるため、かぶせ方に多少のズレがあっても走り出すと位置が自然にセンタリングされる効果もあるのだ。これもオートソックの装着しやすさにつながっている。オートソックを装着する実際の雪道は、多くの場合作業環境がシビアなので、こうした「装着しやすい」面があることは現場レベルでありがたいことだろう。

ストラップは2つの十字ラインを組み合わせてある。ストラップはネットの張りを保つ役目がある
側面内側はゴムになっていて、そこをタイヤの内側に掛けて固定する。フックやロックを引っかけるという作業が不要なので装着や脱着がとても楽
ストラップはオートソックをはめやすくするものでもある。また、製品自体の厚みがないのでタイヤ外径とフェンダーのクリアランスが少ない車種でも安心して使用できる
チェーンの脱着作業で面倒なのがタイヤ内側の処理だが、オートソックは引っ張って被せるだけのシンプル作業でOK。現場作業となるだけに装着が簡単ですぐに完了するという部分はとても大事
オートソックは切れ目がないので、装着の際はある程度広めに被せたらクルマを少し動かして残りの部分を被せるという流れ
被せ方に多少のズレがあっても、ストラップの効果によって走行すれば自然とセンタリングされる。ここも大きなメリットだ
外す時も簡単で、ストラップを引っ張るだけ。装着したり外したりの作業の手間がかからないからこそ、オートソックの効果を適所で使えるのだ
使用後はオートソックについた雪を払ってから製品のパッケージに戻すだけ。収納までも簡単だ

気になる耐久性やその他の性能について

 多くの特徴を持つオートソックではあるが、材質が布ということで耐久性を気にする人は多いが、それは問題ないと言っていいだろう。

 前にも書いたように、積雪路であれば500km以上の検証走行を行なっているので、積雪路用のアイテムとして耐久性に問題ないといえるだろう。なお、スノーソックスは欧州冬季滑り止め装置規格EN16662-1に認定済みで、EU加盟国26か国でスノーチェーンの代替品として使用でき、日本でも一部地域で発せられることのある「チェーン規制」のときも「オートソックはタイヤチェーンである」と認められているから、オートソックを装着すれば通行することができる。

 ただし、雪のない路面では話は違う。路面との摩擦が高過ぎるし、路面からの攻撃性も高まることからダメージを受ける量が増える。そのため劣化は速くなり、オートソック社が行なったテストでは乾燥した道路での耐久性は約120kmとのことだ。それだけに道路に積雪がなくなってきたら、安全なところにクルマを止めてオートソックを外すことが賢明だ。

 とはいえ雪のない路面を走ることは一切ダメかというと、そこまでではない。例えばいったん道路から雪がなくなっても短時間のうちに積雪がある状況に戻るのなら装着したまま走行していても問題はないとアナウンスされている。金属チェーンも非金属チェーンも雪のない道路で使用するのは原則としてNGなので、この辺の考え方、使い方はオートソックも同様である。

積雪した道路であれば500km走っても問題なかったことが実証されているので、条件次第ではもっと使用できる。乾燥した道路では120kmの耐久力だった。ちなみに装着時は50km/h以下で走行する
一般的なタイヤチェーンは雪や氷を噛むことで前へ進む力を得るが、オートソックは雪や氷の表面や水を除去することでグリップ力を得るものなので、特に氷上での性能に優れている
オートソックはタイヤを均一に覆うので、金属チェーンや非金属チェーンのようなタイヤの回転によるグリップ感の変化が少ない。そのためトラクションコントロールなどの電子制御に影響が少ないという点も大きな特徴
使用していると汚れが目立ってくることがある。そのときは40℃くらいのお湯で洗濯することも可能。汚れをためないようにするには使用後に簡単に水ですすぎ洗いするといい

 このオートソック、都市部では夏タイヤと組み合わせて使うケースが多いと思うが、夏タイヤだけでなく、オールシーズンタイヤやスタッドレスタイヤと組み合わせるといざというときの走破性が向上するし、チェーン規制にあっても通行することができる。

 それと冬用タイヤはグレードごとに性能が違うし、過去に購入したタイヤを再び装着するケースもある。もちろんそういう使い方でも必要な性能は確保されていると思うが、シビアな路面コンディションに出会ったときのことを考えると不安もある。そこで保険としてオートソックをクルマに積んでおくと安心感が高まるはずだ。

 このような特徴を持つオートソック。冬の積雪路への対策を検討しているのなら購入を検討してみてはいかがだろうか。

夏タイヤ、オールシーズンタイヤ、スタッドレスタイヤを問わず、積雪路に出会ったときの安心感を高める意味でオートソックを車内に積んでおくのはよい選択だろう